『騎士竜戦隊リュウソウジャー』感想・第8話
◆第8話「奇跡の歌声」◆ (監督:坂本浩一 脚本:山岡潤平)
ズル魔術師からの逃亡時、フィータが手に入れたドルイドンのエネルギー体(見た目は巨大なクコの実)を騎士竜に食べさせれば凄まじいパワーを得られる、という姉妹の言葉を頼りにエネルギー体の隠し場所に向かうリュウソウジャー一同だが、先回りしていたズル魔術師一味と戦闘に。
坂本監督らしい、生身アクションを交えながらの変身や、
「あ! 差し上げましょうと、ショータイムがかかって!」
からブチッとOP、などは面白かったのですが、仲間として戦う事を拒んでいる筈のバンバが当たり前のように同行していたり、そのくせ5人で同時に変身する事は頑なに拒んでいたり、そもそも超強化でマイナソーぶち殺せるならそれでいーじゃんと素体の事は完全無視して5人一緒に行動している事そのものが致命的で、どうにも状況設定にノれません。
なんとかエネルギー体を確保するリュウソウジャーだが、メルトとバンバはカルデナの発言の端々に違和感を抱き、メルトによるスマホ盗聴トリックにより、本物のフィータは未だ人質になっており、前回ラストでお姉さんと抱きしめ合ったりしていたフィータは、ズル魔術師の変装である事が判明。
合わせて一発屋歌手はマイナソーの素体でなかった事が確認されるのですが、だからといって、それを知る前のリュウソウジャー(特にコウ)が素体を雑に扱っていいわけでは全く無いので、典型的な、結果を前提にキャラクターの心理・行動を設計してしまう、駄目な構成。
カルデナを脅迫して騎士竜王爆殺を目論むズル魔術師は、偽フィータの演技も含めてかなり嫌らしく、二重三重のえげつない策略を仕掛ける事でタンク様との差別化に巧く成功。
スキルソウルの何でもあり加減はもうそういうものとするとして、脳味噌動いているコンビ(メルト&バンバ)が敵の謀略を頭脳戦で上回る辺りは悪くなかったのですが(煽りでトワが筋肉組に分類される事になりましたが)……バンバの心情も心境の変化も一切掘り下げられない――つまるところ何がバンバを頑なにさせ、そして何がバンバの心を揺り動かしたのかが描かれない――まま、「信じてた。最高の仲間だから」でほだされて5人並ばれても、その場のノリで歯の浮くような台詞でナンパを繰り返すコウにバンバが根負けしたようにしか見えず、がらんどう。
コウはコウで、何を持って「最高の仲間」と口にしているかといえばその中身を窺わせる要素は何も積み重ねられていないですし、メルトとアスナがバンバとトワをどう思っているのか、に至っては会話自体がほぼ皆無(特にアスナ)という惨状なので、第6話に続き、これだけ空疎な5人揃い踏みは、もはや希少品のレベル。
とことん、見せ方が劇的になりません。
揃い踏みからそれぞれソウルをセットして主題歌をバックに戦闘シーンとなり、状況不利となったズル魔術師は巨大マイナソーに空中待機を指示して撤収。騎士竜王5騎士も天空の敵には手を出せず、このままではマイナソーは完全体となり、内部に囚われたフィータも死亡してしまう……が、メルトとコウには秘策があり、変身を解除したアスナが騎士竜王を降りると、ビルの屋上でおずおずと声を張り上げる。
「あいつは歌が下手で、村の祭りの時は、いつも太鼓係だった」
赤と青に背中を押され、地球を救う為に意を決して、下手と自覚している歌を懸命に歌い、回想シーンでは凄く楽しそうに太鼓を叩いているアスナの可愛げが上昇した一方、それを冷静に解説するメルトの紳士度が、地の底まで落ちました!
アスナの調子っぱずれの歌を聴かされたマイナソーは苦しみだし……
「なるほど!」
「あのマイナソーは、フィータから生まれた。フィータの持つ特徴を、引き継いでるって事か」
え?
ええ?
えええ?
リュウソウジャーの目にした、下手な歌を聴いて苦しんでいたフィータ=ズル魔術師の変装なので、ズル魔術師が下手な歌アレルギーなら理解できるのですが、ど、どうして、その発想になる???
ズル魔術師が物凄い凝り性でフィータの特徴を完全コピーしていた可能性はありますが、唯一フィータの正体を見抜ける姉は既に変装だと知っているので基本的にそこを偽装する必要性はゼロですし、スマホ盗聴により、一緒に居たフィータ=ズル魔術師の変装(カルデナもそれを知っている)という事を把握している筈のリュウソウジャーが、下手な歌アレルギー=本物のフィータの特徴、と認識するのは不自然とか不思議、とか通り越して、もはや不条理。
明らかに、首から上が飾りでなければ辿り着く筈のない結論に辿り着いてしまっているのですが、なまじ中盤までメルトとバンバが脳細胞を活動させていただけに、真犯人を指摘する瞬間、突如として全てのトリックが別世界の出来事になってしまう破滅的災害のダメージが5割増しになる、驚天動地のどんでん返し。
70年代作品を見ていると時折、脚本の執筆と撮影が同時進行だったのだろうかこれ……みたいなエピソードがありますが、そんな感じの出来上がりで、どうして誰も、途中で止められなかったのか。
騎士竜王は、その歌をやめろ!と我慢の限界でアスナに襲いかかろうとしたフィータマイナソーをカウンターで切り裂くと内部のフィータを救出し、今度こそ本当の一致団結! みたいに5人揃い踏みを決めた後の巨大戦で、1人がロボットを降りて別行動、4人乗りのロボットでアルティメットスラッシュを決めてしまうという、劇的さの繋がらない(そもそも無かったにしても)頓珍漢な構成も、どうしてこうなった。
サブタイトルの「奇跡の歌声」とは、実はアスナの音痴の事でした~、というのも、敢えて尺を採って二つの歌を対比するというゲストの扱い及び坂本監督の演出傾向と合わせて、内輪ではしゃいでいる感が増すばかりで、個人的には物凄く悪印象。坂本監督は諸刃の剣タイプの監督だと思っていますが、見事に、悪いところばかり出てしまった感。
姉妹は故郷の星に帰っていき、重度のブラコンと重度のシスコンの星を超えた出会いからバンバの心境に変化が……というなら素直に兄さんメインで描けばいいのに、特段バンバがゲストと深く絡むわけでなく、メルトの出番を増やしたり、アスナに尺を割いたりと四方八方に手を広げた結果、最も肝心の部分が劇的にならない、というもはや段々慣れてきた『リュウソウジャー』仕様でありました。そしてそんな前後編で、バンバの弟であるトワがほぼ放置プレイ、ってどうしてそうなった。
次回――この流れで青回というのもバランス悪く感じますが、マスターブルーが再登場。