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迷妄クライマックス

キカイダー01』感想・第13-14話

◆第13話「怪談 妖怪ロクロ首の挑戦!!」◆ (監督:今村農夫也 脚本:押川国秋)
 もはやいったい、何と戦っているのか(笑)
 シャドウは、人工地震を引き起こす事で無人とした東京を占拠して巨大な基地とし、そのどさくさに紛れてアキラをさらおうという東京奪取作戦を計画し、もはやいったい、何が真の目的なのか。
 計画の一環としてTV局の女性アナウンサーが奇天烈な赤青化粧の怪女・シャドウロクロに襲われ、なんだか段々、アングラ演劇のような世界に突入していますが、気絶させたアナウンサーに化身の術でなりかわったロクロは、パニックを煽るようなニュースを読み上げ、全都民を避難させようとする。
 「東京は全滅するのです。一人の生存も許されないのです」
 ストレートなホラー演出が続く怪談シリーズですが、映像のスリラーに加えて、子供向きの科学スリラー(「人類は○○によって滅びる?!」的なやつ)の要素が入ってきたのは、少し面白いアプローチ。……まあ、アキラ少年には鼻で笑われますし、後半になると劇中から消滅するのですが。
 作戦は着々と進行中……とシャドウナイトは主張し、世界犯罪組織シャドウが本気を見せた大変規模の大きい作戦が展開している筈なのですが、これまでの実績と、予算の都合か致命的な映像のハッタリ不足が響き、地震も噴火も、全てシャドウナイトと黒タロスの脳内妄想なのではないか。
 イチローはアキラを伊東のホテルえびなに預けて地震研究所へ向かい、ナイトと黒タロスはどちらがアキラをさらいに行くかで揉め……復讐の為ならアキラなど二の次だ! という兄弟達への誓いはどこへ消えたハカイダー
 仇役が高らかに宣言した新たな行動理念が根こそぎ次元の狭間に消滅する事態にさすがに動揺が隠せないのですが、イチローイチロー地震研究所で待ち構えていたリエコと出会い、ストーカーの方も自分を見失っていた。
 アキラの投宿中のホテルをリエコに紹介したイチローは、研究所に入るや伸びる首に襲われ、首が飛んだり腕が飛んだり、シャドウロクロの奇抜な攻撃に苦戦するも、チェンジ01。東京を襲う地震の背後にシャドウの存在を確信したゼロワンは、ろくろ首を捨て置いて東京へ急ぐが、伊東のホテルえびなには、結局、ナイトと黒タロスが二人一緒に現れてアキラをさらってしまう。
 「待てハカイダー! 今同士討ちをしている場合じゃない」
 首尾良く任務達成、かと思いきや、案の定アキラの身柄を巡って醜い内輪もめにもつれ込んだ両者は、しばらくへっぴり腰(ナイトがどうにも動きにくそう)で剣を打ち合わせた末に不意に正気に戻るが、その間にモーターボートで近づいていたリエコが、ダイナマイトを投擲し、《投石》は地球人の基本スキルです。
 知力1と1を掛け合わせても1、の二人はまんまとリエコの挑発に乗ってアキラの元を離れ、その隙にアキラを救出するリエコ。慌てて戻ってきたナイト&黒タロスと戦闘員に囲まれ、(たぶん東京の変事を既に解決した)イチローがトランペットを吹き鳴らして助けに入る乱戦の中、乱入したシャドウロクロがアキラを拉致し、幹部クラス二人よりよほど有能。
 イチローは逃げるシャドウ一味をサイドカーで追跡し、後部座席にシャドウナイトがでんと座り、助手席では奇っ怪な衣装と化粧の鬼女が髪を振り乱すオープンカーの横を、オートバイにまたがったハカイダーが並走するのは、世にも奇抜な絵面で、色々、どうして、こうなったのか!
 イチローの妨害を買って出たロクロは、両手を飛ばすリモコンアームでサイドカーの運転を妨げるという知略を発揮すると、首を伸ばしてイチローに絡みつき、崖下へ落下させようと目論むが……
 ナレーション「負けるなゼロワン! 力を奮い起こせ! 地球を狙う悪の組織・シャドウに立ち向かう者は、お前だけなのだ!」
 不在のジローに代わって突如ナレーションさんから贈られたエールを受けて、イチローはチェンジ01するとロクロを振りほどいて苦境を脱し、あわや解体の危機にあったアキラを救出。……今回、アキラに隠された秘密の設計図を見つけ出す手段が、「腹をかっさばいて取り出す」になっているのですが、本当にそれで大丈夫なのかハカイダー。もう少し落ち着いて考えてみた方がいいのではないかシャドウナイト。
 迷走を続けるナイトとハカイダーを軽く蹴散らすも、圧倒的知謀と有能さを見せるシャドウロクロ(今作ここまで比)にまたもアキラを奪われ、身動き不能に陥るゼロワンだが、絡みつく首に至近距離で殴打を繰り返すと、その度にアップで怪女が悲鳴をあげ、幾ら何でも色々とやりすぎ感が溢れます。
 シャドウナイトはゼロワンに壊されるよりも先に自ら基地を自爆させてゼロワンを始末しようとするが、基地破壊の使徒たるゼロワンが基地破壊に巻き込まれて死亡する筈がなかった!
 瓦礫の中から雄々しく立ち上がったゼロワンは戦闘員軍団を蹴散らすとロクロのリモコンアームを打ち破り、頭部を直接ぶつけてくる必殺ハンマーロクロをかわしてブラストエンドを叩き込み、本当に、派手な化粧の女性が木っ葉微塵に吹き飛ぶという、やけっぱちのような結末を迎えるのであった。
 シャドウナイトと黒タロスは二人並んで遠吠えタイムを仲良く担当し、幹部クラスの頭脳が摩耗していくのに反比例して怪人ポジションの頭脳が優秀になるという変化球で、シャドウロクロ、実に惜しい怪人を失いました……。
 「我々は必ず勝つ! あのアキラの体内に秘められた、無敵の力を手に収め、最後には必ず、この地球を制服してみせるのだぁ、ぬはははははは!!」
 気がつけばすっかりアキラの秘密頼りとなり、単勝万馬券を当てて人生一発逆転だ!みたいな調子になってきた世界犯罪組織シャドウの明日はどっちだ……!
 次回――プロフェッサー・ギル、復活?!

◆第14話「怪談 ギルの亡霊が地獄で呪う」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳
 「アキラ……アキラは、儂の実の息子だ……!」
 ビッグシャドウは謎の装置でハカイダーの頭脳からプロフェッサー・ギルの亡霊を呼び出し、その口から明かされる衝撃の事実!
 ギルは世界最強巨大人造人間・ジャイアントデビルの設計図を、特殊インクを用いて自らの二人の子供の背中に隠したのであった。果たして、特殊インクを読み取る方法は? ギルのもう一人の子供とは?
 「そいつは言えんなぁ……シャドウナイト! ふふふふはははは、ぎゃはははははは!」
 いやらしい高笑いを残してギルの魂は冥界へ戻ってゆき、シャドウナイトがブラックサタンにギルの子供を検索させると、マユミという10歳の少女が90%以上の確率でギルの子であるとして浮上する。
 シャドウは、白髪を振り乱し巨大な一つ目という見るからにグロテスクな怪ロボットをマユミ(斎藤浩子さんというと、『超人バロム・1』で港南小のマドンナを演じていた方でしょうか)の元に送り込み、その催眠ガスを浴びせられたマユミは、自分の顔が醜く崩れ落ちる恐怖に苛まれる事に。
 怪人に「美しい顔」と言われ、その虚栄心を心の隙間として突かれるマユミですが、実際に自分を美しいと思っている様子なのが、大変、須崎くん(『超人バロム・1』)を思い出させます!
 怪談シリーズとしては『四谷怪談』を下敷きにしているようで、醜くただれた特殊メイクの女性が繰り返し登場してマユミを責め立てる、容赦のないエスカレートぶり。
 その頃、マユミを助け、怪人を追っていたイチローは、シャドウ戦闘員にまんまと一杯食わされていた。
 「しまった! ぬいぐるみだったか!」
 戦闘員が怪人の被り物を被って偽装する囮作戦は、多分初めて見ましたよ……!
 一方、謎の装置の上でジタバタして出番終了かと思われたハカイダーは、本日もしぶとくアキラとリエコを狙い…………なんだか、今日のハカイダーは、マスク部分に、大変、違和感があるのですが……。……台無し系の話になりますが、中の人の頭部のシルエットが露骨に浮き上がってしまっている上に、ハカイダーの顔部分も少しずれている気がするのですが、急遽代役が入ったらマスクが合わなくてとかなんかあったのでしょうか。
 アキラ少年の事は心配だが、それはそれとして聞こえてくる誰かの叫びを無視できない体質なので、しばしばアキラを無防備にしがちなイチロー兄さんが何とか駆け付け、更にジローも参戦。
 「一対一では俺に勝てんと見たなぁ」
 未だにその認識を維持できるのが、一周回って尊敬に値するよ!
 「馬鹿め! 今兄さんには助けに行かなければならない人がいる」
 イチローをマユミ母子の元に向かわせ、アキラとリエコを逃がしたジローは黒タロスと激突するが、「チェンジ!」でいつものようにきりもみジャンプで瞬間変身したキカイダーに、空中で炸裂するまさかのクライマックスジャンプカニばさみ!
 変身シークエンスが完了していない無防備な時間を狙って放たれた掟破りの悪の一撃がキカイダーに命中し…………いつ以来でしょう、黒タロスがちょっとでも格好良かったのは。今日から君は、カニタロスだ!
 ……まあその後、軽々と投げ飛ばされて斜面を派手に転がり地面に這いつくばって痙攣していたところを、シャドウナイトに「ふん、負け犬め」と蔑まれるのですが!(笑)
 「今頃来るなら、何故……」
 そして、先程までの威勢はどこへやら、ナチュラルに逆恨みを口にし、凄い、凄いよハカイダー……。
 命令無視の単独先行をなじられたハカイダーはシャドウ基地に連れ帰られ、ビッグシャドウの前で粋がるも精神攻撃を受けて藻掻き苦しみ、屈服。
 アキラ達の秘密を聞き出す為にリエコを確保するのが仕事であり、命令以外の行動は許されない、と行動理念を再上書きされる事に(まあ、記憶回路に問題がある上に面の皮が栃尾の油揚げなみに分厚いので、またすぐに忘れそうですが)。
 マユミ母子がグロテスクなメイクの幽霊に執拗に追い立てられる中で、母子の絆という要素がしっかり盛り込まれたのは、今作ここまで欠けがちな部分だったので良かったです。逃げ惑う母子はリエコとアキラと遭遇するが、まとめて追い詰められた所にトランペットの音色が響き渡り、待ってましたのヒーロー登場。
 幻影で母子を脅かしていたシャドウロボット・ナンバーセブンティーワン(大変言いづらそう)が正体を現すとジローも駆け付けて兄弟はダブルチェンジを決め、本日も戦闘員が次々と爆発四散し首が飛ぶゴア表現のカーニバル。……基本的に戦闘員の破壊描写にこだわる今作ですが、兄弟が色々と技名を叫ぶのも加えて、今回は特に派手な印象。
 シャドウ戦闘員を壊滅させ、ナンバー71を挟み込んだ兄弟は、ゼロワンカット → (無言で踏む) → ゼロワンドライバー → 大車輪投げ → ブラストエンドと左右から怒濤のコンビネーション攻撃を浴びせ、一方的に虐殺。
 …………いや、あの、さすがにちょっと、鬼か。
 そして冒頭のギルの言葉を裏付ける形で、「アキラ=ギルの息子」であると語ったリエコは、そのアキラの教育係であったという正体を明かす。(迫り来る正義の鉄拳によって壊滅の危ぶまれる悪の組織に居てはいけない、と)アキラの将来を危惧したリエコはアキラを連れてダーク基地を逃げ出した身であり、イチローらに正体を明かす事を頑なに拒む・各種の謎スキル・キカイダー兄弟についてある程度知っている、というリエコの秘密とは、元ダークの関係者だった、というのは納得の行く種明かし。
 シャドウの探すアキラの兄弟――もう一人のギルの子供とは、アキラの二つ上で名前をヒロシ。だがリエコはその顔を知らず、もう一人の教育係であるミサオと現在行動を共にしているかも、わからないのであった。
 「ジャイアントデビルとは、この世に誕生させてはならない、悪魔のロボットなんです。ジャイアントデビルは、地球を破滅させる力を持っているんです」
 ダーク破壊部隊が次々とキカイダーに始末される中で、焦り追い詰められたプロフェッサー・ギルが設計した狂気の巨大ロボ、ジャイアントデビル(シルエットは土偶)。果たしてその設計図を、そしてその身に設計図を背負わされてしまった哀しき兄弟を、キカイダー兄弟は守り救う事が出来るのか。――アキラの兄ヒロシはどこに。イチローは征く、果てしなき戦いの道を。
 そしてハカイダーは今日も遠吠えする、果てしなき負け犬の道を。
 今回わかった事:シャドウの誇る巨大電子頭脳ブラックサタンも、ぽんこつ率90%。
 名前か、名前が悪いのか……因果を書き換え、裏目エネルギーをこの時空に呼び込んでいるのか……。
 シャドウの先行きに対する不安はまあさておき、“謎の美女”と言っておけば何でも許されるのもさすがに限度を遙かに越えていたリエコの秘密が、まさかの相応に納得が行くというミラクルな着地を見せ、そこから繋がる新たな謎が新展開の推進力となる豪腕は、さすがの長坂秀佳
 終わりよければ全て良しな部分はあり、今後このテンションが維持されるかも怪しいですが、今作の物語部分への印象が大きく好転する一撃となりました。
 主にハカイダー関係を中心に今作的な見所も数多く、なかなか楽しめた一本。
 次回――「爆発」シリーズ、スタート?!