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君が居たから強くなれた

ウルトラマンガイア』感想・第40話

◆第40話「ガイアに会いたい!」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:小中千昭 特技監督:北浦嗣巳)
 「チーフも、子供達へのブリーフィングは、苦手か?」
 むしろコマンダーは、なぜチーフに子供の相手を任せていますか。
 日本中から選ばれた子供XIG隊員がエリアルベースの見学に訪れ、KCBがそれをレポート。突然、筋トレハッキング映像が大写しになったり、突然、マッチョ集団が筋トレを勧めてくるような惨事もなく和気藹々と順調に進行し、子供達からの質問を受け付ける我夢。
 「どうしたらガイアに会えるの?」
 「……呼べば、来てくれるわけじゃないんだ。ウルトラマンは、僕たちを助けてくれるけど、その前に、僕たちが精一杯頑張んなきゃいけないんだ」
 子供達への言葉という形で改めて我夢の“ウルトラマン”観がハッキリと言語化され、我夢はあくまでガイアの力を「地球から託されたもの(預かっているもの)」と受け止めており、ギリギリまで“人間”として戦って初めて、その力を用いる(頼る)事が許される、と考えている節が窺えます。
 それが、地球に対する人類の証明になるというか。
 メタ的には勿論、「何故すぐにウルトラマンに変身しないのか」というエクスキューズの要素はあるのですが、それを物語全体のテーマ性と融合して積み重ねを丁寧に続け、そしてまた、「精一杯頑張る」という部分を怪獣との戦いのみならず、筋トレもとい「力を預かった自らを鍛える」事で具体的に示してきたのが今作の上手いところで、最終クール開幕戦にして、高山我夢/ウルトラマンガイア、というヒーローが一つの像を結んだ、といえます。
 この辺り、メタルヒーローや戦隊ヒーローが、力のオリジンは内的にせよ外的にせよ、「ヒーロー」である事は「自分自身」であるのに対し、あくまで「超越者の依り代」である我夢には、“神と向き合う”事が必要であり、それが遂に3クールの対話を通して言語化した、というのは《ウルトラ》シリーズの特性の出たアプローチでありますし、我夢の成長として感慨深いものがあります。
 そしてそれがまた、古代生物や古の地龍やガイア自身に例えられてきた「人類は地球とどう向き合うのか」という今作の通しテーマに繋がっているのが、綺麗な構造。
 何やら目配せを受けた少年・タロウがこっそり居残ろうとしたのを我夢が見咎め、EX機について
 「本当は、堤チーフの専用機なんだけど、僕が結構改造しちゃってるんだ」
 と衝撃発言が飛び出す一幕もありつつ、子供達は輸送機で無事に地上への途に付き、肩の力を抜く偉い人達。
 「千葉参謀、今度は随分と無理を通されましたね」
 「いや~、必要だと思ったんだよ。空が怖いと思っている子供達、未来が来ないと感じてしまっている子供達に、いやいや、そうじゃないんだ、未来に希望を持っていこうと。子供達自身の目で、見てもらいたかったんだよ。このエリアルベースや、そして、ここで働いている人達の姿をね」
 今回の子供XIG空中要塞訪問は、世間の風向きをコントロールしようとする参謀のプロパガンダ企画、ではなく、子供達への真心からの産物であった事が明かされ、「石の翼」回を踏まえている事で凄く沁みます。また、以前にも書きましたが、破滅招来体という脅威が存在している世界のパラダイムシフトを折に付け描いてくれるのが、今作の良いところ。
 ほのぼのと笑顔を交わす上層部だがしかし、エリアルベースを離れた輸送機の搭乗人数がおかしい事にジョジーが気付き、我夢は結局、先程の少年を取り逃がしたのか、と思ったら……田端ぁぁぁ!!
 基地内の盗撮にかまけていた駄目な大人は険しい表情の堤に見つかるが、物怖じせずにXIGの秘密主義に物申すと強大な戦力をくさし、ここでTV屋としてXIGに対抗心を持つ田端を拾いつつ(今回のチーフへの突っかかり方を見ると、何かエリートへのコンプレックスもあるのか?)、なかなかスポットを当てる機会の無かったチーフを絡めてくれたのはおいしい。
 「立場としてはそうでしょうね。――堤中佐。航空防衛隊随一の戦術家かぁ」
 ち、チーム・クロウ……ううっ、頭が……。
 「……俺には想像がつかねぇ。飛行機をまるでゲームの駒のように動かして、命に関わる命令を下すという……仕事がね」
 厭味を飛ばすも、ノーコメントを貫き通すチーフによりピースキャリーで送還される事になる田端だが、異常事はまだまだ続き、輸送機の航跡を追う光のトンネルが出現。その誘導によりピカピカしたハサミ怪獣が宇宙から飛来するとジオベース付近に降り立ち、その衝撃波に巻き込まれたピースキャリーから、密航していたタロウ少年を乗せたまま、EX機が発進してしまう!
 片やジオベースに迫る怪獣の脅威、片やEX機に乗ったまま空に飛び出してしまった少年の安否、という二つの危機が並行して描かれるのですが、一度は我夢に見つかった筈の少年がEX機に潜り込んでいるのに、我夢は我夢でなんの問題もない様子でブリッジに戻ってきている為、だいぶ意味不明な成り行きに。
 衝撃波の影響でEX機のオートパイロットシステムもダウンしており、これが<レスキューポリス>だったら、セキュリティの作動で自爆5分前になるところですが、今作は『ウルトラマンガイア』で良かった!(?)
 コマンダーの目配せを受けつつブリッジを飛び出した我夢が、エリアルベースの通路をダッシュしながら変身するシーンは、横の動きにスピード感を乗せる見せ方で北浦監督の好みっぽい演出。
 一方地上では、怪獣がガバッと開いた腹部から火球を繰り出す格好いいギミックでジオベースの防衛システムを粉砕し、これまたスピード感のある特撮で迎撃の猛攻を仕掛けるチームライトニング。虎の子のミサイルを怪獣の腹部に放り込んだ梶尾機だが、まさかのミサイル返しによりあわや二階級特進の危機に、降臨する梶尾さん大好き同盟親衛隊長・ウルトラマンガイア!
 ベースキャリーのチーフは自らフローターで機を離れると、EX機に接近。ベースキャリーがリパルサーエンジンの不調でEX機に近づく事ができない為、内部の少年に操縦を指示し、その無茶な手段と口調に毒づく田端を、柔らかくたしなめる神山。
 「チーフが何故、フローターで出て行ったと思いますか?」
 「それは、万が一の時の」
 「無論、それが第一です。しかしあの人は、子供に自分の顔を見せにいったんです」
 ベースキャリーの操縦席に居る時に、10文字以上喋るのは初めてな気がする神山さん、ゆっくり喋るとやたらいい声で、なにやら謎の説得力があります(笑)
 「戦いの現場では無線が頼りです。でもその前に、我々を指揮する堤チーフは、必ず私たちと顔を合わせるんです。命がけの仕事をする私たちにとって、指揮官を信頼する事は、何よりも大事な事です」
 ち、チーム・クロウ……ううっ、頭が……。
 「……部下は……ゲームの駒じゃない、か」
 「私がここで見ている。さあ、君の勇気を見せるんだ!」
 「僕の勇気」
 田端はベースキャリーの操縦席からチーフの勇姿にカメラを向け、チームはフローターのコックピットからEX機のタロウ少年へとサムズアップを送る。間近からのチーフの声援に応えてタロウは機体の制御を安定させ、堤チーフの知らない内に、我夢が椅子の下に変なボタンを仕掛けたりしていなくて良かった!
 このボタンを押すと、ふっ、操縦しながら、ふぅっ、腹筋を、ふっ、鍛える事が、ふぅっ、出来るんです!
 地上ではハサミ怪獣に苦戦していたガイアが、アグトルニックから連続攻撃。ローキックで転ばせた怪獣を振り回してから飛び上段回し蹴りを浴びせ、倒れた相手を背後から掴んで地面に繰り返し叩きつけると、締めは得意のフルスイングで凶器は地球のコンクリートジャングル!
 迫り来る筋肉の猛威に恐れをなしたハサミ怪獣は宇宙へと逃亡を図り、再び出現した光のトンネルに巻き込まれてしまうEX機。コックピットのキャノピーが吹き飛んだ際に、大事に抱えていたスケッチブックの中身が空へと飛び出してしまい、それを拾おうとしたタロウ少年もまた空中へと投げ出されてしまうが、逃亡した怪獣を背後から光線技で抹殺したガイアが、急ぎ舞い戻って手の平キャッチで救出に成功し、事なきを得るのであった。
 「今回の事はXIGの隊員にあるまじき勝手な行動が原因だ」
 「……ごめんなさい」
 「……しかし、XIGのユニフォームを着る者にとってふさわしい、勇気ある行動だった」
 タロウは無事に地上へと戻り、少年を仮初めながらXIG隊員として扱う堤が、定番ながらいい味。
 「ありがとうおじさん!」
 まあ大人達はこれから、始末書と大減俸が待っているので心は土砂降りのスコールですが!
 「でも、どうして、そんなにガイアに会いたかったの?」
 「見せたかったの……でも、僕……」
 そこへ散らばってしまったスケッチブックの中身――子供達の絵――を拾い集めた玲子さんらが姿を見せ、タロウ少年の無茶な行動は、全国の少年少女の代表としてガイアに皆の絵とメッセージを伝えたかった為であった事が判明(作品世界に無理の無い範囲で収まっていますが、そもそも公募企画が背後にあったのでしょうか)。
 そして我夢は、タロウ少年の描いた、固く握手を交わすガイアとアグルの姿を目にする。
 「アグルもまた、ガイアと一緒に破滅招来体と戦うんでしょ?」
 ああ成る程、これをやりたかったのか……。
 「アグル……」
 「本当はガイアとアグル、仲良しなんだよね!」
 「勿論さ。だって、二人ともウルトラマンなんだから」
 子供達からガイアへのメッセージ、を送るだけにしては、一度は声をかけた少年に結局潜伏を許す我夢・分別のありそうな年頃なのに子供達の計画に荷担する引率の少女・そもそも外部からの乗客が二人も少ないのに発進してしまう輸送機・KCBはもはやXIG絡みの取材から完全締め出しでは・EX機を操縦してしまう少年、などなど、無茶によるデメリットの方が大きすぎたのでは、と思っていたのですが、「ガイアとアグルへのメッセージ」であったならば、これだけの無茶をした価値はあったと成る程納得。
 田端は撮影したテープを堤に渡し、おじさん同士の共感にまでは至らずも堤への視点を多少は良化。最後はガイアが少年少女を手の上に乗せて飛翔し、歓声をあげる子供達の姿からEDパートに突入。EDテーマをバックに今回ダイジェストと子供達の絵が交互に映し出される、というのは胸に響き、次回、この流れから「アグル復活」は、お見事。
 上述したように随所に無茶は目立ったものの、これまでの積み重ねを丁寧に活かし、高山我夢/ウルトラマンガイアというヒーローの現在地を描いたのは、第3クールまでと第4クールを繋ぎ、終章開幕を告げるエピソードにふさわしい内容でした。
 以前コメント欄で教えていただいた実際のファンエピソードが下敷きになっているのかと思われますが、そこから、ガイア(我夢)×アグル(藤宮)の関係性に希望の光を当てる、というのも気持ちのいい着地で、1エピソードとしては粗が多かったですが、子供ゲストを上手く取り込み、年間の構成で見ると凄く良く出来た話、とでもいいましょうか。
 一方、「ロック・ファイト」の惨劇からなんと30話、くしくも同じ小中脚本で汚名返上のチャンスを与えられた堤チーフですが、「第10話のやらかし」と「今回の勇姿」が全く無関係の為、まあ今更あの話を掘り返しても仕方ないとしても(そもそもスタッフ側は問題を特に感じていないかもですし)……「それはそれ、これはこれ」になってしまい、何となくスッキリせず(笑)
 勿論あの後、チーム・クロウへの対応自体は改善されているのでしょうが、あのエピソードの割と大きな問題点はエリアルベース男性陣の好感度が数珠つなぎに揃って下がった事だったので、今回も“男目線からのチーフ評”に終始してしまったのは、惜しまれるところです。
 ところで与太よりの余談ですが、タロウくんの居残りに荷担した引率少女の「タロウくんは代表なんです」という言葉があまりにも熱に浮かされたような感じだった為、実は子供XIG隊員は怪獣被害者の会の遺児に取って代わられており、タロウくんは皆を代表する闘士として
 「これは聖戦である! 驕り高ぶり天を意のままにしようとするXIGへの、裁きの鉄槌なのだ! 見よ! 地上の人々よ! 真に破滅を打ち砕く、救いの光をもたらす浄化の炎が花開く様を! 私の声を聞き、ウルトラマンよ、どうか世界に光を……!!(ぽちっ)」
 みたいな展開になるのだろうかと5%ぐらいドキドキしていたのですが、今回も敦子さんのヒロイン力の低さが、量子観測的にエリアルベースを救った!
 そんなわけで次回――僕のヒロインが見つからないというのならっ! 僕がヒロインになればいいっ! 禁断の叡知に目覚めてしまった我夢に、藤宮の手は届くのか?!