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君の太鼓は100億ボルト

キカイダー01』感想・第29話

◆第29話「赤鬼 青鬼 恐怖の100億V!!」◆ (監督:永野靖忠 脚本:曽田博久)
 ナレーション「なんと巨大なシワの多い脳味噌であろうか」
 脈動する肉塊で表現されたゲスト女優の脳味噌について解説される特撮ヒーロー番組は『01』だけ! ……だと思いたい。
 「雷じゃないわ。もう許せない。誰ですー。神聖な科学実験の邪魔をするのはー!」
 悪魔の槍と魔神の球を触媒に、雷の精霊力を集める事で新たなロボットを生み出そうとするザダムであったが、鳴神カミナリ研究所の実験が儀式の障害となった事からその排除を指令し、ここに、科学vs魔術の宗教戦争が勃発!
 実験装置を破壊して逃走したコマヅカイダーがイチローの目を引きつけている間にザダムは儀式を再開し、100億ボルトの精霊エネルギーを宿した、雷神プラス(赤)と雷神マイナス(青)が誕生。これに気付いて立ち向かうゼロワンだが、雷神兄弟のエレキテルクロスを受けてまさかの爆発炎上し、天空高く吹き飛ばされて一時退避を余儀なくされる完敗を喫してしまう。
 「おまえたちには二つの使命がある」
 気をよくしたビッグシャドウは、雷神兄弟に「電気ショック作戦」と「100億V作戦」の二つの指示を与え、第一に、電気ショックにより人間どもを無気力にする電気ショック作戦!
 「無気力になった人間どもは、やがて、怠け者になるだろう。見よ!」
 ビッグ社長が指し示したスクリーンにはナマケモノ(動物)のイラストが映し出され……え? その「ナマケモノになる」の?!
 ……なにぶん、勢いで豚の惑星計画を実行に移した前科がある組織なので、どんな黒魔術を用いてくるのか、油断なりません。
 そしてもう一つは、ゼロワンを抹殺する100億ボルト作戦!
 「100億V作戦とは、おまえ達の100億Vの力でゼロワンを殺す作戦だ!」
 ……社長、それは、「作戦」ではなく、「願望」なのでは……。
 「しかし、100億Vの力は一度しか使えない。たった一度だ。忘れるな」
 強敵・雷神兄弟に致命的な弱点が発覚していた頃、イチローはミサオらと共に鳴神カミナリ研究所に身を寄せていた。鳴神博士は付近で起きていた雷の異常発生を調査中に死亡し、博士の忘れ形見である天才少年と、博士の助手であり少年の家庭教師である女性科学者がその遺志を継いで研究を続行していたのだが、女性科学者が電気ショック作戦の餌食となってしまう。
 雷神兄弟が標的を挟み込んで精霊魔法を発動すると、標的の動きが停止して頭上に魔法陣もとい雷太鼓が浮かび上がる、というやけに凝った演出で電気ショックが描かれ、雷神兄弟が雷太鼓を叩くバチで「+」と「-」を表現するのも面白く……今作でほぼ始めて、怪人のギミックの見せ方に面白さを感じた気がします。
 勤勉で優秀だが傲慢で視野の狭いところがある女性学者が、電気ショックを受けた事によりソファで寝そべりひたすら飴を舐め続ける人格になってしまう、というのもキャラのギャップが作戦を効果的に印象づけ、「怪人の個性」と「作戦の内容」が同調し、殴り合っている内に超編集が炸裂する事もないまま筋道立てて進んでいくというキカイダー01』らしからぬ内容(笑)
 ……まあ、100億V作戦を実行すると魔力が尽きてしまうので、電気ショック作戦の展開中にキカイダーが現れたらひたすら逃げろ、という運用方法への根本的な疑問はありますが、作戦考えたのがビッグシャドウなので仕方ない。
 次々と街の人達を廃人にしていく雷神兄弟は遂に大規模な儀式魔法を発動し、街の上空に浮かぶ大量の雷太鼓は、インパクトもあり素敵な映像。これを察知したイチローだがアキラと鳴神少年を連れて逃げるのが精一杯で、丸ごと無気力になってしまった街の人々達は、ビッグシャドウの予告通りに木にぶら下がり…………物事の基本は、体力!
 街中の人々がナマケモノのごとく木にぶら下がる姿は集団発狂感溢れるのですが、実際に人間がやってみるとわかった事は、「怠けている」というよりも「体を鍛えている」ように見えるという事実。
 ここまでシャドウ組織にいいようにされていたイチローは、雷神兄弟攻略の秘策を閃くと、赤鬼青鬼、そしておまけのザツヨウダーに立ち向かっていくが、+-金縛り攻撃を受け、100億ボルト電気椅子に座らされてしまう。
 「どうだゼロワン。動けまい。これがおまえの死刑台。カミナリ電気椅子だぁっはっはっはっはっは!」
 直前のバトルでは一方的に殴り倒されていただけなのに、何故か勝ち誇るハカイダー(笑)
 「泣け! 喚け! 貴様の最期だ!」
 「あはははははは! それはどうかな!」
 放たれる100億Vだが、身を潜めていたアキラと鳴神少年が巨大磁石で電気エネルギーを吸い取ってしまい、作戦は失敗。子供がヒーローを助ける、という要素を取り込みつつ、鳴神少年がシャドウを相手に間接的に父の仇を取る、という形になることで劇的な要素を加えており、綺麗にヒーローのターンへと逆転。
 魔力を失い、物理で太鼓を投げつけてくる雷神兄弟の攻撃を跳ね返したゼロワンは、キック・ドライバー・カットそしてブラストエンドのフルコースをお見舞いして雷神兄弟を葬り去り、オツカイダーは逃走。被害者達は入手した電気エネルギーによる治療で脳機能を回復し、街は平和を取り戻すのであった。
 「ビッグシャドウには怒鳴られ、雷は落とされるし、ろくなことはないわ」
 とうとう、遠吠えタイムで自らオチまでつけるようになったハカイダー、ちょっと面白かったけど、それでいいのかハカイダー
 最高幹部どころか最強のライバルの座も転げ落ちている真っ最中のハカイダーですが、今回、博士ポジションに収まるザダム、01を苦しめる雷神兄弟、明後日の方向に運用するビッグシャドウ、と敵キャラの立ち位置を明瞭にしてなるべく余計な出入りを避ける事でそれぞれのキャラを立てている中で、大変ざっくり時間稼ぎぐらいは出来る筈という役割が与えられ余計な事をしなかった結果、話の構成が非常にスッキリする事になっており、一ヶ月ぐらい武者修行の旅に出ても良いのかもしれないハカイダー
 曽田さん参戦の影響なのか、制作状況が改善されつつあるのか、『キカイダー01』らしからぬ比較的まとまりの良いエピソードでした。また、リエコが退場し、ミサオ・アキラ・ヒロシが雑にひとまとめにされた事によりアキラが陽性のキャラに転換されたここ数話、3人が空気を変えるコメディリリーフとしての機能を果たすようになっているのも、じわじわと全体に好影響。
 その為の犠牲として、アキラ兄弟のドラマ性がまるごと消し飛んだので、だいぶ複雑な心境ではありますが。
 次回――登場ビジンダー