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最新話前に追いつけたのでもう一本!

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第11話

◆第11話「炎のクイズ王」◆ (監督:加藤弘之 脚本:山岡潤平
 「……わざとじゃないんだな? わざとじゃないんだな?!」
 幻覚の霧を操るホタテマイナソーに攪乱され、赤と桃から切りかかられた青の反応が、だいぶ深刻。
 ドルイドンは前回ラストに登場したシルエット――新たな騎士竜――を手なずけようとしていたが、その謎掛けに答えられずに火炎放射を浴びせられ、それを目撃したバンバとトワはYoutuber家へ。
 突然、コ○ンくんに麻酔針を撃ち込まれた眠りの小五郎のようになったYoutuber父がつらつらと騎士竜について語りだし、どうとでも転がせる不穏な伏線ではありますが、それよりなにより、
 「かつてそのあまりにも強大な力にリュウソウ族も恐れ真っ先に封印した騎士竜が居た」
 やはり、いきすぎた生物兵器だったのでは、騎士竜。
 古代リュウソウ族は太古の地球の覇権をドルイドン族と争っていたもう一つの戦闘民族なのでは疑惑が再燃する中、Youtuber父の語った内容を古文書で確認するメルトだが、肝心の問答に対する模範解答の部分は、かつてアスナがメルトと本を奪い合った際に、千切れ飛んで紛失してしまっていた。
 「馬鹿力……」
 「ていうか! メルトならそんなのカンニングしなくても、答えられるでしょ?!」
 「え?」
 「そう! 俺もそう思ったから来た!」
 「ええっ?!」
 「確かに! メルトなら絶対大丈夫だ!」
 「――っ!!」
 「さっそく騎士竜に会いに行こう!」
 「……まま待て! …………よ、予習を、させてくれ」
 の畳みかけるやり取りは大変面白く、やはり掛け合いが活き活きとしていると、物語がグッと魅力的になります。
 メルトの動揺があまりに露骨で顔を崩しすぎかなとは思いましたが、今作に関しては感情はわかりやすく出していく路線の方が良さそうですし、メルトが古文書を取り出した時点でひとり背中を向けて不審な態度になるアスナの見せ方も可愛く、脚本がツボを心得てきたのか、或いはお久しぶり(『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』第34話以来)の加藤監督と相性が良かったのか。
 かくしてバンバとトワの案内で一行は炎の騎士竜ディノボルケーノの元へと向かい、背中に大量のクイズや雑学の本を担いで予習に余念のないメルトだったが、騎士竜からの思わぬ問題にフリーズ。激しく動揺しつつも解答をひねり出そうとするメルトを見守る4人の視線を順々に映していったのも良かったですし、背後からの期待の重さに負けて崩れ落ちたメルトを、一瞬の判断でトワが火炎放射から助ける、というのも良かった。
 「……け、傾向と対策を立てよう」
 「そうだね。メルトばっかりに頼っているのも、アレだ」
 その後、落ち込むメルトを励ますアスナとトワも好感度アップ!
 よーーーやく、キャラクターがエピソードごとに点と点で向かい合うだけではなく、互いに線を引いて繋がり始めて、こういうのが見たかったので嬉しい。
 姿を消したボルケーノを聞けソウルで探したコウは、ボルケーノが目の見えない少年とクイズを通して触れ合っているのを知り、声だけだから少年と怪物の関係が成立している、というのはお伽噺の雰囲気もあって良いアイデア。治療を終えた少年の目が治る事を知ったボルケーノは「旅に出るかも」と告げ、コウは強面の騎士竜が実は繊細な心の持ち主である事に気付くと、先祖の非道な行為を謝罪。
 ……多分、ボルケーノが最初に封印された理由(あまりにも強大な力を恐れ)って、「高度な知性を与えすぎた」事なんだろうなぁ。
 ボルケーノと距離を縮めるコウ(を手持ちぶさたに背後で見つめるバンバは今回、地味にぼそっとボケる役)だが、聞けソウルの効果時間中だったのか看護士の悲鳴に気付き、病院に駆けつけると少年がショウタイム怪人にさらわれた事を知る。ワイズルーは少年を人質にボルケーノに服従を要求し、今回も大変卑劣。
 「俺があの子を救う!」
 「どうやって……?」
 「俺には仲間が居る! 俺達は5人集まったら、足し算じゃない。掛け算になるんだ!」
 「……バカ。足し算だと5だが、1を何回かけても1だ!」
 相変わらず、コウの仲間観念は内容の積み重ねが薄く上滑り気味なのですが、それを聞いて素直に喜ぶアスナ、溜息をついて正解を告げるメルト、呆れるバンバ、ちょっと考えているように見えるトワ、と四者四様のリアクションは個性が見えて面白く(あまりにも書き文字CG多用の演出は好みからは外れますが、エピソードとして貫いていたので許容範囲)、そこから、そもさんへ繋ぐというのもスムーズ。
 「みんな俺の姿に恐れ、問題の本質を見失う。答は既に問題の中にあるのに。おまえは俺の姿に恐れず、感じたままを素直に答えた。おまえを信じよう」
 問答という試練を乗り越えたコウはボルケーノが吐きだした新たなスキルソウルを受け取り、リュウソウジャーは囚われの少年の元へ。
 トランプ兵に切り込みながら個別に名乗っていき、
 「「「「「正義に仕える5本の剣! 騎士竜戦隊!」」」」」
 でマイナソーに飛びかかって突きを入れ、
 「「「「「リュウソウジャー!」」」」」
 と決める揃い踏みは、積み重ねはともかく、少なくともこのエピソードにおいては少年の救出の為に心が一つにまとまっているのも話の流れが明確で、今作で初めて、気持ちの良い揃い踏みでした。
 「俺達の騎士道、見せてやる!」
 再び幻覚の霧に飲み込まれてしまうリュウソウジャーだが、赤がボルケーノから託されたメラメラソウルで朱色の鎧をまとってバーニングすると、強烈な範囲攻撃で、強引に霧を突破。
 「みんな、俺が攻撃を仕掛ける瞬間飛んでくれ! ソウルを一つにするぞ!」
 の意味はいまいち良くわからないなりに、キーワードを取り込んでいく姿勢は評価したい……というかこれはホント、もっと序盤からやっていかないといけない部分だったので、むしろ今頃になった事に愕然としますが、内部で補正の動きは出てきているのかも。
 マイナソーはキノコと逃げ出すも、大爆死寸前に陥る少年だったが、飛び込んだ赤が炎で炎に打ち勝って救出に成功。後日、コウは少年をともなってボルケーノの元を訪れ、少年はボルケーノを強くて優しいおじさんとして受け入れるのであった、で爽やかにオチ。
 一方、突然、騎士竜伝説を受信したYoutuber父の鞄の中から、かつてアスナが吹き飛ばした筈の古文書の1ページが発見されるが本人は「記憶にございません」「身に覚えのない事です」「秘書が勝手にやりました」との供述を繰り返し、不穏な気配が高まるのであった……。
 「お父さん……病院、予約しよっか!」
 は娘としては当然の対応で、是非、病院に行った方がいいと思います。あと、タンスの引き出しや地下室の存在などを念入りに調べて、どこかにビデオメッセージが仕込まれていないか、早急に確認した方がいい。
 5人の積極的なやり取り、それぞれの個性の見えるリアクション、クライマックスでの気持ちの良い揃い踏み、と戦隊で見たいものがだいぶ見られて、今作ここまででは、一番好みのエピソード。
 話は当然作りやすいとしてベラベラ喋る騎士竜が出る事で、ティラミーゴの独自性が星屑のように失われたという問題も出ましたが、よくよくボルケーノの記憶を辿ると、コールタールよりもどす黒い古代リュウソウ族の闇が浮かび上がってくるような気がしてなりません。
 「おまえは我々の求める以上に賢すぎる。兵器に考える必要などないのだ、ボルケーノよ……!」(雷鳴と共にカメラに映し出される団時朗!)
 ……与太はさておき、今回、何がこれまでと違ったかといえば最大のポイントは明々白々で、
 マイナソー絡みのドラマを一切描かなかった
 事であり、今作の問題点がどこにあるのか、がよりハッキリする事に。
 かといってドラマ性が全く無いのかといえば、少年と怪物の交流エピソード(にメンバーが変化をもたらす)としては過不足なく出来ていましたし、これまでの今作が戦隊の1話に収めるには“欲張りすぎ”であったのが適量に修正された感はあり、これが脚本側のチューニングによるものならば、今後への期待感は上方修正。
 まずは今回、ばっさり顔見せ扱いに済ませたマイナソーを次回どう扱うかですが、根本的なところではやはり、マイナソー素体のドラマと戦隊の要求をこなして話をまとめるには前後編のボリュームが必要だろうと思うので、その適量を調整していけるのかどうなのか。
 また、バーニングリュウソウレッドに焦点を合わせるという事で巨大戦も無しとし、その分スッキリまとめやすかった余裕でキャラクターの掘り下げに手を入れられたのは良く、追加戦士の登場前に、色々ギリギリ間に合った感。
 これも次回、巨大戦に焦点を合わせた作劇にした時にどうなるのかが、マイナソー問題と合わせて一つの試金石になりそうですが、巧い形に転がって、『リュウソウジャー』再起動の嚆矢になってくれる事を、期待したいです。
 加藤監督と滅茶苦茶相性が良かっただけ、という可能性もあるので諸々楽観視は出来ませんが、久々の加藤監督がキャラの魅力を十分に引き出してくれて、テンポも良く楽しめたエピソードでありました。