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SHI・NO・BI ’87

光戦隊マスクマン』感想・第17-18話

◆第17話「破れ!地獄の迷宮」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 朝食はみんな一緒にマスクマン。
 戦隊メンバー一同揃っての食事風景というと、前々作『チェンジマン』では戦士団が周囲にずらりと並び上座に親分を据えての固めの盃、前作『フラッシュマン』では宇宙船の中でわびしい宇宙料理(「フラッシュ星、本当に酷い星だった……」)、だったので、だいぶ清々しくなりました!
 ところが朝刊に載った連続ひったくり犯の似顔絵と情報があまりにもタケルそっくりだった事から、ついつい不審の眼差しを向けてしまう仲間達。
 「みんな……この泥棒、俺だと思ってんのか?!」
 気まずい空気が流れる中、頭に血が上るタケルだが、夜間の外出について触れられると、
 「冗談じゃない! 腹減ったから屋台のラーメン食いに行っただけだ! 俺は泥棒なんかしちゃいない!」
 と弁明し、悪い奴はみんなそう言うんだ(笑) と、なんだか後の<レスキューポリス>シリーズを彷彿とさせる展開に(笑)
 「仲間に疑われて、落ち着いていられるか!」
 怒れるタケルの言い分はもっともであり、普段仲が良いだけに反動の大きさもわかるのですが、なだめるアキラも振り払い、口を歪めて4人に凄むタケルの口調と表情からは、アウトローだったあの頃の気配が濃厚に噴出しており、光戦隊の闇は深い。
 仲違いを深刻に見せすぎない意図もあってか一連のシーンがだいぶコミカルに描かれた後、真犯人を捜そうと街へ飛び出していくタケル。だがそれこそがイガムとフーミンの仕掛けた罠であり、タケルはギーバドグラーの能力により作り出された、地獄の迷宮次元ラビリンスの中に誘い込まれてしまう。
 「タケル、まんまと罠にかかったな」
 むしろ、有能すぎるフーミン変わり身の術を駆使してタケルの社会的抹殺を図った方が光戦隊へのダメージは深刻だったような気はしますが、地上人の官憲の手を借りるなどチューブのプライドが許さないのです!(それはそれで、光コンツェルンの政治力が発動しそうではあり)
 「地底獣ギーバドグラーの異次元ラビリンス、 その恐ろしさをたっぷり味わい苦しみのたうち回れ!」
 「味わえ!」でも「味わって苦しめ!」でもなく、「味わい苦しみのたうち回れ!」なのが憎しみの深さを感じさせ、素晴らしすぎますイガム(笑)
 画面全周をエフェクトでぼかした異次元空間でタケルは次々と攻撃を受け、定例の魔空空間ネタの中で、割と派手な爆発を連発。
 一方、仲間達はタケルのブレスの反応から、タケルを内部に閉じ込めたビルに辿り着くが、異次元ラビリンスはタケル以外の侵入を拒み、地底獣と激突するレッドマスクの姿は、ドアの向こうに消えてしまう。
 「あ、あのドア……」
 愕然と佇む4人だがその時、内側から開くドア!
 何事かと思ったら自分からドアを開けたイガムが4人に宣戦布告してまたドアを閉め、面白い、面白すぎるぞイガム……!
 「いいか、よく聞け。罠にはまったのはタケル一人じゃない。タケルを疑ったお前達4人も罠にはまったんだ。バラバラになったお前達の心が」
 長官に事態を報告した4人は叱責を受け、折に触れ、“チームの意味”を押さえてくれるのは、今作のいいところ。ケンタ達は手を重ね合わせてタケル救出を誓い、前回今回と、1・4にキャラを分けつつ、チームとしてのマスクマンの結束を描いていきます。
 迷宮の中で絶体絶命のタケルは遂に変身が解除され、トドメを刺そうと姿を見せるイガムとフーミン。
 (やられてたまるか……ここでやられたら、俺はなんの為に……)
 イガムの猛攻を辛うじて凌ぐタケルは、数々の特訓と死闘を思い返すと力を振り絞り、身を捨ててこそ死中に活あり南無八幡オーラパワー!
 「俺はレッドマスク! 地球は渡さん!」
 姿長官による闇討ち体験に比べればぬるま湯同然だとばかり、すっかり死地に慣れてきたタケルの瞳に炎が宿ると、甦ったオーラパワーでイガムドラゴンを弾き返し、その波動を感じ取ったケンタ達はラビリンスへ繋がる異次元の扉を発見。オーラマスクした4人が異次元の境目に突入すると内部のタケルのオーラと呼応してラビリンスを打ち破り、5人は合流に成功する。
 「イガム! 異次元ラビリンス、破ったぞ!」
 “若者達の成長物語”としての意識の強さからか割と苦戦傾向のあるマスクマンですが、オーラパワー=「火事場の馬鹿力」に限りなく近い事に加え、今作と親和性の高いスポーツ物になぞらえると、「積み重ねてきた練習(鍛錬)こそが土壇場にミラクルを起こす」という“物語の力”そのものを体現するスーパーパワー(同時に、「積み重ねてきた練習の成果は決してミラクルではない」という理屈も成立させるのがとても厄介)である為、追い詰めれば追い詰めるほど大逆転のエネルギーに変換してしまう、敵に回すと大変面倒な体質。
 野球はツーアウトからだ!
 揃い踏みから今回はボーカル入りの主題歌バトルとなり、赤がオーラを込めたマスキーブレード(射撃)を画面右手から放つと、画面左手から突撃してきた戦闘員3+地底獣が次々と貫かれていく、というのはスピード感と迫力があって格好いい映像。
 「ま、とにかく今回は、全員で反省するしかないわね」
 ギーバドグラーを、ショットボンバー → 巨大化 → ジャイロカッター → ファイナルオーラバーストのコースで打ち破り、仲直りした5人は揃って「反省」ポーズを取り、時事ネタ……? (※猿の次郎の「反省」ポーズかと思ったら、一世を風靡したのは翌1988年らしく、ポーズもそれとは違い、他に何か流行りのネタがあったのか)
 ナレーション「地底帝国との戦いは、ラビリンスなのか。だが、信じ合い、助け合う仲間が居る限り、その迷宮は、必ず、打ち破れるのだ。5人の力を集めて、戦え、光戦隊マスクマン!」
 ナレーションが綺麗にまとめて、つづく。

◆第18話「愛しの吸血人形!」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 モモコとウィンドウショッピング中、骨董店で見た人形に目を奪われるハルカ……それは、幼い日のハルカが大切にしていた、思い出の人形だった。
 忍者装束で西洋人形をあやす少女という回想映像も凄いのですが、忍者の道に人形遊びなど必要ない!と娘の大切な人形を無慈悲に投げ捨てるハルカ父がそれを軽々とぶっちぎっていき、黙々と修羅の道を歩む事になった少女ハルカの姿に、光戦隊の闇は深いが段々冗談にならなくなってきました。
 大事なモノを失って、人は更に強くなるのですね……!
 お値段5万円の人形に手が届かなかったハルカとモモコは、取り置きしてもらった上で男達にカンパを募り、夏らしくセーラー衣装になったアキラ、なんと5000円を供出。ハルカと人形の組み合わせを笑い飛ばしていたタケルとケンタも、仕方ねぇなぁといった様子でお札を取り出しており、君達ホント、いい奴らだな……!(涙)
 失ってきたモノが多いだけに、人の情が身に染みます。
 その頃、街に新たな地底獣&寄生獣が出現し、最近捨て設定になっていた、二体ワンセットを久々に活用。物質に潜む能力を持った寄生獣がハルカが購入予定の人形に身を隠し、バラバとオヨブーはハルカ暗殺を目論むが……
 「この人形……もう少し、笑ってた筈だけど」
 (ば・れ・た?!)
 作戦の推移を見守るべく、骨董品屋に飾ってあった鎧の中で身を潜めていたオヨブーは目を見開き、隠れている場所、焦った表情、まさかの『キカイダー01』に被る、と二重三重に面白かったです(笑)
 ところが、思い出の人形マリーを取り戻したハルカは、それをずっと欲しくてお小遣いを貯めていたが、父の死により北海道に引っ越す事になった少女ユカリと知り合うと、かつての自分の面影をそこに見出し、少女に人形を譲る事に(貯めたお小遣いと交換、という形にしていたのが地味に良かったところ)。
 「なに?! 人形が女の子の手に?!」
 「慌てるなバラバ。ハルカの喉は噛み裂けなくても、心はズタズタに切り裂ける」
 このところ台詞の少なかったゼーバ様ですが、これは格好いい。
 ゼーバの助言により、ハルカを精神的に抹殺する方針に転換したバラバは、人形に身を潜めた寄生獣が午後6時に目覚めた時、人形を抱いた少女は無惨な死を迎えるだろう、と少女の身に迫る危機をハルカとモモコに告げると、追跡を妨害。
 「ハルカ! おまえの身代わりにあの子は死ぬ。せいぜい苦しむがいい。ふっふっふ」
 寄生獣が目覚めるまであと2時間、走るハルカ、追うドグラー、というタイムリミットサスペンスに突入し、少女が札幌行きの飛行機に乗る事を知ったマスクマンは、一路、羽田空港へ。
 「私の、私のせいよ……タケル、私はどうすればいいの?!」
 「探そう、探すしかないんだ」
 「もう無理よ! ……あの子ひとり救う事が出来ないで、死に追い込んだ私に、マスクマンの資格なんてないのよ……」
 「ハルカ! しっかりしろハルカ。最後の最後まで希望を捨てるな!」
 「タケル……」
 「おまえがユカリちゃんを助けなくて、誰が助ける! このまだと、おまえの人形は、哀しい思い出だけの人形で、終わってしまうんだぞ」
 タイムリミットまであと5分、弱気を見せるハルカをタケルが叱咤し、じわじわと成長してきているという事か、戦闘面以外でタケルがリーダーシップを発揮する、今作では珍しいシーン。序盤、キャラ描写(というか造形の方向性)に迷いの見えたタケルが良くも悪くも従来的な正統派リーダーらしい発言をするのは違和感もあるのですが、いきなりの平手打ちにより今作の根底に流れるスポ根文脈を持ち込んだ勢いで突っ切る形に。
 キャプテン……! と顔を上げたハルカは少女を発見すると人形を預かり、オヨブーらの妨害を受けながらも空港から離れて人気のない河川敷まで辿り着くと、やおら手にした人形を……投げたーーー!!
 かつての父親のように、人形を哀しい思い出にしてしまわないようにと少女に譲ったハルカが、かつての父親のように豪快なスローイングを決めるのが見事に重なってしまい、果たしてそれで良かったのでしょうか(笑)
 いや、同じ行動をしても、その意味するところは正反対、という解釈も出来はするのですが、根本的なところで、人形を投げるの、どうかと思う。
 「バラバ! 人の心を踏みにじる卑劣な攻撃、絶対に許さない!」
 マスクマンとバラバ班が激突し、怒りのイエローマスクは影分身からダブル独楽でドグラーをオーラ爆殺。トドメのショットボンバーが放たれ、巨大戦では久々の分裂攻撃が繰り出されるが、さすがに慣れてきたマスクマン、慌てず騒がず射撃で寄生獣を撃破して、ファイナルオーラバーストで勝負を決めるのであった。
 人形は無事に少女の手に戻り、札幌へと飛び立っていく少女を見送る5人。
 「さよなら、ユカリちゃん。さよなら、マリーちゃん」
 「……ハルカ」
 「ふふ、やっぱり私は、人形ってガラじゃないのね?」
 おどけてみせるハルカに対し、一斉に首を縦に振る野郎達(笑)
 「「「うんうんうんうんうんうんうん」」」
 「ちょっと?! やに気があってんじゃないのよ?!」
 「……逃げろー!」
 ナレーション「みんなは知っていた。ハルカの本当の気持ちを。そしてハルカは願った。哀しい思い出の人形を、ユカリが、楽しく、素敵な思い出の人形にしてくれる事を」
 今回もナレーションが綺麗にまとめ、女性陣が野郎共を追いかけ回すドタバタで、つづく。
 どちらかという曽田さんぽいシナリオというか、藤井先生が2本続けてそつなくまとめてきましたが、とにかく冒頭のハルカ回想が強烈でした(笑)
 映像的には空港ロケと、空港に向かうモノレールを追いかけて並走するシーンが、新味もあって面白かったところ。
 この時期、山田稔監督が病気療養中だったそうで、長石監督が1-3話を担当後、長石&東條の二人で2話ずつのローテを繰り返してきたのですが、ここで東條監督が3話持ちし、話数的にもそろそろ次回、メイン監督で新展開? ……とは言い切れない感じの微妙な予告でしたが、アナグマス、本気出す……?