東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

夏休み映画祭り3

僕らの地球は美しい 鉄面党にゃ渡さない

◆『BRAVESTORM』◆ (監督:岡部淳也 脚本:岡部淳也)
 2050年――地球は異星人によって侵略されていた。異星人の惑星改造により汚染された大気で人類の96%が死滅した未来を変えるべく、2013年の過去へとタイムスリップした春日兄妹は、紅博士にスーパロボット・レッドバロンの建造を願い出る……宣弘社による往年の特撮作品『シルバー仮面』と『レッドバロン』の設定をベースに、両作品の様々なガジェットを一つの作品に融合した奇作。
 荒廃した未来、起死回生の作戦、現代にも迫る脅威、唸りをあげてぶつかり合う巨大ロボ……ストーリーは至ってシンプルで、引用元の2作品を知らないとよくわからない、という部分はなく、両作とも未見でも特に引っかかるところなくオリジナル作品として見る事が出来ましたが、では、シルバーとレッドバロンがオリジナルのヒーローとして魅力的に描かれていたかというと肯定はしにくく、往年のヒーローをリファインしてみました、もの以上にはなっていない、というのが正直な感想。
 特にシルバースーツは、劇中で初めて性能を見せつけるのが、「聞き分けの悪い紅健(現代サイド主人公)を一方的に叩きのめすシーン」というのは、どうしてそうなった。
 以下、本編の内容に最後まで触れますが、春日兄妹と紅博士の繋げ方はなかなか面白かったものの、秘密格納庫を襲撃する宇宙人の物凄く地味な兵器、それを止めようとするシルバースーツのもう一つパッとしないアクションは盛り上がりに欠け、脱出に際して「誰かがここに残らなければいけない」という状況設定を未来と重ねたのは、正直、効果的というよりアホみたいな展開。
 春日兄妹と紅健の立場も違いすぎて、それをきっかけに心が一つになるわけでもないですし、一作一回、用法・用量をよく守って使いましょう、という極めて残念な流れから、レッドバロンの中には、紅博士(健の兄)の知識や人格をコピーした人工知能が仕込まれていた!(敢えてローポリ)という所で物語としては完全に冷めてしまい、後はダラダラと見ていました。
 ストーリーは添え物という作りにしても、今作最大の短所は、シルバースーツのアクションがちっとも格好良くない事。
 これは私が東映ヒーロー作劇になれすぎている、というのもあるかとは思いますが、スーツのヒーローアクションはそうではないだろう感が凄く、大変パッとしません。原典の意匠を取り込んだレトロ風味のデザインから、決戦前に新型にリファインされる、という要素自体は嫌いではないのですが、肝心の新スーツが、洋物アクションゲームのパワードスーツみたいなデザインで、“シルバー仮面”らしさが見えてこないのも残念。
 二丁拳銃だったり背中の近接武器を取り出したりを印象的に描いているので、そもそもスーツアクションというよりもスーツギミックを見せたい方向、なのかもですが(これは敵側も強調して描いているので)。
 その辺りは趣味嗜好の差としても、決定的に良くないのが、レッドバロンVSブラックバロンの激突の最中に、その足下でシルバーと敵スキンヘッドが戦う理由が限りなく薄い事。単純に映像としてダブルヒーローの同時決戦、みたいなニュアンスだったのかもですが、そこはシルバー側の戦いにも相応の物語を乗せてくれないと、劇的になりえません。
 その上で、ブラックバロンのバリアに全ての攻撃を防がれてレッドバロンが苦戦すると、遠隔操作のバリア装置を破壊する為に異星人のアジトに乗り込む、という状況が追加され、それならどうして、バリア装置を守る関門としてスキンヘッドを配置し、それを打ち破るシルバー、という構成にしなかったのか、率直に意味不明。
 お陰で敵のアジトに乗り込んでシルバーがした事といえば、宇宙人培養カプセルの破壊とこぢんまりとしたバリア発生装置の破壊(共に銃で撃つだけ)で、W主人公の片方の扱いとしては、大変残念な事に。
 それではアジト突入シーンになんの意味があったのかというと、春日兄妹の末の妹・はるか(演:山本千尋)のアクションシーン解禁という見せ場で……山本千尋さんは割と好きですが、シルバースーツが山本千尋の踏み台にされるのは、物語としては大変いかがなものかと思うところです。
 良かったところをあげると、終始とぼけた味を見せる紅博士のキャラクターは面白かったですし、月面でレッドバロンの操縦特訓だ、というのは映画的な圧縮とハッタリがうまく噛み合いました。……クライマックスの巨大バトルは、基本殴るかミサイル撃つかだけで起伏が無いので、特訓シーンをステップに裏技の一つや二つ仕込みがあればなお良かったですが。
 一方、変形機構などディテールの格好良さへのこだわりが、ここを見てほしい、という熱量を画面から伝えすぎる事で物語への没入感を下げてしまう部分が随所に見られ、ハッタリが欲しい所でハッタリが足りず、さらりと見せてほしいところで執拗にカメラが回り、全体を見通したバランスが良くないというか、好みと合わない点が気になってしまう作品でした。
 誉める所は少ないですし、人にお勧めもしませんが、一つ前に見たのが『仮面ライダー1号』だったので、それよりは面白かったです(笑)