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ひとまずネクサス(2)

ウルトラマンネクサス』感想・第15話

◆Episode15「悪夢-ナイトメア-」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:荒木憲一 特技監督:北浦嗣巳)
 憎しみを力に変えて、今必殺の、メガ・キャノン!
 念入りに振り返られた前回の悲劇の結果を、
 (少女を怪我させてしまった)
 で済ませる孤門は、もう、駄目かもしれない。
 そこはかとなく言葉のチョイスが軽い(辺りはなんとなく、万事にデリカシー不足な孤門らしいといえばらしいのですが)事に定評のある孤門が、ダム湖のほとりで膝をかかえていると、その前に姿を見せる姫矢。
 「どうして、そんなに彼にこだわるんだい?」
 それをモニターしていた白い人が視聴者の疑問を代弁し、今作にしては珍しく、気になる所にきちっと突っ込んでくれたのですが……OP明け、元同僚の男女による姫矢についての語りと、風に吹かれながら座り込んで過去の傷について語り合うやさぐれた男二人のシーンが、回想を交えながら約9分にわたって続く、というのが実に『ネクサス』。
 姫矢の元同僚二人に関しては、継続的なサブキャラクターの登場というよりも、急に再登場した悲劇の前振り、にしか見えないのが、良くも悪くも今作がここまで積み上げてきた作風といえます。
 姫矢は、紛争地帯で出会った少女セラ、その死の原因を作ったのがセラよりも写真を優先した自分自身である事を孤門に明かし、夢の中に現れたセラを追う内に、謎の遺跡でネクサスと交信して力を手に入れた、という以前の回想と接続。
 「俺はセラを救えなかった。そのセラに導かれ、俺はこの光を得た。この光の意味がなんなのか、おまえを助けた時、俺は感じたんだ。過去は変えられないが、未来なら変える事が出来るかもしれない」
 「…………無意味だ。……未来を変えたって、リコは二度と戻らない。……そんなの、無意味です」
 光の意味を探し続け、熱の篭もる姫矢の言葉に孤門は耳を貸さずに去って行き、取り残された姫矢はビースト振動を感知。同じ頃、白い人も微弱な振動を感知し、弱体化しながらも再び出現したネズミビーストを倒すべく、NRは出撃する。
 「孤門隊員! 全てはビースト。今度こそ憎しみを力に変えて、トドメを刺すのよ」
 「……わかってます」
 いよいよ、怨念でビームが出せるみたいな事を言い出した副隊長は両手に持った松明を振り回して孤門を焚き付け、そんな二人のやり取りを黙って見ている隊長……隊長……NRがこんな感じなのは、半分以上この人の責任な気がしてなりません。
 (孤門、憎しみを捨てろ。憎しみじゃ何も変えられない)
 (僕は力が欲しい。ビーストを倒せる力が)
 (孤門、過去と向き合い、未来を生きるんだ)
 (奴らがリコを殺した。奴らが!)
 走る姫矢と出撃する孤門の姿を交互に映し、ズレる思いを描くのは定番ながら格好いいのですが、両者の関係性が針の飛んだレコードのような描写の為に、結局は最初に提示された「どうして、そんなに彼にこだわるんだい?」に感想が戻ってしまって、もう一つ盛り上がりきれません。
 姫矢が、喪失(過去)に囚われて道を踏み外そうとしている孤門を心配している事や、そんな孤門を助ける事に「自身が光を得た意味」を見出そうとしている――姫矢自身が救われようとしている――のは納得できる範囲なのですが、そもそもの「妙に親身になって心配している」入り口部分の描写が不足しているので、十分に効果的な飛躍を果たす為の助走が足りていない感。
 様々な偶然が重なってそういう間柄になった、でもそれはそれでいいのですが、それで納得できるほど両者の関係がドラマチックに描かれてきたわけでもないですし。
 霧に包まれた工場に現着したNRは手分けしてビーストを捜索し、今日もダッシュで辿り着いた姫矢の前には溝呂木が嫌がらせに現れ、前回、恐怖よりも笑いを誘った、凪の視線を感じるぜぇぇぇぇぇぇぇ!ポーズの前に、ネガ表現した溝呂木の目元のアップが入り、画面にひび割れが走ってからの漲る溝呂木のポーズは一瞬になった事で、メフィストの登場シーンはだいぶマシになりました。
 対する姫矢が「貴様ぁ!」と叫びながら折りたたみ傘を振り上げるのは、『ガイア』でも我夢の変身を比較的ヒロイックに描いていた北浦監督の好みっぽい演出(他の作品は知らないので、ほぼ『ガイア』の印象ですが)。
 メフィストはデビルクローを取り出すとメフィスト空間を発生させ、そこに降り立つネクサス。しばらく打撃戦の後、空中高く上昇したネクサスが、高速回転しながら地表に連続で光線を放つのは格好良く、戦闘シーンが削られ見せ場が少なくなりがちな中で、ここぞのネクサスの見せ方に力が入っているのは、今作の良いところ。……ヒーローフィクションとして惜しまれるのは、それが、下手すると月1ぐらいな事でありますが。
 一方、ネズミを追い込もうとしていたナイトレイダーは、予想外のジャンプ力を持ったネズミにかき乱され、インテリが負傷。ビーストに銃を向ける孤門であったが、少女の一件がトラウマとなって撃つ事が出来ず、インテリ絶体絶命のその時、なんとか残り3人が駆け付け、ネズミは逃走。
 「なぜ撃たなかったの?!」
 再び般若の形相になった副隊長は孤門を地面に突き飛ばし、儚い、実に儚い、憎しみの絆と暖かい職場の幻影でありました。
 「孤門……」
 事ここに至って孤門の虚ろな表情に目を留め、ようやく心配そうな視線を向ける隊長だが、立ち直ったインテリを含めた4人は地面に倒れたままの孤門を置き去りにしてビーストの追跡に移り、戦場で銃を撃てないチキンどころかヒヨコ以下の×××××野郎は取り残されてビーストに食い殺されてもむしろ血税の節約であって、儚い、実に儚い、憎しみの絆と暖かい職場の幻影でありました。
 ……どうせなら孤門くんには、銃に「リコ」と名付けて寝ている時も起きているときも肌身離さず磨き続け、「今日は誕生日なんです。リコの」みたいな方向に突き進んで欲しかったのですが、なまじ同僚に向こう側の人が居ると、かえって正気に戻りやすいのか。
 メフィスト空間では、反撃のビームを受けてネクサスが墜落。更にメフィストの全体重を乗せた強烈なドロップキックを受けてダウンし、カラータイマーが点滅を始めてしまう……。
 (姫矢さん……あなたの言う通り、憎しみでは何も変えられなかった。僕はどうすればいいんだ。僕はもう……何をすべきか、わからない)
 悄然と歩む孤門は現場でヘルメットさえ外し……to be continued...
 憎しみでビーストと戦えるかの前に、同僚を見殺しにしかけた事の反省を少しぐらいしてほしい所ですが、それにも思い及ばない精神状態、そもそもリコの件から全く立ち直っていない上に、前回の件もばっちりトラウマになっているという、基本的に戦場に出してはいけないメンタルの人に対して、なんの助けにもならない上官2名と、なんのケアもせずに前線に送り込むティルトの駄目具合が突き抜けすぎて、戦闘員不足とか迫るビーストの脅威とか、言い訳にならないのですが(むしろ同僚を命の危険にさらしているわけで)、そういう足場固めをせずに状況だけ展開する為に、急に副隊長と親密度が上がったと思いきや早くも姫矢に乗り換える孤門、という話の都合ありきになってしまい、孤門モノローグも宙ぶらりん。
 基本的に恋人を失って情緒不安定、という理由付けなのでしょうが、「情緒不安定な孤門」を、溝呂木・副隊長・姫矢の3人が次々と好きな方向に蹴り飛ばす事で物語を動かしているだけで、それに参加しない人達の孤門の情緒不安定に対する反応がほぼ皆無な為、物語(及びそこで展開する人間関係)に、いつまで経っても味がしてこないというのが、つくづく残念。
 最低限、隊長が孤門に「戦えるか?」を確認し、(同僚はそれに反応を示し)、孤門が自分では大丈夫だと思っている事を示すプロセスが必要だと思うわけなのですが……工場に到着してからのやり取りは「現場での作戦分担について」なので意味が違い、出撃前にした事といえば副隊長の「あたし達の商売は何だ、お嬢様?」「「殺す! 殺す! 殺す!」だけなので、これまでも問題の多々あった、TLTの体制とナイトレイダーの人間関係という今作を蝕む骨粗鬆症が、全身複雑骨折として火を噴く事に。
 ……基本的にナイトレイダー隊員、人の心を持たないウォーマシンですし、ティルトはティルトで、困ったら記憶を消せばいい、で何事も進めてきた疑いもあり、全て必然的な帰結とはいえるかもしれませんが……。
 次回――孤門、今日からおまえの名は、タンクトップダークネスだ!