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そして旅路の終わりに

アベンジャーズ:エンドゲーム』感想(長い/ネタバレあり)

 大集合映画『アベンジャーズ』を軸に置いて、『アイアンマン』を皮切りに長く続いてきたマーベル・シネマティック・ユニバースの一つの到達点にして、第1部完結編といえる、『アベンジャーズ』タイトル第4弾。
 3時間という大ボリュームに、アクション、ユーモア、友情も愛情も激情も詰め込んで、更にたっぷりのサービス精神を染み込ませた極上の逸品で、大変面白かったです。
 ……大変面白かった、のですが、ラスト5分が求めていた方向性と違ったというのが、約10年がかりで辿り着いたエピローグとしては、あまりにも大きなボタンの掛け違いとなってしまい、ラスト5分! ラスト5分だけが! ううん……これはもう、量子もつれの生んだなにかという事にして、ラスト5分は、自分妄想エンドと差し替えてしまってもいいのでは、ぐらいな運動が脳内で巻き起こっているのですが、時間の経過と共に落ち着くかもしれませんし、これから感想を言語化していく中で見えてくるものもあるかもしれず、まあ、そんなわけで、以下、現時点ではラスト5分がすんなり飲み込めなかった人間による感想となります。
 本編ストーリーに随時触れながら、ラストまで言及するので、ご留意下さい。
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 「――5年前、我々は負けた。みんなが。友人を失い、家族を失い……自分の一部を失った。今、それを取り戻すチャンスだ」
 冒頭、ホークアイの一家団欒シーンから始まるのが、大変辛い。
 ホークアイ一人を残して一家が消滅し、“世界との接続の喪失”が極めて印象深く描かれ、ヒーローと世界との繋がり――その象徴としての“家族”というのが、シリーズを通して培われてきた要素にして、特に前作-今作を貫く、大きなテーゼとなっています。
 サノスによる全宇宙半分こ計画が実行され、ヒーロー達は完敗。失意の中、酸素切れの迫る宇宙船でペッパーにラストメッセージを残していたトニーは、宇宙を股に掛けるトンデモお姉さん(キャロル・ダンヴァース)に回収されて地球に帰還するが、成り行きで再会したキャップとの間は大変大変こじれにこじれていた。
 トニーに同行していたネビュラから情報を手に入れたキャップら生き残りのヒーロー達は、心身ともに疲弊の激しいトニーを地球に残し、サノスの隠居先の農園にカチコミ。「宇宙初めてのやつは?」とロケットのノリで軽く笑わせつつ、インフィニティストーンの使用により弱っているサノスを奇襲して取り囲むヒーロー達が、とってもえげつない。
 だがサノスは既に、インフィニティストーンの力によりインフィニティストーン自体を消滅させてしまっており、復讐に自身を見失っているソーは怒りに任せてサノスの首にストームブリンガーを振り下ろし……前作で猛威の限りを尽くした悪役が開始20分で首ちょんぱされ、そして5年後――という予想外も予想外な展開。
 キャップは、かつての退役軍人省でのサムを思わせるメンタルケアの集いに参加しており、ナターシャは出来る限りの平和を維持しようとアベンジャーズのまとめ役として活動を続け、闇に潜ったホークアイは、指ぱっちんに選ばれなかった家族の喪失を、指ぱっちんに選ばれた悪党どもを抹殺する事で埋め続けようとしていた。
 そんな折、トランクルームに放置されていた中古のバンの中から、5年前の実験中に量子の世界に取り残されていた、スコット・ラング――アントマン――が帰還し、前作ではガーディアンズ組が主に担当していた緩急や空気の切り替えを、今回はスコットとソーが担当。…………あれ?
 世界を滅ぼすのではなく、その維持を望んでいたサノスの目論み通りに、半分こ世界は半分こ世界なりに日常が進んでいく残酷な現実と、その一方で生まれた様々な喪失と傷跡が丁寧に描かれ、量子の世界に居て不在だった5年の間に、5歳分大きくなった愛娘と再会したスコットは、一つのアイデアを胸にアベンジャーズ基地を訪れる(ところでスコット娘がえらく大きくなっている気がするのですが、何歳設定なのか。あと、リアルに何年経過しているのかわかりませんが、終盤に登場するパンサー陛下の妹が、凄く背が伸びた気がしてビックリ)。
 時間の流れが違う量子の世界を利用すれば、過去に戻って失われた人々を取り戻せるのではないか……ホープらを失ったスコットの熱心な言葉に耳を傾けたキャップとナターシャは、ペッパーと無事に結婚し、一子を儲けて隠居状態のトニー・スタークの元を訪れる。
 『シビル・ウォー』辺りから社会への帰属を強く意識し始めたトニーが、ピーター・パーカーとの出会いなどを経て、ヒーロー引退をちらつかせるのが前作までの流れで、今作もそこに焦点が合うのかなと思っていたら、実際に結婚から親となって引退状態までを描き、そこから「再びヒーローになれるのか?」まで物語を進めてくるのが、今作の凄み。
 今の生活を守る為、一度は協力を拒否するトニーだったが、台所に隠すように飾っていたピーターの写真を見つめ……実の娘は生まれたけれど、トニーにとってピーターは“息子に近い存在”であり、巻き込んだ事への深い後悔も感じさせる、良いシーン。『シビル・ウォー』~『ホームカミング』~『インフィニティ・ウォー』と積み重ねられてきたこの二人の関係は、実にいい味を出しています。
 仮説の証明に成功したトニー、ハルクと融合を果たしたブルースの参加により、量子トンネルを利用して過去に戻り、サノスが手に入れる前のインフィニティストーンを入手するタイム泥棒計画が本格的にスタートし、かつての仲間を揃えようと動き出すアベンジャーズ
 半分の更に半分?となったアスガルドの民と共に地球に移住し、新アスガルドと名付けられた港町で暮らすソーは……たるみきった肥満体の飲んだくれになっていた。
 兄上ぇ?!


 単独作品も含めて史上最高に格好良かった気がするソーを、君は見たか!
 でカーニバル状態だったのに兄上ーーー?!
 アベンジャーズ一の萌えキャラを通り越して、とんだ飛び道具と化してしまったソー。草葉の陰でロキが……たぶん、腹抱えて笑っていますが、つまりアベンジャーイエローなの?!(雷だし) そういう事なの?!
 なにしろ兄上、「家族は厄介だな。父が死に際に言った。実はおまえには姉が居て、幽閉されていると」に始まり、怒濤の勢いで叩き落とされまくってきたので心が壊れても納得なのですが、『バトルロイヤル』で“真の王”となり、前回あれだけ格好良かったソーが、まさかほぼギャグキャラとして使われるとは思いもよりませんでした(笑)
 今作で、何が一番予想外だったかというと、ソーのこの扱い。
 ロケット&ブルースはなんとかソーをオンラインゲーム:ヴァルハラの館から連れ出し、ナターシャは日本でスーパーヤクザを切り刻んでいたホークアイを連れ戻し、実験と作戦会議を繰り返した一同は、いよいよ過去へ……というところで約1時間で、3時間の長丁場なのですが、時間配分は上手く出来ています。
 三組に分かれたヒーロー達は、ニューヨーク、アスガルド、宇宙へと飛び、ニューヨークでは『アベンジャーズ』第1作目の真っ最中、アスガルドでは『マイティソー2』、宇宙では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が始まろうとしており、ブルースはエンシェント・ワンと出会い、キャップ達はロキ捕縛の裏で暗躍し、ソーは亡き母の姿を目にし……なんだかんだと都合の良すぎるタイムトラベルに関するもやもやを、過去作品と接続し懐かしい顔ぶれ大挙出演の力技でねじ伏せる、豪華の極。
 そう来るか、と唸りましたが、シリーズ集大成の作品として、シリーズに長く付き合い共に歩んできたファンに向けてのサービスも含めた、楽しんだもの勝ちの内容でタイムトラベルを描いてきたのは、お見事。
 シールド(ヒドラ派)の面々がブツを回収したエレベーターにキャップがしれっと乗り込んでお互いドキドキする、逆『ウィンター・ソルジャー』を始めたシーンで大笑いしてしまった時点で、完敗です(笑)
 キャップvsキャップの夢の対決も面白かったですし(共に攻撃の決定打に欠けるが心身ともにタフ、という最悪の組み合わせ)、随所にサービス精神を溢れさせつつ、インフィニティ・ストーンを渡したらそちらの世界は良いがこちらの世界が困る、というワンの問いかけに対し、「使用したストーンは元の時点に戻しにくる」事で世界を分岐させはしない、とブルースが約束し、戻った世界で「勝つ」事で、ストーンを持ってきた複数の世界も「守る」事をヒーローが誓うというのは、非常に上手く決まりました。
 この期に及んで酒に逃避しようとするソーはややしつこかったですが、母との再会と助言により心の安定を取り戻す、というのは綺麗に収まりました。……登場しない父が、ますますアレな感じになりましたが、まあお父さん、死に際に(以下略)の人なので、仕方ありません。
 「あなたが目指す自分になりなさい」
 ストーンはロケットが首尾良く手に入れ、現在へ戻る前に、ちょっと待った。
 来るかな 来るかなー ハンマー来るかなー
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 (しばらくお待ち下さい)
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 ……ハンマー来たーーー!
 「まだ、捨てたもんじゃない」
 ……兄上の精神が不安定だったのは、単にハンマーが無かったからなのでは。
 かくして、ソーの情緒不安定が回復の兆しを見せたところで明るい音楽が流れ出し、宇宙では、バカが踊っていた。
 それを、ウォーマシンが超心配そうに見ていた。
 「…………あいつはアホか?」
 「……ええ」
 歌って踊れるスーターロードを気絶させ、ストーンを手に入れたウォーマシンは帰還するが、同行していたネビュラはシステムのリンクによりこの時代のネビュラに捕獲されてしまい、サービス精神に溢れた展開の合間に、未来を知ったサノスの脅威がひたひたと迫ってくるというのも上手い構成。
 開始20分で首ちょんぱされた悪の帝王が、些細な偶然を糸口に冴え渡る頭脳で真相に近づく事により格を取り戻していく流れが鮮やかで、なぜネビュラの扱いが大きかったのかも納得。
 ニューヨークでは思わぬトラブルから四次元キューブの確保に失敗し、最後の望みを賭けて、トニーとキャップは更なる過去へと飛ぶ事を決意する。
 「僕を信じるか?」
 「――信じる」
 再会と仲直り(盾の返却)はかなりあっさりめだな……と思っていたので、ここで二人がコンビで、というのは大変良かったです。
 かくしてトニーとキャップが向かったのは、1970年――ニュージャージー州キャプテン・アメリカ誕生の地、リーハイ基地。そこで四次元キューブを盗み出したトニーは生前の父と出会って成り行きから様々な会話をかわし、トニーはトニー自身がもうすぐ生まれる事を知らされる。
 「女の子がいい。私のようになる可能性が低い」
 「何か問題でも?」
 「大義の為に、個人の幸福を犠牲にする事は……虚しいという事だよ」
 一方、現在へ戻る為のエネルギー源としてピム粒子を手に入れ、憲兵隊から身を隠そうとしたキャップは、偶然マーガレット・カーター長官の部屋に入り込んでしまい、ブラインド越しに無言でペギーの姿をじっと見つめるシーンは、『ファースト・アベンジャー』からの全てが一本の糸で繋がり、キャプテン・アメリカは何故ここに居るのか?」が凝縮された、素晴らしいシーンと表情でした。
 その直後に、
 「名前はもう考えてます?」
 「妻は男の子なら、エルモンゾがいいって言うんだ」
 「え?! ……まあ、時間はあるし、よく考えて下さい」
 と、ぶち込んでくるのが凄い(笑)
 トニーとキャップは首尾良く現代に戻り、6つのインフィニティストーンが揃えられる、が……ソウルストーンの代償としてナターシャは自らを捧げており、ナターシャ、リタイア。
 ソウルストーン的な、誰かが死なないと手に入らないアイテム、というのは好きではないのですが、前作に続き今作でもそこは乗り越えられない壁(宇宙の法則)として立ちはだかる事になり、ナターシャは、前作のサノスと同じ行為を自らする事で、サノスに一矢報いる、という形に。
 好き嫌いでいえば好きな展開ではありませんが、ナターシャにとってはアベンジャーズこそが「家族」であり「居場所」という事が今作では繰り返し強調されており、家族の為に戦い抜いた、とはいえるでしょうか。『ウィンター・ソルジャー』以来の、今に居場所を持たず、それに一番近いのがアベンジャーズである、という共感から来るキャップとナターシャの戦友関係は、このシリーズならではの距離感で、面白かったです。
 ある意味、キャップとナターシャが男女として巧くやっていれば、もう少し別の未来があったかもしれない、という関係でもありますが。
 6つのインフィニティストーンが揃って新たなガントレットが完成し、遂にハルクが指ぱっちん。……の場面で、大体2時間。
 サノスの指ぱっちんにより消滅した人々は元に戻り……だがしかし、今ネビュラと入れ替わる事で基地内に潜入していた過去ネビュラが、ゲートを操作する事によってサノス戦艦を過去から迎え入れ、その奇襲攻撃を受け、アベンジャーズ基地・壊滅!
 そう、最終回直前と言えば、基地・壊滅!
 ……アメコミにもあるのでしょうか、このお約束。
 ハルク、ウォーマシン、ロケット、アントマンは、水没しつつある地下で危機に陥り、たまたまガントレットを拾ったホークアイは宇宙猟犬に追われ、アイアンマン、キャップ、ソーの3人は、過去から地球に降り立ったサノスと対峙、激突する。
 帝王サノスは、3人を千切っては千切っては投げる圧倒的な戦闘力を見せつけ、アイアンマンは気絶。ソーも必殺のストームブリンガーを逆に利用されて半分この危機に陥り……まあ、前世でサノスにだいぶ酷い事をしたので、この扱いもむべなるかな。
 あわれ雷神酒樽真っ二つのその時、地面に落ちていた大事なハンマーが持ち上げられるとサノスの背後から頭に投げつけられ、戻っていった先は……魂の盾を抱えたキャプテン・アメリカ
 「持てると思った」
 ソーはニヤリと笑い、遡れば『エイジ・オブ・ウルトロン』の際、酒の余興のハンマー持ち上げ大会でキャップが掴んだら僅かに動いてソーがちょっと慌てる、というその時点ではギャグシーンがあったのですが……たとえそれが過去にしかないものだとしても、「自分が今何故ここに居るのか?」を見出したキャプテン・アメリカは遂に“世界”と繋がり、“世界”と繋がったキャプテン・アメリカならば、ハンマーも持てる筈!
 家族とか安定を求めていた男は氷に埋もれ、帰る家もなく、愛する世界もなく、しかし信じる個人の為に戦い続ける事でしか生きられないバケモノであったキャプテン・アメリカが、今を生きる真の英雄としてソーのハンマーを振るう姿は、MCUキャップの集大成として文句なしに格好良かったです。
 大満足。
 ……だが、盾とハンマーを駆使し、稲妻まで放ってサノスを追い詰めたキャップも帝王渾身の反撃を受け、足を貫かれ、ハンマーを失い、魂の盾もボロボロに砕かれ、遂には半壊した盾を手に地面に横たわる。
 「長年に渡る私の……暴力も、虐殺も、悪意からではない。だがこれから……頑固で厄介なお前達の星を、始末するのにあたって、悪いが、愉しませてもらう」
 サノスの言葉に合わせ、過去から甦ったサノス四天王をはじめ、どこに詰め込んでいたのかという大量のサノス軍団が次々と出撃。
 それでも立ち上がり、右手の盾を締め直したキャップが大軍の前に独り立つ姿は、カメラをぐっとロングに引いて、絵画のような赴き(ラストバトルが、基地の破壊跡である噴煙のたなびく黒灰の廃墟で展開するというのは、映像的な都合もあったのかもですが、非常に最終決戦の場として良いシチュエーションでした)。
 だが、戦況はあまりにも絶望的。地球はこのまま、サノスにより蹂躙されてしまうのか……
 「……キャプテン、聞こえるか?」
 その時、キャップの耳に懐かしい声が響き渡り、背後に浮かび上がった光輪の中から姿を見せたのは、ワカンダのブラックパンサー
 ……え、そこ、バッキーではないの? とはちょっと(笑) ま、まあ、陛下、キャップと友好度高くはありますし、劇中ポジション以上に、演者さんの格に基づく出演調整などがあったのかもですが。
 次々と光の輪が生まれて復活したヒーロー達が結集し、ストレンジ先生がだいぶ頑張ってくれたようです。
 地下からはジャイアントマンが登場して救出したハルク達も合流。更にはヒーロー以外の戦力も続々と登場し、ペガサスナイトが普通に混ざっているのがちょっと笑えるのですが、実に気持ちのいいヒーロー大集合。
 戦士達はサノスの大軍と向かい合い、その先頭に立つのは――勿論、あの男。

アベンジャーズ!!
――アッセンブル」

 ハンマー構えたキャップの号令に合わせて両軍入り乱れての大集団戦に突入し、その中で描かれる様々な再会。
 トニーとピーターの抱擁が感動的な一方、まだ出会ってもいない過去から来たガモーラに手を伸ばしたスターロードは金的に蹴りを入れられて悶絶し、溜めた好感度は量子もつれの海に消えました。
 「こいつなの?! 趣味悪くない?」
 「こいつか木の枝の二択だったから」
 この局面でこれを突っ込んでくるのがホント凄いですが、ガモーラに関しては、過去からやってこないと復活できないのだなと、これも納得。
 ガントレット拾ったせいで大変な目に遭っていたホークアイは、機動力と近接打撃能力のあるパンサー陛下へパス。スピーディに駆け回るもサノス側近の魔法攻撃を受けた陛下からパスを受けたスパイディは宇宙猟犬に囲まれるが、遂に実行される瞬殺コマンド!
 ヴィジョンを奪われた怒りに燃え、潜在能力を解放したワンダは弱ファイアーボール連打から念動羽交い締めでサノスを追い詰め、設定上はかなり強力なキャラらしいですが、先程までのキャップの格好良さは……。
 追い詰められたサノスは戦艦による上空からの砲撃を明じ、敵味方を問わない爆撃が次々とヒーロー達も吹き飛ばし、ストレンジ先生は付近の湖の崩壊を食い止める係に就任。ハルクはブルースと融合した上でインフィニティダメージ、アントマン&ワスプは量子トンネル担当、ストレンジ先生は洪水の阻止、ソーは太りすぎ、と強みのあるキャラをそれぞれ理由をつけて封じているのも、ヒーロー大挙登場の集団戦において巧いところ。
 猟犬に押し負けそうになるスパイディをキャップが救い、久々に移動手段になるハンマーだが、砲弾の直撃を受けたスパイディはスーツを破壊され、ガントレットを抱えたまま地面に転がってしまう。宇宙帝王の誇る火力と物量の前に、新生アベンジャーズが最大の危機を迎えたその時……大気圏を突き抜けて駆け付けたのは、戦艦破壊大好きお姉さん!
 戦艦の破壊なら任せとけ! と宇宙から飛んできたキャロルはサノスの巨大戦艦を瞬殺・轟沈させ、画面一杯に広がって派手に墜落していく巨大戦艦を呆然と見つめ、あの人、マジ味方って認識でいいのかな……と佇むキャップと、……儂、タイムトラベルで自分の時代に戻ろうかな、という顔になるサノス。
 トンデモ中のトンデモ超人であるキャロルは、宇宙規模で働いているという理由をつけて冒頭とクライマックスだけの活躍となるのですが、その分ブレーキの壊れた暴れぶりで好き放題。予備知識無しで見ていたら「え……なにコノ人……」となる事請け合いだったので、見ておいて良かった『キャプテン・マーベル』!
 キャロルはスパイディから受け取ったガントレットを量子トンネルに投げ込もうとするが、寸前、サノスの投げたブレードがトンネルを破壊。ガントレットを手に入れようとするサノスに食らい付くアイアンマン、ソー、キャップも次々ともぎはなされ、頼みの綱のキャロルも、サノスの裏技、一度外したストーンを握りしめてぇ殴る! に敗れてしまう。
 サノスはいよいよ再び、インフィニティガントレットを身につけてしまい、あのね、私今、本気で大変なの……と洪水を食い止め続けるストレンジとアイコンタクトをかわしたトニーは、サノスに飛びつくが、力及ばす、吹き飛ばされる。
 「私は……絶対なのだ」
 宇宙全てを原子に還そうとする絶望の指ぱっちんが鳴る……が、効果は不発。
 サノスが身につけたガントレットにはインフィニティストーンははまっておらず、それは既に、飛びついたアイアンマンのものとなっていた……

「なら……私は…………アイアンマンだ」

 過去のペギーを目にする事でスティーブ・ロジャースに関して『ファースト・アベンジャー』からの全てが繋がったとの同じように、トニー・スタークはこの『アイアンマン』締めの台詞によって第一作から全てが繋がり、ヒーローを名乗った者が、ヒーローの宿命を貫き通す、という美しい、しかし残酷でもある集約。
 トニー渾身の指ぱっちんによりサノスの軍団は塵となって消滅し、座り込んだサノス自身もまた、消えていく……自らの求める大義の為に邁進していたサノスが、自身がその場を切り抜けるという目的でガントレットを求めた末、精神的にも敗残者となって消滅する、というのは、サノスをしっかり、悪党、の位置に落として、納得の決着。
 ――宇宙は救われた。
 だが、その奇跡の代償として、インフィニティストーンのエネルギーを至近距離で受けたトニー・スタークの命の灯は燃え尽きてしまう……。
 ナターシャ含め、結局、「奇跡」と「代償」なくしてサノスを打ち破る事が出来なかったの、というのはヒーローの逆襲を描く作品としては不満もあるのですが、指ぱっちん以前に起きた取り返せない犠牲も既にありますし、これが、今作としてのリアリティ、と飲み込む部分ではありましょうか。メタ的には、トニーかキャップの、どちらかが死亡しそうだな……というのはありましたし。
 生き残ったヒーロー達はそれぞれの家族と再会。トニーの送別がしめやかに行われ……笑う場面ではないのですが、黒いスーツを着て殊勝な面持ちで直立しているストレンジ先生が、ちょっと面白い……。
 主要キャストが揃う中、ファルコン・バッキー・ワンダの後ろに立っていた青年が全く見当つかなかったのですが……誰? その後ろは残念ながら出番が無かったマリア・ヒルさんぽくて(右側の老人は、なんかシールドの偉い人……?)、一番最後に出てくるフューリーは、基本的に便利キャラなので、今回、思い切って削ったのは良かったかなと思います。代わりに、かつての相棒(キャロル)が好き勝手やりましたし。
 ペガサスナイトに王位を押しつけたソーはガーディアンズと合流して自分探しの旅へと宇宙に飛び出し、船内の雰囲気がすっごい悪いのですが、姿の見えないガモーラには……逃げられたのか(笑) なんだか、イベントCGを再回収する旅が始まりそう。
 そしてキャップは、全ての後始末としてインフィニティストーンを過去へ戻しに向かい、だが5秒後、量子の世界から回収された筈のキャップの姿はそこにはなく……キャップを探すサム達が目にしたのは、湖畔のベンチに座る一人の老人。……それは、全てのストーンを元に戻した跡、自分の人生を生き、ただの老人となったスティーブ・ロジャースの姿であった。
 老スティーブは魂の盾をサムへと託し、若きペギーと踊る若きスティーブ、で終幕。
 ……で、このラストが、うーん、キャップ救済としてそちらへ行ってしまったか……と、個人的には不満の残る決着。
 基本的な部分で恐らく、「キャプテン・アメリカの退場と継承」というシリーズ全体の要求する大前提があって、それに合わせて、「キャプテン・アメリカをどう救うのか」という問題に対する解答がこれだったのでしょうが……でしょうが……とりあえず私の好みを言うとですね、「何故ここに居るのか?」を見つけ、アベンジャーズという仲間達も手に入れたキャップには(ラストバトルの大集合が象徴的なわけで)、“トニー・スタークが愛した世界”を守る為に戦い続けて欲しかった……のですが、そういったヒーローのエターナル化は、多分に私の好みでありますし、あまりアメコミ的ではないのかもな、とは思うところ。
 作品の結末を受け入れつつ、自分なりに納得できる範囲に寄せる解釈をするならば、ナターシャを失い、トニーを失い、そんな世界を背負い続ける事に限界が来た、というのはあったのかもとは思えるところで(これは、ロキを失って宇宙へ去ったソーにも言える)、特にキャップにとってのナターシャは、サムやバッキーとはまた違う形での“戦友”だったので、実はナターシャは割と、キャップの留め金であったのかもしれません。
 かくしてキャプテン・アメリカは「人間」に戻り、老兵は消えていく、というのは作品全体が持つ「ヒーローの退場」というベクトルには忠実であって、そう考えるとナターシャが途中退場という形にならざるを得なかったのは、ナターシャが帰る所を持っていない者であったから、であるのかなとは。
 ブルースはハルクと融合する事でそれを乗り越えていて、5年後の世界において、緑ブルースが子供達に親しまれている光景が挿入されていたのは、最後まで見てみると実は、軽いギャグのようでいて、かなり重要な意味を持ったシーンだったのかも、と思わされます。
 サムにしろバッキーにしろ、キャップにはそれをしていい権利がある、という視線で、去りゆく老兵に優しい眼差しを向けるのですが、キャップがヒーローからの退場を選ぶ決着は、トニーがヒーローに殉じたからこそ尚更、個人的には不満が先に立ちますし、バッキーを置いていく、というのも、納得はしにくいところ。
 ただ、作り手の側からすると、トニーが殉じたからこそ、キャップは人間として退場させた(ここで、キャップとトニーの位置づけが入れ替わっている)というのはあったのかなとは思え、最後の最後で、“ヒーロー観の違い”が大きな亀裂になってしまったのは残念でしたが、もう少し時間が経てば、もう少し納得できる部分もあるかもしれません。
 まあ、私は私でキャップに結構酷い事を求めているとは思うので、これがいわゆる、公式との解釈違いというやつでしょうか(笑)
 その点を除けば、大変面白かったです!
 3時間の長丁場を、〔絶望から再起への道〕〔サービス精神溢れるお楽しみの過去編〕〔ヒーロー大集合の最終決戦〕とした構成も上手かったですし、特にどうしても緩みの出る中盤を、作り手と受け手が共有できるお楽しみの時間、としたアイデアはお見事。クライマックスバトルもシリーズが積み重ねてきたものが存分に振るわれて見応えがあり、『シビル・ウォー』から溜めに溜めたにふさわしい、見たかったものを見せてくれる満足度の高さでした。
 風の噂で小耳に挟んだところでは、この後の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が今作の後始末要素を持った作品になるそうですが、『ホームカミング』は非常に面白かったですし、楽しみです。
 その先のMCU……をこれまで通りに追いかけ続けるかはなんともいえませんが、これは『エンドゲーム』後の一種の虚脱感が言わせるものであり、しばらく経つと、今度はこんなのやるのか! と目を輝かせているかもしれません(笑)
 とはいうものの、私はとにかく、キャプテン・アメリカスティーブ・ロジャースクリス・エヴァンス中村悠一)が大好きだったので、キャップ不在のMCUに入り込めるかは何とも言い切れない部分はあるのですが、クライマックスバトル、ハンマーと盾を構えたキャプテン・アメリカの姿は、MCUキャップの到達点として、最高でした。
 以上、だいぶ勢いに任せましたが、『アベンジャーズ:エンドゲーム』感想でした。
 この10年あまりの、素晴らしい旅を、数多の作り手に感謝。
 アベンジャーズ! アッセンブル!!