風邪気味と台風でへたれている間に、ラグビー日本代表がスコットランドを破ったり、巨人とソフトバンクが日本シリーズ出場を決めたり、クロノジェネシスが秋華賞を勝ったり、色々と起こっていた。
『キカイダー01』感想・第9話
◆第9話「大犯罪組織シャドウ出現の怪!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
見所は、リエコの旧知の博士に変装して身辺に近付き、アキラ少年をさらおうとするもなかなか隙がなく、仕方がないので延々と遊園地できゃっきゃうふふする羽目に陥る赤タロス。
……まさかそれが、思い出のCLIMAXになるなんて。
イチローとジローはシャドウナイトにさらわれたアキラ少年を追い、70年代特撮名物モーターボート! を追って水面を走る、ちょっと雑な二台のサイドカーのミニチュア!!
だがアキラを抱えて小島に上陸したシャドウナイトには青タロスと銀タロスが襲いかかり、その間に逃げ出したアキラはキカイダーに救われてロープウェーに逃げ込むが、山の上ではハカイダー黒青銀が待ち受けていた!
という、時制や場面移動の異次元具合が激しすぎて、一周回って面白い事に。
そして、ロープウェーの到着をじっと駅で待つ悪役、の間抜けさ加減がクライマックスを突破しようとする中、今日もイチロー兄さんがロープウェーの上に書き割りで現れる!(写真に絵を書き足している?)
「チェンジ・キカイダーーー、ゼロ・ワン!」
イチローはゼロワンへと変身し、あらゆる基地と切り札を破壊しつくされ心身共に摩耗しきったハカイダー四人衆は、もはや正常な判断能力を失ったまま基地破壊ブラザーズに正面から挑もうとするが、乱入した何者かの攻撃を見るや、即座に逃走。そしてキカイダー兄弟の前に、新たな敵が姿を見せる。
「俺はシャドウロボット、アカメンガメ。俺と戦うのはよせゼロワン。おまえに勝ち目は無い。アキラを渡し、ハカイダーのように逃げ去るのが賢明だ」
「間違えるなアカメンガメ! キカイダー01は正義の戦士だ!」
「いひひひひひひ、それほど死にたいのかゼロワン。行くぞゼロワン……アーカメンブーメラン!」
(かきーん)×2
「う、ぐぁ?!」
物々しく登場したシャドウ亀の放った飛び道具はキカイダー兄弟にあっさりと弾き返され、その直撃を受けて亀は無様にひっくり返り……笑っていい場面なのかどうか真剣に考え込む羽目に。
「今日のところはお前達と戦う意志はない! アカメンガメは俺が引き取る!」
シャドウ上司が適当にその場を誤魔化して亀の身柄を拾って逃げ帰っていたその頃、アキラくんは展望レストランでリエコと豪華な舟盛りを楽しんでいた(笑)
「お兄ちゃん達も食べられればいいのに」
「そうね。でもあの人達は機械だもの」
「違う!」
「え?」
「お兄ちゃんは機械なんかじゃない。お兄ちゃんはお兄ちゃんだ!」
「……ごめんなさいね」
ところどころに挿入される観光要素はだいぶ無茶なのですが、悪玉サイドではないが心を寄せているわけでもないメインキャラから、「ロボットである主人公」にドライな視点から冷水が浴びせられる、というのは印象的となり、それを否定するアキラくんの言葉も劇的になりました……残念なのは、そこに至るアキラくんの心情の積み重ねが弱い点ですが。
食事でアキラを懐柔しようとするリエコであったが、偶然にも同じレストランに居た元上司のなにがし博士に声をかけられ、3年前までその博士の下で働いていたという事が判明。
にこやかな中年の紳士である博士、全く悪気のない様子の堂々かつ執拗なボディタッチが今見ると100%セクハラな事に、時代の流れを感じます。
リエコにもリエコなりに、大型トラックで一人で逃げ出すに至る過去の片鱗が見え始めた頃、イチローはジロー(妙に詳しい)から、シャドウの脅威について説明を受けていた。
「シャドウの一番目の目的は、一千万人殺人計画なんだ」
巨大コンピューター・ブラックサタン(とても駄目そうな名称)が抽出した、全日本人の10分の1の無目的な殺害……そんな暴挙を許してはならない、と正義の怒りを燃やす兄弟は、それはそれとしてアキラくんを見失っていた事に気付き、周囲を捜索。博士に変装した赤タロスはリエコ・アキラと遊園地を満喫するが、シャドウの視線に気付くと色々と面倒くさくなり、二人まとめて砂浜に引きずって本隊と合流した所で響き渡るギター、そしてトランペットの音色。
何かと飛躍の多い今作ですが、イチローとジローがホテルの屋上に2人並んで正義のメロディを奏でる姿は、なんだかんだと格好いい(これもまた、一つの飛躍ではあり)。
「揃っているな、ハカイダー四人衆!」
「今日こそ貴様達の息の根を止めてやるぞ!」
もはや屋根を持たない貴様等の、命の器を完全破壊だ! と地上に降り立った兄弟はシンクロアクションでアンドロボット部隊を薙ぎ払い、遊園地とマリンホテル周辺で、たっぷりと尺を採った激しい集団戦。
この世に悪のある限り この世に敵のある限り
ここで流れる、児童合唱団コーラスの挿入歌が、割とお気に入り。
激闘、というか死闘、というか、もはや一方的な虐殺は砂浜へともつれこみ、無慈悲な鋼鉄の腕によってアンドロボット軍団が壊滅すると、慌てて海へ逃げ込もうとした赤タロスと青タロスはかえって動きが鈍くなり、各々の得意の武器も取り出せぬままにゼロワンの殴打を浴びると、二体まとめてブラストエンドでジ・エンド。
ナレーション「恐るべき、ハカイダー四人衆の内、レッドハカイダー、ブルーハカイダーは、キカイダー01によって倒された」
海中にパーツが散らばる映像が描かれるとナレーションさんによって後腐れ無くトドメを刺され、瀬戸内の海でそのCLIMAXを迎えるのであった。
ナレーション「今や、復讐の鬼とかしたハカイダーは、呪いを込めて01の破壊を誓う。――だが、動き始めた大犯罪組織シャドウの新しい魔の手とは。シャドウの首領、ビッグシャドウの正体はなにか。イチローはゆく、果てしなき、巨大な悪の組織との、戦いの道を」
「01め! キカイダーめ! 貴様達の体は、この俺の手で、必ず八つ裂きにしてくれるわ!」
残る黒タロスと銀タロスは海岸線でありったけの憎悪を込めて遠吠えし、最後の最後まで彼我の戦力差を全く計算できないまま赤タロスと青タロスが、とうとうリタイア。ムカデとワニに変身して最後の抵抗を見せるでもなし、実にあっけなく閉店間際に半額シール貼られて二体まとめて海の藻屑と化しましたが、初登場からこの方、脅威感ほぼ皆無という極めて残念な悪役としての生涯を全うし、今となっては、第1話で関東原子力研究所が破壊されたのは集団幻覚だったのではないかとさえ思えてきます。
次回――無慈悲なる鉄拳キカイダー兄弟に対して悪の同盟はなるのか?! 風前の灯火のシャドウ基地の運命にご期待下さい。