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花ある君と思ひけり

キカイダー01』感想・第45話

◆第45話「サムライワルダー暁に死す」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 「「入れ、浪人武士ロボット」」
 黒い着流しで顔色の悪い男達がずらりと並び(やはり、死体を動かしているのではないか……)、もはや積極的に着ぐるみ怪人の必然性を否定していくスタイルが確立しつつある『キカイダー01』も残り2話!
 そもそも、特撮ヒーロー物における「怪人」とはいったい何を意味しているのか、哲学的考察にふけりたくなってきます(実際のところ、少年冒険物であったりモンスタームービーにおける、ある種の“奇形”としての怪人像、というのは一考すべき源流なのでありましょうが、それが“着ぐるみ怪人”として変異を遂げた後に、もう一度“人間に近い何か”に戻る事で、源流の時点では存在していた意味性がほとんど失われている、というのは面白いところであり)。
 シャドウの開発した特殊なインクに反応し、地の果てまでも追いかけ続ける魔剣・暗殺血風刀を携えた5体の刺客がゼロワンに迫り、必殺の暗闇斬りによって切り落とされるゼロワンの左腕!
 シャドウロボがいきなりゼロワンに有効な必殺攻撃を繰り出すのが物凄い違和感ですが、発動するとゼロワンが苦しみだすので、名称からすると、太陽電池のエネルギーを弱めるとかそういう効果でありましょうか。
 ゼロワンを助けたマリは、呪いのインクを消す効力を持った初恋花を採りに向かう途中で激痛回路に倒れ、介抱するワルダーごとまとめて吹き飛ばしてしまえ、とエキサイトする覗き魔達。
 「そら、もう一つだ。ワルダー! 早く第三ボタンを外せぇ」
 だがその時、ワルダーがとうとうマリの体に仕掛けられた水爆の秘密に気付き、マリを一度気絶させると、自らのエネルギー回路を取り付ける事で、水爆を無効化。中盤のお色気路線の影響で設定されたと思われるものの、後半に入ってお色気路線が消滅した事もあってか持て余していた感のある体内水爆がようやく落着し、だがその代償として、ワルダーの余命は残り一週間となってしまう(ニュアンス的には、陰腹を斬った、という感じでしょうか)。
 ワルダーは暗殺血風刀への対抗手段として、ワルダー家に先祖代々伝わる二振りの刀、雷神村正と風神村雨の内、村雨をマリへと託し、もしかしてワルダー、亡き息子に瓜二つに作られたが大戦の終結と共に封印とかされていたのか。
 「もし、差し支えござらぬならば、その……」
 「これから私、行くところがあるの」
 酷いなマリ(笑)
 口ごもるワルダーをバッサリと袈裟懸けにしたマリは笑顔で歩み出し、当初は、“表情筋の働いていない人造人間”という役作りもあったのでしょうが、化粧を変えたのか、カメラ慣れなのか、演じる志穂美悦子さんの表情が回が進むごとに美しくなっているのは、マリというキャラクターとの良いシンクロになっています。
 「拙者の身勝手、許して下され……」
 自らのタイムリミットを語らぬまま、マリの行方を気にしていたワルダーは結局ストーキングしていたようで、マリに代わって初恋花を採りに行く事を買って出ると、シャドウの罠に次々とダメージを受けながらも崖の上で高々と花を掲げ、しかし、最後のトラップによって崖から大転落。
 「ワルダー、大丈夫?」
 「はは、拙者生涯の内で、今日ほど幸せな日はござらぬ」
 ワルダーはマリに初恋の名を付けられた花を託し、残り少ない命で、マリ/ビジンダーの役に立ち、マリ/ビジンダーに笑顔を向けられた事に、殺し屋ロボットとしては決して得られなかった充足を得る。
 だが一方、殺し屋ロボットとしての本能を抑えきれないワルダーは握手を求めるゼロワンへと切りかかり、互いの生死の決着をもまた望む。
 「何をするんだワルダー!?」
 「うるさい! 拙者の……拙者の心は誰にもわからぬ!」
 日本刀を手に狂人度の上がるワルダーだが、ビジンダーにいさめられると戦闘を続行する事が出来ず、がっくりと膝をつくと己の内に抱えた暴力衝動と戦うように刀を振り回しながら去って行き、しかしゼロワンとビジンダーが再び浪人ロボに襲われるとシャドウ側に助勢。
 段々と錯乱ぶりがハカイダーに近付いていくワルダーですが、展開の都合の消化を含め、その錯乱状態を“存在の苦悩”と繋げる事でキャラクター化したのがワルダーともいえるでしょうか。
 そういう点では、ここに来て「もう一人のハカイダー」という側面が強くなるのですが、「もう一人のゼロワン」であり「もう一人のビジンダー」であり「もう一人のハカイダー」である、という位置づけが物語の中で奇跡的にはまったのがワルダーであり、『01』後半戦のドラマ性を加速させてくれる得がたい存在でした。
 ……裏を返すと、ハカイダーは公式に狂っているという事になりますが、まあもはや、その方がハカイダーにとっては救いではあるのかも。
 再び放たれる暗闇斬りだが、ビジンダーから村雨を受け取ったゼロワンはそれを打ち破り、攻撃力は高いが防御力は低かった浪人ロボを撃破。そして残るは、ワルダーのみ……
 ビジンダーの制止の叫びも虚しく、やたら格好いいウェスタン調のBGM(これも前作ハカイダー用でしょうか)が流れる中、睨み合うゼロワンとワルダー。
 「その刀は貴様にやった刀ではない!」
 「……ワルダー、おまえとの勝負、刀はいらん!」
 BGMの効果もプラスしつつ、村正を構えるワルダーに対し、村雨を地面に突き立てるゼロワンの姿も決まり、登場当初はなんて奇天烈なデザインなのかと思ったワルダーがすっかり格好良く見えるので物語の積み重ねって恐ろしい。
 熾烈な戦闘になるかと思われた両者の交錯は一瞬、宙に飛んだゼロワンの左足をワルダーの一刀が切り裂くが、ゼロワンの右足が蹴り飛ばした刀が、ワルダーの背に深々と突き刺さる。
 「……俺の命はどうせあと、一週間だったが……同じ殺されるのなら、貴様の他に、殺されたい人が居たぞ」
 ビジンダーへの執着を視線で示したワルダーは地面に倒れて爆発し…………あ、もしかしてワルダー、エネルギー回路を移植した事で、ビジンダーの中で(一方的に)永遠になってる……?!
 最期ちょっと、高潔で不器用な武人の伝えきれない想いを通り越して、人造人間ならではの手段で死が二人を分かつまで密かに一体化を果たしたサイコな愛情、みたいになってしまいましたが、サムライワルダー暁に死す……!
 第37話で初登場以来、出てくる悪役が片っ端から株価を暴落させていく『01』の伝統を打ち破り、堂々たる正統派ライバルとして後半戦を盛り上げてくれたワルダーが退場。第43-44話で脇に追いやられた事も響き、最終的に「人造人間のレゾンデートル」テーマの掘り下げよりも、「恋愛バグの悪化」の方がウェイトが大きくなってしまったのは残念でしたが、『01』の物語に一つの軸を生んだ、良いキャラでした。
 (初恋花を取ってくれた、ワルダーが死んだ。あんなに優しかったワルダーが、死んでしまった……)
 ナレーション「それもこれも、ロボットの宿命なのだろうか」
 ナレーションさーーーーーーん!!
 登場以来、8話ほどに及ぶワルダーの苦悩を、「それもこれも」にざっくりまとめてしまうナレーションさんが、マリの周囲に群がる男達に厳しい。
 ナレーション「マリはゆく。ワルダーのような可哀想なロボットをつくりだす悪者を、二度と許さない為に、ビジンダーは戦う。笑ってくれマリ、微笑んでくれビジンダーおまえのその明るい笑顔だけが、ワルダーに対する、唯一の餞なのだから」
 マリがあくまでワルダーの感情と擦れ違っている一方で、そこをナレーションが掬い取る、この締めの方は、綺麗で良かったですが。
 ナレーション「――そしてイチローよ、シャドウの作り出すロボットの悲劇を許すな。ゆけイチロー! シャドウが地球上から姿を消す日の来るまで」
 「そうはいかんぞゼロワン。シャドウはおまえを必ず殺す」
 何やらメタ風味な調子で遂に社長自ら遠吠えタイムに登場し、次回――危うし光明寺博士で最終決戦! けっこう片付けないといけない要素が多いけど、大丈夫かシャドウ! 大丈夫かゼロワン! 頼れるジローが復帰して真の基地破壊パワーが解放されるその時、ザダム、ハカイダー、ビッグシャドウ、一番雑に倒されるのは果たして誰だ?!