東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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遙かなる鋼鉄のオデッセイ

キカイダー01』感想・最終話

◆第46話「よいこの友達 人造人間万才!」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 色々と振り切ったパンチ力の高いサブタイトルですが、そんな最終話で爆死3回を披露するハカイダー
 謎の手紙に呼び出されたイチローは、光明寺家の前で同じく手紙を受け取ったミサオ・アキラ・ヒロシ(出番が……!)と再会。そこにギターを響かせて高いところからジローが現れ、一瞬、ジローの出番だけバンクで構成されているのかと思ったのですが、その後、普通に登場するので、単なる、人造人間の宿命の模様。
 イチローはジローから、ロボット再生装置を発明して帰国した光明寺博士が行方不明になった事を聞かされ、ジローの推測通りにシャドウに捕まっていた博士は、ハカイダーの拷問に屈してシャドウの為にロボット再生装置を完成させてしまう。
 「もはやシャドウは滅びる事はない。シャドウ帝国が世界を征服するのだ」
 先日、エネルギー問題から組織存亡の危機だったので、待望のエコシステム完成への喜びが真に迫ります。
 博士を助けるべく基地に潜入したマリには罠が迫るがイチローによって救出され、用済みとなり囮に使われる筈の博士は、割と自由に機械を調整していた(笑)
 「なにをした貴様?! まさかこのロボット再生装置に、仕掛けでもしたんじゃあるまいなな」
 「何もしていない! 疑うんなら、調べてみたらどうだ」
 後半戦に度々試みられた目論み通り、外部から優秀な人材を連れてきてシャドウ組織の為に働かせてみたはいいものの、ハイテクに対応できずに誰も問題点を確認できないという恐るべき罠!
 ひとまず手近のシャドウマンを射殺→再生して装置の動作を確認したハカイダーは博士を処刑場へと移送し、哀れ光明寺博士は、ハムスターが小箱の中の餌を食べ終えると錘が外れて刃が落ちる、という時限式の仕掛けが施されたギロチン台に乗せられてしまう。
 「ハムスターの餌が無くなった時が光明寺の首が飛ぶ時だ」
 悪の組織のぶっ飛んだ狂気が生むホラーとスリル、というよりは、テクノロジーよりオカルト寄りな組織のスタイルが偶発的に生み出したシニカルなユーモアといった感がありますが、帰国早々ハカイダーに捕まる → 痛々しい負傷メイクで登場 → ひたすら張り倒される → ギロチン台にくくりつけられる → ハムスターに命運を握られる、と光明寺博士の扱いが大変悲惨。
 最終回にして、望遠機能で目が飛び出す、という隠しギミックを披露したゼロワンとビジンダーは、シャドウ組織の大軍勢が待ち受ける罠とわかっていても、博士を助けるべく突撃を決意し、そこにジローが参戦。
 「光明寺博士は僕たちの生みの親だ! 兄さん達にだけ任しておくことは出来ない」
 「うん。三人の内二人が殺されても、一人が生き残れば、なんとかなる」
 「ええ」
 正義の人造人間達は、一人より二人で悪をデストロイ、二人より三人ならもっと悪をデストロイ、たとえ一人になってもやっぱり悪をデストロイ、の精神を確認し合うと、ジローがチェンジ・スイッチON・1・2・3! を決め、流れ出す、


この世に悪のある限り~ この世に敵のある限り~

 前奏からの流れが演出として確立しているというのもありますが、やはりこの挿入歌が一番盛り上がり、最終回で使ってくれて嬉しかったです。
 ……タイムリミットサスペンスの鍵を握っているのは、リンゴを囓るハムスターですが!
 また惜しむらくは、処刑場を確認する時点でゼロワンとビジンダーは変身済みであり、最終回に「チェンジ!」無し。イチロー兄さんのトランペットも無し。ギターも「チェンジ!」もジローに割り当てられており、結局最後の最後まで、キャラクターの格としては〔ジロー>イチロー〕のままであり、前作主人公の発揮するスターシステムが現役主人公を一段下の扱いにしてしまう、という今作の抱える歪みが、そのまま通されてしまった事。
 とはいえ、ゼロワン・キカイダービジンダーが、挿入歌に乗せてそれぞれのマシンで突撃していく展開は格好良く、待ち受ける銃弾の嵐の中もなんのその、悪魔の技もなんのその、3人は次々とシャドウマンを蹴散らしていき、バイクを所持していなかった筈のビジンダーマシンは、亡きワルダーマシンの改造だったりするのか、という辺りは妄想も捗ります。
 一方、基地のビッグ社長は、3人に倒されたシャドウマンを巨大掃除機で回収しては調子に乗って次々と再生していき、重要な伏線ではあるのですが、戦闘シーンの盛り上がりのぶった切り方が、最後まで実に『01』(笑) ジローの扱いとか、敵基地のモニター越しにヒーローの行動を見せる演出へのこだわり(個人的に、効果的な手法とは思えずじまい)とか、この最終回、良くも悪くも実に『01』らしい集大成になっています。
 ちなみに、シャドウ組織最後のハイテクは恐らく、この巨大掃除機。地下からうにょんと伸びる吸引システムがあまり光明寺博士のセンスに見えないので、ロボット再生装置に備え付けというよりは、シャドウ組織が付け足したオプションという気がします。
 場面が地上に戻ると主題歌インストでの格闘戦に移行して、群がるシャドウマンを、殴っては蹴り、殴っては蹴る赤と青。そして本日もドサクサ紛れにゼロワンを背後から撃とうとしたハカイダーは、ビジンダーレーザーの一撃で木っ葉微塵(笑)
 祝・最終回で雑に倒されるグランプリ獲得! と思われたが、社長がこれを巨大掃除機で回収していき、もはや三下中の三下悪役としての地位を確立しているとはいえ、かつてのライバルキャラが、無惨なバラバラ死体となって巨大掃除機に回収されていくという映像が、悪の末路としてこれ以上ない哀愁を漂わせます(悪役を格好良く描かない、という点においてはこれ以上なく徹底した演出、という見方も可能ではあり)。
 「ハカイダー、安心して戦ってこい」
 「今度はゼロワンを倒す」
 「ゆけ!」
 100回負けても大丈夫、と社長によって再生されたハカイダーは再出撃し、地上ではザダムの罠によりビジンダーとゼロワンが檻に閉じ込められ、と思ったのも束の間、キカイダーが初披露の必殺デンジエンドにより一瞬で二人を解放し、この脈絡の無さと無慈悲な解決も実に『01』。
 いよいよ博士救出まで後一歩のところまで迫るゼロワンらだが、ギロチン台の周囲には念入りに地雷が仕掛けられており、大変不自由な姿勢でゼロワンらを押しとどめる光明寺博士は前世でいったいどんな罪を犯したというのでしょうか。
 「命を粗末にするな! 私は君たちをロボットとは思っていない!」
 「でも、それでは博士の命が!」
 「私はいい! シャドウを道連れに死ぬなら本望だ!」
 拷問に屈して再生装置を作成してしまうなど、ここまで割と大人しかった博士ですが、今、凄く、70年代な事を言い出したぞ(笑)
 「シャドウを道連れ?!」
 光明寺博士は、ロボット再生装置に破滅的な自爆プログラムを仕込んでいた事を説明。
 「あの機械が30体のロボットを再生すると、自動的に地下のシャドウ基地が大爆発を起こすようになってる!」
 そう、光明寺博士は基地破壊ブラザーズの生みの親であり、すなわち、基地破壊ファザーなのである!
 果たして、ハムスターが早いか、再生マシンの自爆が早いか、足下で破滅へのカウントダウンが刻まれている事など知らずにビッグ社長は景気良く再生を続け、残りはあと5体。
 ザダムは奥の手の分離術により赤と青の二体に分離し、最終回にしてアクション可能(?)な姿へと変身。
 「死ねぇ、ゼロワン!」
 「死ねぇ、キカイダー!」
 「死ねぇ、ビジンダー!」
 ついでに、もはや宿敵すら見失っておこぼれにあずかろうとするハカイダー、だが……
 「ブラストエンド!」
 「ぐわぁぁぁぁぁ!」
 瞬・殺
 「デンジエンド!」
 「ぐぉぉぉぉ、うぉぉ?!」
 瞬・殺
 ビジンダーレーザー!」
 「のぉわ、おぉぉ……!!」
 瞬・殺
 最終回、一応、前作からの因縁があるハカイダー、一応、かれこれ20話ほどの付き合いになるザダム、一応、世界的悪の秘密結社の大首領ビッグシャドウ、と片付けるべき敵が多かったので、悪には相応の散り際を与えてほしい派としては、話の勢いで雑に処理される事を危惧していたのですが、ヒーローの必殺技三連発により3体揃って何も出来ないまま秒でスクラップにされる桁違いの作劇により秒速11.2キロで“雑の向こう側”に到達し、さすが『01』、凄いぞ『01』。
 『01』ここに極まれり、という変な満足感を得てしまいました(笑)
 「いけぃ! いけぃ! またおまえか?! ゆけぃ!!」
 ザダム赤青とハカイダーはビッグシャドウによりインスタントに再生されていき、マシンから出てきたハカイダーの残念具合に腹を立てるビッグシャドウの芝居も良い味を出し、スピード感と馬鹿馬鹿しさが凄い切れ味(笑)
 再び地上に繰り出したもはや3バカが、ザダム赤-ハカイダー-ザダム青、と並ぶ事で、悪魔の翼を広げたハカイダー、という多分に妄想的な幻影を垣間見せるのは出来る範囲でクライマックスらしい演出となり、高笑いと共に放たれる3バカ合体光線!
 だが、連戦に次ぐ連戦でいよいよ必殺技を発動できなくなってしまったゼロワンらは、正義の心を一つに残りのエネルギーを結集する事で合体攻撃を放ち、デビルハカイダー無慈悲なる瞬・殺。
 光明寺博士の首を落とす寸前、ギロチンの刃はすんでのところでゼロワンによって食い止められ、地下のシャドウ基地では3バカを再生しようとしたマシンが設定された数値を超えた事で煙を噴き上げる。
 「ぶほぁっ?! どうした? なぜ止まった?! どうしてザダムとハカイダーは出てこんのだぁぁぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ?!」
 混乱するビッグシャドウは再生マシンの爆発に至近距離で巻き込まれて無惨な最期を遂げ、基地破壊ファザー渾身の仕掛けにより、シャドウ本部も木っ葉微塵に吹き飛ぶのであった……。
 正体不明のままだったビッグシャドウですが、見た目は虫歯菌のコスプレした中年男性なのでブラストエンドで抹殺するのも絵的に具合が悪く、過ぎたテクノロジーに手を出してテンション上がりまくった末に破滅を迎える、というのはなかなからしい最期としてまとまったように思えます。
 某ドルゲの「るろ?! るろ、るろろろろろ、ろ?!」を彷彿とさせる、どうしようもない末期の台詞は、ポイント高し(笑)
 かくして、世界的オカルト結社シャドウは滅びた。
 無事に家に戻った光明寺博士の前でミサオ・アキラ・ヒロシがケーキを頬張る姿から、一緒に祝杯をあげる事もできないロボットの哀しさが盛り込まれ(ねじ込まれ)、光明寺博士は息子達のこれからに想いを馳せる。
 「ロボットは強い。年は取らない。しかしね、だからといって、それが幸せとは限らないんだよ。……イチローだってジローだって、完全なロボットになるより、不完全でも、本当は人間になりたいんだ」
 生みの親の言葉だと思うと、とんだ鬼畜ですが、無敵のヒーローとしての“神にも近い”ロボット達の姿から、“神になれない”人間賛歌へとスライドし、紆余曲折はありながらも“人間”としてイチローらと旅路を共にしてきたアキラ達が、その聞き役になる、というのはまあ納得のできる落としどころ。
 亡霊ギルとは何だったのか、ジャイアントデビルとは何だったのか、全ては狂ったハカイダーの見る幻想だったのか、作品のあれやこれやにあまりにも翻弄された3人(そしてリエコさん)でしたが、最終回でなんとか出番と役割を作って着地させてくれたのは良かったです。……後はきっと、特許権収入がうなっていそうな光明寺博士がなんとか支援してくれるに違いありません。
 ――そして、そんなロボットの宿命を背負いながら、イチロー、ジロー、マリはゆく。
 完全と不完全の間で揺れ惑いながら、それでも、人間を守り、正義を成す為に、命尽きるその日まで、果てしなき旅路を彼らはゆく。
 ナレーション「平和は来た。しかし、君たちの周りに、何か変わった事は起きていないだろうか。よく注意してみてほしい。それは、次なる悪の組織の犯罪なのだから。そして、もし変わった事を見つけたら、すぐに知らせてほしい。イチローや、ジローや、マリは、ほら、君たちのすぐ側にいる!」
 手を重ねたイチロー・ジロー・マリが名実ともにエターナルなヒーローへと昇華され、しかしその真に求めるものは、決して叶わぬ不完全さへの切望なのだ、と一抹の切なさを漂わせながら、歩んでいく3人の姿で、おわり。
 正直、そこまで期待しないで見た最終回だったのですが、クライマックスバトルのあまりの『01』感に妙な満足感を得てしまい、細かいあれやこれやはさておいて、大変清々しい気持ちです(笑) あれやこれやに関しては、構造を振り返りつつ別項でまとめたい予定で、ひとまず『キカイダー01』感想、お付き合いありがとうございました!