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七つの顔を持つ戦士

電撃戦隊チェンジマン』感想・第43-44話

◆第43話「スーパーギルーク」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「宇宙螢は、エネルギーを吸い込むと体当たりして自爆する恐ろしい宇宙生物
 やはり宇宙的に、昆虫とは、自爆・特攻する戦闘生命体なのか。
 電信柱に取り付いた宇宙螢により街を無差別爆撃するゴズマだったが、ギルークが宇宙螢を集合させ、宇宙獣士ゴーダを作り出してしまう。宇宙螢の性質を利用してナナからリゲルオーラを絞りだそうと考える悪霊ギルークは、女子校の屋上に出現! さやかと麻衣がガードについていたナナの身柄を奪おうとするが、そこにブーバとアハメスが乱入し、今回も激しい権力闘争が展開。
 ブーバにナナ抹殺を指示するアハメスだったが、意外にもバズー様まで介入し、アハメス一味はまとめてキャプチャーされてしまう。
 「ナナを殺す事は許さん!」
 かつてなく声を荒げるので、色香に迷った養子が墜落した後釜として、「ナナは私の養女にする」と言い出さないかドキドキしました。
 「バズー様はギルークをお許しになるのですか?!
 「飽くなきギルークの執念を見直したのだ。果たして如何なる結果となるか、静かに見守ってみよ」
 バズーがアハメスに静観を命じていた頃、地球では飛竜がナナを電撃戦隊にスカウトするも、拒絶を受けていた。
 「ゴズマが悪事を働く限り、俺達は戦うしかないんだ!」
 「戦いは嫌なんです!」
 職業軍人である飛竜(チェンジマン)と、宇宙の孤児であるナナの立場の違いを含めた心のすれ違いが描かれ、物語に都合良く行方不明になっている所はあったナナが、「戦いから距離を取ろうとしている」事が台詞として明示されたのは良かったです。
 ここではチェンジマンが「現実」(侵略戦争とその過程におけるナナへの対応)で、ナナが「幻想」(自分が狙われているという脅威から目を逸らして日常生活を送りたい)を担っており、チェンジマン視点からするとナナの言行は“子供の我が儘”なのですが、元よりナナは精神的に未成熟な子供である以上、その「幻想」を守るのがヒーローの努めである、という構造になっているのが、今作らしい美しさ。
 走り去ったナナの落とした定期入れの中に、フォークダンスで飛竜と踊った際の写真が挟み込まれていた事により淡い想いが仄めかされ、直後に襲われたナナを助けようとした飛竜は、獣士に拘束されて人質になってしまう。
 ……そう、君を護る為に俺は、君よりヒロイン力を高めよう!
 白熱するヒロインレースにとんだダークホースが出現し、さやかさん辺りがえげつないスキャンダルを準備しそうになる中、宇宙獣士はナナと飛竜の交換を要求。ヒロインが飛竜なら、ヒーローは俺だな、と飛び出そうとする疾風だが、獣士のエネルギー拘束リングを打破しなければ飛竜を救出できない、と麻衣に止められる。
 物語としては、同席しているナナを追い詰めて行動を促す展開なのですが、基本的にチェンジマンが、敵の能力に対応して戦術的に行動する戦隊なので、今回の話の都合、になっていないのが巧いポイント。
 思い詰めたナナは基地の一室に飛び込み、そこで指先が青白い光を放つ事に気付く……。
 (これはリゲルオーラの前兆? そんな……もう出ない筈なのに)
 閉じこもったナナを追いかけた疾風達は扉の外から呼びかけ、
 「心配しないで。剣さんは私たちの手で、必ず助け出すわ」
 「君が望んでいる、地球での楽しい生活がいつまでも出来るように、俺達は頑張る。ナナちゃん、だから、安心してほしい」
 電撃戦隊だけに、
 「あのリングをどうにかしないと剣さんを助けられないわー」(ちらっ)
 「我々の科学力ではどうする事もできん!」(ちらっ)
 例の如く例のように未成年を容赦なく焚き付けてないかこの人達、という空気が出てしまった所で、それを払拭するチェンジマンのヒーロー宣言として大変良かったです。
 戦いを厭うナナが、飛竜の為に立ち上がる、というのもここまでの描写の積み重ねから納得が行って双方のバランスが取られ、基地内部に転がっていた銃を魔改造したナナは、それにより拘束リングを破壊。だが飛竜救出の代償として、ギルークに連れ去られてしまう。
 「今日こそリゲルオーラを出してやる」
 ナナの元へ急ごうとするチェンジマンの戦いと、悪霊ギルークによる黒ミサの儀式が交互に描かれて切迫感を高め、クロスハリケーンで螢獣士(なお見た目はクトゥルー系で、色合いは白・黒・赤で、悪霊ギルークと同じ)の脳細胞を破壊したチェンジマンは大リーグバズーカ2号で爆殺。巨大戦も急ぎ足で片付けるが時既に遅く、ナナから絞り出したリゲルオーラにより、悪霊ギルークはスーパーギルークへと変貌してしまう。
 「今甦ったぞスーパーギルーク! 悪魔のスーパー能力が秘める、スーパーギルーク!」
 表は漆黒、裏は真紅、というど派手なマントを翻し、吸血鬼の親玉のような姿へとスーパー化したギルークは哄笑と共に闇の中に消え、メカニカルヤクザ→岩石怪物→吸血鬼帝王、と物凄い紆余曲折。この辺り、2年前のダークナイトの二番煎じにならないよう、試行錯誤があったのかとは思われますが、異形のフォームチェンジを繰り返す事により、独自の存在感を持つに至りました。
 それにしても強烈で危なっかしいリゲルオーラですが、生体が秘めているアースフォース的な力(ギルークならギランフォース、アハメスならアマゾフォース?)を刺激・強化する作用を持っているみたいな感じなのでしょうか。
 思えば、家畜化光線を放つ種族も居ましたし、大宇宙には神秘がいっぱいなのです。
 戦いを嫌うあまりに飛竜の言葉に耳を貸さず、スーパーギルークという新たな脅威を誕生させた事に責任を感じたナナは、謝罪の手紙を残して姿を消してしまう。
 (すまないナナちゃん……君を助ける事が出来なかった。君の気持ちをわかろうとせず、あんな戦いをさせてしまうなんて)
 ナナを乗せて走り去る電車を見送る事もかなわず、激情を飲み込む飛竜の表情にモノローグをかぶせる演出が渋く、スーパーギルーク誕生という結果の後、「戦わなかった」事を悔やむナナに対し、「戦わせてしまった」事を悔いる飛竜というのが、一つの敗北の中でヒーローを引き立てる、鮮やかな対比。
 「……みんなが戦いは嫌だという気持ちになれば、宇宙は平和になるのよね」
 「でもなぁ……俺達は戦うのが宿命なんだ」
 「ナナちゃんだってわかってくれるさ。俺達の使命を」
 「ああ。ナナちゃん……心配しなくていい。スーパーギルークなんかに、決して俺達は負けはしない」
 地球守備隊がその気になれば電車の一本や二本、簡単に止められるとは思いますが、むしろテクノ惑星リゲル人の科学力を戦争に利用してはいけない、その為にこそ戦わなくてはいけないんだ、とナナを見送ろうとしたチェンジマンの心境の変化にもスムーズに繋がり、ナナの心を救うためにも打倒スーパーギルークを誓う、というのが美しい着地。
 ヒーローに部分的敗北を喫させつつ、新たな決意を持って前へ進んでいく姿で、爽やかに締まりました。
 終わってみれば次回予告見せすぎ案件でしたが、実質的な新幹部登場という派手なインパクトの一方で、職業戦士と民間人の心のすれ違いが終始ドラマの縦糸を成す、という渋いエピソード。ナナへの対応の変化で飛竜の精神的成長を描くと同時に、元々の志に濃淡の差はあっても、今は地球を守る為に心を一つにするチェンジマンの姿が改めて描かれ、最終章を控えた再確認のエピソードになっているのが今作らしい手堅さです。
 次回――魔界都市ギルークシティ! そして、飛ばされた麻衣回があって良かった。

◆第44話「麻衣におまかせ!」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 いきなり「死ね!」と放たれるアハメスのマジカルビームを片手で悠然と受け止めるスーパーギルーク格好いいー!
 前回の今回で、ギルークとアハメスの関係はどうなるのか&スーパーギルークの格好いい所、を出し惜しみせずに見せてくれるところから始まる、サービス満点の導入。
 「待てアハメス。今もう一つの命が復活するところだ」
 アハメス恨めしや~、は悪霊になる事で怨念が肥大化していたのか、或いは力を手に入れた事でいつでも追い落とせる余裕が出来たのか、復讐に逸る事なくアハメスを押しとどめたギルークは、足下に視線を落とす。そこで目覚めたのは、宇宙獣士ザドス。ギルークが魂を現世に縫い留める為に憑依していた器であるザドスもまた、スーパー化の影響により、ギルークと分離して甦ったのであった。
 「星王バズー様! 宇宙の墓場から戻ってきた、我ら二人の力をご覧ください」
 スーパーギルークはマントを翻してバズーにひざまづく姿も優雅で格好よく、ヤクザの親分気質の司令官モード・怨念で動く怪物であった悪霊モード、からのスタイルチェンジを、演出と演技でしっかりと見せてきます。
 「ザドスまで甦らせるとは、大したものだ。よかろう」
 「バズー様!?」
 「悔しければ、おまえも早く地球を征服してみせよ」
 相対的に立場の弱くなったアハメスは悔しげに俯き、終始、表情の見せ方が良いアハメス様ですが、スーパーギルーク誕生→即座にアハメス失脚、とせず、並存を続けるというのは中盤の構成も踏まえているのでしょうが、嬉しい展開。
 ……その頃地球では、麻衣がさやかの服を着てはしゃいでいた(笑)
 「ちょっとぐらいいじゃないの! 私だってたまにはこーんな恰好してみたかったんだ!」
 ところが、麻衣を追いかけていたさやかが不穏な目つきの市民達に前後を塞がれ、突然ナイフで襲いかかられる。その正体はかつて倒した筈の宇宙獣士であり、スーパーギルークは亡霊獣士達の魂を市民に憑依させる事で、魔界都市ギルークシティを作り出そうとしているのだった!
 負傷したさやかを救出する赤黒青だが、足止めを買って出た麻衣が、球形のエネルギードームの中に取り残されてしまう。目の前でリアル西部劇が展開する謎の街を、麻衣が次々とコスプレをしながら調査していると、ドレス姿のシーマに、用心棒スタイルのブーバとゲータまで現れる、サービス精神溢れた展開。
 「ブーバ、シーマ、アハメスに伝えておけ。うろうろ嗅ぎ回っても無駄だとな」
 潜入したシーマ一行はまとめてギルークに叩き出され、今のところ引き続きアハメス派として行動している様子。その騒動の合間にシスター姿で教会に潜り込む麻衣だが、背後を獣士に塞がれ、祭壇の奥からスーパーギルークがぬっと立ち上がって姿を見せる、というのがまた面白い映像で、大車輪の山田監督が、手を変え品を変え様々な工夫を凝らしてくれるのが、今作のアベレージを上げる大きなポイントの一つになっています。
 「いつまでもおまえの変装に気付かぬ、スーパーギルークと思っていたのか」
 麻衣を追い詰めたギルークは、ザドスホールの力により麻衣に獣士を憑依させようとするが、その危機に教会に飛び込んでくる一発の銃弾。隙を突いた麻衣が教会の外へ飛び出すと、挿入歌イントロに合わせてガンマンスタイルの飛竜達が屋根の上に次々と姿を見せる! というのがメリハリの利いたヒーロー演出で、山田監督がホント絶好調。
 しばらく飛竜達のガンアクションが続き、麻衣もガンマンスタイルで合流するとさやかと一緒にコンビ射撃で再生獣士を撃退し、この2人の友情関係もきちっと拾い続けてくれて手堅い。
 「おのれチェンジマン、いつの間に!」
 「トンネルを使って潜入したのさ!」
 「麻衣、よく頑張ったわね。あなたの一番素敵な姿を、見せてやって!」
 「OK! ある時は、さやかルック。ある時は、ウェディングドレス。ある時は、フラメンコ・ダンサー。ある時は、インディアンの娘。そして、ある時は、シスター。――でも私が一番似合うのは、チェンジフェニックスよ! レッツ・チェンジ! チェンジ・フェニックス!」
 そういえば弱かったコスプレ成分を補いつつ、東映濃度120%から揃い踏みすると、ザドスはフェニックス連続攻撃から大リーグバズーカ2号で速攻爆殺。
 ところで、ギルークシティで撃った人達の肉体は、一般市民だったのでは……と思ったら、ザドスの死でドームが崩壊すると憑依していた亡霊が消え去って人々も正気を取り戻し、どうやらガンマンスタイルの時に用いていたのは、なんらかのショック弾だった模様です。
 ギルークシティ計画を台無しにされたスーパーギルークはデビルパワーで隕石?を召喚するとチェンジマンめがけて落とし、爆発・爆発・大爆発……が、心配になるレベルの炎なのですが、配置された火薬の空白地帯に回避アクションで逃げ込んでいるにしても、なんか、爆炎が10メートルぐらい上がっている感じなのですが。
 恐らく一回の爆発を、俯瞰と横からの2つのカットに分けて見せているのですが、物凄い勢いで5人が爆炎に包まれている上に、後ろ→前、と爆発する事で、横からのカットのラストで、チェンジマン5人の姿が完全に炎に隠れて見えなくなる、というのがインパクトの強い映像。
 レンタルギョダーイにより巨大化したザドスは、ザドスホールから幽霊獣士で攻撃を仕掛けてくるも、電撃剣フラッシュでホールを塞ぐと、サンダーボルトでずんばらりん。
 鳴り物入りで復活したザドスが一回限りでやられてしまったのは残念でしたが、軽快なテンポの中に映像的な面白さを詰め込んで、楽しいエピソードでした。ラスト、麻衣に痴漢する疾風と、公道の真ん中で互いの顔面にソフトクリームをなすりつけ合うチェンジマン、はちょっとやりすぎた感じでしたが。
 次回――電撃基地の壁を体当たりでぶち破る少女!
 「あのー、剣飛竜さんは居ますか?」
 果たしてこれは、モテ期なのか、女難の相なのか。