東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

流れよ我が涙、とハカイダーは言った

キカイダー01』感想・第16話

◆第16話「恐怖! ミイラ男のニトロ爆弾」◆ (監督:永野靖忠 脚本:押川国秋)
 「落ちるのは水爆じゃなくてお前達だ!」
 長い逃亡生活のストレスを訴えるようになったアキラ少年の為、砂浜で野球をして戯れようとする健気なイチロー兄さんだが、何かに気付いてバットを振らず、受けたボールをそのまま投げ返すと、アキラくんが爆発!
 見たかこれが殺人K字投法!! ……じゃなかった、いつの間にかアキラは、イチロー抹殺を目論むシャドウミイラに入れ替わっていたのだ!
 「シャドウミイラか。それにしては迂闊だったな。アキラくんは左利きでボールを投げるんだ!」
 ニヤリと笑ってびしっと突きつけるイチローですが……ええとその前に、アキラくんの心配をしていただきたい(笑)
 強力なニトロ弾を放つシャドウミイラは、ゼロワンカットを受けてバラバラになりながらも、首だけが浮遊。
 「ふふふふふふふ、いくらでも暴れるといい。アキラとヒロシの秘密は、もうすぐシャドウ組織の手に移るのだ」
 「なんだって?! くそぅ、罠だったか」
 イチローの気付かない間にアキラが誘拐されているどころか、何故かシャドウ怪人が「ヒロシ」の名前を把握しており、なにかと飛躍しがちな今作標準からしても戸惑う時空の歪みが発生中。
 アキラを誘拐した車はなんとかジローが食い止めるが、悪の組織に追いかけ続けられるアキラの心の傷は深い。自らの抱えてしまった秘密を憎み、背中を地面に擦りつける自傷行為がアキラの心境を劇的に抉るのですが、前回から急に情緒不安定になってきたのは、第1話時点で記憶を封じていた催眠(?)が解けてきたのか……?
 年相応の小学生らしくはなってきたのですが、やはりもう少し、イチロー&ジローとアキラ少年の“心の交流”の段取りが丁寧に組まれていれば、というのは惜しまれるところです(そういう構造になっていれば、イチローらとの旅路の中でアキラが失った感受性を取り戻していく的な流れとして納得度が高まりますし)。
 「……わかったよアキラくん。……でも、この地球上に、ビッグシャドウから逃れる場所はないんだ。戦って奴らを倒すより方法が無いんだ。……だからもう少し待ってくれ。きっとシャドウ組織を倒してやる」
 前回-今回と、キカイダー兄弟が「ヒーロー」として「子供」と「約束」を交わし、その瞳に高まる、破壊の殺意!
 一方、観光気分にひたっていたリエコはシャドウミイラに捕まり、アキラ兄弟の秘密を喋れと、シャドウ基地に吊されて折檻を受ける。
 「よぅし、知っているかいないか、コンピューターにギルの霊を呼び出させ、この女と話をさせるぞ!」
 だいぶ軽い扱いになってきたな、霊。
 「プロフェッサー・ギル! スクリーンに姿を現すんだ!」
 「うるさいロボットどもめ。また儂の知恵を借りたいというのか」
 そして、もはやハカイダーが変な機械に入るまでもなく姿を見せる亡霊ギルは、霊界アドバイザーに就任していた(笑)
 ……強引に理屈をひねりだすなら、ブラックサタンが前回ハカイダープロフェッサー・ギルの脳)を必要としたのは、霊界における亡霊ギルの居場所をキャッチする為であり、一度キャッチした亡霊とは、電話番号を知っているような感覚で、いつでも通信可能、といった感じでしょうか…………?
 亡霊ギルは会話の弾みでヒロシの名を洩らし、シャドウナイトが「ヒロシ! ヒロシというのか!」と興奮するので、本来はここでシャドウ組織がヒロシの名前を知るという段取りだったのでしょうが、事象変換系必殺技ブラストエンドの連続使用により、世界に時空の歪みが発生している模様です。なお、ぱっと見で性別のわかりくかったミサオは、女性と言及。
 ブラックサタンは亡霊ギルの記憶細胞の中からヒロシとミサオの映像記憶を抽出し、『01』世界における「霊魂」とは何か? に関しては専門家の研究を待ちたいと思いますが、ところどころ話の辻褄が合わないのは、既に半ば壊れているハカイダーの目にする現実と妄想(願望)が混ざり合っているからで、本当のハカイダーは、ブラストエンドによって爆ぜ散ったあの時からずっと、ビッグシャドウに回収された頭部だけがブラックサタンに接続されているのでは。
 そう考えると、コンピューターが気軽にギルを呼び出せる事に納得が行くような(笑)
 どこまでが現実で、どこまでが妄想なのか、今回は冴えている黒タロス&シャドウナイトは、もはやリエコの存在と全く関係ないところでミサオとヒロシの情報を手に入れるが、出社したビッグシャドウは突然、某国が水爆を輸送中の爆撃機を奪い、東京上空で水爆を落とせ、と新たなプロジェクトを指示。
 あ、あの、今、現行プロジェクトが良い感じに進行しているんですが……と当然の反論を試みるシャドウ部長だが、東京に水爆を落とせば世界が大混乱に陥り全面核戦争に発展して人類絶滅するんじゃねぇの? と、ビッグ社長は思いつきを譲らない。
 「そうすればこの地球は、簡単に我々のものになるというわけですね」
 最近ヘッドハントされてきたハカイ課長が、へっへっへと胡麻をすり、本日は大変三下属性です。
 「その通りだ。世界最強のロボットを作るよりその方が早道かもしれん」
 放映当時の世相としては、キューバ危機より約10年、米ソが全面核戦争の危険性を意識して緊張緩和に向けて進みつつも冷戦構造は未だ続き、今日よりなお「全面核戦争」という言葉が身近であった時代であり、今作のスリラー路線としては納得なのですが、「人間の愚かさを寓意的に煽る」などの要素が欠けている為、率直すぎて元も子もなくなってしまうのが今作らしいというか何というか。
 かくして、ビッグ社長の突発的な命令を受けたシャドウナイトと黒タロスは水爆の奪取へ向かい、シャドウミイラとシャドウゴーレムがアキラ&ヒロシの確保を任される事に。
 ところが、元ダーク関係者の意地を見せたリエコが、運搬中のニトロ弾を奪って逃走。鍛え抜いた投石スキルで次々とニトロ弾を放り投げ、揃って脅える怪人コンビ(笑) 爆発に怯みながらもじわじわとリエコを追い詰めた末、ニトロ弾が尽きたところで一斉に走って追いかけるのが(ミイラ、先程までゴーレムを先に行かせてゆっくり歩いていたミイラ……)、前回のハカイダーと同じ具合に最低の絵面になった時、波を蹴立てて疾走してきたのはイチローのダブルマシーン!
 ジローも駆け付けて兄弟の変身バンクを交互に映して混ぜ合わせたダブルチェンジから怪人コンビを撃退し、二人はリエコからの情報で、シャドウの狙いを知る。ジローは爆撃機へ、イチローはヒロシ達が宿泊している筈のホテルへと急ぎ、兄弟が二手に分かれて悪の組織に立ち向かう分割展開なのですが、どういうわけかジロー(前作主人公)の方が一応格上の敵とマッチアップし、冒頭に掲げた格好いい台詞を決め、ここまでの助っ人ポジションを越えて目立った扱いになるのは、そろそろ作品フォーマットが変わったりするのでしょうか。
 ミイラとゴーレムの二体を相手取った01は、何度バラバラにしても甦るミイラに苦戦するが、まずはブラストエンドでゴーレムを始末し、物凄い勢いで吹っ飛んでいくゴーレムの着ぐるみ(人形?)(笑) ミイラにも怒濤の連続攻撃からブラストエンドが炸裂し、事象の変換と決定により復活を阻止されたミイラは、五体バラバラとなって消し飛ぶのであった。
 一方、爆撃機のハッチから飛び込んだキカイダーは、狭い機内における二対一の戦いで苦しむが、突き落とされそうになったところを逆転し、宣言通りにハカイダーとナイトを上空から叩き落とし、水爆投下の阻止に成功するのだった!
 こうして、キカイダー兄弟の奮闘によりシャドウの計画は阻止されるが、ミサオとヒロシは、既にホテルから姿を消していた。そして、シャドウにとっては幸い(?)にも、海に落下していたらしいナイトと黒タロスは疲労困憊のていで海岸線から地上に上陸し、怪人ポジションの雑な扱いには定評のある今作ですが、体力の限界まで遠泳してヨロヨロしている悪の組織の幹部二人というのは、なかなか衝撃のシーン(笑)
 「まだ、勝ち誇るのは早いぞゼロワン」
 「最後の勝利は、必ず、我々の手に輝くのだ!」
 だが、遠吠えタイムに入るとしゃっきりする二人は、去りゆく二台のサイドカーへ向けて、雄々しく負け惜しみを口にするのであった!
 次回――東映名物・虚無僧軍団襲来! そしてそろそろ、設計図を巡る攻防戦が限界になってきたのか?! 続ければ続けるほど、イチロー兄さんのボディガードとしての雑さが目立つ事になっていたので、作品コンセプトを切り替えるのは有りかなとは思いますが、急展開の予感。