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アメコミ駄メンター

『シャザム!』感想(ネタバレあり)

 魔法の力で大人の姿のスーパーヒーローになった少年の活躍を描く、DCヒーロー映画。
 以下、クライマックスまでの内容に触れますのでご留意下さい。
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 ある雪の夜、家族からも疎まれる内気な少年が、不思議な世界に招かれて謎の老人から魔法の力を授けられる夢いっぱいの導入……と見せかけて、強引に拉致って、勝手にテストを始めて、あ、おまえ不合格だわ使えねーとポイ捨てするという東映駄目ンターも真っ青の鬼畜の所業の結果、自動車事故で父親が下半身不随になり家族から罵声を浴びれば、それは復讐鬼も生まれましょう。
 「おまえは駄目だ、と決めつけられる子供の気持ちがわかるか?!」
 ――それから40年余りの月日が流れ、手当たり次第にスカウトしてはポイ捨てを繰り返していた老魔術師は、執念でその王国への侵入方法を突き止めたかつての少年からめでたく復讐を受け、もう瀕死なので妥協しよう、と少年ビリーを自らの後継者に選ぶと、強制的に7つの力を授けるのであった! そして生まれた新たなスーパーヒーロー、その名をシャザム!!
 少年が魔法の力で大人のヒーローに、という明朗なコンセプトながら、悪役のオリジンとなるプロローグの事故や、親に捨てられて里親の元を転々としながら生みの母親を探している主人公の境遇など、かなり重めの要素が投げ込まれるのですが、そこを殊更に陰鬱に描くのではなく、ヒーローとヴィラン双方の心の歪みの源を丁寧に描写しつつも、全体的にはスッキリとした作り。
 新たな里親一家に馴染む気のないビリーが、それでも同じグループホームに住む少年が母親の居ない事を馬鹿にされるのが許せず、いじめっこコンビに立ち向かう、というのもヒーローへのきっかけとして良いタイミングでした。
 ティーンがスーパーパワーを手に入れたら調子に乗って好き放題するよね?! というお約束ともいえるスーパーはしゃぎタイムが少々長く感じましたが、良くも悪くもこういう所を切り詰めないのが現行DC映画の作風でありましょうか。
 その後の友人(同居人)との軋轢の解決が、悪役の登場により流され気味になってしまったのはやや不満でしたが、物語の軸に据えた「家族」という要素をしっかり使い切ってクライマックスへと持ち込み、お約束の続編要素も含めて、爽快で面白かったです。
 ここまで見た、現行DC映画の中では、一番良かった。
 ……で、事前にちょっと吹き替え版の不評について小耳に挟みつつ、基本、吹き替えで見るのと、子安武人の悪役が好演だったので最後まで吹き替えで見たのですが……これは確かに、吹き替えによる印象変化の要素があまりに大きく、字幕で見た方が無難かも。
 基本的に、変身すると、心は子供・体は大人、という難しい役なのですが……吹き替えのシャザム(演:菅田将暉)の声質が若く、〔大人の姿/少年寄りの声・子供の口調〕という扱いになっており、まずこれが違和感。
 今作で出そうとしている面白さを表現するには、〔大人の姿・大人の声/子供の口調〕の方が吹き替えとして適切だったのではと感じたのですが、とはいえまあ、原語でもそういう解釈、という可能性はあるな……と思っていたら、終盤登場したシャザムファミリーが年嵩の長姉を除き、成長した見た目に合わせた声と演技(声優自体の変更含む)になっており、日本語吹き替えによる深刻な解釈違いが発生。
 キャスティングに関してはプロモーション関係の事情もあったりするのでやむを得なかったにしても、“「シャザムの演技プラン」と「シャザムファミリーの演技プラン」が違う”という、合う合わないを超えた作劇の破綻レベルの事態になっていて、これを強行突破してしまったのは、観客に対して極めて不誠実だったと思います。
 どうしてもというならせめて菅田将暉を少年ビリー役にして、シャザムの方は30がらみのいかつい男の声を出しながら少年演技が出来る芸達者な人を起用できなかったものかと思うのですが、それが出来ないのなら、菅田将暉への演技プランにシャザムファミリーの演技プランを合わせる(見た目は大人だが声は子供寄り)のが矛盾がないわけで、そのどちらもしない(上でファミリーにはファン受けしそうなネームバリューのある声優をキャスティングしていたり)というのは、率直に酷い。
 そんな吹き替え版で見ても面白かったので、字幕で見たらより面白かったのではないか、というのは反省。
 ただ個人的に、吹き替えでちょっとしたプラス要素がありまして、ビリーの相棒となるフレディ役が三島、じゃなかった、阪口大助なのですが、演技パターンが完全に三島(『ペルソナ5』)で、スーパーヒーローマニアで、シャザムと一緒に能力実験しながらその動画をネットにガンガンUPし、「スーパーヴィランだ! スーパーヴィラン!」と騒ぐ三島じゃないが三島、というのが『P5』ファンとしては変な面白さでした(笑)
 でもきっと、見るなら字幕がいい。