東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

星は輝く

ウルトラマンガイア』感想・第45話

◆第45話「命すむ星」◆ (監督:原田昌樹 脚本:古怒田健志 特技監督:満留浩昌)
 我夢は藤宮(常時ライダースーツの採用は見送られ、ジャケット姿に落ち着く)に、稲森博士の地球環境改善プランとパーセルの最終バージョン設計図のデータを渡し、
 「高山くん、残念です。君の行為は、XIGに対する重大な背信にあたります」
 と「この者、機密漏洩の罪」により樋口さんのオーラパワーでお仕置きを受け……たりはしなかったものの、大丈夫なのか我夢。それは藤宮に横流しをしていいデータなのか我夢。
 と瀬沼チェックが入っていそうな頃、ガード環太平洋部隊の柊が再登場し、破滅招来体に対抗する新たな装備を開発すべく、参謀と折衝を重ねていた。
 「この星に住んでいるのは、人間だけではないんだからね」
 「地球は人類唯一の生存圏だ。それを脅かすものは、いかなる相手でも、排除すべきです」
 人類の為の武力行使、という信念を固く抱く柊は、地底貫通弾の事件を経ても参謀とは相容れない姿勢を見せるが、あるオフの日、通りすがりの素人風水師と出会ってしまう。
 「怪獣の為に、自分の大切な人が傷ついたら、どうしますか?」
 「……怪獣を、憎むかもしれません。でも、憎しみは、新たな憎しみを生むだけです」
 「……憎悪は理性を失い、判断を狂わせる。私は、自分の復讐の為に戦ってるわけじゃない」
 「それじゃ、何の為に?」
 「守る為に。自分の大切なものを」
 〔風に飛ばされた帽子を拾う〕イベントをきっかけに一気に心の隙間をぐいぐいこじ開けられてしまう柊ですが、たぶん黒田さん、劇中最強のミステリアス美女ポジションなので、男性キャラの精神防御が半減する仕様です(梶尾さんと接触させてはいけない)。
 「アッコ……空にはね、天使が居るんだって。それを見た人は、もう二度と地上には降りてこない。それでもあの人達は……それが見たくて空を飛ぶ」
 同じ頃、これまたオフの敦子は姉と語らっており、そろそろ残り話数も押し詰まってきてゆっくり描ける余裕が無くなってきたのでしょうが、姉妹の物語はだいぶ圧縮気味に投入。
 「戦いに魅入られた人は、本当に大切なものの事なんか忘れてしまう。……そういう人を好きになっちゃ駄目よ。アッコ。辛いだけだわ。でもね、私は……もう一度だけ待ってみようと思うの」
 姉の言葉に敦子は笑顔を浮かべ、安定して扱いの微妙な敦子でありますが、病気がちだったという少女時代や、その後の距離感の描写を見るにお姉ちゃん大好きっ子な雰囲気はあり、夫を失った姉が、生きる事に対する前向きさを取り戻しつつある事を純粋に祝福してはいそう。……まあその辺りの柔らかい部分が背景に漂うだけで劇中で形にならないので、ヒロイン力が上がらないわけですが!
 飛行機乗りに対するお姉さんの言葉は、梶尾さんと敦子の距離感が縮まった(ように見えたが幻想だった)第19話ラストの、


 「俺は飛行機乗りだから、いつも早く飛ぶ事ばかりを考えてきたんだ。……でもな、早く飛んでばかりだと、近くにある大切なものが見えない事もある」
 を踏まえているようでもありますが、さてもう一押し、有るのか無いのか! 梶尾さんは、今度こそ、大切なものを視界に収める事が出来るのか!
 エリアルベースでは参謀とコマンダーが雲海に沈む夕陽を見つめながらコーヒーブレイク中。
 「柊が言っていたよ。天の高みに居る人間に、地上の人間の痛みはわからないとね」
 「……地上の生活を離れてみて、初めて気付いた事が、自分には沢山あります」
 「……いやぁ、美しい眺めだ。100年後、1000年後の子供達にも、見せてやりたいなぁ。この今と同じ、美しい空を」
 「はい」
 今作を貫く要素の一つである「天の視点」「地の視点」から、天に居る事で広がる視点・新たな気付きがある、というポジティブな面が引き出され、成る程、今作における天(エリアルベース)の視点とはすなわち、宇宙からの視点であったのだな、と納得。
 エリアルベースというのは擬似的な宇宙ステーションであり、人類がそこに足を踏み入れた時、地球を新たな視点で見る事が出来る筈――我夢を中心としてその変化が少しずつ描かれているのがエリアルベース乗員である――という観点が『ガイア』の物語の根底にあったのだな、と振り返って色々な事が腑に落ちました。
 だがその時、ワームホールから、巨大なカラス天狗が襲来!!
 予告の映像時点では黒マントの怪人に見えた為に、いきなり芸風変えてきたな破滅招来体?! と困惑していたのですが、マントに見えたのは黒い翼で、人型ではあるが動物的なラインは外しておらず、戦闘で見せるメカ寄りな胸部開放ギミックも含めて、これまでの破滅怪獣のハイブリッドの範疇に収まっていてホッとしました。左右の足の色が非対称の、白黒カラーリングが格好いい。
 迎撃に出たアグルの攻撃を高速飛行でかわしたカラス天狗は、ガード国際フォーラムを狙い地上へ。アグルの放ったウルトラリーゼントバスターを胸部の装置で吸収すると、増幅反射。直撃を受けてのけぞり倒れたアグルは一気にカラータイマーが赤く点滅し、悠然と迫るカラス天狗の攻撃により、地球エネルギーを吸収されて変身解除の完敗を喫してしまう。
 国際フォーラムを木っ葉微塵に消し飛ばしてカラス天狗は飛び去り、またも圧倒的な破壊の災禍を目の当たりにした柊は、藤宮と接触
 「おまえの力を、俺に貸せ」
 柊は消耗した藤宮に肩を貸して車に運び、ここにまさかの新コンビ結成?!
 一方、寺の境内で地底の龍の声を耳にした黒田(シルエットの龍が動く演出が格好いい)は取材中のKBCの前に姿を見せ、柊との出会いを語る。
 「あの人は、優しい人です。愛するものを守りたい。単純に、それだけの為に。でも、見ている世界が狭すぎる」
 「でも、人間が人間のこと考えるのは、当然のような気もするんだけど」
 「……私……青いウルトラマンと一緒に、空を飛んだ事があるんです」
 「視点」というテーゼを、ウルトラマンをキーに天と地でクロスさせ、元が本編屈指の好きなシーンというのもありますが、あれはやはり、玲子さんにとっての一つのパラダイムシフトであったのだと、ここでこれを拾ってくれたのは、凄く良かったです。
 黒田は人知れず、地底から木霊する怪獣の叫びを耳にし、不穏な音楽と共に変化する風水師の表情で雰囲気も巧く切り替え、今回、複数のキャラと場所を行き来しながら語りの場面が多い一方、スピード感のある戦闘シーンともテンポを崩す事なく融合しており、密度の濃い古怒田脚本を鮮やかに調理する、13-14話以来(壬龍-狼男回)となる原田監督と満留監督の二班体制の連携もお見事。
 再び襲来したカラス天狗は強力な破壊兵器を貯蔵するガードの施設に迫り、ライトニングと戦線を担う迎撃部隊として久方ぶりにおにぎりタンクが登場。一方、柊は藤宮と共にカラス天狗に直接攻撃を仕掛けようとしていたが……
 「……残念だが、今朝の戦いで、力を使い果たしたようだ」
 使えねぇ……! と柊が怒りを噛みしめている内に、チームライトニングがまとめて撃破されてしまい、梶尾リーダー、第45話にしてはじめての被撃墜。アグル撃破・目標破壊・梶尾撃墜、と白星を積み重ねるカラス天狗の脅威がいや増していくのですが、梶尾さんの墜落シーンの合間に律子さんの姿を挟むの、色々怖いのでやめて下さい(笑)
 大河原と北田は不時着に成功するも、梶尾機は通信途絶。居ても立ってもいられずに我夢はブリッジを飛び出し、地上ではスティンガーが決死の抗戦を続ける。
 「俺達だけでなんとか奴を食い止めるんだ!」
 だがスティンガーの火砲は空手チョップで弾き落とされ、破滅的災厄が間近に迫ったその時、土煙を噴き上げ、地底から出現した虎怪獣がカラス天狗に挑みかかる!
 柊「あの怪獣が……なぜ今」
 藤宮「この星に住む生き物たちには、与えられた役割がある」
 ここからしばらく、新100万マッスルパワーズと、KCBサイドのリアクションを行き来するのですが、視線と表情で地底怪獣絡みの雰囲気を盛り上げる黒田さんの使い方が秀逸で、ここに来て、存在感を発揮。
 田端「あの怪獣は……」
 黒田「大地に住むものです」
 柊「どうしておまえが、その怪獣と戦う」
 我夢「守りたいものがあるんだ、あいつにも」
 藤宮「我夢……」
 カラス天狗に噛みつくも角を折られてしまう地底怪獣だったが、その行動に困惑しながらも確かな意志を感じ取った柊の放ったマッスルバズーカがカラス天狗にクリティカルヒットし、結果として互いを助ける事になった人間と怪獣はひととき視線をかわして見つめ合い、そこへ飛んできた我夢がガイアへと変身。
 怪獣が人型フォルムの時は常より格闘戦に気合いが入るのが通例ですが、互いに回し蹴りとチョップを打ち合った後、相手の蹴り足を取ってガイアが放つ巻き込み投げが滅茶苦茶格好いい。
 だが優勢も束の間、満を持して放った久方ぶりのうにょんバスターを、アグル同様に吸収反射されてしまうガイア。
 「我夢!(おまえ俺の戦い見てたのかよ?!)」
 カラス天狗は倒れたガイアに迫り、
 「奴はおまえのライフゲージを狙っているぞ!」
 そんな名前だったのか、カラータイマー部分。
 ガイア絶体絶命のその時、地底怪獣が背後からカラス天狗を攻撃して足を止めるも、反撃の一閃で今度こそ沈黙するが、チーム・ハーキュリーズの面々はその姿に奮起する。
 「あいつ……」
 「お前の努力は無駄にはしない! 撃てー!!」
 「おう!」
 ハーキュリーズとスティンガーの真っ当な陸戦の見せ場が単純に嬉しかったのですが、良くも悪くも、素直に怪獣に感情移入する姿に違和感がないハーキュリーズが、納得度の高い役回り。カラス天狗の攻撃を受けて機関停止してしまうスティンガーだったが、そこにもう一つのおむすびタンクを駆って柊が参戦し、火を噴く筋肉がカラス天狗の進行を阻む!
 「立て、戦え! 我夢」
 膝をつき荒い息を吐くガイアの姿に藤宮の声が重なり……
 「立ち上がれ――ガイア」
 柊の言葉に合わせて、タンクのキャノピーに反射の映り込んだガイアが顔を上げ(この演出が非常に秀逸)……
 徐々に体勢を立て直していくガイアの顔、バストアップ、握り拳、口元、と巨大な勇者のパーツをアップで切り取っていき、それをリポートも忘れて固唾を呑んで見守るKBCトリオ。
 残された力を振り絞って遂に立ち上がるガイアの膝から土がこぼれ落ちる光景をこれもアップで切り抜き、巨大感と不屈の意志を一つのフレームに収め、手を組んで祈る黒田、再びガイアのバストアップ、天空から見守るエリアルベースブリッジの面々……そして、再び立ち上がり、破滅の使者に向けてファイティングポーズを取るガイア。
 この一連のシーンは、話の流れ、BGM、映像の見せ方の全てがはまって、大変素晴らしかったです。 
 ガイアの放ったスペシウム的な光線を吸収しようとするもオーバーヒートに陥ったカラス天狗に柊&ハーキュリーズが一斉攻撃を浴びせ、砕け散る胸のコア。
 「今だ!」
 「撃て! ガイア!」
 藤宮と柊の声に応えるようにアグトルニックしたガイアは、前略地球の隙間ビームにより遂に強敵カラス天狗を粉砕するが、その勝利を見届けるようにして、満身創痍だった地底怪獣もまた、瞳の光を失うのであった……。
 「――勇敢なる戦友に、敬礼!」
 夕陽を背に眠りについた地底怪獣を見上げて、柊、我夢、ハーキュリーズが敬礼を送り(藤宮は横に並ぶが敬礼はしない)、たっぷりと時間をかける原田監督のハーキュリーズ愛(笑)
 前回登場時、難しいテーマを持ち込みすぎて消化不良になっていた柊は、その純粋すぎる信念ゆえに、怪獣の純粋な意志を感じ取ってその存在を認める事が出来た、という軟着陸になりましたが、つまり筋肉があれば、パーセルに頼らずとも怪獣と意思疎通できるのです。
 筋肉は調和だ!
 また、

 「怪獣の為に、自分の大切な人が傷ついたら、どうしますか?」
 「……怪獣を、憎むかもしれません。でも、憎しみは、新たな憎しみを生むだけです」
 「……憎悪は理性を失い、判断を狂わせる。私は、自分の復讐の為に戦ってるわけじゃない」
 「それじゃ、何の為に?」
 「守る為に。自分の大切なものを」
 前半に置かれた黒田と柊のやり取りがそのまま、今回の怪獣の行動理念になっているといえ、「大切なものを守る為」という曖昧な共感以上に、柊が復讐鬼でないというのならば、自分自身の似姿として怪獣の行動を認めざるを得ない、という補助線が引かれているのは、お見事。
 柊登場回の第38話では詰め込みすぎた要素を捌ききれなかった原田×古怒田コンビですが、実質的なその後編といえる今回は、見事にまとめてくれました。
 要素の連動性が強い『ガイア』の中でも、その演出ラインやキャラの使い方から特に連続性の強い原田監督回ですが、恐らく今回と次回が『ガイア』ラスト演出になるのか、今作における集大成という感もあり、濃厚な原田ワールドとでもいえるものが展開して大満足でした。
 「大地に住む者達よ……その時は、もうすぐ訪れます」
 そして壬龍のビジョンを目にする黒田さんはすっかり地底怪獣の巫女になっておりますが、アルケミースターズをはじめ、超越存在との同調性を持った人間がそこかしこに存在する、というのは今作の基本的な世界観なので、あまり違和感は無し。
 ところでスキャンダルが取り沙汰された田端×黒田ですが、今回の直接対面で特に掘り下げがなく、さすがにこれは拾われそうにないか……? 前回「あいつ」呼ばわりから、もしかして元夫婦? とか想像を逞しくしていたのですが、面と向かっては「恵ちゃん」呼びで態度も大変柔らかくなり、黒田さんと対話すると男性キャラの精神防御が半減する仕様です(梶尾さんと接触させてはいけない)。
 なおその梶尾さんは、余りにもそれどころではない事態に我夢にさえ忘れられかけていたが、煙を噴き上げる機体を背に傷だらけで脱出に成功する、という主人公ムーヴをキめていました(笑)
 「俺は……こんなところで……死ぬわけにいかないんだ」
 次回――ヒーローゲージを溜めに溜めた梶尾さんと律子さんにもう一押しあるようで、私、大歓喜。そしてまさかの、そこも拾うの?! 色々楽しみです。