『キカイダー01』感想・第23-24話
◆第23話「悪魔のヒトデ女 人類絶滅寸前!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:押川国秋)
見所は、分裂増殖を繰り返すヒトデ怪人に得意の破壊行為を封じられて苦悩するも弱点を発見し……
「ははははははっ、その慌て方を見ると、どうやら俺の思った通りらしいな」
エネルギー不足で藻掻き苦しむ無力なヒトデ女性体に爽やかな笑顔を向け、
「もうその手に乗るか! 貴様の体から、血が無くなるまで戦ってやる!」
最終的に、とんでもなく酷い事を宣告するイチロー兄さん。
前回・前々回の事は忘れて、なんだか、ビッグシャドウ様の帽子が変わった気がする新シーズンに突入し、イチロー兄さんがアキラくんをサイドカーに乗せて一緒に登場し、ほっと一安心(笑)
「よーし、少し聴力を上げてみようか。美しい野鳥の声が聞こえるかもしれんぞ」
逃亡生活の続くアキラくんにせめてもの心の安らぎを、と豊かな自然を見せようとするも一向に動物と出会えず、かえって気を遣われたイチロー兄さんは爽やかに微笑みながら聴力回路を調整するが、捉えたのは鳥の声ならぬ奇妙なうめき声。
夢遊病患者のようによろめく赤いワンピースの女の姿に凄まじいサブタイトルがかかり、先程までの爽やかな空気は、どこへ(笑)
「ふははははは、シャドウ組織の新しい戦士、鬼ヒトデのエネルギーは、海水の成分とよく似た人間の血が一番ありがたいのだ。ふふはははははは」
女は通りすがりのドライバーの血を吸い取ると瞬く間に血色が良くなり、怪談シリーズ以来の怪女路線なのですが……つい先程まで、普通にエネルギー欠乏していたのかと、開幕から困惑を隠せません(笑)
エネルギー回復したヒトデ女は、黒ずくめに赤いマフラーなどで色彩のアクセントを付けた男の姿に変貌し、わざわざ二段変身したのは生身アクションの都合かと思われるのですが、男の喋りと声がやたらに合っていなくて、また困惑。
悪のあるところセンサーにより現れたイチローに、「シャドウ組織の新しい戦士・第1号」を名乗ったヒトデ男は、ヒトデ怪人に変身するもあっさり爆死……と思われたが、バラバラになった肉片が覆面タイツのヒトデ戦闘員として再生し、赤い覆面に巨大な星のマークのヒトデ戦闘員が、某超力戦隊を彷彿とさせて、妙に強そう(笑)
一方、組織の命令なら女装も辞さない忠誠度100ハカイダーは、シャドウと手を繋いでリエコを罠に仕掛けるが、切っても切っても死なないヒトデと戦うのに飽きたらしいイチロー兄さんが救援に駆け付け、チェンジゼロワン。
「えーい、くそー、今度こそ俺の本当のパワーを見せてやるぞ。行くぞー」
思い込みを強めて雄々しく躍りかかるもあっさり殴り飛ばされるハカイダーだが、不自然な編集の連続攻撃からナイトの追撃も加わり、空中合体忠誠コンボが炸裂。前回、権力を得た途端のパワハラによる仲違いがあったばかりなので社命とはいえ息の合った共闘に違和感しか無いのですが、さしたるダメージを受けた様子もないゼロワンが身を起こすと、いつの間にやらヒトデ部隊がリエコを捕らえており、今作標準を鑑みた上でも、困惑する成り行きの中、ゼロワンはドライバーでさくっとリエコを救出。
しかしゼロワンの攻撃を受けたヒトデは分裂と増殖を繰り返し……この後の展開を見ても、攻撃すればするほどに増殖する怪人、という設定のようなのですが、色々な都合により、映像上はヒトデ戦闘員が繰り返し5、6人程度出てくるだけなので、「増殖」というよりも「再生」に見えて脅威感が下がってしまったのは、アイデアを映像に落とし込めずに惜しまれる部分。
得意の破壊行為を封じられたゼロワンはリエコを連れて一事逃走し、状況の突破口を求めて珍しく悩むイチローだが、ヒトデ怪人は大変燃費が悪く、戦闘可能時間が短い上に、エネルギーが不足すると分裂増殖も出来なくなる事が発覚。この弱点を知ったイチローは、バラバラに切り刻んだヒトデ女をビルの屋上から投げ落として白昼のビル街に猟奇事件を演出し、エネルギー不足から各地でバタバタと倒れ伏すヒトデ女の姿にハカイダーは歯がみする。
「ええーい、どいつもこいつも、頭脳回線の足りない奴ばかりだ」
70年代初期の作品にしても、不自然な場面転換や変な繋ぎ方による時制その他の破綻が多発し、編集に難を感じる『01』ですが、今回は特撮名物・謎カメラを通してイチロー兄さんの行動が逐一チェックされてはシャドウ基地でハカイダーとナイトからコメントが差し込まれるのがやたら間抜けな上に、妙に細かくシャドウ組織の動向を描くシーンが挟まって、物凄いテンポの悪さ。
稼働時間が短すぎる、というあまりにも致命的な欠点にヒトデ怪人1号に見切りを付けたビッグシャドウは、ヒトデ2号を使った作戦を指示するが、ハカイダーとナイトは何故か全く違う作戦でイチローを罠にかけ、シャドウに囲まれたリエコは、突然ダークの女の本領を発揮して生身格闘でヒトデ戦闘員を次々と撃退。
……これはつまり、とうとうイチロー兄さんまで女装? と思っていたら、リエコの危機にトランペットを吹いてイチロー兄さん登場。
「お前達も、なんと頭脳回線の足りないロボットだ。あんな爆発で、俺が吹っ飛ぶと思っているのか!」
チェンジしたゼロワンがハカイダーらと戦っている間に、サイドカーを乗り回したリエコはヒトデ戦闘員を蹴散らし、……これはつまり、ジローの女装なのか?!と困惑している内に、ヒトデはブラストエンド。
シャドウのヒトデ増殖作戦を阻止した事を喜ぶイチローに対して、リエコは何やら浮かない表情を浮かべ、ヒトデ男いわく「この女には血液がない」とロボット疑惑が急浮上するのですが、割と最近、人間である事を利用してシャドウ基地に潜入していた記憶があり、冒頭からクライマックスまで、困惑ポイントが多すぎて、話が頭に入ってきづらいエピソードでありました。
ナレーション「恐るべき、シャドウの戦士、シャドウ鬼ヒトデの飽くことなき挑戦は、まだ終わらない」
……え、続くの?!
次回予告ナレーション「各地で豚の叛乱が起きた。それは、地球を豚に支配させるというシャドウの恐ろしい計画だった」
……続かないの?!
そして、「切羽詰まったリエコの活躍」とは何か?! 次回予告まで激しい困惑を撒き散らし、イチローはどこまでも進む。果てしない、シャドウとの戦いの道を!
◆第24話「悪魔の業!? 地球ブタの惑星計画」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
「ブタよ……! ブタどもよ……! お前達が人間どもに強いられていた、長年の屈辱と忍耐の歴史は終わった。ブタよ、ブタどもよ……お前達は我がブタの惑星計画によって、解放されるのだぁ……!」
ビッグシャドウはじゅうしょうだ!!
「ブタの惑星」という言霊のパワーで押し切るストーリーですが、平和電気の社長夫妻がブタ人間に入れ替わられ、シャドウの為の兵器工場に会社の方針を転換。そして、ミサオとヒロシはブタの顔をした怪人に襲われる。
「我らはシャドウ。ブタの惑星計画によって、ブタから人間形ロボットに成長した、ピッグマン。我らピッグマンの使命は、人間どもを殺す事」
今作の省コスト路線の結果、ブタの顔マスク+黒ジャケット+ナイフ、のピッグマンは見た目特撮ヒーロー物感が限りなく薄く、完全にリアル強盗犯すぎて、情操教育上よろしくない映像。
そして相変わらず、ロボットの定義付けが謎な世界的犯罪組織シャドウ、大がかりな呪術的仕掛けの関与が疑われるのですが、いい加減、オカルト系組織だと認めた方が、色々と楽になるのではないかシャドウ(ブラックサタンの中では、256人のシャドウ占い部隊が、古今東西ありとあらゆる占術を駆使して検索をしています)。
「ジャイアントデビルなどもうどうでもよい! シャドウは、悪魔の使者、ザダムを完成させたのだ」
いよいよ面倒くさくなってきたのか、あれだけこだわってきたジャイアントデビルがあっさりと窓の外に放り捨てられ、まとめて爆殺の危機に陥る中、秘められたオーラパワーを解放したリエコが、牢屋を破壊。
「今まで、誰にも内緒にしてたけど、あたしもイチローさんと同じ、人造人間なの」
これまで明らかにただの人間と描かれてきたので、不自然極まりない唐突な告白ですが(一応、対キカイダートラップをくぐり抜けられたのは、ボディが強化プラスチック製だから、とか理由をつけられない事はないですが……)、とにもかくにもアキラとヒロシをミサオに任せたリエコは、毒ガス爆弾を解体する為にその場に残り、地上ではゼロワンが、黒ブタ夫婦をブラストエンド。
アキラ達は地上に帰還し、平和電気の社長親子も無事に再会するが、リエコが戻らぬまま地上のシャドウ基地は大爆発し、リエコダーの爆死が暗示され……なんだかんだ、今作の出鱈目な世界観には馴染んできていたリエコさんが思わぬ形で完全退場?
「ゼロワンめ……我がシャドウには、悪魔の使者・ザダムが誕生したのだ。ゼロワン、貴様の命も後わずかだ」
今回は、“無駄に戦おうとしない”事を学んで大変今更ながら格を保つムーヴに徹したハカイダーは嘯き、次回――イチロー、月へ…………て、え、終わるの?!
唐突なレギュラーキャラの退場(?)、悪の組織の突然の最強兵器誕生宣言、宇宙へ、と最終回フラグが立ちまくっていますが、もしかして2クールで命脈尽きてしまうのか。果たして、どうなる『01』!?