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ブラストエンドのひみつ

キカイダー01』感想・第35話

◆第35話「振袖娘 ビジンダー地獄絵巻」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 「もっと残酷な作戦はないのかぁ……人間どもの血も凍るようなアイデアは」
 「「お待ち下さいビッグシャドウ様。ハカイダーが何やら面白いものを開発したようでございます」」
 「ハカイダー、さっそく見せてみろ」
 「よく見るがいい。これこそ、俺が作った、大傑作だ」
 自信満々のハカイダーが披露したのは、しゃれこうべにかかった女物の鬘と一枚の振り袖。拍子抜けして嘲笑うザダムだが、その首に帯が巻き付き動きを封じ、宙を舞う鬘に繰り返し小突かれるザダム、その光景に喜ぶビッグシャドウ、自動で動く着物を「大傑作」と称するハカイダー愉快な顛末で一同揃って株価が下がる、さすがの『01』マジック。
 「はははは、はははは! ハカイダー、この作戦、なんと付ける!」
 「大東京襲撃・着物毒蛾作戦!」
 力強くガッツポーズを取るハカイダー……思えば過去にハカイダーが主導した作戦といえば、食堂を占拠して「俺は地獄の王者。この店は俺が貰った」だったので、ハードルは最初から、だいぶ低めの設定です。
 ハカイダーの作り出したロボット着物が街に放たれ、それに袖を通した人間が猟銃を発砲したり出刃包丁を振り回す、リアル通り魔事件が連続。
 一方で、姉かおる(演じるのは、後の大演歌歌手・小林幸子)の成人式に綺麗な着物を着せてやりたい少年・サブとマリの出会いが描かれ、仲むつまじく清貧に暮らす善良な姉弟と、上等な着物に軽々しく操られる鼻持ちならない上流階級、という描写の対比があまりに露骨で、今見るとさすがにノりにくいドラマ構造。
 アルバイトで懸命に稼いだ19800円を持ち込むも呉服屋に邪険に追い払われ、悲しみにくれて雨の中を濡れながら歩いているサブに着物を譲ったのは、妙齢の和服婦人に変装したハカイダー
 今作における人造人間の変身システムも大概謎ですが、地味に女装好きなハカイダー(いまいち謎の女装(女性への変身)好きというと、『仮面ライダーフォーゼ』の速水校長を思い出すところですが、「存在の軽さ」繋がりですね……!)。
 振袖を手に入れて喜ぶサブだが、風呂敷包みが宙に舞い、それを追いかけている内に池に転がり落ちてミサオとビジンダーに助けられる事に。2人は熱を出した少年をアパートへと連れて行くが、弟の気持ちが何よりも嬉しいから、と姉かおるが振袖をマリにパスし、着物を着る為には服を脱がなくてはいけないという、120%予想外の核爆発の危機!!
 ハカイダーの作戦が遠い海の彼方に吹き飛ぶあまりにも想像不能の展開で、ここは大変面白かったです(笑)
 この光景をモニターしていたシャドウ上層部は思わぬ副産物に大喜びするが、今、君たちがやっている事は、完全にただの変態盗撮だな……。
 お陰で、その流れで飛び込んできたイチロー兄さんもヒーローとして割とギリギリな印象になってしまいましたが、マリ自身は体内に内蔵された核爆弾の存在も、その起爆システムについても知らない事が、シャドウ側からハッキリと言及。
 「その着物を捨てろ! そいつはシャドウのロボットだ!」
 イチローは振り袖とカツラのセットを部屋の床にたたきつけ、姉を思う少年の気持ちが無惨に踏みにじられていますが、それを気にする間もなく浮かび上がった着物は、怪ロボットへと変身。
 「俺はシャドウロボット、着物毒蛾」
 振り袖・女物のカツラ・般若の面・両手には唯一の怪人感を主張する巨大な爪・男の声、という色々どう受け止めればいいのかわからないロボットが正体を現し、戦闘員を交えつつイチローと戦闘に突入。久々に流れる、レッド&ブルー・レッド&ブルーの挿入歌をバックに鬼面軍団が増員され、火の海にまかれるイチローだが、連続バック転回避からチェンジゼロワンすると問答無用のブラストエンドを放ち、着物毒蛾と鬼面ブラザーズは大爆発。
 明らかに全く別の位置で3体まとめて爆発しているのですが、事象変換系必殺技ブラストエンドの前に、多少の空間的距離は無いも同然なのだ!
 最近割とまともに敵怪人が着ぐるみなので油断していたら、不意打ちで出現した限りなく着ぐるみ感の薄い怪ロボットでしたが、それを補うかのように死亡時の爆発は番組史上最高レベルの派手さで、どうしてこんな怪人の最期にこんなに火薬を投入してしまったのかレベル。
 その爆発で残念魂に火が点いたのか、ハカイダーが突然ゼロワンに一対一の勝負を挑み、映像的には荒野の決闘めかしそれとなく盛り上げてくるのですが、基本的にもはやハカイダーがゼロワンと正面からまともに戦える方が不自然になる為、宿命の対決といった空気が一切感じられないのがつくづく残念です。
 貴重なストロングポイントである飛び道具を初撃で蹴り落とされ、格闘戦に持ち込むも蹴り倒されたところでビジンダーが乱入し、もはやヒロインがハカイダーになりかけるが、ゼロワンは一片の慈悲もなくブラストエンド。同時にビジンダーもレーザーを放ち、無惨ハカイダー木っ葉微塵(4話ぶり3回目)になるかと思われたが、爆発の跡には、その残骸は何故か存在しないのであった。
 「しまった、ビジンダーのレーザー光線と、僕のブラストエンドが重なって、ハカイダーを打ちのめすチャンスをなくしてしまった」
 「残念だわ」
 事象変換系の攻撃に、他の条件が介入した為にブラストエンドが正しく発動しなかったようですが、流れからは正直、ビジンダーが故意に妨害してハカイダーを助けたようにしか見えません(笑)
 「ははははははははは! ゼロワンめ! 失敗したな! ははははははは!」
 何故、勝ち誇る。
 ひたすら迷妄クライマックスの悪化していくハカイダーは高笑いしながら逃走し、ゼロワンとビジンダーは握手をかわし、それを目にして嫉妬の炎を燃え上がらせるミサオはもう、何をどうしたいのか。かおるとサブの姉弟は、着物は爆発したけれど互いに思いやる気持ちが通じあって良かったね、とイチローのヒーローパワーによりめでたく大団円を迎え、ナレーションさんは今日もマリを応援する。
 ナレーション「くじけるなマリ、負けるなビジンダー。大きく胸を張り、太陽に向かって進むのだ。――そして、イチローもゆく。果てしなきシャドウとの戦いの道を」
 今、「そして」の所から、明らかにやる気が下がりましたよねナレーションさーーーん!
 今回の遠吠えタイム担当になったザダムがシャドウの底力を主張し、次回――イチロー達はタイムトンネルで江戸時代へ行ってしまう」。
 定番といえば実に定番のアイデアですが、今作だと狂気の匂いしかしなくて不安(笑)