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かく語りきネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第17話

◆Episode17「闇-ダークネス-」◆ (監督:八木毅 脚本:長谷川圭一 特技監督八木毅
 新展開の始まりから淡々と陰鬱な映像のいつもの『ネクサス』ながら、孤門だけはようやくモノローグで一皮剥けた感じとなり、前回の脱藩騒動は恐らく、トイレ掃除一ヶ月の刑で許されました。
 ビースト反応を感知して出撃したナイトレイダーは獣のような人間達の襲撃を受け、動揺した孤門は銃を奪われてしまうが、背後から副隊長が麻酔弾を撃ち込み、事なきを得る。
 「無防備に見える相手でも、躊躇せず撃て。……それがこの仕事で生き残る為の鉄則よ」
 ナイトレイダー活動に前向きになってきた孤門だが、まだまだ脇が甘い、と予測不能な部分を含めた対ビースト戦のシビアさを改めて念押ししてくるのですが、戦場のシビアさを強調すればするほど、そもそもそんな現場に、銃と飛行機の扱いを覚えたからいいや、とスナック感覚で人員を送り込んではいけないのではという問題点が克明に浮き上がり、リアリティを引き上げようとしたら足下がガラ空き、という最初の一歩目の躓きが、ひたすら重くのしかかります。
 また、ビーストとのシビアな戦い、のインパクトを強める為に、既存メンバーと孤門視点のギャップを大きく取り、“未知の世界に踏み込んだ一般人”として孤門と視聴者の視点を重ねる手法を採ったのですが、それがそのまま、スタッフが提示しているつもりの世界観と、劇中描写から把握できる世界観とのギャップにスライドしてしまっている感があり、孤門がNRの在り方にギャップを感じ続ける限り、見ているこちらとスタッフの劇中世界観の受け止め方のギャップもなかなか埋まらない、という困った事に。
 つまるところ、「生き残る為の鉄則」があるなら、訓練期間中に骨の髄まで叩き込んでおいて下さい、という事であり、その程度の教練も出来ない組織なら、そもそもNRを通して戦場のシビアさを押し出す作劇に無理があるのではないか、という自己破綻に陥っているわけですが、軍組織としてのリアリティ描写の引き上げ方が中途半端な故に、遮蔽物のない平野で巨大怪獣と真っ正面から撃ち合う姿が大変バカっぽい事になってしまうわけです。
 NRを炎であぶるのは、かつて姫矢が夢の中?で倒した筈のケルベロスビースト(秀逸なデザイン)。
 「そう、お前が幻想世界で初めて戦った記念すべき相手さ。だろ? ――ウルトラマン
 いきなり夢いっぱいのネーミングしてきたな溝呂木!
 副隊長の気を引くべく、「デスゲーム」から路線変更してきた溝呂木いわく不死身のケルベロスだが、姫矢はその正体が、幻影を操る力だと喝破する。
 「人の心に恐怖を植え付け、弄ぶ。卑劣で薄汚い、いつもの貴様のやり口だ」
 「……ふん、なかなか言ってくれるじゃねぇか」
 この二人も、急にだいぶ仲良くなっている『ネクサス』仕様で困惑しますが、黒いコートの裾を翻して、折りたたみ傘から光線を放つ溝呂木と、それを折りたたみバリアで弾く姫矢、という対決の図は格好良かったです。
 姫矢は変身してビーストに挑み、放たれた連続の火球を次から次に弾き落とす、格好いい殺陣。
 それを見た隊長は「ウルトラマンを援護する」と現場判断で宣言して合体チェイサーを起動し、本格的に、ネクサスに対する警戒心が消滅した事になっているのですが、序盤あれだけ共闘を避けて敵視と攻撃を描いてきたのですから、孤門一人の信仰だけではなく、最低限、NRメンバーからウルトラマンへの認識の変化、については劇中でしっかり描いてほしかったところです。
 行間を補えない事はない部分ではありますが、この「変化」を雑に処理してしまうという事はすなわち、前半の衝突は、“防衛隊がウルトラマンを撃つ”というギミックをやりたかっただけ、になってしまうわけで、丁寧にやる部分と省略していい部分の選択肢を間違えているのではないか、と疑問を強く感じ、雑、あまりにも雑。
 亜空間を広げるネクサスとそこに突入するNRとの共闘をスピーディに描き、初参加の八木監督がアクション面では凝った見せ方で盛り上げようとしてくるのですが、共闘に至るNR全体の「変化」が劇的に示されていないので、物語として積み重ねてきた負債が助走からのジャンプを重く妨げます。
 「よし、トドメだ」
 「孤門、いい気になるなよ」
 確かにちょっと調子に乗ってる感じの孤門に溝呂木の嫌がらせタイムが発動し、ビースト幻覚で標的を見失った孤門の攻撃は、ネクサスの足下に突き刺さる事に。これにより隙を突かれたネクサスは腕をガブガブ噛まれて苦しむが(やたら強調するので伏線か)、副隊長渾身の突撃から援護攻撃が成功し、メフィストとビーストは撤収。
 ところが、戦いを終えたNRは、麻酔弾で眠らせた筈の襲撃者達が死亡している事をMPに聞かされ……
 「そんな……だって、麻酔弾で眠らせただけだって……副隊長、あの時確かそう言いましたよね?!」
 真っ先に、副隊長の射殺を疑う孤門(笑)
 気持ちはわからないでもないのですが、毎度お馴染み、信・頼・感とは。
 最近、隊長が孤門に強い信頼を寄せている事になってしまった事もあり、実は孤門が副隊長を全く信頼していない(ナパーム事件もあったし)という事実が深く胸に突き刺さります。まあ、闇の絆で仲良しになったと思ったら、「民間人を焼却しかけた程度のトラウマでビーストを撃ち殺せないようなねんねは家に帰って布団にくるまってポケ○ンでもやってな!」扱いされれば、積み上げた友好度も塵と消えましょう。
 ところがところが、実は襲撃者達は、NRを襲った時点で、既に死亡していたのだった。
 「溝呂木……奴だ、奴が彼女たち4人を殺し、また操り人形に!」
 リコの死を乗り越え、アクティブになったというのはわかるのですが、急に現場で率先して喋り出す孤門くんに、まだ慣れません(笑) そして副隊長に対して謝罪の一言もなく、単に持ち前のデリカシー不足が、攻撃性に変質しただけなのでは疑惑も……。
 「……でしょうね。ただ……全ては一年前に始まっていたのよ」
 副隊長は思わせぶりに呟き、基地に戻った孤門は、この状況で聞かれなかったらだんまりを決め込むつもりだったとしか思えない隊長に、「一年前」の事を問い質す。
 「去年の、ちょうど今頃……溝呂木がまだこのチームの副隊長だった時の話だ」
 ここまでに仄めかされていた情報から、視聴者的には推測可能な事ではありますが、そこはまず、驚く所だったのではないか孤門。
 当時、隊長・溝呂木(副隊長)・凪・インテリ、の4人編成だったNRは、ビースト反応に緊急出動。生体反応の無い工場の中で、何故か複数の人が動く気配がするという不穏な状況に溝呂木は「わくわくするぜ」と口の端を歪め、突然ニーチェを持ち出した隊長は溝呂木と凪の先行を制止するが……
 「でも、奴は隊長の命令を無視した……」
 「……溝呂木は俺に言った。作戦なんて関係ないと」
 信・頼・感!
 溝呂木は、凪のビーストデストロイパワーを高める為に必要な行動だと隊長を説得し、隊長は結局、それを受け入れてしまう。
 「何故その時許可したのか、今でもわからない。……ただ、俺の心も、あの深い闇を覗いていたのかもしれん」
 一年遡っても普通に駄目な感じだった隊長も激務で心を病み加減だった事が明るみになり、重ね重ねティルトに必要なのは、専門のカウンセリング部門。……まあもしかしたら、カウンセラーにニーチェを勧められていたのかもしれませんが。
 工場内部に突入した溝呂木と凪は、襲い来る生きる屍の集団と交戦し……果たしてそこで何があったのか、工場は大爆発。
 「溝呂木は紅蓮の炎の中に消え、凪一人だけが生還した。それが、一年前の事件」
 引っ張り続けた溝呂木と副隊長の過去の事件に焦点が当たったのですが、肝心の部分はぼかして何もかもハッキリしない内容の為に、これといった面白みはなく(溝呂木は元副隊長、という要素も驚くほどさらっと流してしまい、そういう所こそ視聴者と繋げる孤門のリアクション機能を活かす部分では……と思うのですが)、どうにもこうにも今作は、“スタッフの中で出来上がっている物語”を“視聴者にどう面白く見せるか”という部分で、大きなボタンの掛け違いを感じます。
 個人的な好みとしては、ここで受け手を一気に物語の中に引きずり込まなくてどうするのか、と思うわけですが。
 「その夜……おぞましい悪魔が生まれ落ちた」
 「悪魔……メフィスト
 監視カメラに写る溝呂木とビーストの姿で、つづく。
 借金に埋もれて首が回らない低調な展開が続きますが、個人的に一つ、溝呂木登場後の、溝呂木の思惑に則って手足として動くビースト、に敵としての魅力を感じられないというのが、それに拍車を掛けています。そういう点でも、溝呂木の思惑を早めに明確にしてほしいのですが……結果的に、1クール少しの物語が全て、溝呂木による孤門への嫌がらせ、に終始していた事になったわけで、その先の部分の情報開陳は、早めにお願いしたいところ。