『キカイダー01』感想・第8話
◆第8話「イチロー危機!四人衆合体!!」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
「あの小僧さえ手に入れば、我らハカイダー部隊は、既に全世界を制服したも同然」
ゼロワンのダブルマシーンは死神ミサイルの直撃を受けて吹き飛び、幸い木に引っかかって無事だったアキラ少年を発見するハカイタロス四人衆。
「む?! キカイダーが戻ってくるとは!」
だがそこに、またかよ兄さん! と飛んできたキカイダーがアキラ少年をかっさらっていき、四人衆は再びスクラム組んでクライマックスジャンプ!
ハカイダーCLIMAXフォームは、破壊衝動の赴くままサイドマシーンを空爆し、笑ってしまうレベルの大爆発で映像は大変派手なのですが、四人衆の目的の見失い具合も大爆発。
君たち、アキラ少年を、何だと思っているのだ。
「貴様の思い通りにはさせんぞキカイダー。たとえ地の果てまで逃げようと、アキラの体は、必ず我がハカイダー部隊が、貰い受ける」
四人衆はクライマックスジャンプの勢いで山口県・下関市へと到達し、ジローとアキラがマリンホテルへ投宿する姿を、今日もリエコが、石の後ろから見ていた。
ロードムービー形式、というほど訪れた土地の人々と接触するわけでもない為、ふんわりと日本各地を彷徨しているイメージの今作ですが、地方ロケ回に接続される中でこのぐらいばっさりとお約束を盛り込んでくると、かえって面白い事に(笑)
「どうだアキラくん、綺麗なホテルだろ」
「お兄ちゃんは?」
「ははは、イチロー兄さんの事なら心配しなくてもいい。あんな事でやられるような男じゃない」
兄への信頼、というより判定基準の雑さを感じさせるジローだが、談笑する二人を、シルクハットを被った怪しすぎる男が見つめていた……。
定期的に少年を半裸にしなくてはならない設定ってどうなのだろう、というかこれが少女だったらもっと問題だったか、というよりは要するに忍法帖フォーマットであり、いっそ時代劇なら入浴はいつも必然になったのでしょうが、大浴場に出現した合体ダーにアキラが襲われ、それを阻まんとするジロー。目を覚ましたイチローもアキラ少年の危機に駆けつけ、クジラの上に再び書き割りで登場!
「悪のあるところ必ず現れ、悪が行われるところ必ずゆく、正義の戦士・キカイダー01!」
右手にトランペットを持ち、背中を向けたまま口上を述べるのがお約束のイチロー兄さんですが、最後に名乗りを決める際、右手側から半回転して正面を向くのではなく、背中を向けたまま左手側から半身で顔を出す、というのが格好良くて好き。
ハカイダーCLIMAXは、ボウガン・鞭・棒、と各タロスの得意武器を扱う、合体フォームらしい戦いぶりを見せ、それに対して巨大なタコの遊具の上でイチローがチェンジするのは名シーン(笑)
70年代特撮の醍醐味は、色々と変な所に立つヒーローです!
変身したゼロワンは、タイアップ回らしく遊園地にゼロワンドライバーで鉄くずの山を築き、
「ゼロワン! 俺が相手だ!」
と叫ぶや横から飛び道具を投げつけるもあっさりと弾き返されて背中を見せるボスキャラは、初めて見たような気がします。
いよいよ運命の灯火がCLIMAXになってきた合体ダーだが、そこに黒のシルクハット+サングラス+マスク+赤いスカーフ+上下白のスーツ、という怪しすぎる扮装の男が乱入すると凄まじい勢いでアンドロボット軍団を蹴散らし、人間離れした大ジャンプで状況を攪乱。合体ダーはどさくさに紛れて逃走し、ひとまずアキラ少年を連れてホテルに戻ったイチローの元を、リエコが訪れる。
今更ながら、イチローにアキラを預けている方がかえって危険度が高いので、アキラの身柄を渡してほしいと申し出るリエコに対し、まずはアキラの抱える秘密を教えてくれない事には、トラックに乗って一人で逃げ出すような女の言う事は信用できない、と問い返すイチロー。
「知っています。でも言えません! 言ったら……アキラちゃんが可哀想です」
「……可哀想?」
互いの主張は平行線を辿り、まだ見ぬアキラ父の外道の予感ゲージがまたも上昇する中、アキラに迫るシルクハットの男!
「貴様、何者だ?!」
「そうか。自己紹介がまだだったね。名乗りだけはしておこう。世界大犯罪組織シャドー大幹部。影の騎士――シャドーナイト!」
男が名乗って腕を組むと、変装用の帽子・サングラス・マスクが次々と飛んで外れる演出が洒落ているのですが、しかし、その辺りの薬局で慌てて買ってきたようなマスクは、変装に本当に必要だったのか。露骨な不審者の装いでアキラ少年を監視し、自ら部屋に侵入するもイチローに見つかると即座に少年を投げ捨てる雑な仕事ぶりは、本当に世界大犯罪組織の大幹部なのか?!
男は、一つ目タイタン+甲冑+タコ、みたいな怪人に変身すると瞬間退場し、ホテルを離れたイチローとアキラは、秋芳洞へ。洞窟の入り口にアキラを残したイチローは、カルスト台地でアンドロボット軍団を待ち受けると千切っては投げ千切っては投げのデストロイモードに入るが、その隙にリエコがアキラへと近づいていた。
強引な理屈でアキラをイチローから引き離そうとするリエコに対し、イチローを慕うアキラが男を見せる成り行きなのですが、イチローとアキラの信頼関係を上手く積み重ねてきたとはとても言いがたいので、二人の絆の強調としては、完全に空回り。
「大丈夫だ! お兄ちゃんは、僕が守ってやる!」
リエコに煽られ、一人で鍾乳洞に踏み入るアキラはハカイダー部隊の追撃を受け、秋芳洞へ戻ってきたイチローは、太陽光線の届かない鍾乳洞の奥で、アキラとリエコを守りながら合体ダーに追い詰められてしまう。
「無茶よ! 太陽電池が止まってるのに、ガッタイダーと戦えるわけがないじゃない!」
昼夜問わず、ちょっと暗がりに入るだけで戦闘力が激減してしまうゼロワンですが、段々とわかってきたのは、恐らく、蓄電システムを持たないのではなく電力の消耗が激しすぎるのであり、普段がオーバースペックすぎるという事。
なにも常に全力を発揮しなくとも、最大出力でも通常の半分のパワーになる代わりに、太陽電池が止まった状態でも三分の一程度のパワーを発揮できる省エネモードなどあれば、チェンジ無しでハカイダー部隊ぐらい完全破壊できるのでは。
「善良な市民を守る――それがキカイダー01の使命なのだ」
ヒーロー宣言に合わせてここで流れ出すBGMGが格好良く、アキラとリエコを逃がす為に打って出るイチロー。
「たとえゼロワンにチェンジできなくてとも、俺は貴様なんかに、負けはしないぞ!」
と言いつつ、及び腰(笑)
「口だけは立派だが、おまえのパワーは十分の一だ。俺はハカイダーよりも4倍の力にパワーアップされている。念仏でも唱えろゼロワン! ふふははははははは!」
その時、突然太陽が射した!
本日も兄のヒロイン体質を見越した弟の助けにより、鍾乳洞の天井から射し込んだ陽光を浴びたイチローはチェンジゼロワンRX!
二人揃った基地破壊ブラザーズは合体ダー率いる自爆アンドロボット軍団(と言及されるが、これといった特別な攻撃はしてこない)とクライマックスバトルに突入し、地方ロケ回だけに、晴れて良かったとしみじみ思うところです。
ここで青空でないと、01のヒーロー性的にも、いまいち格好が付かないですし。
キカイダーがアンドロボット軍団を引き受けている間に01はハカイダーCLIMAXと激闘を繰り広げ、脳と配線の化け物、という合体ダーのデザイン自体は割と面白いのですが、やはり、科学者の頭脳よりも一流の武術家などをさらってきた方が良かったのでは……と運用方法に疑問符が付くまま、空中ブラストエンドの直撃を受け、無惨に吹き飛ぶのであった。
「三人とも、見事に合体回路をやられている。もう四人衆合体はできん! おのれキカイダー01! このままでは済まさんぞ……必ず貴様達を殺す! 八つ裂きにしてやる!」
本日も見事なCLIMAXジャンプを決めてひくひくしている赤青銀のトライアングルの容態を確認した黒タロスは懲りずに怒りを燃やし、ハカイダー部隊のクライマックスはまだまだ止まらない?!
一方、無事にアキラと再会するイチローとジローだったが、一瞬の油断を突かれ、不審者もといシャドーナイトにアキラをさらわれてしまう。
次回――
「世界大犯罪組織・シャドー大幹部、シャドーナイトにさらわれたアキラは、01、キカイダーの活躍によって救い出された」
予告の1行目でアキラを奪い返されているシャドーは、本当に世界大犯罪組織なのか?!
大幹部とまとめて「自称」の不安が急速に高まり、シャドー……シャドウ……ぜ、ゼネラル……ううっ、動悸が…………いったい何が信じるべき現実なのかわからなってきましたが、立て板に水のナレーションも映像も、物凄い情報量の詰め込まれた予告で、物語は風雲急を告げる!
登場人物の心理描写が薄いままの目まぐるしいドタバタ劇、は相変わらずですが、地方ロケ名物の観光地バトルによる映像の多彩さが今作らしいハイテンポ・ハイテンションの進行と噛み合うという思わぬ副産物を生み、前回よりはだいぶ面白かったです。
しぶとく生き延びたハカイダー部隊の賞味期限はいよいよ限界を感じさせますが、虎の子のCLIMAXフォームを破られた四人衆に起死回生の手立てはあるのか?! 新たな悪の組織の影に飲み込まれ、下関の地で人生のCLIMAXを迎えてしまうのか?! 次回も、ハカイダー四人衆のCLIMAXジャンプにご期待下さい。