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誰もが知っている 筋肉の光 上腕・三角・ヒラメ・大臀筋

(※先輩の主題歌の節で)

ウルトラマンタイガ』感想・第3話

◆第3話「星の復讐者」◆ (監督:市野龍一 脚本:林壮太郎
 「地球人に問う。宇宙を漂い続けるか。それとも――」
 前回に引き続き、「目の前の人命救助より怪獣退治だ!」「大切なものを奪った奴への憎しみはわかるぜ!」なタイガと、「目の前の命を助けてみせる!」「復讐の為に人を殺すなんて間違ってる!」というヒロユキの争点を作り、“真の「ヒーロー」とは何か?”に2人が一歩ずつ近づいていくのであろう物語設計には好感が持てるのですが、「新興のベンチャー企業の社長が誕生日に飛ばしたロケットが衝突して宇宙ステーションが爆発した事件(先月の発生から未だ原因特定できないって……)で妻を失った宇宙飛行士が復讐者として地球へと帰還する」という導入にどうにもノれず。
 なんというか、未来感と今時感と普遍性を味の調節をしないまま一つの皿に載せてしまった生煮え感、というか。
 「その程度か? おまえの愛する者への想いは。冷たい宇宙を彷徨い続けるぞ、愛する者は永遠に。己の心の闇を見つめろ……全てを憎め」
 復讐者を煽り駆り立てるトレギアの、ねっとりといやらしい感じは面白かったです。
 体を張ったヒロユキの説得に二度までも復讐を阻まれた宇宙飛行士は、廃棄された人工衛星が地球へ落下するように仕向けると、自らは巨大な怪獣へと変身。ヒロユキもタイガへと変身するが、宇宙飛行士に感情移入するヒロユキは攻撃を拒み、怪獣のブレードの重量感の表現は秀逸。一方的に追い詰められてしまうタイガだが、宇宙から舞い降りた金色の光球が怪獣の胸部を貫くと、飛行士の前に亡き妻の精神体が姿を見せる。
 「あなたの憎しみが悪魔を呼んだように、私の強い想いは賢者を呼んだ。心優しい賢者さんは、私の願いを叶えてくれたの」
 「君の願い?」
 「今日から私は、ウルトラマンタイタス!」
 ……じゃなくて、
 「あなたの復讐を止める事。……一緒に宇宙へ帰ろう? 私たちの命が消えた、あの場所へ」
 妻の言葉を聞いた飛行士は、自分がトレギアの声を聞いた時、既に死んでいた事を思い出す。
 「俺は……」
 「空から地球を見守ろう。ずっと2人でね」
 ここまでもう一つ話に入れずにいたのですが、スペースデブリの回収を志していた2人が、宇宙から地球を見続ける事を望む、というのは怨念の浄化としても納得できる着地点で、ここは良かったです。
 そして2人の魂の救済を見届けた金色の光球は、タイガに合流。
 「久しぶりだな、タイガ」
 「おいおいタイタス! これは夢じゃないんだよな?!」
 「ああ。再び共に戦う時が来たようだな」
 ・
 「生まれた星は違っていても!」
 「共に進む場所は一つ!」
 「我ら!」
 「「「トライスクワッド!!!」」」
 ・
 背景のもやもやが似た感じだったので、全くドラマに関わっていないけどフーマもタイタスにひっついていたの? と困惑したのですが、この後を見るとそうではないようで、回想シーンの挟み方としてはあまり良くなかった感じ。
 また、
 「俺にはわかる」
 「突然なに」
 「大切なものを奪った奴への憎しみだよ。俺も大切な仲間を奪われたからな」
 とタイガに言わせた割には、タイガ自身が特に憎悪に囚われる姿が描かれる事のないまま“大切なもの”があっさり戻ってきてしまい、正直、拍子抜け。タイガとヒロユキの争点として設定した「憎しみ」ですが、テーゼとしてはあまり掘り下げられずに残念でした(今後また、使う事があるかもですが)。
 ヒロユキは言われるがままにタイタスの力を発動し、夜のビル街に出現してじっくりたっぷり地球人類にポージングを見せつける力の賢者は、期待に応える面白さ(笑)
 「憎しみの力だけで、まだ動くか。――賢者の拳は、全てを砕く!!」
 タイタスは賢者パンチの一撃で怪獣のブレードを粉砕。重量級のショルダータックルでその巨体を吹き飛ばすと、ヒロインはレム先輩のドンシャインパワーにより、トドメを刺すのであった。
 ところが、前回監視カメラの映像をさくっと抜き出していた凄腕ハッカーが、人工衛星へのアクセスに失敗し、最後の一つが大気圏で燃え尽きる事ないまま地表への衝突コースに入ってしまう。タイタスはそれを阻止する為に宇宙へと飛ぶが、その背後には、白黒仮面の嫌がらせが迫る!
 「トレギア!」
 「あの日の苦痛、覚えているかい?」
 「相手をしている暇はない!」
 「つれないねぇ」
 トレギアの粘着光線をかわしたタイタスは、賢者パンチで無事に人工衛星を破壊すると、因縁の敵へと振り返る。
 「ナイスパンチ」
 「暇が出来た。戦闘再開と行こうか」
 そう来るか(笑)
 「打ってみな。賢者の拳とやらを」
 タイタスはノーガードのトレギアの顔面に必殺の右ストレートを撃ち込むが、トレギアはそれを受けても悠然とした態度を崩さない。
 「おいおい、全てを砕くんじゃないのか?」
 「その挑発、あえて乗ろう」
 どう表現(タイガと差別化)されるかと思ったタイタスですが、落ち着いた口調で表向きは冷静ながら割と好戦的で、知性派の格闘家みたいなスタンスが、予想よりも格好良い。
 タイガとフーマに比べ、声だけ聞いていると、トレギアと同格の落ち着き、というのは良い味なので今後も活かしてほしい要素です。
 怒濤のマッスルラッシュを仕掛ける賢者であったが、鍛えに鍛えたトレギアには通用せず、漆黒の宇宙空間に笑い声を残して、トレギアは姿を消すのであった。
 地上では、悪びれないベンチャー社長をトンファー先輩が一発殴り飛ばしててスッキリを作ってしまい……うーん……徹底して嫌な人間と描かれる社長をどうにかしないとスッキリはしないわけで、一番わかりやすい見せ方ではあるのですが、そこで暴力を行使してしまうと今回のテーマとして否定していた「力尽くの復讐」と変わらなくなってしまうわけで、安易な手段で詰めを誤ってしまいました。
 (個人的には、実力行使で悪を成敗してカラッと一件落着! という話はむしろ好きですが、今作は自らそういう方向性を選んでいないわけで)
 「……これじゃまるで、あの熱血バカじゃねぇか」
 とうそぶく先輩ですが、ヒロユキはずっと「力尽くの復讐じゃ、何も解決しない!」と飛行士を止め続けていたわけであり、殴って気分スッキリを否定していた側なのですが!
 これは物語としてヒロユキが、「それ以外の手段」を飛行士に提示できなかった(現場時点ではそれどころではなかったのですが)部分の弱さにも繋がるのですが、例えば凄腕ハッカーがステーション爆発事故の原因を全世界に公開してベンチャー社長白目! みたいな、「別の形」を描けなかったか、と思うところ。
 その点では、宇宙飛行士2人の魂を救済した上で怪獣を片付け、トレギアにこだわる事なく速やかに衛星を破壊してみせたタイタスが、タイガとヒロユキに比べて5段階ぐらい先に進んでいる人格なのですが、筋肉とは光であり筋力とは悟りなので、仕方ありません。
 ……真面目な話としては、今後何らかの短所を付けてくるのかなど、トライスクワッドをどう色分けしながらヒロユキと絡めていくのかは、興味深い部分。
 宇宙では、スペースデブリを片付けようと申し出るタイガだが、ヒロユキは、これはいずれ地球人が片付けるべきものだ、とタイガを止め、SF的な視点に、「ウルトラマンの力どどう向き合うか」という要素も加え、これは大変良かったです。
 総じて、良かった点と悪かった点のギャップが激しいエピソードでしたが、タイタスは期待以上に良いキャラだったので、今後が楽しみ。
 一仕事を片付けたE.G.I.S.では今回の報酬で社長が皆を回転寿司に誘い、「お金はお金」とビジネスに徹しているかのような社長は実は、ベンチャー社長から受け取った小切手を破り捨てていたのであった、と爽やかにオチ。
 「ほうほう。あのお嬢さんはなかなかやるなぁ」
 「俺の婆ちゃんほどじゃないけどなぁ」
 そして勇者と賢者は、ゴミ箱を覗き込んでいた。
 「もしかして……これから君も?」
 「ええ! お世話になります」
 今日も部屋の片隅に向けてブツブツと呟くヒロユキを、同僚達は生暖かい空気で見て見ぬフリをするのであった……(多分)。
 次回――忍者、もとい、覇者・参上!