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筋肉と糖分

ウルトラマンガイア』感想・第31話

◆第31話「呪いの眼」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:川上英幸 特技監督:北浦嗣巳)
 見所1は、
 「体が求めるんだよ甘いものを!」
 いよいよ、内なる筋肉の声と対話を始める我夢。
 見所2は、巨大な眼球が半ば崩れ落ち、全身に粘液を滴らせたガンQ二代目の、気合いが入りすぎてとにかく気持ち悪い造形。
 500年以上前にコッヴの襲来を正確に予言していた呪術者・魔頭鬼十朗。その子孫である少年は、コッヴ襲来の時より、指をかざすと念力で物を自在に動かす事が出来る、という超能力に目覚めていた。だがその能力は自害した魔頭が残した呪術によるものであり、根源破滅の力さえ利用して甦り、世界を我が物にしようとする魔頭は、呪術の完成の為に協力しろ、と悪夢の世界で少年への誘惑を繰り返す……。
 「俺が力を貸せば、願いは何でもかなうってさ」
 ふとした縁で少年の能力・魔頭との関係を知った我夢が、利発だが妙にさばさばした少年の屈折と向かい合う、というのは面白いアプローチだったのですが、80年代なら潮健児が演じていそうな怪人・魔頭鬼十朗と、その変じた姿であるガンQ2代目の存在が今作ここまでのラインとあまりにも違いすぎて、「主人公と少年の対話」という主題を、どうしてこの題材でやってしまったのか、と終始物語に入りづらかったです。
 例えばウクバール回だと、〔永田-庄司-吉田-我夢〕と問題の中心と我夢の間に二枚のクッションを挟んだ上で、吉田のモノローグから始めて変化球を宣言した上で「大人の童話」を展開しているのですが、今回は〔魔頭-少年-我夢〕という形で少年を軸に両サイドに魔頭と我夢を配置するという構造になっており、片方で「少年と向き合う主人公」を描いているのに、片方がトンデモ呪術者なので、あまりにもバランスが悪くて物語が千鳥足。
 対比、という点では、“悪夢からの誘惑”である魔頭に対して“現実からの対話”である我夢を両サイドに置いている、という見方は可能ですが、では我夢が“現実”のシンボライズとなる地に足の付いたキャラクターかといえば、「地球の意思と交信している天才@マネージャー募集中」なので割合オカルト寄りの為(そして、劇中における“出来上がった大人”という位置づけでもない)、全体の構造がどうもしっくり噛み合いません。
 これならいっそ、妙に浮き浮きと古文書をめくるコマンダーにスポットを当てて、〔魔頭-少年-(瀬沼)-コマンダー-我夢〕という構造でコマンダー回にしてしまった方が、バランス良く収まったかな、と。
 先祖の呪いで超能力を得てしまった少年に対し、我夢がアルケミースターズに生まれた自分を投影して感情移入している節も窺えるのですが、母が病死し父は仕事で忙しいという少年のやや寂しい家庭環境と、高山家のそれがオーバーラップするわけでもないですし、我夢自身の掘り下げとしても、中途半端。
 つい超能力を使ってズルをしてしまう事を気に病む少年に対し、それでも積極的に悪い事に使っているわけではない少年の意志を讃えた我夢が、“ギリギリまで頑張って”超能力だって打ち破る事ができる――仕組まれた運命だって覆す事ができる――事をPK戦を通して証明してみせるのは悪くなかっただけに、我夢自身の掘り下げと合わせて、正攻法で扱って欲しかった主題。
 「我が子孫よ、この国が欲しくはないのか?! 我らが国を作るのだぁ!」
 悪夢からの誘惑が、戦国乱世に生きた魔頭にとって意味ある野望の一方、現代に生きる中学生への誘惑としてはゴールポストの遙か外、というのも、両者の認識のズレとしてはリアリティがあるものの、誘惑の内容が効果を発揮していない為に、少年が魔頭の誘いになびきかけたのは結局、毎夜の如く呼びかけてくる悪夢の面倒くささに負けただけ、に見えてしまい、少年の背景や内面の描写と繋がっていかなかったのも大きくマイナス。
 その為、少年が強い意志を持って魔頭の誘惑を撥ね付け、ガイア逆転のきっかけとなる
 「僕の人生は、僕が決める! 誰にも指図はされない!」
 という声も、単独で飛び出してきただけになっていて効果激減。
 例えば、現実の家庭や進路において少年の抱えている問題が劇中で描かれていて、それが魔頭の誘惑と重なっていたりすればこの叫びの効果も増し、そういった形で道中で散りばめられてきた要素と有機的に連動してこそ劇的なクライマックスになるわけなのですが、パーツパーツは面白い要素があったにも関わらず、それらが別々の方向を向いたままで糸で繋がっていかなかったのが、大変残念。
 「卑劣なぁぁぁ!! ――許さん!」
 という怒りの叫びから我夢が変身する、というのは今作としては珍しいパターンですが、同じ北浦監督による第23話でも、稲森博士の死を受けて激情と共に変身しており、こういったヒロイックな変身のさせ方は北浦監督の好みでしょうか。
 変身直後に、ダッシュモードで滑るように走りながらガンQに蹴りを入れる、という変化球も、第23話の降臨着地をスピーディな前後からの2カットで撮ったシーンと通じるものを感じます。
 少年の助けもあってガイアは魔頭ガンQを地球の隙間ビームで爆殺。超能力の消滅した少年は幼なじみとの日常に戻っていき、それを羨ましそうに見送る我夢。
 「デートねぇ……僕もそんな相手が欲しいな」
 「あっそぉ。なら相手してあげましょう特別に」
 そこに現れた敦子にたかられる、というオチも、前半戦だったら多少ニヤニヤできたのですが、よりによって、敦子さんのヒロイン力がワームホールの彼方に砕け散った次の回だけにほのぼの大団円シーンになってくれず、助けて梶尾さん!
 次回――「未来が変えられた!」とか予告ナレーションがトンデモ言っていて、ここ数話のアベレージからは、だいぶ不安(笑)