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その筋肉は誰がために

ウルトラマンガイア』感想・第42話

◆第42話「我夢VS我夢」◆ (監督:村石宏實 脚本:小中千昭 特技監督:村石宏實)
 OP、タイトルコール直後に、ガイアと並ぶ形でアグル復活。また藤宮もOPにソロで登場し、梶尾さんに対抗した“なんか俺格好いいポーズ”とかではなくてホッとしました。
 そこはかとなく幻想的な映像で夜の街を走る我夢が追いかけるのは、漆黒のロングコートに身を包んだ男。街の地下を巡る粒子加速器めいた施設(夢という暗示?)の内部で我夢が眼にした男の正体は――
 「僕は……君さ!」
 少し目つきが悪いが我夢に瓜二つの男であった!
 「頭脳と直観に秀でたというだけで、XIGの隊員になって地球を守る? 銃を持ち格闘技まで習得し、あげくガイアの力を――」
 「やめろぉぉぉぉ!!」
 「アルケミースターズがなぜ生まれたと思う?」
 突然切り替わった話題が、物語の核心に迫る急展開。
 「なぜ僕たちはネットワークで集まらなきゃいけなかった? 他の大人や子供たちが気味悪がったからじゃないか。他とちょっと違うだけで、人間はすぐに異端を排除する。人間なんてその程度の生き物。僕らこそ生き残るにふさわしい存在」
 「違う!」
 「本当にそう思っているのかい? 我夢」
 「なんだって?」
 「僕は君さ、我夢。君の心だ」
 「ふざけるなぁぁぁ!!」
 殴りかかってくる我夢をかわしたダーク我夢は、異形の巨大な怪物へと変貌。劇場版冒頭の劇中劇の宇宙人がこんなデザインだったように記憶していますが……やや非現実的な雰囲気の漂わせ方といい、劇場版を意識した導入でしょうか。
 「これが……僕の心の姿だっていうのか? そんなこと……そんな事あるかっ!」
 哄笑する怪獣に立ち向かうガイアは久々のうにょんバスターで怪獣を消滅させるが、その笑い声は深夜のビル街に木霊し続ける……
 その頃、十字架ロボを送り込んできたワームホールが、コッヴを送り込んできたものと同じ場所に繋がっていた事を解明したアルケミースターズは、その向こう側に潜む、破滅招来体の所在地を突き止めようと世界中のアルケミースターズを動員して解析を開始していた。
 そんな同志達の力強い姿にもどこか上の空の我夢はコマンダーにお茶に招かれ、予想外の要素が拾われましたが、久方ぶりのコマンダー自室シーンで、変わらず壁に掛けられた「無」の掛け軸が目を離せない存在感を放ちます。
 「どうして地球が自分に力を与えてくれたのか。どうして、アルケミースターズが生まれたのか。それを地球に聞いたところで、答えてはくれまい?」
 「わかってます。でも……答が欲しい時だってあるんです」
 藤宮との問題が解決した直後に、我夢が自身の道に悩みを見せるというのはボタンの掛け違いが発生したのかと思ったのですが、この後の展開は前回を踏まえた内容になっており、むしろ藤宮との問題が解決したからこそ、我夢には藤宮/アグルのカウンターではなく、自分自身が立つ場所を明確にする必要が出てきた、という展開。
 ただ、「アルケミースターズ」という“異質”については序盤に少し触れただけで消えていた要素だったので、中盤にもう一押し、欲しかったところではあります。
 冴えない様子を敦子に心配される我夢は、エリアルベース内部でダーク我夢や粒子加速器の映像を幻視した事から原因が通信機にあるのではと推測し、前回マーカーを撃ち込まれた際に通信機にも細工がされていた事が判明。
 「でも、パルス符号とかじゃなく、あいつは人間の言葉で話しかけてきた」
 「だってこれ、人間が作ったものだもの」
 ジョジーがパーツを取り出す横で、我夢はおもむろに倒立してシンキングタイムに入り、過去ネタを拾っているのは意識的なものでしょうが、それにしても妙なところを立て続けに拾ってきます(笑)
 筋肉に血液が漲ると、脳細胞もヒンズースクワットだぜ! とランナーズハイ状態の我夢はクリシスのシステムが書き換えられていた事例からもそこに人間の介入がある事に気付き、クリシス開発にも関わったアルケミースターズ創立メンバーのデータを照会。
 「ぼくら皆、地球と人類の為にって集まった筈じゃないか。だけど、そうとしか考えられない。そんな奴が居るだなんて……」
 「誰のこと?」
 「裏切り者が居るんだ。アルケミースターズの中に」
 物語の端緒、といえる「アルケミースターズ」という存在の中に、最初から獅子身中の虫が潜り込んでいた、というのは盛り上がる展開で、条件に符号する存在として我夢が辿り着いたのは、既にアルケミースターズを脱退した、ドイツ人のクラウス・エッカルト。
 …………藤宮の件といい、今回判明した新事実といい、わかってくるのは、ダニエルくんはきっと、物凄く苦労しながら仕方なくまとめ役をやっている超いい奴。
 我夢は急遽ドイツへと飛び立ち、その機影を見つめる参謀とコマンダー
 「我夢は最近、単独行動が多いな」
 「彼には彼にしか、出来ない事があるんです」
 「……そうじゃないんだ。……彼はまだまだ若い。若すぎるほどに。この地球を見舞う危機に対して、あんな若者に託さなくてはならない。……辛いんだ」
 未来ある若者に年齢以上の重荷を背負わせている自らの不甲斐なさを嘆く参謀が、「子供達が未来に夢を見られる世界を作る(守る)のが自分たちの責務」という強い気持ちを持っている事が既に描かれているので、その場限りのそれらしい台詞になっていないのが非常に大きく、参謀――そして物語全体にとって、「石の翼」回がとても良く効いています。
 (余談ですがこの、中盤のキャラエピソードで描かれたテーマが、実は物語全体に関わるテーゼを象徴的に描いており、後半になるにつれその存在が効いてくる、というのは後の『轟轟戦隊ボウケンジャー』シンデレラ回を思い出すところ)
 クラウスの行方を追ってドイツ・ルール地方を訪れた我夢は、幻影の中で見た城館の地下で不思議な文様を発見し、そこでかつてカナダで一緒にバズーカを撃った仲であるキャサリン・ライアンと再会。
 我夢とは別の理由からクラウスを探していたキャサリンだが、家族の証言によると、クラウスは文字通りに、この世から姿を消していた――。
 二人は一旦、城館を離れて街をそぞろ歩きし、同じアルケミースターズであるキャサリンの言葉に、我夢は力を与えられる。
 「どういう理由で生まれたって、私たちは私たち。一人一人、違う人間だわ。だからみんな、同じ事考えたり、同じ事する必要も義務もない」
 「そうだ、そうだよね」
 そんな我夢にキャサリンは手を伸ばし、「男女が二人で街を歩いているのだからこれはデートである」と宣言。動揺しつつも我夢はその手を取り、父さん! 母さん! それから藤宮! 僕のマネージャーは、ドイツに居ました!!
 べきいっ
 「アッコ、どうかしたの?」
 「気にしないで……なんかわけわかんないけど、超げきムカ」
 我夢が浮かれていたその頃、エリアルベースでは敦子がボールペンをへし折り、繰り返し我夢を心配する素振りを見せてコツコツ積み立てていたフラグをゲストキャラに全て持っていかれる敦子さんの逆ヒロイン力に史上空前規模のワームホールが開きそうな勢いですが、普段ほとんど描かれない我夢×敦子が強調されていたのは、背後からガソリンかけて焼き捨てる前提であったというのは、村石監督の悪ノリパターンが透けて見えるというか、あまり感じは良くありません。
 ……一方で正直、「超げきムカ」と呟いた際の敦子の表情が、今までで一番キャラが立っていたのが、大変悩ましいですが。
 地下室に刻まれた文様がルーン文字に似ている事に気付いた我夢は、キャサリンと共にクラウスが消えたという庭園に駆け戻り、そこでダーク我夢と遭遇。
 「そう、僕はクラウス。でも、高山我夢でもある」
 クラウスはその肉体と情報を、破滅招来体の送り込んでいた精神寄生体へと捧げて一体化すると共に、ガイアの依り代であった我夢の精神を揺さぶる為に接触を繰り返していたのだった。
 「僕がメンバーを抜けたのはね……僕はわかったからだ! 僕に力を与えてくれたのは、破滅ではなく、この地球と人類を、より高く進化させる存在なんだ!」
 破滅招来体に取り込まれたクラウスの、古典的マッド研究者めいた台詞回しは如何にも小中さんの趣味嗜好を感じるというか、禁断の宇宙的恐怖が耳から洩れそうな勢いで、クラウスは巨大化。
 「早く光を解放しろ、我夢。地球の力など、遙かなる星の叡知には、かなうものじゃない!」
 クラウスは、ダーク我夢が変貌した闇の怪物(考えてみると、黒いボディ中央にオレンジ系の発色部分、というのは、ゼットンモチーフか?)をよりスマートな人型にした姿へと変貌し、キャサリンを逃がした我夢はガイアに変身しようとするが、そこに 筋トレしながら 手を広げて俺格好いいポーズを決めた藤宮の幻影が姿を見せる。
 「我夢。あれはおまえ、それに俺のもう一人の姿だ。それでも戦うのか」
 「確かにあいつは、もう一人の僕。僕の心の奥に居る怪物だ。だから、僕が倒さなくちゃいけないんだ。――ガイアぁぁぁ!!」
 前回なされた、仮に破滅の予言、そして〔削除対象:人類〕を最初に目にしたのが我夢ならばどうしていたのか、という問いかけを踏まえつつ、我夢自身の心の弱さ、人類の選ばれた一部だけが高みに残ればいい、という潜在的願望にして誘惑の象徴としてクラウス魔人が置かれるのですが、我夢の精神性の掘り下げとしては、やや唐突になった印象。
 「おまえに倒せるか、我夢。……自分の心の奥に、巣くっていた怪物に」
 一度はその「怪物」に飲み込まれた藤宮が、遠くから忠告してくるだけで(「怪物」と向き合わない、という選択肢もある事を示す役割ではあるのですが)それを乗り越える手助けをしない、というのも不自然に劇的さを減じてしまっていますし――一人で乗り越えるべきもの、というには、藤宮自身が我夢の助けを借りているわけで――、キャサリンに光を当てたい都合で、部分的に物語を歪めてしまったようにも感じます。
 これはキャサリンへの好感度でも印象の変わってくるところではありましょうが。
 「我夢! 立ってよ我夢! 我夢なんでしょ?!」
 どうもこれがやりたかったらしい、ぶぃんぶぃん唸る光剣バトルの後、分裂増殖したクラウス魔人の一斉ビーム攻撃を受けて倒れたガイアだが、キャサリンの声援を受けると顔を上げ、アグトルニックから早回し地球の隙間ビームで分裂魔人を一掃。しかし消滅したかと思われた魔人は再び合体し、両者は互いにダッシュで距離を詰めながら同時に渾身のストレートを放ち――……
 心の奥に潜んでいた怪物と、今の僕との違い……それは、筋肉だ!!
 ヒーローとしてガイアのテーマである「心身を鍛えて一歩一歩成長していく」事を象徴するのが「筋肉」なわけで、まさにたゆまぬ筋トレが心と体の勝敗を分け、クラウス魔人は爆砕。恒例の怪獣爆破のアレンジなのですが、互いにパンチを打ち合った状態のまま、ガイアの至近距離で4カットに分けて魔人が内側から木っ葉微塵に吹き飛んでいくのは、強烈な映像。
 「あいつは……本当に僕の心の奥の怪物だった。僕の心の奥底に、あいつが言うような事を隠してるなんて思ってもみなかった。思いたくもなかった。でも……あったんだ。だから、僕はあいつと戦った。僕……勝ったぜ。戦って……勝ったんだ。僕は…………人と戦いたくなんかなかった。僕は、そんなに強くなんてない。でも今は……戦うしかないじゃないか!」
 内なる闇に打ち勝った我夢だが、キャサリンに思いの丈をぶつけると走り去り、キャサリンは涙を流しながらそれを見送る事しか出来ないのであった……で、つづく。にしても、心情的には「クラウスを殺した」という苦悩の勝利の後に誰と触れ合う事もできず孤独を抱えて去って行くシーンなのに、走り抜けていくのが華やかに咲き誇る花壇の横、というのは選択ミスだったのでは感。
 参謀の言葉も伏線となり、思った以上に重い苦さを残したエンドとなりましたが、ここから更に我夢の内心を掘り下げていくのかどうか、この後の拾い方を見てみないと何ともいえない、といったエピソード。上述しましたが、個人的にはやや仕込み不足を感じましたし、そこにキャサリンを絡めたい、というのが空転した印象。
 そういう私は敦子姉×梶尾さんはツボに入って大興奮していた身なので、キャサリンが量子的に不確定だった我夢のマネージャーポジションに急浮上というのを受け入れられるかどうか、でかなり変わってくるところがあるかとは思いますが。……とはいえ、我夢×敦子を推奨しているわけでは特に無い身としても、ただでさえ梶尾さんの件があるにも関わらず、キャサリンを持ち上げる為に敦子を踏みにじるというのはまがりなりにもレギュラーキャラへの仕打ちとして余計だったと思う部分。