東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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夢のニンジャパワー

光戦隊マスクマン』感想・第5-6話

◆第5話「小さな剣士ブルー」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 新たな地底獣・スカルドグラーが解凍され、物凄く普通に、マンホールを通路代わりにしているチューブ。
 元々は第1話における、タケルと美緒の運命的な出会い・ちょっとお茶目で浮き世離れした美緒の印象、を強調する為の小道具だと思われるのですが、最早、後には引けない感じに。
 パトロール中、リンゴを追いかけて怪人を見逃してしまったアキラは16歳と判明し、地上に出現したスカルの能力により、人々の顔が入れ替わってしまう、面白い、というより、気色の悪い映像(笑)
 この現場に居合わせたアキラはふわふわと飛ぶスカルヘッドを追い、合体スカルの火炎放射を愛用の二刀流で跳ね返すも光線で弾き飛ばされた所に、飛んできた剣がばっちり刺さったーーーと思ったら、懐に入れていたリンゴによって幸運判定に成功。
 「やるわね。でも余計な手出しは怪我の元よ。坊や。ははははははははっ」
 「坊や? いっちばん気にしてる事、言ってくれるじゃないの」
 敵サイドの頭数が多いので、存在感が薄れるのを危惧していた地底くノ一にしっかりと台詞を与え、相手を見下す傲慢な姿と、それに負けん気を燃やす構図にキャラの個性を絡め、印象的にマスクマンメンバーと対峙させてくれたのは、嬉しい。
 「はははははははは! 地底貴族の名門、イガム家に代々仕える、地底忍フーミンに、その程度の技が通じると思っているのか!」
 フーミンは地底忍法・空蝉の術でアキラを翻弄し、ホント東映は、忍者が出てくると演出のテンションが上がります(笑)
 当時の作りからしてJAC枠かと思われるフーミンさんと、リアル拳法家である広田さん演じるアキラ、動ける二人を早い段階から直接ぶつけて生身アクションを前面に押し出し、フーミンはスカルを連れて撤収。
 王子-くノ一、司令-赤影、というW指揮官&上司と従者体制になっているチューブですが、今回は王子が直接出馬せずに現場指揮をくノ一に任せる事により、必要以上の格落ちを避ける有効活用。
 「顔を移し替える事によって人間社会は大混乱。地底帝国チューブの恐ろしさに震え上がっております」
 前回に続き、確かに地味な嫌がらせとしては有効に働いているのですが、そこまで自慢げな顔をされても(笑) 一方、将軍は将軍で物凄い目つきで王子を睨みつけており、この辺りのさりげない見せ方で敵味方双方のキャラクターに厚みを与えていくのが、曽田×長石に続き、曽田×東條が匠の技。立ち上がり、名匠二人の演出力が光ります。
 「もっともっと混乱を引き起こせ! その混乱に乗じて、一挙に地上征服に乗り出すのだ」
 あくまで本命は、混乱を足がかりにした侵攻だと王様自らフォローを入れ、時間・予算・兵員を大量に投入した初動の大規模作戦が失敗に終わり、侵攻計画の抜本的立て直しを迫られる(中でじり貧に陥っていく)……という構図には、某地底国家を思い出してしまうところ(笑)
 一方、地上の光戦隊では、アキラと連絡が取れなくなっていた。
 「あの子どこ行っちゃったのかしら」
 ハルカからは、“あの子”扱い。
 「戦士としての心構えが出来てないよ。やっぱりあいつは、まだまだ子供なのさ」
 ぼやくケンタの言葉を、黙って腕組みしながら聞いているタケル@敵前逃亡前歴アリ(笑)
 「そんな事はないぞ」
 ケンタをたしなめた長官は「マスクマンになるにふさわしい若者を探して、日本中を旅した」スカウト時代を回想し、アキラが華麗な拳法アクションと入浴シーンを披露。
 「体は小さく、歳も若い。やる事は子供っぽいが、何をしでかすかわからない意外性がある。――みんなにはそれぞれ個性がある。その個性を活かし5人の力をフルに発揮するのが、チームワークじゃないか」
 現実へのフィードバック要素としての“個性の尊重”を、戦隊である事の意味とスムーズに繋げた良い台詞で、“若者達を導く大人”としての姿長官の株も上げ……
 「大丈夫。俺の目に狂いはない」
 直後の、自分自慢で台無しに(笑)
 やり取りの最中、終始無言のタケル@敵前逃亡前歴アリは、ここまでスポットの中心だったので今回は故意に台詞を押さえたのだとは思うのですが、結果的に、周囲の言葉がグサグサと胸に突き刺さっている感じに(笑)
 個性、俺の個性は、暴走……!
 「アキラは必ず、立派な戦士になる若者だ」
 何故なら俺が、見出したからな、と自慢げに胸を張る姿長官だが、丁度その時、スカルヘッドにまたがって空を飛ぶアキラの姿がオーラカメラに捕捉され、一同唖然。
 「何やってんだ?! 遊びじゃないんだぞ!」
 「これで立派な戦士なんですかねぇ……」
 長官に割ときついツッコミを入れるニンジャマスクイエロー(笑)
 もっとも、ここでストレートに「さっすが姿長官!」としてしまうと、それはそれで危うい面を孕むので、コミカルな要素を取り込みつつ姿長官に隙を与えるのは、巧いバランスになったと思います。
 やや余談に逸れますが、後のボウケンレッド(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)の造形と変遷は、80年代的レッド像のみならず、長官ポジションの変質も意識的に取り込んでいたのかもしれないな、と今更ながら。
 「ん? ……はぁ」
 将来、「あいつは儂が育てた」と言って回るのが夢な長官は溜息をつき、スカルヘッドに振り落とされそうなアキラを救うべく出撃しようとするタケル達だが、飛び回るヘッドを操る誘導電波の存在がキャッチされる。
 てっきりオペレーターだと思っていた白い服の女性が長官から「ハカセ」と呼ばれ、超有能なエリートキャリアに延々と伝票の宛名を手書きさせている的な人材の無駄遣い感が漂いますが、仮に光戦隊の各種装備を開発した人だとしたら、そんな所で通信処理とかやらせていていい人なのか、ハカセ。或いは、「博士」ではなく「葉加瀬」(苗字)というオチなのか。
 葉加瀬(仮名)の分析によりヘッドを操るボディの存在を突き止めたマスクマンは、謎のオーラネットでヘッドを捕まえ、アキラを救出。
 「御免よ、心配かけて」
 「なに、謝る事はないさ」
 「アキラのお陰で」
 「スカルを操ってる仕組みがわかったわ」
 「え?」
 「ハルカ!」
 ボディの潜む茂みに向けて、物凄くナチュラルに手裏剣を投げるハルカさん、なんだか、好きになってしまいそう(笑)
 アキラの意外性の助けにより、首尾良くスカルドグラーを無力化したかと思われたマスクマンだがその時、茂みの奥から王子が奇襲の電光を放ち、誇り高い名門貴族だが、「正々堂々」の4文字は辞書に載っていないのだ!
 王子登場が正面足下から映され、堂々ハイヒールな事に気付いたのですが、生物学上の性別はまだ不明なものの、一応男性の役柄に女性キャストを配した上で(特段、男性的な容姿というわけでもない)、女性的なシルエットを消すよりも活かす方向のデザイン、というのもまた面白いところです。
 「イガム! これ以上阿漕な真似は、許さんぞ!」
 イガムに啖呵を切るタケルのポーズと表情が格好良く、5人はオーラマスク(「変身」の意)。5人が飛び上がったところで主題歌が流れ始め、〔タケル→画面4分割で4人同時〕に簡略化された変身シーンから揃って名乗り、第5話にして初の、揃い踏みからの主題歌バトルが、やはり盛り上がります。
 黄は、マスキーローター(独楽)を脳天に突き刺し、黒は五節棍にもなるマスキーロッドを振り回して戦闘員を薙ぎ倒し、冒頭で仲違いした黒と青がコンビネーション攻撃を決めて、スカルボディの電波発生源を破壊。更にくノ一の地底忍法・フーミントルネードをマスキートンファーで打ち破ると、レーザーマグナムで弱らせてからのショットボンバーで合体スカルを撃破。
 「エネルギー獣! オケランパー!!」
 ……物凄い勢いで巨大化担当を送り込むのが見せ場の首領ポジション、て割と珍しいようなそうでもないような。
 今回も地底獣の分離攻撃に苦しむグレートファイブだったが、銃で反撃すると、ジャイロカッター(十字手裏剣)を投げつけてスカルボディの電波誘導を無効化し、トドメはファイナルオーラバースト。
 かくしてチューブの嫌がらせは失敗に終わり、街中で二刀を振り回し子供達の至近距離でリンゴを切り刻む剣の達人とか、自販機でジュースを買うかのように手裏剣を投げる忍者とか……姿長官の集めてきた人材が本格的に紙一重な感じであり、今のところ太極拳使いという以外にこれといって特徴もなく雰囲気も普通なモモコ辺りのハードルが物凄く上がってきていますが、大丈夫か?!
 こんな顔して相手の精神を破壊する必殺魔球の使い手とかだったりするのか?!
 次回――ケンタかと思ったらタケル回で、目覚めよ、神の一手!

◆第6話「夢のゴッドハンド」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 マスクマンは原因不明の事件が続く大滝市の調査に赴き、地震の揺れで落ちてきた石造りの鳥居の一部を、素手のパンチで打ち砕くタケル(笑)
 あまりにも真っ正面からの強行突破に、色々なものが吹っ飛ぶ映像です。
 「すげぇー……ゴッドハンドだ」
 空手を学び、『黄金の腕』という「ゴッドハンド」について書かれた本を愛読する少年・ノリオから熱い憧れの視線を向けられるタケルだが、少年の夢であるゴッドハンドを「ありえない」と真っ正面から否定し、敵前逃亡、特訓放棄に続き、子供を雑に扱う、という新たな失点を稼ぎ出し、そろそろ累積レッドカードになりかねないぞ!
 「でもあの時、石の鳥居を……」
 「鍛えればレンガだって割れるだろ? あの石も、ヒビが入っていたしね」
 タケル、ちょっと待ってタケル! 手裏剣で物事を解決する同僚とか、空中に浮かぶ上司とか、手から光線を出す義兄(予定)とか、周囲の人々がハードモードすぎて、物事の基準がちょっとおかしくなっているぞタケル!!
 この辺り、従来のヒーロー像からの変化の意識は窺えるのですが、「オーラマスク」とかしている人間が、それとこれとは別の話、と「ゴッドハンド」をばっさり否定するのは、無理が出た感。……逆に、タケル基準の「ゴッドハンド」=「一撃で地形を変える」レベルという可能性はありますが。
 頻発する地震の原因はチューブの地底獣ドリラドグラーのトンネル掘削であり、チューブは縦横無尽に張り巡らしたトンネル網に仕掛けた爆弾を同時に起爆する事で、大滝市を丸ごと地底に沈めようとしていた。
 「大滝市が地の底に沈むのも、あと5時間」
 それを聞いてしまったノリオはチューブに追われ、そこに行き合うタケルだが、石の鳥居も砕く必殺パンチを怪人の装甲に弾き返され、ノリオは地下へと引きずり込まれてしまう。
 「おのれぇぇぇ!!」
 悲痛に泣き叫ぶノリオ母の姿に、目の前で美緒を連れ去られた哀しみを思い出し、激怒したタケルはオーラマスク。仲間達も参戦するがドリル獣の装甲の前には剣さえ折れ、作戦を優先したハゲ将軍一味は撤収。
 (俺が、ゴッドハンドだったら、ノリオくんを、救えたのに)
 「ゴッドハンドはある」(※独自の研究です)
 「「「「ええっ?!」」」」
 助言を求めて本部に戻ると姿長官は断定し、どうやら、この世界における「ゴッドハンド」とは、空手を極めた達人の技の通称ではなく、伝説的な技の固有名詞の模様。
 「本当に、ゴッドハンドが?」
 「オーラパワーを忘れたのか。オーラパワーを発揮した君になら可能だ。いいかね、君たちはまだ秘められた力の半分も活用していないのだ。オーラパワーは、奥深く、底知れぬ力を秘めている」
 姿長官の言葉で今後の成長の可能性が示唆され、別行動を取っていたピンクマスクが大滝市の地下に張り巡らされたトンネルを発見するが、迫る爆発のタイムリミット。
 「タケル、どんな事があっても、オーラパワーを信じるんだ」
 ノリは完全に、2年前の「アースフォースを信じるんだ」と同じですが、「オーラパワーを信じる」=「自分(積み重ねてきた鍛錬)を信じる」と自動的に変換される構造が、今作の特徴に。
 大滝市で合流した5人は、ノリオくんの落とし物から秘密の入り口を発見して地下アジトに突入し、即座に手裏剣の一投で爆弾の起爆装置を止める忍者優秀、超優秀。
 「この本が、君の居場所を教えてくれた。――ゴッドハンドが、君を救う」
 タケルはチョップ一発で鉄の鎖を切断して少年を救出し、全体的に荒っぽい展開ながら、少年の愛読書を救出劇と繋げる事で、「少年の夢」という要素を忘れずに拾い、それを守る者としてタケルのヒーローLVを上げてくれたのは、良かったところ。
 「馬鹿め。素手でドリラドグラーに勝てると思ってるのか」
 「秘められた力は、生身の体からこそ、発揮できるのだ!!」
 変身ヒーローの根幹を揺るがしかねない気合いの叫びをあげてドリル獣に躍りかかるも叩き伏せられるタケルだが、これまでの訓練の数々と長官の言葉を思い出すと、精神集中により自らの内側に眠る力を引き出し、ゴッドハンドに覚醒。正拳の一突きでドリルの腹部を貫いてみせ、冷や汗の垂れる展開なのですが、そもそもマスクマンの場合オーラパワー覚醒前から変身しているので、スーツはあくまで、超パワーを発現して戦闘力を急上昇させるものではなく、肉体の酷使によるバックファイヤを含め様々なダメージの低減が主目的の装甲戦闘服であり、戦闘力そのものは、あくまでも鍛え上げた肉体の力に依拠する、と思えば良いでしょうか。
 イガム王子に続き、地上人マジやばい……と戦慄したハゲ将軍が戦闘員を繰り出すと5人はオーラマスクし、レッドマスクはゴッドハンドの一撃でドリル獣の土手っ腹に風穴を開けると、ショットボンバーで粉砕。
 巨大戦ではまさかのグレートゴッドハンドが炸裂し、肉体を鍛えて引き出す神秘のパワーと、ロボットによる巨大戦との間にあった溝に、力技で橋を架けました(笑)
 大滝市の危機は回避され、ノリオ少年は海に向けて一心不乱に打ち込みを行い、信じる力が神の手に繋がるのだ、と指切りを交わすタケルであった。
 ナレーション「今またここに、秘められた未知の力を信じる者が現れた。少年は、あのオーラの輝きを決して忘れない。人の体には、不思議な力が秘められている。鍛えれば鍛えるほど、その不思議な力を引き出す事ができるのだ」
 締めのナレーションが念押しするように、作品コンセプトを再確認しつつ、少年の夢を守って拳を振るうタケルのヒーロー性を引き上げるエピソードだったのですが、ノリオ母の姿に美緒との別離を思い返す事で、タケルが「私」の情動で動く要素が強まっていて、「少年とヒーロー」の構図としては、やや雑念が交ざりすぎた印象。
 コンセプトの確認作業として美緒の存在を念押しするのはわかりますし、タケルはあくまで、それを切り離せないヒーロー、として描いていくという事なのかもしれませんが、巧く噛み合っていってほしい要素です。
 なお、ノリオ母が、ゲスト少年の母親という役どころにしては出番が多かったのは、演者がひし美ゆり子さんだったからでありましょうか。