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スーパー梶尾タイム

ウルトラマンガイア』感想・第35話

◆第35話「怪獣の身代金」◆ (監督:市野龍一 脚本:太田愛 特技監督:佐川和夫)
 か、梶尾さんが、敦子に、自分から話しかけた?!
 という驚愕の第35話。
 ナレーション「――その日、一機のGUARD輸送機が、南極の氷の下の湖で発見された、古代怪獣アルゴナの卵を載せて、一路日本へと向かっていた」
 ところが輸送中、卵からしたたり落ちた酸性の液体が輸送機のハッチを溶かし、バランスを崩した輸送機は墜落してしまう。
 ナレーション「――その頃、全く無関係な古田鉄工所では、社長は昼寝、工員の幸男と武は元気に暇を潰していた」
 そこへ落下してきたアルゴナの卵がバスケットボールのゴールにすっぽりとはまり、当初はダチョウの卵だと勘違いしていた社長&工員ズ&診断した街医者だが、ニュースでそれが怪獣の卵だと知ると、傾き加減の工場を建て直す為、卵を利用してGUARDから身代金をいただこう、というとんでもない計画を閃いてしまう。
 近作にも参加している市野監督が今作初参戦で、これまでになくコミカルな演出。間の抜けた古田鉄工所の面々に加え、レギュラーメンバーにもかなり崩しを入れてくるのですが、“ギャグでXIGとして問題のある行動を取ってしまう”という一線は踏み越えない事により、たまにはこういうアプローチもありか、と許容できる範囲。
 戦闘シーンは特撮班の佐川監督というのもあったでしょうが、戦闘はコミカルにせずむしろ真剣勝負、というのも全体のバランスとして良い判断だったと思います。
 フルタマン、じゃなかった、フルータ星人を名乗った鉄工所トリオ&藪医者はGUARD……の連絡先を知らなかったのでKCBに脅迫状を送りつけ、事態に困惑するXIG上層部は、極地生物学の世界的権威・京極博士と共に、我夢と志摩を担当者としてKCBへ送り込む。
 この辺り、ウクバール回に続いて太田脚本が、異星人が居てもおかしくはないが確認はされていない『ガイア』世界の隙間を巧く突いています。
 脅迫状と共に届けられた写真とテープから、アルゴナの卵が孵化しようとしている事が確認され、更にそこへかかってきた脅迫電話の要求が「金の延べ棒」であった事から、フルータ星人は精密機械の部品として貴金属を入手しようとしているのではないか、と勘違いが加速。テープを分析した我夢は卵が特殊な高周波を出している事を突き止めてEX機で現場を目指すが、鉄工所では暖めた卵が急速に巨大化していた。
 「どうしよう社長!」
 「逃げよう」
 「ちょちょちょっと待って! あの卵かえったらどうなるんです?」
 「怪獣が出てくるんだよ。 みんな逃げるに決まってるじゃないか」
 「……あ! 駄目だ!」
 「どうした先生」
 「煙草屋のおハル婆ちゃんが、昨日足くじいて、病院に、来てた」
 ぼんくらカルテットは一斉に足を止めて考え込み、目先の金銭の為に怪獣の卵を利用しようとする浅はかな欲望と、身近な人間への思いやりがごく自然に同居しているという人間の矛盾が、プラスの愛嬌になるのが絶妙のタイミング。
 これが無いと、幾らコミカルに描いても4人組がどうしようもないクズ(厳密には、バカ、でありましょうが)でしか無くなってしまう為、エピソード全体のイメージも違ってくるポイントであり、今回の白眉。
 ぼんくらカルテットは卵をトラックに乗せると、とにかく人の居ない場所へと山奥まで運んでいき、それを追いかけるKCBと志摩&京極(ここで根源破滅教団に道を塞がれるという小ネタがおいしい)。
 なんとか山奥に投棄される卵だが割と凶悪な風貌の怪獣が誕生してしまい、ギャグ調のエピソードながら、あくまで怪獣を見るからに“脅威”として描いてくれたのも、作品世界における一定のラインを踏み外さないでくれて良かったです。志摩さんがいざという時の陸戦要員として重火器で立ち向かう真っ当な見せ場が描かれ、そこに我夢機も駆けつけて怪獣を攻撃。
 「今のうちに早く。アルゴナは僕に任せて」
 「おまえじゃ頼りないな」
 「……梶尾さん!」
 ぴっぴろりろりーん♪
 だが調子に乗っていた梶尾機は怪獣にむんずと掴まれて絶体絶命の危機に陥り、ヒロイン(あれ?)の危機に変身するガイア、派手にどすーん着地。
 ブラックキング系の二足怪獣が口から放つ熱線を地球の隙間シールドで防いだガイアは、シールドを前に押し出して熱線を受け止めつつ、その上をジャンプで超えて飛び蹴りを浴びせる、という変則的なアクションを披露。京極博士の「アルゴナを南極の氷の下で眠らせてほしい」という言葉を受け止めてアグトルニックすると挿入歌をバックに怪獣を千切っては投げ千切っては投げダメージを与え、怒濤の超回転上段蹴りからマッスルコーティングで行動不能に陥らせ、南極へと運んでいくのであった。
 それを見送って歓声をあげるぼんくらカルテット……の前に銃を構えて仁王立ちする志摩。
 「ちょっと待てぇ! 今更人間のふりしても駄目だ! フルータ星人!」
 ギガストリーマーが火を吹きかけたその時、田端と倫文が志摩に4人の正体を説明し、「何を考えとるんだおまえらぁぁぁ!!」という志摩の絶叫で、オチ。
 ラストは一応ギャグで濁しているのですが、卵を山奥に運んだ事で情状酌量の可能性を残すとはいえ、現実に怪獣が脅威として存在するこの世界観においては、4人組の行動は弁解の余地なく実刑判決が下されそうな気がしてなりません。
 結末の後に漂うシビアな香りも含めて、ゲストキャラの立ち位置、ゲストの間の抜けた(彼らなりに筋の通った)対応が事態を思わぬ方向へ発展させていく、という流れには、90年代《メタルヒーロー》で筆を振るった天才・扇澤延男のテイストをファンとして想起せずにはいられないエピソードでしたが、全盛期の扇澤さんだと多分、序盤からの仕込みをフルに活かして4人組にも相応に納得できる始末をつけた上でいい話にしてオとす、までやりそうで怖い(一方、完全にコメディ要素が滑ったままどうしようもない感じで終わってしまう場合もあるのが扇澤脚本ですが)。
 ナレーション使用によるアクセントを始め、今作における変化球担当を自認して味付けの違うシナリオを投入しているのが窺える太田さんですが、踏み外しすぎないコメディ回として、面白かったです。初参戦の市野監督も、巧くギリギリのラインを読んでくれました。
 唯一、これは納得できない……という部分があるとしたら、冒頭にも触れましたが、「牛の報せ」に関してツッコむ梶尾さんが、自分から敦子に話しかけた事でしょうか(真顔)。
 ところで、梶尾さんのテーマもといバトル中の挿入歌の合いの手、
 誰かの為に 自分の為に 命の限り 生きる時 こみあげてくる力 (そいや!)
 と聞こえてならないのは私だけでしょうか。
 多分(ガイア!)だとは思いつつ、いつ聞いても、(そいや!)。
 次回――おお、遂に! 予告を見る限り、残念ながら記憶を失ったり被り物を身につけたり風来坊に目覚めたりはしていないようですが、藤宮博也・帰還!