内なるものと外なるもの
先日リストアップした「東映特撮ヒーロー作品完走リスト(2019年6月版)」を元に、作品に登場する悪の組織(厳密には組織化されていない場合も含む)を、“人類社会の内側から発生したもの”と“人類社会の外側から来たもの”とに分類してみました。
特にオチる予定はなく、単なる興味本位です。
●内なるもの
ネロス帝国、妖魔一族、バイオロン(注1)、クイーンコスモ(注1)、帯刀一味、ネオ・ギルド、スーパー・サイエンス・ネットワーク、
オルフェノク、ミュージアム、グリード、ゾディアーツ、ファウスト、
クライム(注2)、アリエナイザー(注3)、ダークシャドウ、ジャリュウ一族、臨獣殿、外道衆、マトリンティス帝国、シャドーライン、牙鬼一家(注4)、
モンスター一族、ダッカー、バドー
●外なるもの
マクー、スペース・マフィア、ジャマール、メルザード、
グロンギ、アンデッド、イマジン、ファンガイア(注5)、エボルト、
ジャシンカ帝国、大星団ゴズマ、改造実験帝国メス、次元戦団バイラム、ゴーマ一族、マシン帝国バラノイア、ボーゾック、ネジレジア、宇宙海賊バルバン、ロンダーズ・ファミリー(注6)、エヴォリアン、地底冥府インフェルシア、ゴードム文明、蛮鬼族、ウォースター、救星主ブラジラ、ザンギャック、デスガリアン、ギャングラー、
ドルゲ軍団、ダークザイド、
●その他
オルグ、カーンデジファー&武史
※由来不明
ブラックサタン、デルザー軍団、幽魔獣、
分類そのものに疑義の出る向きもあるかと思いますが、とりあえず、「(劇中世界において価値観のベースとなる)人類社会由来の存在」を内なるものとしました。
注1:Dr.ギバとクイーンコスモは共に人類とは別の生命体ですが、その誕生は人類社会に由来するので(そこに一応のテーマ性があるので)、内側に分類しました。
注2:クライムは後半、真の支配者が宇宙人であったと仄めかされるのですが、事実関係が不明のまま幕を閉じるので、地球の犯罪組織扱いとしました。
注3:アリエナイザーは視聴者目線では「怪人」ですが、劇中世界においては「犯罪者となった人類」であり、社会構造そのものが変貌した世界である『デカレンジャー』においては、内側としました。
注4:これも詳細不明のまま終わるのですが、「戦国最強の武将・牙鬼幻月」と紹介されるので、一応、人類扱い。
注5:ファンガイアの厳密な設定は知りませんが、劇中で提示されている情報を見る限り、人類とは別に発生した異種族、という認識。
注6:ロンダーズ・ファミリーは劇中未来時間では「内なるもの」なのですが、劇中現在時間では「外なるもの」なので、外側に分類しました。元は人類社会由来だが現在は「人間ではない」という悪役(悪の組織)はそれなりに存在しますが、時間という境界線をまたぎ超える事で、二重性を持つに至っている、というのが非常に特徴的な組織といえます。
ブラックサタン、デルザー軍団、幽魔獣、は元来人間だったのか、別の種族だったのか劇中でハッキリしなかった……筈。
それから『百獣戦隊ガオレンジャー』の「オルグ」が、「世界に漂う邪悪な念や衝動のパワーが、物の姿を真似て具現化したもの」というのが、人類社会が存在しなくても自然発生するのか、そのパワーが人類社会の「物」と結びつかなくては具現化しえないのか、もはや別の種族という認識でいいのか、判断つかなかったので、別枠。
逆恨み同盟は、カーンデジファー様は明らかに外側の存在なのですが、内側の存在である武史がその活動に不可欠であり、「人間の欲望から怪人を生む」パターンであるが「その人間が何度でも使用可」というのが割と珍しい感。
あと、『アギト』『龍騎』は、全話見ているのですが感想を書いていない為、詳細を確認できないので今回の一覧からは外しました。
ちょっと面白いと思ったのは、現状出ている設定の限りでは、『リュウソウジャー』ではマイナソーが「内」で、ドルイドンは「外」、という二重の構造になっている事。同時に、それと戦うリュウソウジャーもまた「外」の存在といえるのですが、この辺りの構造が物語として活かされる事はあるのかないのか。
ちなみにリュウソウジャー以外で「外」から来た戦隊といえるのは、フラッシュマン、ジュウレンジャー、ギンガマン、タイムレンジャー(部分)、ゴセイジャー、ゴーカイジャー、ジュウオウジャー(部分)、といったあたりでしょうか(追加戦士が「外」からパターンは、幾つかあり)。
この辺り『フラッシュマン』は、設定面では色々と面白い部分を突いていたのだな、と改めて。
で、『ジュウレンジャー』『ギンガマン』というステップを経て『タイムレンジャー』で大きく取り上げられ、近作では『タイムレンジャー』の構造を意識していたであろう『ジュウオウジャー』に繋がっていくわけですが、考えてみると『ゴーバスターズ』も『トッキュウジャー』も、「二つの世界に所属している者達」の戦隊だったので、この二重性というのは、小林靖子さんのこだわる所であったのかもしれません。
ヒーローにはしばしば、二つの異なる世界〔異常/日常、神霊/人間、他界/現世〕を媒介する神話的トリックスターの機能がありますが(仮面ライダーはこれを中心的なテーゼに持っているので、「内」と「外」が半々に結合している場合が多い)、“二つの世界の境界を行き来する事”に対して、小林さんはかなり意識が強かったのかな、と改めて。
私が『トッキュウ』大好きなのは、こういった構造が極めて巧妙に“物語”として練り上げられていた(何しろトッキュウジャーは毎回、ごくごく自然に現世と他界を行き来する!)、というのはありそうで、「ヒーロー論」に関してはやはり、小林靖子作品一つの集大成だと思っているのですが、この辺りの視点から色々なヒーローを掘り下げるとまた面白いかも、というのが見えたところで、今回の脳内整理はここまで。