『光戦隊マスクマン』感想・第10話
◆第10話「イガムVSタケル」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
イアルの眠る氷塊に足をかけたハゲ将軍が、裏切り行為についてイガムを散々に罵るシーンから始まり、ちょっとした休憩所(喫煙コーナー)みたいになっているな、イアル姫の間。
割と唐突な導入なので、イガムがイアル氷を見つめながら物思いにふけっていたら、後からやってきた将軍が「何ひたっちゃってんのイガムくーん」と厭味を言いに来たのだろうかなどと想像されますが、氷漬けのイアルの上に足を乗せているというのが、性格の悪さが出ていてポイント高い。
プライドを傷付けられたイガムは激昂のあまりハゲ将軍の顔面を殴り飛ばすが、その一撃に全く応えてない様子で平然と視線を向け直す将軍が、武闘派幹部として思わぬ形で株価上昇。
アナグマが「殿中でござる」と割って入るも怒りの収まらないイガムは、レッドマスクと決着を付ける、と宣言。
「我がイガム家に伝わる、必殺の技、デスリングがあります」
フーミンの制止を振り切り、地上へ出撃したイガムはレッドマスクに一対一の勝負を呼びかけ、それに応えたタケルとまずは戦闘機による空中戦で一当たり。パイロットとしての技量は赤に軍配が上がり、あわや顔も合わせず墜落死しかけるイガムだが、なんとか生き延びるとレッドマスクと激突する。
「貴様を義弟と認める気はない!」と未来のお義兄さんの怒濤の攻撃を受けて変身解除に追い込まれる赤だが、必死の反撃を浴びせると精神的に余裕のないイガムはデスリングを発動し……それは、いわゆるひとつの、金網電流デスマッチだった。
「一度入ったからには、二度と出られぬ、死のバリアだ」
王子、明らかに余計なエネルギーを消費しているのですが、王子。
戦いを観戦するチューブではハゲ将軍の求めに応じて帝王ゼーバがバギルドグラーを解凍し、かたや光戦隊本部では、正義の味方が決闘の申し出を無視して袋だたきにするわけにはいかないと、仲間達が固唾を呑んでこの戦いを見つめていた。
「タケルは負けない」
「どうして言い切れるんですか」
タケルの危機にいてもたってもいられない4人を押しとどめる姿長官は、日本全国スカウトの旅において、タケルを見出した夜の事を思い出す。
(タケルは決して負けない)
一人で納得して頷いているのですが、メンバーに全く、伝わっていないぞ(笑)
光戦隊におけるケンタ等から姿長官への心証が音を立ててぎゅんぎゅん降下していく中、デスリングでの死闘は続き、流血表現ありでボロボロになりながら立ち上がるタケルもまた、その夜の事を思い出していた。
(俺は負けない……俺はあの、壮絶な戦いを、戦い抜いたんだ。――1年前、赤ん坊を助けた後の事だった。俺は、謎の男につけられている事に気付いた)
夜の街で、いきなり背後から飛び蹴りを決めてくる、謎の男(笑)
この時点で正体は丸わかりなわけですが、いきなり物凄い角度から、ザ・80年代な狂気が叩きつけられて、ワクワクが止まりません。
それまで敗北を知らず怖いもの知らずだったと独白する当時22歳のタケルは、謎の男に滅多打ちにされ、冷酷な殺意への恐怖のあまり逃走するも、執拗な追跡を受ける。
(その男から逃げられないと覚った時、俺は戦い抜くしかないと覚悟した。想像を絶する戦いは、いつ果てるともなく続いた)
この夜を生き延びる為、大都会の片隅での死闘は深夜にまで及び、何度も崩れ落ちるタケルだが、迫り来る死の恐怖を振り払って放った起死回生の飛び蹴りが男のサングラスを砕く――
(それが、姿長官だった)
それきり気を失ったタケルが目を覚ましたのは、光戦隊本部。
「君のような男を捜していた」
「え?」
「この俺と、あそこまで戦い抜いた男は居ない。地底帝国チューブと戦うにふさわしい戦士、君こそ、レッドマスクとなる男だ」
姿はタケルに向けてわかりあった感満載の満足げな笑みを浮かべ、夜の街で候補者を探して背後から闇討ち・暴力と死の恐怖で徹底的に追い詰める・相手の精根尽き果てるまで戦って資質を確認すると拉致・密室における混乱状況で契約書へのサインを迫ると地獄の悪魔も裸足で逃げ出すコンボを決め、デンジ犬アイシー先輩も感嘆する、非常に濃度の高いキチガイっぷりを見せつける。
……わたくし、以前の感想で、姿長官が美緒の首飾りをタケルに返却した事に関連して、「某小田切長官よりは、だいぶいい人だな……。」と述べたのですが、謹んでお詫びと共に訂正させていただきます。
ばっちり似た者同士でしたよ!!
(負けるものか……俺は、姿長官と、あの想像を絶した戦いを、戦い抜いたんだ。負けるものか……!)
凄絶な戦いの中でタケルは屈する事なく立ち上がり続け、スポ根物の文脈とヒーローバトルを重ねた結果、悪のライバルとの決闘(エリート校のライバルとの決勝戦)というリアル死線において、思い返して奮起するのが上官から向けられた殺意(鬼コーチとの特訓)という、とんでもない化合物が誕生(笑)
姿長官、まず間違いなく、若い頃は社会悪を闇で抹殺するお仕事とかしていた。
王子のドラゴンブローを受けて満身創痍のタケルは、心頭滅却すれば火事場の馬鹿力で浮かぶ瀬もあり剣禅一如と、ノーガード瞑想からオーラを放って対抗するが、そこへ乱入してきたバギルドグラーの攻撃により、外部から破壊されるデスリング。
ゼーバとハゲ将軍は、最初からイガム一人でレッドマスクを始末できるとは考えていなかったのだ……と序盤からの生暖かい眼差しがチューブの卑劣な作戦に繋がるのですが、ハゲ将軍が言うほどイガムの戦績が悪い印象が無いので(ハゲ将軍も同じ程度に悪いですし)、話の都合で劇中の積み重ね以上にイガムが軽んじられているようになってしまったのは、残念だった部分。
この辺りが没落貴族の哀しさでもあるのでしょうが、シチュエーション的にはもう10話ぐらい後の方がピタッとはまっただろうなと思いつつ、早い段階での決闘が今後の展開に活きてくるのを期待したいです。
弱ったタケルの抹殺を目論むチューブだが、手出しをしない理由が無くなった四人が駆け付け、一同揃うマスクマン。
「チューブめ! マスクマンの戦いぶりをみせてやるぞ!」
タケルが改めてオーラマスクし、1.5倍速ぐらいにアレンジされたOPインストがバトルBGMとして格好良く、レッドが前回修得したオーラ飛び道具、マスキーブレード(射撃)でバギルドグラーを貫くと、ショットボンバーでフィニッシュ。
巨大戦では槍を振り回すバギルだが、ジャイアントスイングによる叩き付けからグレートガンで弱らせ、ファイナルオーラバーストで両断し、序盤は苦戦の目立ったグレートファイブも、徐々に余裕の立ち回りを見せるようになるのであった。
傷だらけながら本部へと帰還したタケルは、長官とハードボイルドに目と目でわかりあい、長官の態度が冷たい、と一斉に不満を口にする仲間達(ホントいい人達……)をたしなめる。
「おい、みんな。俺と長官には、言葉なんていらないんだよ」
「「「「え?」」」」
なんか本当に、アウトローの魂が響き合う「サイボーグにならんか?」案件に突入しているのですが、いったいぜんたい、どんな殺伐とした世界を拳一つで生き抜いてきたんだタケル!(笑) 1年前のモノローグも、常勝のスポーツマンというより、ストリートで鳴らした喧嘩屋風であり、踏み切りに取り残された赤ん坊を助ける(だいぶ無理矢理なシチュエーションであり、そもそも最初から全ては、姿長官の仕掛けた罠だったのではないか……)事でヒーロー性と正義感を示してはいるものの、スカウトメンバーの背景に底知れぬ暗がりが覗く、光戦隊の闇は深い。
……ちょうど前回の感想で、タケルのキャラクターが落ち着かない問題点について触れましたが、姿長官との出会いが語られた事により、全く予想外の方向にキャラが立ちました(笑) 裏社会の喧嘩屋だったタケルが、殺伐とした人生に舞い降りた初めての彼女に入れ込んだ末のバカップルそして敵前逃亡、だったのかと思うと色々と納得できるものがあり、いいかいノリオくん、ゴッドハンドよりも、飛び道具の方がだいたい早く片付くんだ。
「マスキーブレード(射撃)!」
タケルが一皮剥けてくれたのは、今後に向けて大変ありがたいです。
次回――大変ナチュラルに忍者が盛られているのですが、映像の限りではハルカ回ではなさそうで、そろそろハルカさんが何者かに触れていただかないと、気になって仕方が無いのですが。