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夜明けへの長い道

ウルトラマンガイア』感想・第44話

◆第44話「宇宙怪獣大進撃」◆ (監督:根本実樹 脚本:武上純希 特技監督:佐川和夫)
 「人類の希望を打ち砕く勇気があるか? ウルトラマン
 は今回お気に入りの台詞。
 「遂に根源的破滅招来体に、一矢報いる事が出来るんですね」
 アルケミースターズによる解析から、根源的破滅招来体の根城が恒星系M91であると割り出され、ワームジャンプミサイルによる攻撃プロジェクトが着々と進む中、それに反対する我夢。
 「我夢……時には力も必要なのよ」
 「頭ではわかってます。でも……胸のこの辺りで、違う、違うって囁く、もう一人の自分が居るんです」
 「やっぱり貴方は軍人にはなれないのね。狼の群れに迷い混んできた羊」
 珍しく我夢とクロウ01・稲城が絡み、この後の展開に重要な転機となる疑問へと繋がっていくのですが、稲城リーダーだからこそ、その疑問に辿り着き、我夢に問う事ができたという積み重ねや、このエピソードでの掘り下げは特に無いのが、惜しまれるところ。
 キャラクター数が多い中で、XIG隊員それぞれの存在を拾って役割を与えてくれる事自体は嬉しいのですが、そこから特にパーソナルな部分を浮き上がらせるわけではないので、どのキャラでも代替え可能になってしまっているのは、詰めが物足りません。
 例えば稲城リーダーなら、実質日陰者扱いを受けながらも軍人にこだわっていた部分――今回の台詞に絡めるなら、羊扱いを受けながらも狼であろうとしていた姿――を我夢との関係性を通じて浮き彫りにするなど出切ればより面白かったと思うのですが、そこまでは手が回りきらず。
 ……まあ、実際に個々の隊員に関してそこまでやると情報量過多になった可能性は高いですし、取捨選択の結果、という面もあるのでしょうが(と考えると原田監督の遊び心もありましょうが、チーム・ハーキュリーズはやはり別格の贔屓されぶり)。
 「宇宙怪獣は、なぜ暴れるの?」
 「え?」
 過去の自分もといガイアの戦闘データを見つめていた我夢は、先程の発言の謝罪と共に稲城から受けたシンプルな問いかけに答えられなかった事から、なんと第8話以来となる浅野古代生物研究所で、アルケミースターズの一員であり、人間以外の生物に強いシンパシーを持ち得る浅野未来に、その問いを投げかける。
 「その答は簡単よ。怪獣だって、生物だから」
 未来は、宇宙怪獣は自分のテリトリーから無理矢理別のテリトリーに運ばれた事により、そこを自分のテリトリーにして生き延びる為に暴れているのだ、と我夢に告げる。
 「……そうか。怪獣そのものは根源的破滅招来体じゃないんだ」
 「そう。彼らは。利用されているだけ」
 エリアルベースに戻った我夢は、改めて攻撃プロジェクトへの反対意見を具申し、恒星系M91は、怪獣の住処ではあるが、破滅招来体の母星ではない可能性を述べる。
 「我々は、コッヴやパズズを根源的破滅招来体と便宜上呼んでいる内に、とんでもない間違いを犯していたんです。怪獣そのものは、破滅招来体じゃない。ただの生物なんです」
 ここで、未来の解答はあくまで「宇宙怪獣を純粋に生物と見立てた時」の見識であり、それ以上の根拠を持たないにもかかわらず、そこに「我夢の知識や経験」が加わって一つの推論を導き出すのではなく、我夢が未来の受け売りそのままを自分の解答にしてしまうのは、かなり残念だった部分。
 そこに主人公としての我夢の積み重ねが明確かつ劇的に加えられてほしかったところで、今回、話のテーゼは非常に面白かったのですが、そこに至るプロセスの精緻さがやや不足。
 「怪獣そのものに悪意は無い。環境の変化に、適応しようとしているだけだ。そう言いたいのか」
 「はい」
 「だとしても、我々にとって脅威である事に、代わりは無い」
 そんな参謀に対して、仮に地球人がM91を壊滅させた場合、破滅招来体はまた別の星と地球を結ぶに違いない、と我夢は重ねる。
 「どういう事だ?」
 「地球を完全に平和にする為には、全宇宙の大型生物を抹殺するしかなくなるんです。かつて人類が、自分たちの安全の為と称し、野生生物を絶滅に追い込んだように」
 最終盤に入り、「根源的破滅招来体とは何か?」という点と物語のゴールがスタッフ間で共有されてもいるのでしょうが、前回のエピソードとも接続しつつ、一歩間違えると、地球人が他の星にとっての「破滅招来体」になってしまうという状況の逆転が発生するのは、非常に面白かったです。これを、地球単位→宇宙単位とする事でミクロからマクロへスムーズに視点を移して理解しやすくしたシリーズの構成もお見事。
 個人的に「根源的破滅招来体」を、漠然とした「宇宙の摂理」的なものなのかと受け止めていた事もあり、途中から劇中人物達が想定する「強烈な悪意に基づく奸智を持った存在」という人格性がピンと来ていなかったのですが、今回のエピソードによりようやく、“地球を個別で狙っているのではなく、全宇宙的な破滅を目論んでいる(かもしれない)存在”として、人格性を受け止められるようにもなりました。
 言ってみれば、(最終的な着地点はまだわかりませんが)“全面核戦争の引き金を引かせようとしている者”というメタファーは、この当時にはまだ相応のリアリティも残っていたのかな、と。
 そしてその破滅の連鎖には、地球人自身も加われる、というのは痛烈なテーゼであり、そこにシリーズ初期作品への視線を感じるのは、確かシリーズファンでもあった筈の武上さんのテイストの強く出た所でしょうか。
 「…………だがもはやこの作戦は、我々の権限で阻止できる段階じゃないんだ」
 コマンダーはプロジェクトの全権を持つ谷本参謀の説得を促し、我夢はジオベースへと急行。
 「谷本参謀! すぐにこの計画を中止してください!」
 思い切り重要関係者のダニエルくんに根回しを図るでもなく、正面から乗り込んでいくのが若さですが、我夢らしい若さと迂闊さではあります。
 「この計画を実行してしまったら、人間は引き返す事のできない泥沼に脚を踏み入れる事になるんです」
 「私はそうは思わない。この計画は、破滅招来体に対する唯一の有効な攻撃手段だ。人類に残された、たった一つの希望なんだよ」
 「人類が宇宙の破壊者になってもいいんですか?!」
 「では君に、他に有効な手段でもあるというのかね?」
 「……今はありません。でも、きっと何か……」
 参謀やコマンダーが割と話を聞いてくれるタイプなのですっかり忘れていたけれど、そもそも《交渉》スキルとかポイント振っていなかった我夢はものの見事に玉砕し、話にならないとポイ捨てされたところに姿を見せる藤宮。
 「我々人類は、破滅招来体のシナリオ通りに走り出してしまったのかもしれない」
 そして遂に、人工的なワームホールの作成が始まり、ミサイル発射への秒読みが始まる……。
 「宇宙に夢の道を作る筈が、抹殺兵器を送り込む為に使われるとはな」
 「人類は今、テリトリーの壁を壊そうとしている。踏み込んではいけない世界に攻撃を加えようとしているんだ」
 我夢と藤宮はその光景を沈痛な面持ちで見つめ、エリアルベースで作戦空域の監視を指示するコマンダーが、侵入者が居た場合「例えそれが、何者であっても」排除せよ、と命令を出すのが前振りとして緊張感を高めて巧い。
 「ただの警戒出動じゃ、なさそうですね」
 「ああ。石室コマンダーは具体的な敵を想定されているのかもしれん。……それが誰かはわからんがな」
 エリアルベースからはピースキャリーとチーム・クロウが出撃し、虚空に開くワームホールを見た我夢は声を振り絞ってガイアに変身。人類の希望の敵としてワームホール発生装置へ迫るガイアを一度は阻止するチーム・クロウだが、二回目の攻撃は出来ずに命令を拒否し、苦悩の表情を見せる稲城リーダーの個人的な掘り下げがあったわけではないので、アグトルニック回の二番煎じにしかなっていないのが、やはり惜しいところです。
 ワームホール発生を阻止しようとするガイアだったが、それよりも早く、地球産ワームホールを利用して、破滅招来体が二体の怪獣を地球へと送り込み、その攻撃によりワームホール発生装置は破壊されてしまう。大迫力のスーパー尻尾薙ぎ払いを見せた二大怪獣はワームジャンプミサイルへと迫り、仮にそれが地表で爆発するような事があれば、地球は消滅の危機を迎えてしまう!
 「人類は……自ら作り上げた最強の兵器で、自滅してしまうのか?」
 ガイアは怪獣を食い止めようと捨て身の体当たりを仕掛け、後方から支援するチーム・クロウだが、放電攻撃を受けて戦線離脱。
 「奴ら自身には、地球破壊の目的意識が無いとしても、生物の本能で暴れているだけだとしても、だからこそ厄介なんじゃないか、我夢」
 藤宮はアグルへと変身して遂に赤と青――二人の巨人が肩を並べてタッグで怪獣へと挑み、一度は必殺光線をためらうガイアだったが、最後は豪快なダブルジャイアントスイングから同時必殺光線で二大怪獣を木っ葉微塵に粉砕し、ここに筋トレ殺法コンビは、タッグマッチ初勝利を挙げるのであった。
 ところで、怪獣の遠距離攻撃をガードする際、光のシールドを出すガイアに対してアグルは両手を広げて胸板で放電を受け止めており、やはり、鍛え上げた大胸筋こそが栄光のイージス。
 ガイアとアグルは勝利の友情タッチを決め、ここに子供達の希望が実現したわけですが、久々に青い巨人が出てきたと思ったら赤い巨人とやたら長く手を打ち合わせ、この世界の大人達は、その光景に大変困惑しそうです(笑)
 「人類は……たとえ希望を失っても、夜明けと共に、また新しい希望を見つけてくんじゃないでしょうか」
 「……そうだな。……そうだといいな」
 我夢とコマンダーエリアルベースから夕焼けに赤く染まる空を見つめ、つづく。
 次回――芸風の違いすぎる謎の怪人! 柊withバズーカ! 姉妹会談?! と予告時点で情報量が多すぎて丼からこぼれそうですが、今回は綺麗にまとまるのか?!