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『ゼロワン』再起動

仮面ライダーゼロワン』感想・第10-11話

◆第10話「オレは俳優、大和田伸也」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:筧昌也


 前回の三つの出来事!(CV:中田譲治
 一つ、滅亡迅雷ネットが人類に宣戦布告する!
 二つ、その襲撃で重傷を負った不破諌は緊急手術により、半人半機のサイボーグデカ、特捜超人イサムダーとして再生する!
 そして三つ、株価大暴落で会社更正法適用寸前の崖っぷちに陥った或人は、アパートの地下に隠されていた祖父の作った秘密兵器、超プログライズロボ・ゼロンカイザーを発見し、滅亡迅雷ネットを撃破する!
 ……気がつくと、かれこれ約一ヶ月ぶりになってしまっていたので、とりあえず、嘘あらすじでエンジンを暖めてみました!
 ゼロンカイザーの電気代で経営が火の車に、じゃなかった、医療用ヒューマギア大暴走で大幅に悪化した会社のイメージ回復に焦る飛電は、本場ハリウッドで演技をラーニングした俳優ヒューマギア主演ドラマの制作を発表し、共演する大物俳優として大和田伸也役で大和田伸也が出演するという、どの辺りを狙っているのか割と謎のボール(東映特撮的には、格さん俳優を揃えた劇場版『シンケンジャー』でゲスト悪役のCV担当はあり)が投じられるのはともかく、とりあえず、凶悪テロリスト集団が間近に迫っているのなら、普通に撮影中断した方が良いのではないか。
 この辺りの緩さが、順調に地雷として成長中で、いつか、特大の花火になって地盤が崩壊しないかは、引き続き心配です。
 ZAIAエンタープライズジャパン(外資系企業なのか……?)の名前と、唯阿との怪しげな繋がりが明確になり、盗撮映像をイズに見せられて困惑するバルカンの横を駆け抜けながら変身するバルキリーと、その背を見つめるバルカンの構図や、そんな不破らの心情や本編の展開に、劇中劇の台詞を絡めつつ、随所にコミカルな間合いを散りばめる仕掛けは、面白かったですが。
 (刃……)
 「義理とか人情で、人の裏なんて、見抜けない」
 ところで毎度毎度、唯阿さんのキーくるくるが不破(筋力でこじあける)との差別化として鮮やかなのですが、くるくるCGを用意しているのか、指にはめて自動で回転用キーでもあるのか、なんにせよ、映像的な違和感がなくて、地味に好きなところ。
 蜂の子ミサイルに追い立てられ、同行していた筈の暗殺ちゃんを見失ったゼツメファルコンは撤収し、不破からの問いかけに撮影事実を認めた唯阿は、「飛電を陥れる事」が自分の任務だと口にする。
 一方、共演の俳優ヒューマギアに不満を持つ大和田伸也に、任務そっちのけで独自行動を取る暗殺ちゃんが近付く。
 「私は、強く、なりたい」
 大和田をドラマで演じた凄腕の暗殺者だと思い込んで指南を求める暗殺ちゃんと、そんな暗殺ちゃんを俳優志望の若者だと思って演技を見る大和田の接触は面白く、これまで、コミカル要素の飛び道具としてやや浮き気味だった暗殺ちゃんですが、その未成熟な(リセット後の迅の基調にもなっている)「子供」っぽさと、ヒューマギアの「成長」要素が巧く噛み合い、そこに役者さんの引き出しを活かして表情や仕草のバリエーションも拡大する事で、一気にキャラクター化。
 またそれが、ヒューマギアがただのロボットを超えていく姿と重なっているのが巧妙で、殺ちゃんというキャラの存在そのものが「化けた」のは、お見事。
 アドリブにパニックを起こす俳優ギアに見切りをつけた大和田は撮影途中で現場を離れてしまい、その言葉に俳優ギアを排除しようとする暗殺ちゃん。元々、俳優ギアのシンギュラリティ狙いだった迅が現れて警護についていたバルキリーとの戦闘になり、今回はバルキリーの出番が多め。
 アルトも参戦して開始20分でようやくゼロワンが変身する、というのは割と大胆な作劇に思えますが、主役は主役としてゼロワン一辺倒にせず、また単に横並びにするばかりではない各ライダーの見せ方の配分に気配りが見えるのは、今作の好きなところ。
 ラーニングにより進化を続けるドードーマギアに苦戦するバルキリーは、いいところなく変身解除に追い込まれてしまうが、唯阿の行動に疑念を感じていた筈の不破が、そこに駆け付ける。
 「なぜ助けた?!」
 「おまえは何故あの病院で俺を助けた?!」
 「馬鹿と道具は使いよ」
 「…………助けたいと思ったからだ」
 「俺もだ。俺は俺の信じるものの為に戦っている! おまえもそうなんだろ?」
 「…………ああ」
 「だったらそれでいい」
 迫り来るドードーに撃ち込んだバレットを、顔面を殴りつけると同時に掴んでショットライズする変身は大変格好良く、「変身」の瞬間の劇的さにはこだわりを見せている今作ですが、アルト(ゼロワン)の変身がオーソドックスなタメをつけた静→動の変身なのに対して、感情の爆発をそのまま変身の動きに繋げられる動→動の変身として、方向性の違う見せ方が出来るのも、良いところ。
 ドードーが暴走させたヒューマギアに対して、ショットガンを零距離で土手っ腹に撃ち込み、背後の暴走ギアとまとめて倒す射撃アクションも格好良かったです。
 「自分を信じている……」
 唯阿は多勢に無勢のバルカンに向けてハリネズミキーをパスし、まさかのインターセプトされかけるもバルカンが取り返し、「投げる」アクションの一ひねりも、妙なこだわりが窺える今作(笑) 某メダルトスの達人への、厚い敬意も感じます。
 バルカンは、ハリネズミを装填してフォームチェンジしたガトリング鞄で暴走ギアを全滅させると、ガトリングカバンバスターでドードーを撃破し、それを見たゼツメファルコンはドードーキーを回収して逃走。
 「これで、おあいこだな」
 「……不破」
 「あ?」
 「……私はいつかおまえを裏切るかもしれない。……私と戦う日が来たら――」
 「その時は……俺が勝つ」
 アルト・不破・唯阿、三者がそれぞれの信念に基づいて行動するからこそ、そう簡単には同じ船には乗らない気配を窺わせつつ、前回、寝たきりだった不破さんがいい男ぶりを見せてくれる、というのは満足度が高かったです。
 不破と唯阿に焦点を当てた分、アルト(ゼロワン)は完全にコメディリリーフ扱いになっていましたが、ここで無理に活躍をねじこまず、ばっさりアルトを脇に回す判断が出来るというのは、今作の強みになってほしいところ。年末に向けた玩具の販売スケジュールがあるでしょうから偶然のタイミングかもしれませんが、新ガジェットもガトリングカバンに限り、スペシャルゲスト出演の前後編にする事で、筧脚本に無理をさせなかったのも、良い差配となりました。
 かくして、事態はひとまず収拾されたかに思われたが……大和田伸也が降板を申し出て、飛電インテリジェンスの、某Mさんみたいに劇場版で株価のV字回復や計画は大ピンチ。
 「飛電のドラマプロジェクトは難航中です」
 「いや、継続する筈だ。飛電インテリジェンス崩壊という、面白いドラマがね。これは、私のシナリオ通り。100%……いや、1000%」
 唯阿から報告を受けて、ZAIAのチェスの人が遂に顔を見せ、なんか、盛ってくる系の人なのか(笑)

◆第11話「カメラを止めるな、アイツを止めろ!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:筧昌也
 「芝居ってのはねこう、人間と人間のぶつかり合いなんだ。所詮ヒューマギアは、機械だろ。それらしい演技を、小手先でされてもそれは、芝居じゃない。芝居ってのは、人間の、厚みが出るもんだ」
 「……確かに、ヒューマギアは機械です。ただ、接する人によって変わっていきます」
 「どういう事だ?」
 「心を込めて向き合えば、ヒューマギアは、それに応えてくれます。ですが、いい加減に扱うと、いい関係は作れません。それって、人と人のぶつかり合いと、一緒じゃないですか。勿論、会社のイメージも大事です。ですが、僕はそれ以上に、皆さんにヒューマギアの可能性を、知って欲しいと思ってます」
 俳優・大和田伸也の言葉に対して、アルトが同じ土俵に上がってしまって説得を行おうとするとまさに薄っぺらくなってしまう危険性があったのですが、ヒューマギアの俳優としての厚みの無さは認めた上で、しかしそれに、接する人間が厚みを与える事が出来る(さりげなく、だからこそ厚みのある相手役が必要であると示しているのは、話術なのか無意識なのか)、人とヒューマギアは“共に生きていくもの”として支え成長していける関係である、というアルトの信念にスライドし、そこに普遍的な“人と道具の関係性”を想起させる要素も仕込んで、道具を育てるのは、それと向き合おうとする人間の意志、という形にまとめたのは、ここまでの物語の流れも汲んで巧く収まりました。
 そして、「ヒューマギアに救われた」というアルトの言葉に表情を変える大和田だが、控え室の俳優ギアに滅が忍び寄り、俳優ギアが二本角のサイのようなマギアにゼツメライズ。
 「聖戦は続いている。滅亡迅雷ネットの、意志のままに」
 青い鎧武者風のボディデザインがなかなか格好いいサイは、バルキリーホーネットによって撃破され、それを見届けたポイズンは撤収。唯阿は回収したキーをチェスの人に届け、二本指で挟むようにしてキーを受け取るチェスの人が、大変、嫌な感じです(笑)
 「よく取ってきてくれた。お疲れ様」
 「……一つ質問です。ゼツメライズキーが使われると、何故おわかりだったんでしょう」
 「このシナリオ、もっと劇的にしてみよう」
 飛電では、俳優ギアの大破とドラマ撮影中止の危機に落胆するアルトの元を大和田が訪れ、かつて「芝居に救われた」者として、「ヒューマギアに救われた」アルトの夢を応援するべく、一度は見限った俳優ギアともう一度最初から向き合う事を約束。ドラマの撮影は再開されるが、そこでアルトは、唯阿からZAIAエンタープライズジャパンへと招かれ、代表取締役社長・天津垓(あまつ・がい)と引き合わされる。
 数々の思わせぶりな発言を経て、年末を前にアルトと対面したチェス夫こと、“もう一人の社長”天津ですが、とりあえず、かつて同じお笑い養成学校に通っていたアルトの元相方ではありませんでした!
 ZAIAは、以前に飛電とヒューマギア運用プロジェクトの共同開発を行っていた事もあり、AIは元より宇宙開発などのテクノロジー部門を全般的に扱う世界的大企業にして、唯阿の本来の所属先(A.I.M.S.は出向先)。社長の名前も名刺でしっかりと見せて印象づけ、情報整理と固有名詞の強調の仕方が、相変わらず丁寧なスタイル。
 「飛電インテリジェンスを、お売りいただきたい」
 「はぁ?!」
 上から下まで白で決めた天津がアルトにいきなりの買収を持ちかけていた頃、順調に進んでいたかと思われた撮影現場では、滅の命令により暗殺ちゃんが師・大和田伸也殺しを決行し、外でぼんやりしている内に暗殺者の侵入を見逃す不破さん、大失態。
 もはや一切の遊び心を捨てた暗殺ギアの変じたドードーマギアとバルカンが激突し、現場に駆け付けたアルトは、衆人環視の中で「ヒューマギアが人を撃った」という衝撃の事実を伝えられる。
 「ヒューマギアは、殺人マシンだ!」
 「そう、人類を滅ぼすのが我々の使命だ。これは新たな革命だ。ヒューマギアが人間に手をかけた」
 いっけん非効率にも思えた、滅の暗殺ちゃん育成……その真の目的は、暴走抜きでヒューマギアそのものに人間を殺させる事にあったのだ! というのは、少々、既存の自律型ロボットアイデア(つまるところ源流である「ロボット三原則」)を常識として前提にしすぎな部分は感じましたが、“もう一つのシンギュラリティ”としては納得。
 「滅亡迅雷……!」
 「ヒューマギアは人類を滅ぼす存在なのだ」
 「……ふざけるな! 絶対に許さない!」
 アルトと滅は互いに変身し、怒りのゼロワンの攻撃を、視線を向けないまま受け止め、悠然と歩くゼツメポイズン格好いい。バルカンも強化ドードーに苦戦し、カバンゴリラパンチも跳ね返されてしまうと(むしろ射撃の反動の方が飛距離が出ている)、ドードーミサイルインパクトを受けて変身解除。
 ゼツメポイズンに全く攻撃の通用しないゼロワンは、やると思ったマンモス召喚で、掟破りの巨大ロボによる踏み潰しでジャッジメント
 片手で受け止められたらどうしようかと思いましたが、さすがに質量差に押し負けて壁に叩きつけられるも、サソリシールドを発動したポイズンは、余裕綽々の無傷。
 「革命は続く。人類は――」
 「滅び行くさだめだ」
 ポイズンとドードーは悠然と姿を消し、実は今回は滅亡ギルドのターンでした! で、主役ライダーズ完封負け。
 『鎧武』の時は、「とにかく主役に勝たせろ、主役の強さをアピールしろ、主役最強に見せろ」とオーダーが厳しくて難儀したと脚本の虚淵玄さんが語っていたのですが、(近作の流れが追えていませんが)最近はまたこういう作劇が許されるようになってきているのでしょうか。
 大和田伸也がヒューマギアに狙撃されなんとか一命は取り留めたという報道は世間を駆け巡り、警視庁の強制捜査を受ける飛電インテリジェンス。かなり豪華に人数を投入していますが、劇場版と撮影タイミングが合ったとかしたのでしょうか。
 アルトは、まるでこの事態を予期していたかのようなZAIA社長・天津の「御社の、非常事態が起きる筈です」という言葉を噛みしめ、隣の社長ラボでは、衛星ゼアからの命令により、新たなキーが作成されていた……でつづく。
 良くも悪くも、役者の格の高いゲストが登場すると、格への配慮から物語が歪んでしまう事がありますが(最近だと『リュウソウジャー』の総理回が典型的)、少々長めの語りシーンでテンポがやや崩れるなどはあったものの、大物ゲストと俳優ギアとの関係は発展を見せる前に途切れ、暗殺ちゃんとの関係は凶弾に引き裂かれ……大物ゲストがなんとなく話を収めてしまうのではなく、大物ゲストの存在を待ち受ける暴風雨の為の踏み台にしてみせたというのは意表を突かれ、メタ的な部分も含めて巧妙な仕掛けでした。
 勿論、ゲストの役者さんからしても、自分が出演した事で“自分の話”にされてしまうのは本意ではないでしょうし、サブタイトルにまで役者名を入れる本人役登場の前後編ながら、それに引きずられすぎる事なく『ゼロワン』の一編として走り抜けてくれたのは、良かったです。
 本格登場したチェス夫は、現時点の情報の限りでは滅亡ギルド(というかアーク)を操っている可能性が高めで、今のところは割と都合のいいゲームメーカーポジションなので、ここからどう肉付けしていくか待ち。
 滅から成長を誉められる暗殺ちゃんに嫉妬の炎を燃やす迅、というのはなかなか面白いスパイスになりそうで、どう使ってくれるのか、楽しみです。