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『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第14話

◆第14話「黄金の騎士」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:山岡潤平
 祭り囃子が違う、は凄く面白かったです。
 ミラーボールを飾り付け、カラフルなアジトを建設中のクレオンとワイズルーに近づく重い足音……そこに現れたのは、ドルイドンの新たな幹部・ガチレウス。
 ドルイドン族が集団としての形態を成しているのか相変わらず全く不明ですが、ワイズルーと同格らしいガチレウスは、ワイズルーの放つ氷弾を直立不動のまま全て弾くという防御力と、淡々と実務あるのみという冷酷さを披露。
 「なぜ会話を撥ねさせる必要がある?」
 そ、その方が見ていて楽しいからですかね?!
 正反対の性格で反りの合わないワイズルーは「降りる」宣言をして姿を消し、ちゃっかりアジトのソファに座り込んでミラーボールをバックに不敵に構えるガチレウス、とかは面白かったのですが、せっかくノリが良くなってきたクレオン&ワイズルーを一時解散して正反対の幹部キャラを登場させ、これまで以上に横暴な上司に絞り尽くされて散々な目に遭うクレオンの姿で笑わせにくる、というのは目まぐるしすぎて心の整理が追いつかない展開。
 率直に、クレオンの「この頃から僕は笑わなくなった」みたいなモノローグは引きましたし、片やノリのいいワイズルー、片や平板なガチレウスに挟まれてクレオンが四苦八苦、みたいに種類の違う「面白さA」と「面白さB」が共存しているのならまだ良いのですが、「B」をやる為に「A」が消されてしまうと、「A」が好きになってきていた身としては、「B」への心証がどうにも良くなりません。
 一方、Youtuber父から「浦島太郎」の昔話を聞かされる赤青桃。
 「総理の一件のように、俺達以外にもこの世界にはリュウソウ族が紛れているのかもしれない」
 ……え? あの? いや、うーん……君たちの知識量とリュウソウ族自身を含めた世界の認識の仕方がホントわからないよ! 「コウ達と視聴者の視点を近付けたい」という意識なのかもしれませんが、あまりにもコウ達の自身に関する知識が薄すぎて、200年間、戦闘以外の何も知らないマシーンとして育成されていたのではという疑念だけが膨れあがっていきます。
 また、仮に「視点を近付けたい」という意図があるのならば、「ゴールド登場の驚き」をコウ達と視聴者で共有させるのがより効果的だと思うのですが、〔浦島太郎の前振り→ういちゃんが目撃してビックリ→ういちゃんに動画を見せられる〕という間接的な初遭遇には劇的なサプライズの共有は全くなく、どうしてそうなった。
 ではういちゃんが、視聴者と驚きを共有する為の視点として配置されているのかといえば、ここまで13話の内容を見る限りはそうは思えず、今回のやたら過剰なリアクションも演出の迷子感が著しいですし、内と外を結びつける為の仕掛けが存在せず、そういった基本的な部分が欠けているのが困りもの。
 後まあ、あまり言いたくはないのですが、現実において撮影行為が物凄く気軽なものになり、更にそれを気軽にインターネット上で公開も可能な時代だからこそ、幾らフィクションで(結果的に)ヒーロー相手とはいえども「盗撮」という行為は慎重に扱ってほしかった要素。
 特にそれを「大人」であり日常寄りのキャラであるういが平然と行い、嬉々としてリュウソウジャーに見せる事が物語を動かすキーとなった上で(これにより物語上で行為そのものが肯定されてしまう)、特にしっぺ返しも受けない、というのはあまり気持ちの良くない描写(すなわち世界観)であり、今作が随所に見せる無神経さが、悪い形で出たと思います。
 すわ新しい仲間?! とゴールドを探すコウ達だが、「妻を探すのに忙しい」と仲間入りを拒否された上に、マイナソーが出現。水を操る強力なマイナソーに手も足も出ないまま逃げられてしまい、メラメラソウルが通用せず落ち込むコウの背を、少し離れた場所で他の4人が横一直線に並んで見つめている、というのが凄く間抜けなカット……。
 「メルト、何か作戦は無い?」
 「リュウソウル全てが効かないと決まったわけじゃない」
 「ああ。必ず手はある筈だ」
 「片っ端から試してみようぜ」
 「よし。限界は超える為にある! マイナソーを探し出して、今度こそ倒す!」
 あー……あなた方、素体の人間を探す事で、弱点がわかるという事になってませんでしたっけ?
 とにかく今作、話の都合でコウ達の行動方針が猫の目のごとく変わってしまうので、キャラにも物語にも芯が通らず、全員揃って昨日を振り切り新しいステージに突入してしまっているのですが、結局全てのスキルソウルをやたら強いマイナソーに弾き返された末に、「諦めるな!」「限界は……超える為にある!」とか拾われても、そもそもこれまで取っていた対応手段を取っていないので何も響いてこない、という竜装砂漠(まあその「対応手段」も話の都合で生まれた、それはそれで根拠の薄いものなのですが……)。
 そしてここからたっぷりと尺を採ったゴールド無双に入るのですが、そこに至るまでに展開していたゴールドと素体側の物語が「妻捜しを続けるゴールドが新たに惚れた女は借金を抱えたホスト(今回のマイナソー素体)に貢いでおり、どうするのが女にとって一番幸せかを悩むゴールドであったが、結局はマイナソーを倒して男を救う事を選ぶのであった……て、その女、ゴールドを転がして金づるにするつもりでしたよね?!」という内容で、どうして、これとそれとを掛け合わせたのか、大変困惑。
 私はどうにも今作の「最終的に家族の再会を描くにしても、ストイック通り過ぎてちょっと異常な馬マイナソー素体」「素体のミスディレクションの為だけに意識不明でベッドに転がされる少年」「犬マイナソーの毒からの回復描写が省略されてしまう素体少女」など端々に垣間見える、どこを向いているのかわからない作り、が据わりが悪くて仕方が無いのですが、前回今回のエピソード(&坂本監督回)では特にこの、作品全体の方向性が意思統一できていない――作り手それぞれに見えている作品の現在地と目標地点が違うのではないか――という今作の抱える不安定さが強く噴出したように思えます。
 そこに「このタイミングで追加戦士を出す理由」が誰もわからず何も設定されないまま、時間が来たので投入されてみた新戦士が参加する事で、あらゆる要素がカオスの闇鍋と化していき、体はバッターボックスに居るのに脳は入浴の指示を出しているが右手で料理を作りながら左手で溶接作業を行い右足は水泳をしているが左足は寝ているみたいな事に。
 幾ら新キャラ下駄履き回にしても、5人の中では実力者の筈のバンバ兄さんまで、十把一絡げに地面に転がってしまうという濃淡の無い描写も不満。
 加えて、ただでさえ地に足の付いていない今作に、追加投入されたゴールドの浮き世離れキャラが個人的にきっついのですが、主人公達との接触の過程が、ういが街で偶然見かけた×コウ達が探していたら偶然見つけた、の偶然×偶然というのも大変悪手ですし、嫁取りに来ているのにアスナは一瞥もしないしで、もう少し、初動でキャラとキャラの接点を丁寧に描いてほしいと切に思う次第。
 その為、とんでもない破壊力のニューカマーが旋風を巻き起こす! というよりも、全く関係ない人が遠くに見えるステージで一人で踊り出した、ような気持ちになってしまいました。
 もう一つおまけに「仲間にはならない」という対応が、数話前のバンバと全く一緒なわけで、もう少し、話の構成に工夫が必要だったのでは。
 次回どうやら、リュウソウ族間の派閥抗争の末、対立する一派がドラム缶に詰められて東京湾に沈められた過去の因縁に触れられたりするようですが、これでようやく、ひたすら曖昧な扱いだったリュウソウ族の輪郭が見えてきてくれるのか。現状、トワとバンバが、コウ達と同じ派閥に所属していたのかすらハッキリしないので(劇中で事実確認が一切されていない)、ますますとっちらかりそうな気もしますがどうなる事やら。
 正直、ゴールドがこの調子だと、“バンバ兄さんが好み”だけでは視聴モチベーションが限界に到達しそうで、そろそろ心の中で一足早い最終回が訪れそうな気配がちらついております。