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この地球を抱きとめる そんなでっかいオーラがほしい

光戦隊マスクマン』感想・第11-12話

◆第11話「地底からの亡命者」◆ (監督:長石多可男 脚本:藤井邦夫)
 筑波遺跡で発見された、地底帝国に関係すると思われる謎の髪飾り――それは行方知れずになっていたイガム母の髪飾りであり、そこにはチューブの秘密が……?!
 密かに警備に派遣されるケンタだが、ロボットガードマンに気を取られている隙に黒装束の女忍者に髪飾りを奪われてしまい、前回はいきなり宇宙人を投入してきた藤井先生ですが、今回は開幕から忍者が大暴れして『チェンジマン』の世界観を縦横無尽にかきみだ……いや、東映ナチュラルに忍者が出てくるのは、ふつー、ふつーの事でしたね、ハイ。
 謎の女忍者・フーミン・ケンタ・ゾーラドグラーが入り乱れる争奪戦の末にケンタは髪飾りを取り戻し、敵(チューブ)の敵は味方理論で女忍者をかばうが、女忍者は忍法花吹雪を放って姿を消してしまう。
 「やはりこの髪飾りは、チューブのものだったのか。奴らが動き出したという事は、この髪飾りに何か重要な秘密が隠されているんだ」
 あ、この人、博物館の関係者を囮にしたぞ。
 手に取った髪飾りから桃色の花びらがはらりと落ち、それを目に留めたモモコが「この花は確か、ゆうもあ村付近に多く見られます」と《植物知識》の技能判定に成功。ご存知の通り、ゆうもあ村といえば戸隠流忍者の勢力圏であり、すっかりプレ『世界忍者戦ジライヤ』(翌年の《メタルヒーロー》シリーズ作品。藤井邦夫も脚本参加)になっています(笑)
 手がかりを求め、ゆうもあ村に送り込まれたケンタは女忍者のカミソリの術で攻撃されるも、敵(チューブ)の敵は味方理論により《説得》の技能判定に成功。女忍者からユウという名前を聞き出すが(なお、ユウ役の小原靖子さんは、「相原優」の芸名で活躍)、髪飾りに隠された秘密をマスクマンが知れば地底帝国の一大危機、と慌てたゼーバの動きが一手早く、ユウの父イジンが地底に囚われの身となってしまう。
 「王家の忍者は、貴様等の鞭などに負けぬぞ!」
 イジンとユウは、かつての地底王家に仕えていたフウ一族の抜け忍であり、イガムの立場など、これまでやや曖昧でしたが、地底には地底の勢力争いがあった事が明確に。ゼーバの秘密が隠された首飾りのロック解除法を知るイジンは、ハゲ将軍らから鞭による拷問を受けるが、そこにイガムが姿を見せる。
 「……久しぶりだなイジン」
 「イガム様!」
 「地底一と言われた忍者も、哀れな姿になったものよ」
 抜け忍・王家の忍者・地底一の忍者、という語句が自然に飛び交っていて、全く予想外の角度からツボに突き刺さってきます『マスクマン』(笑) 忍者は、地上と地底の共通語!
 「イガム様、我らと一緒に、ゼーバを倒し、王家を再興して、王子様の願った、平和な地底を!」
 「……黙れ! そんな事より残り少ない命、惜しむがいい」
 イガムはイジンを振りほどき、とりあえず、ただでさえ色々と難しい立場なのに、背後にハゲ将軍と赤影が立っている状況で、叛乱をそそのかすとかやめてあげて下さい。
 「……イガム様、あなたは、恐ろしい方に変わられてしまった(私の知っている、子供の時のイガム様は……)」
 イジンは幼き日のイガムの事を思い出し……完全に女の子なのですが、イジンの台詞回しからすると「イガム様」と「王子様」は別人の可能性はあり、夭折した兄王子に変わって、双子の姉妹の姉であるイガムが跡継ぎの王子として育てられた、という王家の秘密も有り得そうでしょうか。
 そんな立場で国が崩壊、やむなく一族の生き残りの為に男性を演じ続けながらゼーバの配下として忍従の日々を送っている内に、スパイに身をやつして地上で苦労していると思った妹がいつの間にか現地の男といちゃいちゃしていたら、それは心も歪むというものです。
 凄く、いい感じになってきたぞ、イガム!
 ……とか妄想を広げていたのですが、イジンは「王子様」ではなく「王妃様」と言っていたようで(ヘイスタックさん、ありがとうございます)、そんな歪んだ人生などなかった! でも歪んでいてもいいぞイガム!
 「過ぎた昔の事、とっくに忘れた!」
 吐き捨てるように告げて背を向けるイガムの姿には、それでもイジンの顔を一目見ずには居られなかった複雑な心境が現れており、地底の抗争やイガムの過去を含めて、情報量の多いやり取り。
 第1話において「かくも壮大なる帝国、地底帝国チューブをお築きになられた我らが王」と、ゼーバが地底を統一してチューブを建国した事が仄めかされていましたが、その経緯が補強されると共に、亡国の王子というイガムの立場がスッキリ。また地上では、ユウがゼーバの支配に抵抗して地上に逃れてきた亡命地底人である事をケンタに明かし、地底人と地上人の融和の可能性が示されて、タケルと美緒の関係にも、一筋の光明が射す事に。
 ……タケルと美緒の行く末に関しては、藤井先生がストーリーラインにどこまで関係してくるかの影響の方が大きそうな気はしますが(笑)
 「ケンタ、お願いです。髪飾りの秘密を解き、ゼーバを倒し、地底人と、地上人を仲良くさせて下さい。お願い」
 ハゲ将軍からイジンの命と髪飾りの交換が要求され、長官を説得して呼び出しの場所に赴くマスクマンとユウ。囚われのイジンが地底忍法スイッチONにより自力で脱出を図ったのをきっかけにもつれ込んだ乱戦のさなか、髪飾りに隠されたゼーバの秘密――地底王妃の残したメッセージが公開されかけるが、ゾーラドグラーの攻撃により髪飾りは砕け散り、怒りのイジンは特攻をかけて壮絶な自爆を遂げる。
 辛うじて生き延びたゾーラにショットバスターでトドメを刺し、変形合体抜きでグレートファイブを召喚したマスクマンは、ファイナルオーラバーストでフィニッシュ。
 地底忍法ビデオメッセージにより、ゼーバの秘密を隠した王妃アイテムは他にもある、と父の声を聞いたユウは、地上と地底の平和が実現する日の為に、それを探す旅に出る事を決意するのであった……で、つづく。
 なにぶん藤井脚本なので、いつ死ぬのかいつ死ぬのかとドキドキしていたユウは最後まで生き残り、再登場の可能性も残す形に。思えばケンタが、原宿ナンパ回で片思いの気持ちをゲストヒロインに告げぬまま別離を選んでいる為に、再び女性ゲストと絡んでも恋愛感情を持つわけにいかず、藤井先生的に爆死させるほどの盛り上がりが生まれなかったのかもしれません。
 代わりに父忍者が自爆しましたが、力尽くで脱出→戦場の真っ只中で情報公開を行おうとする→失敗して特攻、という展開はかなり無理矢理で(一応、ゾーラドグラーが妻の仇、という補助線が引かれてはいましたが)、イジンを演じた伴直弥(大介)さんにそれなりの見せ場を、という要請により歪みが生じてしまった感はあり。
 この時点でゼーバの重大な秘密が明かされはしないだろう、というのが案の定の茶番になってしまったのも含め、イガム周りの情報整理は面白かっただけに、それ以外の筋の強引さが惜しまれるエピソードでした。
 次回――ニンジャ! ニンジャ?! ニンジャーーー!! 待望のハルカ回に、今回の次回で物凄くストレートに忍者が投入されてきて心の整理が追いつきませんが、ハルカ、風になれ!

◆第12話「挑戦!忍びの誇り」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 都会の喧噪の中、次々とマンホールの蓋を開けて地上の様子を窺うフーミン……という、地味に手間のかかっていそうな映像から、地上に飛び出すフーミンの姿でスタート。
 (地底忍びフーミンの目はごまかされぬ。地底獣シノビドグラー! そこだぁ!)
 フーミンがビルの壁に隠れ身していたシノビドグラーと戦い始めると、日常生活を送っていた一般市民が次々と巻き込まれて犠牲になっていき、群衆や車輌を多めに取り込む事で臨場感を増した、日常を引き裂く突然の忍者バトル! が面白い映像。
 流れ手裏剣を受けそうになった子供をハルカがかばい、そこに乱入するマスクマン。
 「なんて酷い事を! これはいったいなんの騒ぎなの?!」
 「地底獣シノビドグラーを倒せば、スーパーシノビになれるのさ」
 「なんですって?! スーパーシノビ?」
 「そうはいかん! スーパーシノビになるのは俺だ」
 オヨブーも参戦して立て続けに「スーパーシノビ」という単語が繰り出され、大変頭のおかしい事に(笑)
 マスクマンそっちのけの忍者バトルに、地上忍者のイエローマスクも参戦するが、シノビームによってビルから叩き出されてしまい、本部で傷の手当てを受ける。
 「みんな、聞いて。私は、代々忍者の家に生まれ、子供の頃から、忍びとして育てられたの。忍びは、人知れず修行し、人知れず戦うものと教わったわ。…………それなのにフーミン達は、大っぴらに技を競い合い、沢山の人達を戦いに巻き込んでいる」
 なんか、怒るところのピントがズレている!
 “忍び”とは。見えない悪を、倒して平和に変えること、と明確になったハルカの出自は、周囲のリアクションも非常に薄い代々続く忍者の家系が当たり前の世界観でしたが、前回の地底抜け忍騒動を踏まえると、亡命地底忍者を先祖にした地上忍者一族とか、逆に、亡命地上忍者を先祖にした地底忍者一族とか、地上と地底は古来よりニンジャカルチャーで混血していそう。
 ニンジャバトルをこのまま放置していては、「もっともっと沢山の人達が傷ついてしまう」と良識と正義感も見せたハルカは、負傷をおして出撃を嘆願。
 「それに、スーパーシノビの秘密も暴かなくては」
 「俺達に任せろ」
 「いいえ。それが出来るのは私だけよ。本当の忍びがどんなのものか、見せてやるの!」
 包帯を外したハルカは煙玉で逃走し、長らく先送りにされていたハルカ回ですが、結果として序盤の内に勢いで放り込まず、1クール目の終わりになってからさも当たり前のように語られる事で全体の破壊力が増しており、演出と脚本のテンションの高さが面白すぎて目眩がしてきます(笑)
 本気モード(黒装束)を発動したハルカは、シノビドグラーと戦闘中のフーミンに背後から忍び寄って気絶させると、すり替わってシノビドグラーを誘導。ダンプに仕掛けた罠でドグラーを拘束すると、そのまま走り出し、もしかしてこのままダンプを崖から落とすのか?! とイチロー兄さんも真っ青なニンジャトラップの可能性にドキドキしましたが、機を窺っていたオヨブーの攻撃を受け、運転席から転がり落ちるとダンプは停車。
 だがそれもニンジャトラップの一環であり、フーミンを激励しに現れたイガムから、シノビドグラーの体内に封じられたシノビボールを手に入れる事でスーパーシノビになれる、という情報を入手。その間にオヨブーは普通にシノビドグラーにやられそうになっており、基本的に凄く強いぞシノビドグラー。
 地底忍法・テレポート失敗の術によりオヨブーを仕留めたシノビドグラーがハルカに襲いかかるが、ハルカはオーラ忍法・空蝉爆弾の術でそれを回避。
 「シノビドグラー! 本当の忍びの戦いを見せてあげるわ!」
 光戦隊そっちのけで啖呵を切ったハルカは(多分イガムが嫌がらせで置いていった)戦闘員を次々と打ち破り……言ってはいけない系の発言ですが、この人に、オーラパワーは、必要なのか(笑)
 シノビドグラーとアングラ兵の飛び道具を回避したハルカは、オーラマスクからのロープアクションを決めるとマスキーローターを放ち、紐で拘束してからの火薬攻撃により、爆・殺!
 恐らく、晴らせぬ恨みを晴らすお仕事をしていた先祖の居るイエローは、更に、秘術・影分身を発動し、なんと9人のイエローマスクが投入されるという、大盤振る舞い。
 タケル回を優先してキャラ回が遅くなった分を補う意識があったのか、忍者アクションに興が乗りすぎたのかはわかりませんが、テンションの高い忍者バトルが連続してマスクマンのアクションパートをほぼ一人で担当してしまい、遅いスポットを挽回してお釣りが出るレベルの大活躍。
 分身攻撃でシノビドグラーを弱らせたところに、ハルカを心配して追ってきたら、そのハルカの運転する大型ダンプに轢き殺されかけた4人が合流するが、その時のハルカはフーミンに変装していたので、真相は闇の中なのであった。
 5人揃ってショットボンバーが炸裂し、弾け飛んだシノビドグラーの体内から宙に舞ったシノビボールは、ハルカの身代わりの術によってシノビームを受け、軽く三途の川を覗いてきたフーミンに奪われてしまう……かと思いきや、シノビドグラーの術にやられたフリをしていたオヨブーが更にそれを掠め取り、怪人ポジションにやられたまま終わらない両者の忍びらしさも最後まで面白く、崖の中から突き出す二本の腕、という不気味な末路の姿を強調しておいて、いつの間にかそれが二本の木に変わっている、という演出もノリノリ。
 「オヨブー!」
 「最後は俺が笑うと言った筈だぜ」
 こんなに格好いいのに、どうして名前がオヨブーなのかオヨブー。
 「ひ、卑劣な真似を……!」
 「俺を甘く見るなよ。卑劣に徹してこそ忍びよ」
 ところが、更にそのオヨブーの手からもボールは奪い取られ、なんと地底のアナグマの元へ。
 「ひひひひひひ、遂に手に入れたぞ、シノビボール」
 「なんだと?!」
 「この杖と球が揃った時、このアナグマスこそがスーパーパワーを授かり、地上征服も思いのまま、スーパーアナグマスとなるのじゃ」
 「スーパーアナグマス、我らを騙したな!」
 「はっははは、伊達に300年も生きておらんわい。おまえらまだまだ、若いのう」
 忍者バトルに興奮していたら、全く予想外の展開に(笑)
 地上ではオケラパワーでシノビドグラーが巨大化し、地底ではアナグマがスーパー化しようと儀式を執り行うが……ボールが爆発して失敗。シノビドグラーは超電子ライザーで両断され、アナグマは爆発の衝撃で床にひっくり返り、ここでいきなりアナグマがスーパー化、というのはそれはそれで見たかったので2話続けての肩すかしでしたが、事前にイガムからボールの情報を手に入れていた筈のイエローが何も手を打たずにみすみす奪われてしまう流れには違和感があったので、既にイエローがボールを爆弾とすり替えており、出し抜き合戦に最終的な勝利を収めるのは納得のいく忍者バトルの結末で、卑劣に徹してこそ忍びよ!
 肝心のシノビボールは、太陽の光を浴びると砂になって消滅してしまい、一朝一夕にスーパーパワーを手に入れるのではなく、修行を重ねて真理に近づけば空も飛べる筈なのだ、でオチ。チーム物としては、あまりにもイエローの活躍に焦点が集中しすぎていたので、最後に5人でほのぼのシーンが入る、のはバランスとして良かったです。
 ナレーション「地底と、地上の忍び達との、熱く長い一日は終わった。本当の忍びの意地と誇りを示す事ができて、ハルカは満足であった」
 徹頭徹尾、疾走するニンジャロジックで進行し、忍者最強すぎてオーラパワーが吹き飛び気味でしたが、忍者好きとしては大変満足させていただきました(笑) ここまでストレートな忍者エピソードをやってしまうと、今後のハルカ回では忍者要素から少し離れそうですが、今後もナチュラルに手裏剣を投げ続けてくれる事に期待です。そして、スーパーアナグマス誕生の日はいつか来るのか?!