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ゆらゆらとネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第18話

◆Episode18「黙示録-アポカリプス-」◆ (監督:八木毅 脚本:長谷川圭一 特技監督八木毅
 副隊長が突然姿を消し、事態を危惧する管理官……アバンタイトルから状況の急変を描いて視聴者にインパクトを与えようとしたのでしょうが、前回Bパート、焦点が当たっていたのは孤門と隊長で、副隊長の心情に視点を誘導する布石など欠片も無かったので、物凄く普通に、あれ、1話見逃したっけ……? となって大変困ります。
 管理官の反対を振り切り、副隊長を連れ戻す為に単身出撃しようとする隊長だが、裏で手を回した管理官は、孤門をそれに同行させる。
 「……僕は、副隊長に救われました。もう少しで闇の力に負けそうだった僕を、この世界に引き戻してくれたんです!」
 その心は、私と一緒にビースト野郎どもを根こそぎ消し炭にするまで脱落は許されない! 死ぬか! 殺すか! Kill or Die!!だと思ったのですが、何やら孤門の中でいい話に変換されている上に、だいぶ無理矢理、物語として孤門と副隊長の友好度を上昇させてしまおうという狙いが窺えます(笑)
 「溝呂木って……どんな男だったんですか?」
 「優秀だったさ。ビーストハンターとしての実力は……正直……俺より上だった」
 「そんな……」
 いきなり「ビーストハンター」を自称し始めるのも驚きですが、隊長が特に劇中で優秀さを示した記憶がないので、孤門のリアクションにも疑問符が浮かび、相変わらず、理想と現実のギャップが激しい話運びが続きます。
 隊長の回想で微妙な大きさのビーストとNRの白兵戦が大盤振る舞いされて溝呂木と副隊長の過去が語られ、倉庫爆発で引っ張る方がインパクトがある、という判断だったのでしょうが、個人的には、前回と今回の回想内容が逆の方がわかりやすかったな、と。
 これは孤門×リコの時もそうだったので、今作の構造的な癖とでもいうべきものでしょうが、〔インパクトのある事件→その背後関係の説明〕と見せたい狙いはわかるのですが、あまりにも背後関係の情報が不足している為に、そもそも事件のインパクトが効果的にならないという状況に陥っており(今回冒頭の副隊長脱走?!も同様)、結果的に物語にメリハリがつかない大きな要因になってしまっています。
 「死にたくないからビーストを殺す」と戦う理由を語る溝呂木は、自分の置かれた現状への恐れと、姫矢が見たものに酷似した、奇妙な夢の話を凪に語る。
 「だが殺しても殺しても心が安らぐ事はない。むしろ、不安が増すばかりだ」
 ……とにかくティルトに必要なのは、隊員のメンタルケア。
 現在――1年前に溝呂木が姿を消した倉庫で、再び溝呂木と相まみえる副隊長。
 「俺達は特別な存在だ。それはお前もとっくに気付いていた筈だ」
 改めて1年前の夜の事を問い質す副隊長に対し、ゾンビ軍団を蹴散らした後、謎のビーストが居るとおぼしき地点へ先行した溝呂木は、そこで黒い巨人・ダークメフィストから、弱肉強食の理を語られた体験を明かす。
 「戸惑う事はない。素直に自分の心を解放しろ。そしてもっと強くなるがいい」
 「……貴様、何者だ」
 「私は――おまえの影。溝呂木眞也、おまえが望む、おまえ自身の姿だ」
 人間もビーストも関係なく、生き残る為により強い力を求め、他者を殺す事でそれを証明しようとする心根を突きつけられた溝呂木は、ダークメフィストが転じた黒煙と融合。再び現れたゾンビ軍団に対し、銃口を向ける。
 「力こそ真実……確かにその通りかもしれねぇな。あばよ――人間ども」
 ……うーん、デビル溝呂木誕生の秘密については、今のところ特に面白みは感じず、溝呂木はまだ色々と引っかき回すキャラクターでしょうから、今後のジャンプアップに期待したいです。
 ヒーローと悪役が、互いの陰影を浮かび上がらせる関係性になる、というのはオーソドックスにして有効な手法ですが、今作、一応の主人公を孤門に置きつつウルトラマンとしてのヒーロー性を有した姫矢を加え、更に対溝呂木においては副隊長もクローズアップされている現状で、では、溝呂木はこの3人とどう対比されているのか? 溝呂木との対比によって3人の掘り下げが進んでいるのか?というと、焦点が絞りきれずに散漫になってしまっており、溝呂木含め全員がピンぼけになってしまっている印象。
 「凪……こっちへ来い。そうすればおまえはもっと、強くなれる。また一緒に戦おう。お前を理解できるのは、俺だけだ」
 熱烈なラブコールを送る溝呂木に対して無言で近付いていく副隊長だが、そこに突入してくる隊長と孤門。
 「溝呂木!!」
 「よお、隊長」
 「何がおまえをそんな姿に変えたかはわからない。だが凪を! おまえと同じ闇の中に行かせはしない!」
 隊長も熱烈なラブコールを送り、副隊長が、副隊長が、ヒロインみたいだ……!
 それはそれとして、溝呂木編が始まってから一つ感じている引っかかりなのですが、実際に光を見て(得て)、その意味を探している姫矢はまだともかく、孤門はおろか隊長まで溝呂木が力を振るうダークサイドについて「闇の中」とか言い出すと、えーとそんな、“光と闇の戦い”みたいな概念のある世界観だったっけ……? と首をひねります。
 構図をわかりやすくる意図や、《ウルトラ》シリーズとしての定番的ニュアンスが入ってもいるのかもしれませんが、“正体不明のビーストと戦うリアリスティックな戦闘部隊”として配置したナイトレイダーと、“光と闇”という概念の相性が大変悪く、そこの摺り合わせは劇中でもっと丁寧に行ってほしかったな、と思います(概念自体は構わないのですが、作品世界に合わせた定義付けをせず非常に曖昧な便利用語として用いている為に、元来「CICの命令なので人質無視してビーストをぶち殺します」という世界観における「闇」とは一体……? という事になってしまっている)。
 「無駄だ。幾ら足掻いても所詮お前達はただの人間。俺や凪とは違い、やがて淘汰される賤しい存在でしかない」
 溝呂木は、隊長と孤門の躊躇無い銃撃をダークバリアで防ぎ、凪への執着、姫矢と同じ?夢を見ていた事と、何やら特殊な資格者が世界に存在している事を窺わせるが、そこへ踏み込んできた姫矢が、マジカル光線でダークバリアを消滅させる。
 「溝呂木……人の心を踏みにじるのが、そんなに楽しいか」
 隊長らの危機を救ってびしっと啖呵を切る姫矢さんは格好良く、溝呂木の登場により姫矢のヒーロー性だけは確実に上昇しているのですが、ではそれが何に起因しているかというと、“姫矢准というキャラクター性の掘り下げ”ではなく、溝呂木のカウンターとして登場する“典型的なヒーローのリアクション効果”なので、『ネクサス』という作品としては、ふらつきを感じます。
 姫矢のヒーロー的格好良さの上昇そのものは、私が今作を見る上で、現状大きな嬉しいポイントになってはいるのですが、上述した要素とも繋がって、物語としては姫矢個人に対してのピントが合いきっていない、という感触。
 溝呂木は人間の姿のままその場にダークフィールドを展開するとケルベロスビーストを召喚し、姫矢はネクサスに変身し、開幕の回し蹴り。
 「馬鹿が。罠にかかりやがって」
 だがケルベロスの瞳が光ると、前回ガブガブされた傷が赤く光ってネクサスは苦しみ、隊長と孤門の援護射撃は、バリアによってビーストに届かない。
 「驚く事はないさ。ここは俺が作り出した闇。お前達に手出しは――」
 得意満面で解説する溝呂木だが、その時、響き渡る銃声。
 「…………凪……なぜおまえが」
 「なぜ? ……決まってるでしょ」
 溝呂木の背後で銃を構えた副隊長はドッグタグを放り捨て、位置関係からこれは刺される流れだな……の想定通りだったのですが、そもそものところ、副隊長が溝呂木のラブコールに心揺れる描写が見当たらなかったので、あまりにも予定調和すぎて、副隊長の揺らがない芯を描きたかったのか、驚愕の銃撃! と描きたかったのか、だいぶ困惑。
 狙いが後者だとすればうまく行っていませんが、どちらにせよここでも、凪と溝呂木の過去を描くのが遅すぎた為に、副隊長の複雑(かもしれない)な心境を“視聴者に想像させていく”プロセスが抜け落ちてしまっている事で劇的さが大きく減じてしまっており、今作全体における、情報提示の問題が噴出しています(例えば先に二人の過去を見せておけば、副隊長がただ黙って佇んでいるシーンでも、その重みが変わってくるわけで)。
 「――ビーストは全て、あたしの敵だからよ」
 「最高だぜ……凪」
 仰向けに倒れ込んだ溝呂木が消滅すると(これで退場とは全く思えませんが)、ビーストへのバリアも解除され、隊長&孤門の援護攻撃により噛みつきの呪いから解放されたネクサスは、ビーストを撃破。
 「どうやら、終わったみたいだ」
 「……そうですか。で、彼は?」
 「無事だよ。今回はね」
 ティルトではイラストレーターと管理官が思わせぶりな会話をかわし、工場を後にしようとする姫矢に声をかけた副隊長はその背に銃を向け、何度目だこの展開、Kill or Die? で、To be continued...
 次回――姫矢の掘り下げがありそうな予告内容で、そこは期待したい。