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発見! 敵の基地 迫る無慈悲な鋼鉄の腕

 本日2本立て、その1。

キカイダー01』感想・第10話

◆第10話「大首領ビッグシャドウの怪奇!?」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 ハカイダー部隊が教えてくれた事。



1,悪の組織たるもの、トップが軽々しく最前線に出てはならない。
2,悪の組織たるもの、組織の階層構造を意識し、ヒーローに倒されても虚勢を張れるだけの怪人ポジションを相当数配備すべし。
3,同様に、トップが頻繁に部下と横並びになってはいけない。
4,やむを得ず3の条件が満たせない場合、組織上層部の人間関係の険悪さをアピールし、足の引っ張り合いが不覚の原因である、という言い訳を用意しておこう。
5,自爆装置のセキュリティは最低限2段階認証で。

 「儂の名は大犯罪組織シャドウの代表、ビッグシャドウ」
 形を変え続ける黒い影、で表現されるビッグシャドウは組織存亡の崖っぷちに立つ黒タロスをスカウトするが、現状認識の甘さとプライドの高さには定評のある黒タロスはこれを拒絶。遠隔攻撃で黒タロスを謎の空間に引きずり込み、床をのたうつ苦しみを与えるビッグシャドウの正体不明の脅威が強調される一方、黒タロスの株価下落は留まるところを知らず、もはや取引停止状態。
 上場廃止の危機が迫る中、銀タロスはイチローを襲撃し、黒タロスはシャドウナイトとシャドウ亀に一時共闘を持ちかける。日曜大工でこつこつ修理していたサタンダークネス発生装置が火を噴いて変身不能に陥るイチローだが、そろそろ余裕が出てきたのか慌てず騒がず敵襲に対応している内に銀タロスの振り回した電磁棒が装置を壊してしまい、チェンジ・ゼロワン。
 シャドウコンビは黒タロスと銀タロスが慌てている内にサイドカーに駆け寄り、毛布に包まれたアキラをさらうせせこましい手段で漁夫の利を得ようとするが、それは囮のぬいぐるみだった! と物凄い勢いで悪役の間が抜けていく『01』マジック!
 いちはやくリエコと逃走していたアキラの前には銀タロスが立ちはだかるもゼロワンがそれを阻み、今日もゴルフ場に築かれていく鉄くずの山。ところがその隙にシャドウコンビがアキラとリエコをさら……おうとしてゼロワンと睨み合いになっている間に、背後でアンドロボット軍団が二人の身柄を掠め取り、新たな悪の組織の登場で三つ巴の戦局の中、ヒーローがかつてない危機に陥る、のではなく……二つの組織が競い合うように小物路線を加速させていくという悪夢のごとき『01』マジック!
 まあ、結果的にアキラとリエコはかつてない危機に陥っているので、ヒーローにとってもかつてない危機といえるのかもしれませんが、イチロー兄さんのリアクション薄めなので、あまり切迫感がありません(笑)
 アンドロボットを止めたいが、背中を向けるとゼロワンに殴り殺される、と微妙な立場に追い込まれて右往左往するシャドウコンビはビッグシャドウによって回収され、両者を正面衝突させようというビッグシャドウの思惑通りにハカイダー基地へと急ぐゼロワン。
 そこではアキラ少年がパンツ一丁で水責めを受けており、小学生でも容赦なく吊すのが、大変70年代です。
 アキラの体に特殊インクで隠された、世界最強のロボットを作り出す為の設計図についてリエコは必死に口を噤み、拷問に耐えている間にゼロワンが登場。
 「ゼロワンは、俺の電子棒にやられて身動きが出来んぞ、かかれ!」
 ラッキーヒットが鳩尾に入り、腹痛を訴えてうずくまるゼロワンを取り囲んで気勢を上げる銀タロスだが、そんなわけないだろう、と思い切り顔面に拳を叩き込まれ、アキラ達を逃がす為のゼロワンの陽動にまんまと引っかかってしまう。
 銀タロス軍団を殴り飛ばしたゼロワンはハカイダー基地に取って返すと、崩壊の叫びに飢えた基地破壊センサーの導きにより、全国ハカイダー基地MAPと、その下に設置された〔非常用 押す〕のボタンを発見。
 「ハカイダー基地の自爆装置か。このボタンを押せば、全国のハカイダー基地が木っ葉微塵だ」
 基本的に〔押してはいけない〕ボタンに、力強く〔押す〕と書かれているのが変なツボに突き刺さったのですが、世界征服に乗り出すにあたって必要な組織体制を全く構築できていないのに、どうして、万が一の非常事態にあらゆる証拠をまとめて隠滅する準備だけは整えてあるハカイダーーーーー?!
 普段全く戦力差を計算できないのに、どうして、そこだけ、凄く弱気なの?!
 それとも最後の最後、ヒーローに追い詰められた時に「おのれキカイダー……だが、貴様もただでは帰さん!」と断末魔を残すや基地もろとも道連れ自爆を敢行する時が楽しみで仕方なかったの?!
 そんな悪の組織の浪漫をあっさり踏みにじろうとするゼロワンに立ち向かう銀と黒だがざっくりと殴り倒され、コンマ1秒も躊躇なくボタンを押したゼロワンは脱出。
 「おお?! くそぅ、またしてもゼロワンめ! おおー?! く、くそぉー! ば、爆発するぞ! のわ! ぐぉ、ぬぁ、逃げるんだー!」
 カウントダウンもなく潔い爆発に巻き込まれた黒と銀は這々の体でその場を逃げ出し、意外と残っていた全国のハカイダー基地は次々と炎に沈み、地上ではハカイダー基地完全破壊クエストを成し遂げた鋼鉄の腕が、もはや戦力の99%を失ったハカイダーを待ち受ける。
 「待っていたぞハカイダー! 今日こそおまえ達と決着をつけてやるぞ!」
 「望むところだゼロワン。貴様の為に、ハカイダー基地は爆破された! 3年がかりで築き上げた、ハカイダー基地をだ!」
 切ない。
 「何年がかりで築こうと、悪は悪だ!」
 「おのれ~、おのれゼロワン! その口、二度と聞けなくしてやるぞ!」
 とうとう身一つでキカイダーに立ち向かう黒タロスと銀タロスだが、まずは銀タロスがブラストエンドの直撃を受け、呆気なくクライマックスジャンプ。
 「おのれゼロワン!」
 この期に及んで正面から素手で殴り合いを挑み、誇り高いライバルというより頭脳回路の配線ミスが深刻に疑われる黒タロスは、膝蹴りの連打を浴びて地面に叩きつけられるとすかさず銃火器を取り出し、照準をゼロワンへと定める。
 「最後だゼロワン」
 今更この程度で優位に立ったと信じて疑わない頭脳回路の(以下略)は、低く嗤いながら引き金を引くが、ジャンプでそれをかわしたゼロワンはチョップで銃をはたき落とすと一方的なパンチの嵐を浴びせ、弱った黒タロスにブラストエンド!
 ここまでの事例を見るに恐らく、ブラストエンドは特定の手順を踏む事で時空をねじ曲げ「○○は破壊された」という結果をもたらす事象変換系の必殺技(その為たとえば、「ガッタイダー」を破壊できたが、「ハカイダー四人衆」は破壊しきれなかった)なので、不自然にクライマックスジャンプした黒タロスは抵抗不能のまま空中で完全破壊される……と思われたその時、何者かが更にその事象を上書きする事で爆発が収まると黒タロスの姿はかき消え、後には不気味な笑い声が響くのであった。
 さすがに黒タロスは在庫一掃処分でポイ捨てされずリサイクルに回されたので、再登場に一応期待したいです。脳の配線を繋ぎ直して幾つか部品を交換すれば、口笛の吹き方ぐらい思い出せるのではないか。
 一方、謎の女リエコはアキラと合流したイチローの前から早々に姿を消し、西の京・山口は湯田温泉に辿り着くと、独り呟く。
 (……私、やはりアキラちゃんの側に居てはいけないんだわ)
 今回、ハカイダー部隊の激しい折檻を受けながらもアキラの秘密を守り通そうとし、体を張ってアキラへ対する真摯さをアピールしたリエコが、新展開のどさくさに紛れて退場? と焦りましたが、予告に登場していて一安心。リエコは言行と扱いがあまり遠回しすぎて、好感を持ちづらいストーカーになっていたので、もう少し早く、アキラへの真心を明示して視点の変わる感情移入のフックを作っておければ良かったな、と思うところ。
 「いくら逃げても無駄だ。アキラはシャドウが手に入れる。全世界を征服できるのは、このビッグシャドウしか居ないのだ。ゼロワン、貴様の命、そう長くは無いぞ。ふふはははははははは!! あはははははは……」
 一つの邪悪を打ち破ったキカイダー01だが、千変万化する巨大な影は闇に蠢き、次回――トーンの変わった予告で、怪談シリーズ開幕?!
 子供向けスリラーとしての怪談シリーズもよくある展開ですが、既に下落傾向の見えるシャドウの株価は、世界大犯罪組織の面目を見せつけ、相場を盛り返す事が出来るのか、大変不安になってきます。
 賞味期限切れの深刻だったハカイダー部隊に取って代わる新たな悪の組織が登場するも、燃えない生ゴミの片付けを優先して直接対決は控え目となり、作品にようやく登場した一般怪人ポジションも2週に渡って顔見せの一当たりに終わる、という勿体ぶった展開ながら、それによって未知の敵の脅威が膨らむのではなく、新たな敵の小物感が増していくという、ある意味、斬新な作劇。
 今回ジローが登場しなかったので、前回の兄弟合奏を最後の見せ場にお役御免かと思ったら次回予告で登場していましたし、全国のキカイダー基地を生け贄に捧げる事で難を逃れたシャドウ基地は、果たして、基地破壊ブラザーズの猛威に抗う事が出来るのか?!
 もはや「アキラくんの抱えた秘密」が、「全世界の悪の組織への壮大なトラップ」になりつつある今日この頃、イチローは征く、果てしなき戦いの道を!