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人魚は涙を流さない

キカイダー01』感想・第28話

◆第28話「狂った街 恐怖の人魚姫大逆襲」◆ (監督:今村農夫也 脚本:曽田博久)
 地球は止まっている、トンボの標本を指してこれは蝶、などと主張し始める進学塾の教師……その正体はシャドウマン! の顔に狂ったサブタイトルがかかる、不気味な導入。
 家では両親の様子がおかしくなり、街ではトラックの運転手が暴走し、警官が子供達に銃を向けるが、そこに通りすがるイチロー兄さん。
 「さあ、俺の透視光線を受けてみろ!」
 新技を発動すると、ロボットの正体が曝された警官は慌てて逃げ出し、街の大人達がいつの間にかロボットにすり替わっていたのだ! というのを子供視点のスリラーとして描く方向もあったかと思うのですが、カメラがシャドウ基地に切り替わると、そこではハカイダーが、亡きシャドウナイトの分まで、作戦にケチをつけて社長に噛みついていた。
 「シャドウの新兵器は馬鹿ではないわ!」
 「えーい、なんだと? その言葉、俺に対する面当てか。誰だ。誰なんだ。言え!」
 頭脳回路の調子について内心気にしていたらしいハカイダーが社長に突っかかり、毎回のように混迷しているハカイダーの忠誠度100設定ですが、シャドウの主張する科学=概ね呪術だとすると、月の満ち欠けなどの影響で、忠誠の呪いの効果に差が出るのかもしれません。
 社長命令によりザダムは作戦を担当しているロボットを紹介し、幕が上がると基地の中に巨大な真珠貝、という狂った絵面に思わず後ずされるハカイダー(笑) そして、貝の中から現れたのはヴィーナスならぬ謎の美女・人魚姫。
 「酷い……これは酷い……! なんという不美人だ。ブスもブス、世界最低のドブスだ! いかん! 心臓回路が、ショートしそうだ……これは、いかん……」
 その姿を見たハカイダーは動悸が激しくなって倒れそうになり、「「ロボットには全てのものが反対に見える」」という衝撃の事実が明らかになるのですが、まあここで言う「ロボット」は、「(シャドウ製の)ロボット」という認識が無難なように思えます(笑)
 人間の世界では大変な美人である人魚姫は、貝殻を閉じると醜悪な人魚ロボットへと変身し、思わずかぶりつきで見とれるハカイダー
 「おお美しい……なんと美しいのだ。つぶらな瞳……愛らしい口元……優雅な鼻……心臓がドキドキする。俺は恋をしたのだろうか。いかん! いかん! ハカイダーたるものが、こんな事ではいかん!」
 大丈夫大丈夫、今作始まってから、大体ずっと、そんな感じだから……。
 俺はストイックでハードボイルドで、口笛の似合うライバル属性の男、と自分に言い聞かせるハカイダーだが、人魚ロボの魅力に抗えず、仕事を手伝うように命令されると色々と言い訳しながら同行する事を選び、ゼロワンと激突。
 「今日の俺は燃えているんだ。死ねゼロワン。今日こそ、冥土へ送ってやる」
 せん妄状態の悪化しているハカイダーは愛の力でイチローに襲いかかるが、戦闘力の方は一朝一夕では強化されず、人魚ロボットが介入。人魚スピンビームと自称されているが光線技というよりは音波もしく振動技むしろ魔法、により目を潰されたゼロワンとハカイダーは両者戦闘不能となり、ここでザダムが出馬すればゼロワンを葬り去れた可能性もあったと思うのですが、今回のシャドウ上層部は全員、恋の魔法に脳をやられているのでみすみすスルー。
 この後、錯乱状態でアキラくんの首を絞めたりもしたイチローが自己修復を試みるも失敗し、チェンジしてみるも両目から白煙を噴き上げてのたうち回った挙げ句に変身解除、というのがなかなか凄いシーン。
 現在、ジローの体内コンピュータから、イチローの危機を知らせるLINEメールがびゅんびゅん飛んでいます。
 「人魚の踊りに目がくらんだってなんだよ兄さん?!」
 ジローがサイドマシーンを繰り出すかやや悩んでいる頃、街では次々とコピーロボットが生産されていき、視覚も戻らず変身も出来ぬイチローはしかし、アキラ達の危機にやたらヒロイックな新曲で駆け付ける。
 「ゼロワン、参上!」
 再び放たれる人魚スピンビームという名の恋の魔法だが、チェンジゼロワンしたイチローはそのエネルギーを逆に利用し、「恋って魔法みたいなものでしょ。好きな人の事を想うと、それまで不可能だった事でも出来ちゃったり」して視覚を回復。
 だがその前に、恋の魔法にかかったもう一人のロボットが不可能を可能にする為に立ちはだかる。
 「風の如く現れる、ゼロワン殺しの切り札、その名は無敵のハカイダー。人魚姫よ! 俺の強さを見ていてくれ」
 そうだ、俺に足りないのは、ここぞという時の決め台詞だ、と自己評価の混迷も極まったキャッチコピーでテンション上げながら迫るハカイダーは、怒濤の空中クライマックスコンボに持ち込むが、ゼロワンカットであっさり破られると、物凄い勢いをつけて顔面から思い切り地面に叩きつけられ、恋の魔法も一瞬で醒めるいつものハカイダーでした。
 人魚姫は、頼りにならない男の代わりに自らロボット形態に変身し、その美しさにゼロワンが戦闘を躊躇したらどうしようかと思ったのですが、ゼロワンドライバーからのチョップで鼻を削ぎ落とし、さすがゼロワン鬼畜。
 「黙れ、化け物!」
 「度重なる、侮辱……許せない! おまえを倒す為に、もう恥も外聞もない。女の全てを懸けた、人魚ボイン爆弾を受けてみよ! 死ねゼロワン!」
 胸の巻き貝を外して投げつける人魚だが、ゼロワンは軽々と「ゼロワンキャッチ!」(どうやらこれも、発動する事で飛び道具を無効化する、事象変換系の技の模様)すると投げ捨て、もう一つも蹴り落としてから、必殺のブラストエンド。
 人魚ロボットは、誰にも最期を見られたくないと貝の中に潜り込み、ゼロワンを呪い続けると言い残して大爆死。かくしてシャドウのロボットシティ計画は水泡に帰し、イチロー達は船上の人となって南紀勝浦を離れるのであった……。
 「人魚姫よ……死ぬ時は一緒と思っていたのに、おまえは先に死んでしまった。必ず、この仇を取ってやるぞ。ゼロワンを殺さぬ限り、おまえの魂も地獄で安らかに眠れまい。必ず、必ずゼロワンを殺してやる」
 既にこの時代に存在していた東映名物・勝手にお墓(まあ今回はロボットですが……)に誓うハカイダーですが、基本いつもの遠吠えと変わらないので、これといって情感が増したりはしないのでありました。
 リエコ爆殺を契機に、良くも悪くも長坂脚本が疾走感を取り戻しつつあるここ数話ですが、この後、80年代戦隊の中核を担う事になる曽田先生が参戦。
 ハカイダーの脳の状態がまた一段と悪化しましたが、忠誠度100設定の混乱といい、唐突に思い出される設計図の件といい、単純に設定関係の伝達が上手く行っていないのか、フォローを入れようとして傷口を広げてしまったのか、『01』サブライター回にまま見られる混乱がどうにも気になり(監督などは把握している筈なのですが……)、せめてこの辺り、脚本家の間で文芸関係(劇中ギミックの取り扱いの変化状況)が共有されてくれれば……と、つくづく思うところです。脚本オーダー時点では間違っていなかったのに、それから数話の内に全然違う状況になっていた、という可能性も今作だとありそうですが。