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カジオライトニング 牡5

ウルトラマンガイア』感想・第38話

◆第38話「大地裂く牙」◆ (監督:原田昌樹 脚本:古怒田健志 特技監督:原田昌樹)
 「環境が守られても、そこに住む人間が、安全でなくては、意味が無い」
 ガード環太平洋部隊の柊が、参謀が懸念を続ける地底貫通弾の使用を予告する為にエリアルベースを訪問。参謀の口から、地底貫通弾の大量破壊兵器としての負の面がとうとうと捕捉され、今作劇中における“核兵器のメタファー”という認識で良さそう。
 この辺りの語り口の重厚さと、それに伴う説得力は役者さんの力が大きく、参謀を引っ張り出してきた甲斐があります。
 一方の柊を演じる大和武士さんは劇中の位置づけの割には演技が固く、プロレスラーゲスト再び? かと思って経歴を確認したら、ボクサーでした。とはいっても、現役時代から映画などに出演し、1992年にはボクサーを引退しており、この当時は既に、俳優活動が中心だった模様。
 その頃、我夢・梶尾・敦子は、療養中の敦子の姉・律子のお見舞いに地上の病院を訪れており、何くれとなく梶尾@おめかし、にお節介を焼く我夢(笑)
 梶尾さん大好き同盟は、いつの間にやら梶尾と律子を側面支援で応援する方向にシフトしていたが、ヒロイン力の低さに全太平洋地域が号泣中の敦子の胸中は複雑に曇り空。一方、(梶尾さん、頑張れ、梶尾さん)と心の単勝馬券を握りしめる我夢は、スタンドで前のめり気味。
 ちょっといい雰囲気の二人の様子を物陰から固唾を呑んで見つめ、真剣極まりない表情で
 「梶尾さん……」
 と呟く我夢、ちょっとおかしいぞ我夢! 大丈夫か我夢! なんで一周回って母親モードなんだ我夢!?
 一緒に物陰に隠れていた敦子と物理的に急接近したにも関わらず、1ミリもドキドキイベントに発展しない敦子さんの逆ヒロイン力に全地底怪獣が泣き、全身全霊を込めて梶尾さんしか見ていない我夢が、梶尾さんの事を好きすぎて少々壊れ気味なのですが、大爆笑のシーンでした。
 「美しい景色だ。こんなところに居るから、地上の人間の痛みがわからなくなる」
 エリアルベースでは窓の外の夕焼けを見つめながら柊が呟き、XIGとガード、同じ人類の防衛組織の中に生じる方針の対立に絡めて、「天と地」という今作の背景に置かれたモチーフを改めて強調してくれたのは好み。
 「何をしたわけでもない……地底に眠っているだけの怪獣にミサイルを撃ち込む、そんな事が……」
 「許される筈がない」
 そしてミサイルの発射予定日当日、ツムラ湖周辺の警戒に当たる我夢の前に、元をただせば現状の遠因を生んだ藤宮が姿を現す。
 「地底に眠っていた怪獣たちを呼び起こし、結果的に地底貫通弾を使わせたのは俺だ」
 「しかしそれは……」
 「そうしていなければ! たくさんの人間が死んでいた。……俺は救われたと思っていた。だが今は違う。地球に向けた刃は、いつか必ず人間自身に跳ね返る」
 XIG上層部の反対意見に耳を貸さず、なんとしてでもミサイルを発射しようとする柊は、そもそもアリゾナで目覚めた怪獣によって全滅したガードアメリカ地上部隊の指揮官であった過去が語られ、玲子さんの個人的な感情論では覆せない(勿論それでも、“味方で居る”人の存在は大きいわけですが)藤宮の罪が容赦なく突きつけられるのですが、果たして藤宮に救いの光はもたらされるのか否か。
 「俺は俺のやり方でやる。おまえは自分に出来る事を考えろ」
 一つの罪滅ぼしとして、怪獣の為、地球の為、そして人間の為、藤宮は腕尽くでもミサイルの発射を阻止すると宣言し、悩める我夢は、壬龍回以来となる風水師・黒田と湖畔でバッタリ遭遇。
 ミサイル攻撃のニュースを聞いてやってきたという黒田は羅盤を読んで湖周辺の地相についてとくとくと語り、「よくわからないんで簡潔にお願いします」と普段と逆の立場になる我夢、の図は面白かったですが、ガイアと目が合った事のある黒田の「どこかでお会いした事が?」ネタはあるにしても、通りすがりのXIG隊員にいきなり地相を語り出す風水師の登場は、さすがに強引。
 更にその黒田の、凄い地脈のパワーで守られた怪獣には地底貫通ミサイルが通用しないかもしれない、という説明を我夢からそのまま?聞いて、避難地域の拡大を指示するコマンダーも、あまりにも強引。
 コマンダーの地底貫通ミサイルに対する危惧は描かれていますし、そもそもコマンダーには、オカルト寄りの人疑惑はあるのですが、それにしても無理が出てしまいました。
 黒田さんのぶっ飛び具合も相当なものなのですが、壬龍と交信したりもしているので、この人もまた疑似アルケミースターズ、すなわち、ウクバール・チルドレンであったりするのか(さも事実のように設定を捏造しないように)。
 一方、スタン警棒で警備兵を突破した藤宮は、柊と対峙。
 「自分たちだけが生き残る為に、他のものを滅ぼす事は、人間の驕りだ!」
 「私は沢山の人達が、怪獣の犠牲になって、虚しく死んでいくのを見てきた。怪獣は滅ぼさなくてはいけない」
 俺の! 筋肉で! 止めてやる! と宣言通りに腕尽くで行く藤宮だが、柊の圧倒的筋肉の前に惨・敗。藤宮はやはり、どこまで行っても藤宮なのであった!
 「既に沢山の人達が怪獣によって命を失っているんだ。その人達に対して、おまえはどう責任を取る!? 私は――これ以上の犠牲は出させない。……人類の、為に」
 遂にミサイルは発射されてしまうが、黒田を自動操縦のEX機に避難させた我夢は、地中を突き進むミサイルに対してどうする事も出来ないまま、ミサイルは目標に命中。だが、黒田の推測通りに膨大なエネルギーに守護されていた怪獣は地底貫通弾で倒し切る事ができず、地上へと出現。
 「どうして、こうなってしまったんだ……それでも僕に、出来る事があるっていうのか?」
 麒麟ベースに聖獣を色々と組み合わせたような四つ足の怪獣に対して変身するガイアだが、ミサイルのダメージにより体中から体液を撒き散らす怪獣の姿に戸惑い、積極的な攻撃を仕掛ける事ができない。
 「ガイア……もういいわ。その怪獣は、もう……」
 そして弱った怪獣は、柊の陣取るミサイルの管制室へ、一歩一歩、体を引きずるように進んでいく。
 「奴は知っているのか? 自分の敵を」
 「人間はただおまえ達に、怯えるだけではない」
 怪獣と正面から向き合う柊は基地の迎撃システムを起動し、バラード調の前期EDインストが流れる中、人間の兵器によって傷だらけの怪獣が蹂躙されていく姿を何もできずに見つめるしかないウルトラマン、という爽快感皆無のクライマックス。
 「おまえには……聞こえないのか?! あの、大地の叫びが!」
 「…………奴は、怪獣だ」
 柊は最後まで攻撃を止める事なく、遂に怪獣は地面に崩れ落ちて死亡し、「怪獣は……」「怪獣は……」と繰り返されるのがなんだか會川さんぽいエピソード(偏見です)で、脳内で爾朗センパイが「おまえは大自然の使者なのか。太古の神なのか。人間の犠牲者か! それとも、俺たち自身が望んだものかっ」と叫びだし、流れ弾で藤宮がジャガーさんに「いつまで坊やでいるつもりだ!!」と説教されてしまい、困りました(何を言っているかわからない方は會川昇渾身のヒーローアニメ『コンクリート・レボルティオ』を見よう!)。
 ……そういえば、《ウルトラ》シリーズ視聴復帰して3年ぐらいにはなるし、一時期持っていた會川脚本へのアレルギーも払拭されてきたし、今『ウルトラマングレート』(未見)を見たら、楽しいかなぁ……見られる手段があるのかは、知りませんが。
 避難区域の病院で避難を手伝っていた律子は、飛び去るチーム・ライトニングと横たわる怪獣?を見つめ、ガイアは怪獣の死体を地底へと還す。
 「怪獣は……滅ぼさなくてはならない。――人類の為に」
 拳を握りしめた黒田は呟き、
 「僕は……何も出来ませんでした」
 「……チャンスはまだあります。きっと。大地に住む者達と、共に生きていける方法は、必ずある筈です。私たちは、まだ諦めてはいけない」
 地底の怪獣はあくまで、人間と同じ地球で生まれた命である、という方針が示されて、つづく。
 予告から、大変楽しみではあるが内容盛りすぎでは……という危惧のあった今回、原田×古怒田なら上手く捌いてくれるのではと期待感も高まったのですが、概ね4クール目への布石といった内容で、1エピソードとしては消化不良。
 特に今作の構造上、柊にしろ律子にしろ黒田にしろ、間違いなく再登場するだろう、という程の安心感が無いのが、消化不良に拍車をかけてしまいます。
 徹底して「人間」の立場から怪獣に攻撃的姿勢を取る柊の存在はスパイスとして効いてきそうですし、梶尾さんとの絡みも冒頭だけだった律子さん(そして我夢が一番面白くなってしまった)の“夫を怪獣に殺されている”という背景は取り上げられませんでしたし、黒田さんは黒田さんで田端さんとのスキャンダル疑惑が浮上し、いずれも再登場の可能性を匂わせてはいるのですが……特に! 律子さんの! 再登場は是非!
 あと、我夢&藤宮のみならずXIG上層部も柊に否定的であり、構造が全体的にアンチ柊なのは、それによって地底怪獣側に感情移入させる作りにしても偏りが露骨すぎて、柊寄りの視点の人物も配置した方が、布石としてもエピソードとしても、むしろ引き締まったのではないか、という点は気になりました。
 次回――このまま柊編が続いたら、おお、と思ったところですが、予告の雰囲気からはどうやら、一休みの変化球?