東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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たぶん風邪

 そして気候の急変と台風接近でなんだかテンションがすぽっと落とし穴にはまりこんでいる為、『仮面ライダーゼロワン』の感想は、来週まとめて予定。そんなわけで、読書メモを大雑把に。

読書のようやく秋めいてきた

◇『名探偵は嘘をつかない』(阿津川辰海)


 高度な頭脳犯罪に対抗する為、警察の下部組織として探偵機関が設立され、警察と協力して事件の解決にあたる国家公認の「探偵」が存在する日本――数々の難事件を解決に導いてきた名探偵・阿久津透に対し、捜査の過程における様々な不正の疑惑が持ち上がり、史上初の探偵弾劾裁判が開廷される。
 阿久津の元助手であり、阿久津によって兄を“見殺しにされた”と考える火村つかさは阿久津を訴える請求人の一人に名を連ねるが、果たして阿久津は本当に、証拠品の捏造や、連続殺人の静観など、探偵としての倫理にもとる行為を続けていたのか? そして、15年前に起きた痛ましい事件の真犯人なのか?
 「名探偵の使命は何よりも、事件を解き明かすことだ。しかし同時に、誰にも納得の出来るように解き明かさなくてはならない」
 今回の当たり。
 頭脳明晰だが性格には多大な難のある正邪定かならぬ探偵への弾劾裁判と、その探偵が15年前に最有力容疑者として関わり探偵自身の推理によって真犯人が導き出されるも未だその発見には至っていない過去の事件、この二つの謎が錯綜する中に一つの大きな奇想がアクセントとして加わり、テンポの良い進行の中で、「なぜ?」が次の「なぜ?」に繋がっていき全ての真相に少しずつ迫っていく謎の連鎖のバランスが上手く、なかなか面白かったです。
 物語全体がある有名作品を明確に意識しており、章タイトルでもそれは示唆されているのですが、後半やや露骨な部分が幾つかあったのは気になったものの、最終的にはその作品に引きずられる形にはならなかったのも良かったです。
 作者は今作がデビュー作という事ですが、文章は悪くないながらコミカルな要素の入れ方にやや拙さはあり、特に時折、登場人物がデリカシーに欠ける発言を行うのをギャグとして持ち込むのは、滑り気味。これは、上述したある作品の影響も見えるところなのですが、今作、紹介するに際して「ある作品」の名前を出した方がいいのか、出さない方がいいのか、ちょっと悩ましい。
 使うべき伏線をきちっと使ってくれて、佳作、といっていい出来でした。

◇『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』(麻耶雄嵩
 いい加減、一度は読んでみようと、初・麻耶雄嵩
 巨大な西洋式の館、そこに住むどこか謎めいた資産家一族、そして猟奇的な殺人事件に挑む名探偵、と道具立てをこれでもかと揃えた上で、少々衒学的ともいえる思わせぶりな台詞が飛び交い小説全体を迂遠にしているものの、それを徹底する事で一つの世界観を一種のファンタジーとして形成している作りは巧い。
 一方、謎解きの面白さ、という面では少し弱かったですが、ある逆転を成立させる為の仕掛けがなかなかの離れ業で、そのアイデアは面白かったです。
 これは、本格ミステリの皮を被った○○○○、だよな、と。
 で、著名だし評価も高いようだけど、評判を聞くとなんとなく、私の好み的には“面倒くさい”感じだなぁとこれまで裂けていた麻耶雄嵩の著作を、今作を皮切りに何冊か読んでみたのですが……うん、やはり、ちょっと面倒くさい。というわけで、今作自体はそれなりに面白く読めたのですが、麻耶雄嵩の作風は合わない、という結論になってしまいました。