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上原正三先生の事

 さる1月2日、日本の特撮・アニメ界に大いなる足跡を残した上原正三先生が他界されたとの事で、謹んでご冥福をお祈りいたします。
 今ここでこうして文章を打っている事が示す通りに、間接的に人生に物凄い影響を受けたと言える方なので、上原脚本への思いなど書いてみようかと思ったのですが、そこではたと気付くのは、実のところ上原大先生のメインライター作品できちっと完走しているのが『宇宙刑事ギャバン』『ジャッカー電撃隊』ぐらいなものという事で、しかしそんな私でも決して忘れられない名前であるように、ある時代において、あれも上原正三、これも上原正三、という圧倒的生産量を誇り、様々な作品の源流にも関わったその偉大な存在に対して、ただ感謝です。
 今日的な視点で見ると劇作の作法が違う、という事もあり、必ずしも肌に合う脚本家、というわけではないのですが、その時代感覚的なズレも含めたぶっ飛び具合において、他と一線を画す性質と切れ味があり、そこが印象的な方でした。
 「洗脳してもらえば、勉強好きの子になるわ」 (『バトルフィーバーJ』第2話)
 とか、一般市民のちょっとした悪意の中から飛び出してくるのは、大先生脚本ならではだなと(笑)
 で、今まで見た上原正三脚本回の中で一番好きなエピソードはどれだろう……とつらつら考えて辿り着いたのが、ジャッカー電撃隊』第21話「バラ色の野球時代!! クライムの強打者」。
 ただの野球好きを名乗るクライム怪人・デビルバッターは、本当に無害なのか? ひとまず基地へ連れ帰って監視するジャッカーだが、怪人はどう見てもただの善良な野球好き。ただ一人、デビルバッターを「第一級のスパイ」だと主張するジョーカーへの視線も徐々に厳しくなっていくが、真相や如何に?!
 というサスペンスが、哀しいサイボーグ戦士達を主役に据えたハード路線からの変更を余儀なくされ、シリアスとギャグの間を蛇行する作品の経緯とシンクロし、果たしてこれはコメディなのか? それともハードボイルドサスペンスなのか? コミカルな怪人の裏表がギリギリまで読めない、『ジャッカー電撃隊』という作品だからこそ成立したメタトリックの快作。
 『ジャッカー電撃隊』自体は、アベレージも完成度も高い作品とは言いがたいのですが、その紆余曲折そのものを飲み込んだエピソードして、大変印象深い一本です。
 『ジャッカー電撃隊』といえば、第1話における個々人の背景を見せつつのメンバー招集→戦隊成立、の流れは実はシリーズ歴代でもかなりまとまりがよく、この後、80年代に曽田博久を中心により洗練されていく、戦隊圧縮作劇の源流ともいえる妙技を上原正三が見せつけてくれて、これも好きな一本。
 度々ネタにしますが、
 「サイボーグにならんか?」
 は今でも戦隊シリーズ屈指の名台詞にして、熱いシーンだと思っています。
 特撮ばかりでなく、アニメ畑においても、恐らく知らず知らずの内に作品に触れていたと思われ、本当に、沢山の作品を、ありがとうございました!