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限界夢幻 いざ飛び越え CLIMAXジャンプ

キカイダー01』感想・第20話

◆第20話「大狂乱シャドウ首領の正体判明」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 ここ数話、激しい導入部の続く今作ですが、TVアンテナに貫かれる男性、服を引き裂かれながらくびり殺される女性、と少々ショッキング度合いの強い、ハカイダーによる市民の惨殺シーンから始まり、どこへ行きたいのか『キカイダー01』。
 そして、滅茶苦茶唐突に姿を現す虫歯菌……じゃなかった、ビッグシャドウ。
 シルエットしか見せずに神秘性を醸し出す、というのはよくある手法ですが、正体(人間の姿)を見せる物語上の理由も無ければ特に劇的な演出もなく、ビックリするほど雑な初登場。
 「キガン城は白鷺ヶ原をおいて他には無い」
 風水か何かで決めたのか、シャドウ最大最強の秘密基地の建設現場にこだわるビッグ社長は、白鷺ヶ原自然を守る会のメンバーを次々と抹殺するハカイダーに、会長の三田村を殺害するよう命令を下し、ハカイダーの攻撃により次々と女性の服が裂け、あらわになった肌にHの署名が刻まれるという、本格的に何がしたいのか『キカイダー01』。
 そしてその悲鳴を聞きつけたリエコさんは髪型が元に戻っており、どこに征くのか『キカイダー01』。
 悲鳴の元に駆け付けるリエコとアキラだが、相手がハカイダーでは特に役に立たず、哀れにも宙を舞う三田村会長は、空中で突如消失。
 「ん?! 消えたか」
 ごくごく当たり前の現象のように呟いており、本格的に世界に対する認知が歪んできているのですが、ブラストエンドの副作用なのか、全てはハカイダーの脳が見ているピンクの水玉模様のタヌキの夢なのか。
 恐らく三田村をブラストエンドの応用による事象変換能力で救出したイチロー兄さんがトランペットを吹いて現れ、思い込みでパワー3倍を宣言するハカイダーに対し、ニヤリと不敵に笑ってみせる。
 「ふふふ、キチガイ犬ほどよく吠える。相手になってやる。来い!」
 今回も生身キャンペーンなのか、しばらく生身で戦ったイチロー兄さんがチェンジすると、満を持してハカイダー必殺のクライマックスカニばさみからの連続攻撃が放たれようとするが、既にその対策を練っていたゼロワンはゼロワンドライバーで切り返すと、ゼロワンカットへのコンボに繋げ、きっちりと前回の借りをのしを付けて返してきます。
 危うく思い込みパワーが尽きる所だったハカイダーは、社長命令を受けたナイトによって回収。当初の業務命令に従って三田村会長の家に侵入すると、看病していたアキラの洗脳を試み、脳と目がぺかぺか光るハカイダーは、映像的には格好いい。
 ギルの脳を持つハカイダーと、ギルの血を引くアキラは、親子だ同志だ殺された父ギルの仇を討つのだ、とアキラを洗脳したハカイダーは、ゼロワンのオイル交換カプセルとそっくりに作った破壊カプセルをアキラに渡し、アキラは白いハンドバッグに入っていた本物とそれをすり替え……どう見ても女性物のバッグなのですが、イチロー兄さんはそれを持ち歩いているの?! と思ったらバッグはリエコのものだったのですが、リエコがイチローのオイルを携帯しているのも、まるで秘書のようにオイル交換の時間ですと伝えるのも、何から何までおかしくて、どのセーブデータまで戻ればいいのか『キカイダー01』。
 何やら様子のおかしいアキラを気にしつつもオイル交換したイチローだが、ベッドで寝ていた筈の三田村会長がハカイダーによってさらわれており、その救出に向かう事に。
 「ふふふふ、もう来る頃だ。おかしい。来ない筈は無い」
 一息も入れぬうちに首をひねるキカイダー、気が短いというより、何か大事な配線が外れている感じがいや増します。
 「来ない筈は無い。よくわかるな」
 イチローハカイダーが目を離した隙に救出した会長をダブルマシーンの自動運転によって離脱させ、ヒーローの登場シーンとしては格好いい筈なのですが、事前のハカイダーの台詞が明らかに精神の平衡を欠いている為に、どこまでが現実でどこからが妄想なのか、本格的に不安になってきます。
 思い込み界王拳3倍と事前に仕掛けた罠で優位を確信するハカイダーは、イチローを殴り飛ばすと銃を構え、土手の上から自信たっぷりにヒーローを見下ろす姿には久々に悪のライバルとしての貫禄が宿り、デザインはホント、格好いいと思うんですよハカイダー……まあ丸々、前作の遺産であるわけですが。
 有頂天のハカイダーは、偽のオイルに交換したのでチェンジできないぞ、とイチローがチェンジを試みる前に告げて不意打ちのチャンスを自ら潰し、正々堂々ライバル宣言!!
 狼狽したイチローハカイダーの銃撃を浴び、ナレーションさんもイチローの危機を散々煽るが、Bパート入ってとりあえずチェンジしてみると、当然成功(笑)
 ハカイダー洗脳に屈していなかったアキラ少年は偽オイルをハカイダーに投げつけるのですが、明らかに三田村会長をさらわれるのを黙って見過ごし(これは仕方ないですが)、イチロー兄さんに事の成り行きを一切説明せず、物凄く不審な態度で決闘の趨勢を見守っていたアキラ少年は、密かに共倒れを狙っていたのではないか。……いったいどこで、イベント回収を逃してしまったのか『キカイダー01』。
 「ハカイダー! 俺はアキラくんの心を傷付けた、貴様を許すわけにはいかん!」
 「俺も貴様を生かしてはおけん!」
 作戦失敗から気を取り直し、それとなく洒落た返しをしてみるハカイダーだが、突然の地割れに飲み込まれ、強制帰宅。
 ところがハカイダーの言葉はアキラの心に思わぬ波紋を広げており、自らの出自を知った(この後の展開が亜空間すぎて、ここで“初めて知った”というニュアンスにしたかったのかどうか、なんともいえないのが凄く困るのですが……)アキラは、ゼロワンの呼びかけにも応えず、一人佇む。
 「アキラ、なんだよそのツラは?」
 「お兄ちゃん、僕たち、大悪人の子供なんだよ」
 そこにヒロシが現れるとごくごく普通に言葉を交わし、“運命に引き裂かれたすれ違いの兄弟”の再会イベントがいつの間にか終了しているのですが、修正パッチはいつ配信されるのですか『キカイダー01』。
 アキラは、シャドウ基地の秘密の入り口を探し当てたヒロシと共に地下へと入り込み、ジローと合流したイチローは、道で気持ち良く眠りこけていたミサオを発見。……謎めいたキーパーソンが、あっという間に助平カメラマンと同じフォルダに収納されているのですが、カメラマンは登場のさせ方も無理があれば好感度に繋がる要素も一つも描かれないので、いっそこのまま、コメディリリーフを交代してしまっても良いのでは、という気は。
 シャドウ基地では、とうとう辞表を叩きつけたハカイダーが叛旗を鮮明にするもビッグシャドウの操る幻影にあしらわれ、ハカイダー、闇に囚われるな!
 肌の内側を這いずり回る芋虫の感触に脳を掻きむしるハカイダーの前には、もう一人のハカイダーが現れ、生きていたのかブルー(レッド/シルバー)! ……ではなかった偽ハカイダーの正体はジロー。ビッグシャドウへの意趣返しを優先するハカイダーは社長に殴りかかるがまとめて姿を消し、ジローはジローで、悪ガキ発見みたいな軽いノリでアキラとヒロシを回収してゆき、本格的に、ついていけない展開が続きます。
 予告で多少面白そうだったジローの変装もドタバタ騒ぎの一環で終わってしまい、完全な無駄弾。
 別の基地で拘束されたハカイダーが、忠誠を誓うかよく考えろ、と社長に見せつけられるのが、シャドウ戦闘員に襲われる三田村会長の映像なのも意味不明なのですが……ええとあれ、もしかして、三田村会長=ギルの奥さん……?
 元妻疑惑の急浮上した三田村会長の危機にイチローが駆け付けると、「俺にゼロワンを殺させてくれ」と懇願したハカイダーは再び野に放たれ、いつもの10倍ぐらい意味のわからない展開が続きます。
 そもそもハカイダーがシャドウ組織に反抗的なのは、スカウトした社長が「ゼロワン抹殺にこだわらず命令に従え」と強制していたからなのですが……プレイが高度すぎて、脳の容量をオーバーしてきました(笑)
 ジローに三田村会長を任せたイチローは本日三回目となるハカイダーとの決闘に臨むが、ゼロワン抹殺の助力をハカイダーに約束したビッグ社長が遠隔操縦でブルドーザーを操り……いやいったいどうやって、ブルドーザーでゼロワンを倒すの?! と思ったら、なんとブルドーザーから飛び出すミサイル!
 だがゼロワンは慌てず騒がず「ブラストエンドクラッシュ」(と今回呼称)でブルドーザーを破壊し、リエコに三田村会長を預けたジローも参戦。結果的に、基地破壊ブラザーズと正面から戦う羽目に陥ったハカイダーは、思い込みのパワーも限界に達すると一方的な殴打を浴びた末、ダブルブラザーアッパーカットの直撃を受け、正真正銘クライマックスジャンプ。
 今までのしぶとさが嘘のように、笑うしかない呆気なさで木っ葉微塵に吹き飛ぶ最期を迎え、前回今回とハカイダー回といえばハカイダー回だったのですが、この敗北にも呆然とします。
 ナレーション「長年の仇敵ハカイダーは、ゼロワンのブラストエンドによって倒されたが」
 いつも名調子のナレーションさんまでしれっと嘘をつき、いったい全体、何が起こっていたのか『キカイダー01』。
 ナレーション「ハカイダーの首の行方の意味するものはなにか」
 だが木っ葉微塵になったハカイダーの頭部だけはビッグシャドウによって回収されており、恐らく忠誠回路を内臓した上で、頭部から復元されるハカイダー
 「ハイ、ビッグシャドウ様」
 打って変わって素直に命令に従うハカイダーはビッグ社長に忠誠を誓い、最高幹部に任命されると改めてゼロワン抹殺を許可されるが、どう考えてもこんな手間をかけて忠誠心100にする価値のある人材とは思えず、高度すぎるビッグシャドウのプレイに震撼しつつ、果てしなき戦いの旅は続く!
 …………70年代作品である事や、今作のアベレージを踏まえた上でも、最初から最後まで、制作現場で何があったのだろう、という大狂乱。
 破綻の度合いでいうと、『大鉄人17』第15話や、『仮面ライダーストロンガー』第26話に匹敵するレベルで、諸般の事情でシナリオから本編が大幅に変更されていると言われた方が納得がいくのですが、果てしなき戦いの道はどこへ続いているのか『キカイダー01』!
 時と場合によっては視聴継続を考え直すレベルの出来でしたが、ここまで付き合うと、今作の行方は(色々な意味で)気になるので、完走を目指したいと思います。次回――元よりそういう傾向はあるにせよ、このままエログロ路線に進むのは勘弁してほしいですが、さて。