東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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発熱中につきざっくりめ

キカイダー01』感想・第43-44話

◆第43話「ビジンダーに恋した若者」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 「なに? 我がシャドウの石油タンクが底をついてきただと」
 円盤兵器だの空中戦艦だの、大盤振る舞いを続けてきたシャドウの家計が大ピンチだ!
 「「残念ながら、この石油危機は世界的なもの。シャドウだけが例外というわけには参りません」」
 いやいや計算ミスではないのです、と責任を世相になすりつけるザダムですが、オイルショックを影で操っているのでもなければ、それを利用して一山当てるわけでもなく、その影響の直撃を受けて戦略に致命的な支障を来すのが、さすがシャドウ。
 キカイダー兄弟の脅威が間近に迫る今、新戦力投入不能というこの組織存亡の危機に、しかしザダムはいちはやく手を打っていた。
 ・ロボットにとっての石油とは、人間における血液のようなもの(喩えとしてはまあわかる)
 ・石油に代わる無尽蔵のエネルギー源を見出せばいい……それはすなわち海水!(みんな一度は考える)
 ・そして海水には塩分が含まれている(……何やら雲行きが怪しい)
 ・人間の血液にも塩分が含まれている(……大変雲行きが怪しい)
 ・つまり、海水を血液代わりにするロボットを作ればいいのだ!(どうしてそうなった)
 石油=血液=海水、という二重の見立てが行われており、発想が完全に呪術なのですが、今回登場するアクアラングマン(ダイバースーツ+フルフェイスを、ロボットと主張)の見た目といい、死体を動かしているものを「ロボット」と呼称しているのではないか、シャドウ組織……。
 父を殺したロボットに強い憎悪を抱く少年と出会ったマリは、アクアラングマンに襲われたところを通りすがりの青年・英介(演じるのは、千葉真一の弟にして、『仮面ライダー』の滝をはじめ当時の諸作でサイドキック的な役柄を務める千葉治郎)に助けられるが、その英介もまた、ロボットに父を殺された過去と、ロボットへの強い憎しみを抱えていた。
 「俺はな、ロボットが許せねぇんだ!」
 「何故だ!? 理由を言え!」
 「理由? それはおまえがロボットだからだ!」
 自分を助けたゼロワンにさえ背後から襲いかかる英介の近視眼的で激しい憎しみは、子供番組としての単純化が、かえってストレートに様々な事物を代入可能にしており、時代を超えて突き刺さるやりとり。
 ……まあ、『01』世界におけるロボットの許容のされ方が全くわからない事もあり、風刺としては粗削りには過ぎますが。
 英介が好意を向ける“人間としての”マリの虚像を守ろうとするビジンダーだが、英介はマリが海底基地にさらわれたと早合点。アクアラングマンの魔術回路が上手く働かないのは人体の構造把握が不十分だからだ、と解剖サンプルとして少年がさらわれ、二人を助けようと海底基地に乗り込んだ英介は、そこで父を殺したハカイダーの姿を見る。
 「この野郎……!」
 「バカめ……俺は人間にやられるほど弱くはないわ!」
 切れ味最高潮、ハカイダー捨て身のギャグが炸裂し、しばらく空手タイムの後、いよいよ真打ち登場。
 「アクアラングマン! お前達はこの海底工場と一緒に死んで貰うぞ!」
 ゼロワンとビジンダーがアクアラングマンと海中戦を少々行い、海底基地は尺が埋まったので的に謎のビームでいきなり爆発(笑)
 命を助けられた英介と少年は、良いロボットも居るんだな、と宗旨替えをするが、英介の想うマリを、そして、英介に想われるマリを壊したくないマリは、正体を秘密にしたまま頑なな態度で去って行くのであった……。
 ナレーション「アクアラングマンは倒した。それを作り出す海底ロボット工場も爆破した。だが、マリの心は何故か寂しかった。自分が人間ではないせいだ。負けるなマリ、おまえほど素晴らしい人造人間はいないのだから。――そしてイチローはゆく。どこまでも果てしない、シャドウとの戦いの道を」
 ナレーションさん、温度差ありすぎ(笑)
 「……ゼロワン殿、御貴殿との果たし合いの日はちこうござる。見ていてくだされビジンダー殿、拙者必ず、ゼロワンに勝ち申す」
 嫉妬のあまりビジンダーへの刃傷沙汰に及んでいたワルダーは、気がつけば「ゼロワンを倒す事で、自身のアイデンティティを取り戻してビジンダーにそれを認めさせる」事へ目的が移行しているのですが、基本的にワルダー、バグを発生してしまったロボットなので、バグの作用が(不完全な)良心回路の存在に似ている → 完全な良心回路を持つゼロワンの撃破=バグの除去(及び、“同じバグを抱えた”ビジンダーの救済)、というすり替わりと思い込みは、納得のできる範囲。
 次回――
 「次々と、運送用蜜柑を襲うシャドウ」
 「名付けて、シャドウの買い占め」
 「だがこれは、底知れぬ悪の才能を持つ、ハカイダーの計算通りであった」
 あくまでシリアスな次回予告が圧倒的に一番面白かった案件になってしまいましたが、単発ゲストとばかり思ったら連続出演となった英介については、次回まとめて。

◆第44話「ビジンダーの美しく悲しき別れ」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 運送トラックを襲撃する、ハカイダー一味!
 「はっはっはははは、トラックに積んである全ての果物は、このハカイダー様が買い占める」
 え?! この対応でお金払うの?! と思ったら勿論そんな筈はなく、運転手等を撲殺。
 「見るがいい! これが俺の買い占めだ!」
 無辜の一般市民を相手に武装強盗を成功させると、洒落た事を言ってやった風情で虚空に向かって勝ち誇り、久しぶりに冒頭から登場したハカイダーの頭の配線の具合が絶好調でクライマックス。
 だがそれは、日本全国の果物を品不足に陥らせる、シャドウの遠大なる買い占め大作戦の始まりに過ぎないのであった!
 「ははは、これで子供たちは友達を憎み、他人を信用せず、自分の事しか考えない子供になる。これこそシャドウが期待する人間像だ。この子供たちが成人すれば、必ずこの国を、いや、全世界を滅ぼしてくれる」
 やたら長期計画、割と他力本願、と2クール目の半ばぐらいにありそうな作戦の順調な進行にビッグ社長は大喜びし、醜く、というか、笑みを浮かべて楽しそうに果物を奪い合う子供たち(笑) もしかしたら事務所に所属している子役というわけでなくスタッフの身内だったりする可能性もありますが、没入感も切迫感も皆無の映像になってしまい、幾ら何でもという出来。
 そして、前回あれだけ念押しして別れたマリと英介は開始5分で道でばったり出会ってしまい(特に劇的な演出なし)、その英介はAパートでハカイダーに投げ殺され、ダッシュがマッハでアクセル全開。
 ビジンダーはエネルギーのほとんどを消費する事で、心停止した英介の蘇生を試み、成功。それを知ったワルダーは嫉妬に猛り狂って勝手に失恋し、果物を巡って争っていた子供たちは、誠意を込めた説得により仲直り。
 シャドウの作戦が、未来を担う子供たちを標的としている事で、子供たちの仲違いと仲直りに焦点が当てられるのですが、「昨日まで親友だったのに、たかが蜜柑を巡って争うなんてそれが悲しい」みたいなやけに説教くさい言い草を少年がたどたどしく口にする場面が単純に面白くない上で、そこに主人公が介入して説得力を補強するわけでもなんでもないまま妙に大人びた理屈に子供達が頷いてしまう目が白黒する成り行きで、宇宙人ロボ回とは正反対の有様に。
 ハカイダーが、少年が信じる父親(青果店主)の倉庫にこっそり大量の果物を運び込んで親子の間に不和を引き起こす、というのも全く意味不明で(マクロな作戦をミクロな親子の間で行っているといえば行っているのですが、リスクがあまりにも大きすぎて……)、イチローの機転により大安売りされる事になったそれらの果物が爆弾や劇物にすり替えれているような事もないまま、イチロー&マリ&英介は、ハカイダーとの決戦に臨む。
 イチロー&マリは、ハカイダーの相手を敢えて英介に任せ、ハカイダーのクイックドロウをキック一閃で阻む英介はつまりアクアラングマン、もとい、一度死んだ体にビジンダーエネルギーを注ぎ込まれて生まれ変わった乙女の体、英介ダーがやらねば誰がやる!!
 (軽い、今日の俺は体が軽い! ハカイダーのパンチが止まって見えるぜ! 食らえ必殺、カラテダイナミック!!)
 ハカイダーと互角の戦いを演じる英介ダーは、はたき落としたハカイダーショットをマリからトスされるとそれをぶっ放し、直撃を受けたハカイダーは空中クライマックスジャンプで大爆死(13話ぶり4度目)。
 「英介さん……あなたはこれでも私が好きですか?」
 マリは追いすがる英介の前でチェンジビジンダーして正体を明かし、愕然とした英介は、姿を消したマリの、そしてビジンダーの名を呼び続けるのであった……。
 ナレーション「心を静かに耳をすましてみるがいい。すぐそこまで来ている春の足音が、確実に聞こえる。ゆけイチロー、進めゼロワン、その道をどこまでも」
 だいぶポエムの入ったナレーションさんがメタ的には改編期の到来を告げ、いよいよクライマックスが近付いているように思われますが、「マリに恋する青年」という抑えておきたいアイデアはわかるものの、なまじ千葉治郎をキャスティングしてしまったが為にゲスト青年のウェイトが上がりすぎてしまい、色恋を軸にマリ/ビジンダーの対比存在に置かれた事で、これまでは主要キャラの相克的存在として重要な位置づけを担っていたワルダーがあぶれてしまうという大変残念な事態が発生。
 いっそ、英介の父の仇がワルダーなら、より劇的になったとは思うのですが、そうなるとハカイダーが余ってしまう事になり、まあ、ハカイダーなら余ってもげふんげふん、といった感じでハカイダーを取った結果、嫉妬に狂ったワルダーが自暴自棄の末に独りよがりの失恋をしてしまう羽目になりました。
 “人造人間コミュニティの物語”が確立したところで、ロボットに一方的な憎悪を向ける人間がそこに波紋を投じる、という要素そのものは面白かったのですが、全体のクライマックスを間近の一石としては持て余す事になり、あちら立てればこちら立たず、となってしまったのは非常に残念。
 また、シャドウ組織の作戦に関して、同様の食糧危機により日本国民を追い詰めていく「日本餓死作戦」を現実のカリカチュアとして大真面目に展開し、数話をかけて追い込まれていく人々とその中で剥き出しになる人の欲望、を丹念かつ壮絶に描いていった『正義のシンボル コンドールマン』(1975)を見た事があった為、インパクトを感じないかつ滑稽さばかりが気になる事になってしまったのは、個人的な後先の不運。
 次回――剣豪ワルダーは、最後の一花を咲かせる事が出来るのか?!