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日輪の使者ゼロワン

キカイダー01』感想・第40話

◆第40話「脱出!! 冷凍ビジンダー危機一髪」◆ (監督:松村昌治 脚本:曽田博久)
 後半戦に入り、すっかりサブライターに定着した曽田先生が6本目。
 シャドウ地下要塞建設の為に地下で奴隷のような扱いを受ける出稼ぎ労働者達が、工具とダイナマイトを手に脱出の為に決起。だがその企みは鎮圧部隊によって呆気なく水泡に帰し、生きて家族の元へ帰る為に敢えて膝を屈し命乞いをする男は、仲間達から裏切り者と罵られる事に……といったくだりは、学生運動に参加していたという曽田先生の実体験がベースにあるのかも、とも思わせる生々しさのある展開。
 武人として、決死の特攻を繰り広げた犠牲者達に感情移入するワルダーは、命乞いする男を切って捨てようとするがハカイダーに止められ、前回に続いて、ハカイダーの方が“人の心の弱さ・移ろいやすさ”を知っている、というのは両者の面白い対比になっています。
 前作未見の為、ハカイダー前世の人格や、ギル脳がそこにどの程度の影響を与えているのか、というのはわかりませんが、ワルダーの“高潔さ”というのは「作られた人造人間」の設計に過ぎず、卑劣外道でいぎたないハカイダーの方が“人間的”であるのは今作がこの終盤に辿り着いたなんとも皮肉な要素であり、しかしそのハカイダーにしても、「大切な者の為に石にかじりついてでも生き続けようとする、真の“人の心の強さ”」はわかりはしないのだ、というのは良く出来た構造。
 その頃、出稼ぎに東京に出たまま連絡の途絶えた父を探すも、シャドウの工事現場を邪険に追い払われ、凍えるような寒さの中で震える幼い兄妹を助けようとしたマリは、あまりの寒さにエネルギー転換装置が限界に達してしまい、凍り付いた姿を通りすがりのミサオに発見される。
 「ねえ、死んじゃったの?」
 「それがわからないの。この人は死ぬような人じゃ……人間じゃないからわからない」
 かなりストレートに『マッチ売りの少女』から『幸福の王子』へと繋がっているのですが、思えば曽田さんの初参加回は『人魚姫』(……人魚姫?)だったので、他にも童話を下敷きにしているエピソードがあるのかもしれません(そういえば石ノ森版『キカイダー』は『ピノキオ』を下敷きにしていると聞いた事があるような)。
 「人間じゃないの? じゃあ、神様?」
 「……そうね。……この人は、神様ね」
 蛇行と迷走の激しい今作に、一貫したテーゼを見るのはなかなか難しい(危なっかしくもある)のですが、そもそもイチロー/ゼロワンが「日本を取り巻く、悪の力が増大し、巨大な、悪のエネルギーとなって動き出した時」に仁王像の中から誕生した神仏の化身であった(太陽の力で衆生を救うものでもある)事を考えると、不完全な良心回路を胸に善悪の狭間で揺れ動くマリ/ビジンダーが、ここで「神様」に喩えられるのは、かなり印象的。
 前回「悪い子供と申されるが、拙者にはその悪い事というのがさっぱり……なにが悪で、どれが善であるのか、拙者には、それがわからぬのでござる」と嘆いていたワルダーですが、では逆に、常にそれを“正しく”判別できるものが存在するのか? と問えば、もはやそれは人ならぬ存在――場合によっては、善悪そのものを規定する存在――しかなく、果たして、そうなる事は、望ましい事なのか?(少なくとも、マリが願う道なのか?)
 優劣とは別に、“人間を超越した者”としてのイチローの立ち位置が、ビジンダー&ワルダーとの対比を経て、かなりハッキリと定まってきた感もあります。
 このイチローの超越性は、「人造人間」という要素をクッションにする事で肯定的に扱われるのですが(逆説的には「人造人間」だからこそ超越性に至れた、ともいえますが、この辺りは、「ウルトラマン」的なものの等身大ヒーローへの落とし込みといえるのかもしれません)、ここに至って振り返ってみると、第25話において月面に取り残されそうになったイチロー兄さんが、「さよなら、アキラくん。さよなら、ヒロシくん」と清々しく別れを告げてしまう姿は、悩まず・悔やまず・振り返らない、イチロー/ゼロワンというヒーローの人間性の欠落をこれ以上なく描く、一つの到達点だったのだな、と(笑)
 そしてワルダーにしろビジンダーにしろ、そんなイチロー/ゼロワンを一つの理想と見ているのですが、果たして「人造人間」は、人に近付くべきなのか? 神に近付くべきなのか? という問いがそのまま、「“人間”から離れていく“ヒーロー”」に対する懐疑的姿勢になっているのが、ここに来て今作の興味深いところです(ただし、表向きはヒーローの活劇物としての体裁を崩しておらず、これも大事な部分)。
 青ざめた顔でピクリとも動かないマリを発見したワルダーはその身柄を回収していき、一足遅れでその場を訪れたイチローは、ミサオらから事の次第を聞く事に。
 「ビジンダー殿、御貴殿の体の秘密、調べさせていただく」
 ワルダーは手術台に横たえたマリの分解調査を始めようとし……
 「いいぞワルダー、ボタンを外せ。3番目のボタンを外した時、マリの体内の核爆弾が爆発するのだ」
  あ、それ、この局面でまだ拾うんだ……というか、そこ、建設中の最新型シャドウ地下要塞の中なのでは?
 特に状況説明はないのですが、今作の作風や、さすらいのフリーランスであるワルダーが設備の整ったアジトを持っているとは考えにくい事なから地下要塞の中と捉えるのが自然で、そこにマリを連れ込むワルダーもワルダーですが、視野の狭さと錯乱した言動には定評のあるハカイダーは、気に入らない流れ者と裏切り者を一挙に(建設中の要塞ごと)始末できるチャンスとばかり大興奮。
 「馬鹿者! マリが爆発する時は、ゼロワンの最期の時だ」
 だが、ドキドキ核爆発ハニーフラッシュで無敵ゼロワンもイチコロよ作戦に、割とこだわりのあったビッグシャドウに叱られる。
 「「二番目のボタンを外したぞ」」
 「安全装置を入れろ!」
 急遽、セーフティ追加(笑)
 「……ワルダーめ、ハラハラさせおるわ」
 思わず席を立ってプルプルするビッグシャドウですが、見ているこちらの方がハラハラします!
 そしてこれは、いい加減、マリのドキドキ核爆弾タイムは終了の合図なのでしょうか(笑)
 ワルダーがマリのエネルギー転換器の故障に気付いた頃、兄妹の父を探す為に工事現場に潜り込んだミサオは、やたら存在感のある潮健児シャドウマンに捕まってしまうが、イチロー参上。ハカイダーらに命乞いをして腰抜けの裏切り者呼ばわりされた兄妹の父は、実は密かに脱出用トンネルを掘り続けており、その完成まで誰にも言わずにじっと耐えていた事を明かし、作業員達はトンネルから脱出。
 シャドウ作業員達を蹴散らし、マリを探すイチローは、工事現場の奥でワルダーを発見し、やはり、地下要塞の中だよハカイダー
 「しょせん人造人間など作られた機械。どこからどこまで、全部機械でござる」
 「ワルダー! 貴様、マリさんの体を分解したのか!?」
 「と、なれば、どうするゼロワン殿」
 「許さん! 許さんぞワルダー!」
 「ほう面白い。今日こそ決着をつけよう」
 キザでストイックで高潔な武人だが、デリカシー機能のついていなかったワルダーの行為が、紳士イチロー兄さんの逆鱗に触れ、初めて互いに本物の殺意をぶつけ合う両者は、元ライバルそっちのけで、やたら盛り上がる対決に突入。
 仕込みチェーンを引きちぎったゼロワンの、ドライバーからの連続カットがワルダーを捉え、更にキックが直撃寸前、ビジンダーが間に入ってワルダーを助け、ワルダーはマリを解体していたのではなく、修理していたという真相が明かされる。
 ワルダーの弱体化は、エネルギー変換装置の一つをビジンダーの修理に使った為である事もわかり、拳を収めるゼロワン。
 「ビジンダー殿、余計な事を」
 「そうだったのか、知らなかった。ワルダー、なぜ本当の事を言わなかったのだ!」
 「……ふは、拙者は殺し屋。悪の人造人間に本当の事などありはせんわい」
 あくまで自らの“作られた目的”にこだわるワルダーは、助けたのではなく調べ上げただけだと抗弁し、ビジンダーを押しのけて立ち上がる。
 「ゼロワン殿、今度こそ必ず御貴殿をバラバラにしてしんぜる。拙者は殺しだけが生き甲斐のロボット。必ず殺し屋の恐ろしさを見せてしんぜる」
 もはや、己に言い聞かせるように繰り返すワルダーの去りゆく姿を、ゼロワンはただ見送る事しか出来ないのであった……。
 「ゼロワン殿、御貴殿には必ず勝つ。拙者は今後、殺し屋に徹するのでござる」
 ラストお約束のサイドカー疾走シーンが新撮されて、とうとうダミーアキラくんが消滅し、遠吠えタイムを奪い取るワルダー。果たしてこれは、転落の始まりなのか、それとも――?! 次回、風雲急を告げそうな更なる強敵現る!
 ……あ、物凄く久しぶりにザダム@お日様に弱い体質、が外出して、念動力で地面に穴を開ける事で時間稼ぎをしました。時間稼ぎをしました。時間稼ぎをしました。