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心のマグマが目覚めたら 大地と共に立ち上がるぜ

ウルトラマンガイア』感想・第30話

◆第30話「悪魔のマユ」◆ (監督:原田昌樹 脚本:増田貴彦 特技監督:原田昌樹)
 エリアルベースの廊下で謎のイメトレに励んでいた我夢、梶尾リーダーに花束を渡し、全力で引かれる。
 ……ま、まあ我夢、梶尾さんのこと大好きだしな、と納得しかけた所、ブリッジ手前の廊下では、敦子が何やら恥ずかしそうにもじもじしていた。
 「我夢のやつ……うまく渡してくれたかしら」
 相変わらずサッカー部の女子マネ路線の敦子、モーションのかけ方が女子中学生レベルですが、こんなところで、病弱で引っ込み思案で友達居なかった設定が拾われていると思えばいいのでしょうか。――だがその正体はゲーセン荒しの新宿アッコ。
 世が世なら、メガレンジャーに選抜されていた逸材かもしれません。
 通りすがりのコマンダーが不審な様子を気にして敦子の顔を覗き込もうとし、セクハラ事案で査問会議3秒前のその時、鳴り響く緊急警報。
 「梶尾さん、これお願いします!」
 我夢は距離を取りたそうな梶尾に花束を押しつけるとブリッジに走り、俯瞰で映したエリアルベースからカメラを大きく宇宙空間まで引いていくと、月の向こう側から迫る未確認飛行物体、という今作これまで無かった絵作りで、相変わらず色々と仕掛けてきます。
 「ゴキブリと毒蜘蛛が合わさったような……」
 「決めた! 怪獣名はゴキグモン!」
 「ちょっとぉ!」
 「それで行こう」
 「コマンダー
 ウルフガス並に雑なネーミングを適当に承認するコマンダーに顔をしかめて抗議する堤、というのもこれまでになかったラインの演出ですが、この後の怪獣も、熱波回の炎山のようにコメディチックな動きを見せる場面があり、後半戦に入って少し、作品全体として見せ方の試行錯誤も窺えるところです。
 迎撃に出たチーム・ファルコンだが、怪獣の急加速に圧倒されてしまい、ファルコンを引き離した怪獣は東京に上陸。口から粘糸を吐き出すとビルをまるごと一つ繭のようにしてしまい、その中に運悪く、敦子の姉・律子と、同行していた少女が巻き込まれて閉じ込められてしまう。
 「もしかしたら、あのビルに巣を」
 生存者の救出に向かったチーム・シーガルと我夢は、怪獣に麻酔弾を撃ち込むと、ビルの中へと突入。2階に取り残されていた作業員3人を救出し7階へ向かう神山リーダーだが、救出作業の途中で怪獣が目を覚まし、やむなく、律子の言葉もあって少女だけを救出して一時撤収を余儀なくされる。
 目を覚ました怪獣は巣を修復すると次々と卵を産み付けていき、巣の前に座り込んだり麻酔弾を受けてこてんと転がる動作がコミカルな一方、粘液系の映像の方は結構グロテスク。
 また、白い粘糸に体のほとんどを覆われている・ストレートロングでやや薄幸系美人という容姿・身動き取れない状態で表情だけで演技する必然性からの虚ろな視線、が合わさった結果、律子さんが若干以上に白装束の幽霊めいて見えてちょっとホラー。
 ジョジーが繭の成分を分析し、可燃性が高い事が判明するが、内部にはまだ、律子が取り残されている。だがあと1時間で100以上の卵が一斉に孵化をし、その前には宇宙怪獣が立ちはだかっている……神山が律子に渡したナビに反応はなく、律子の生死も確認できないまま刻一刻とタイムリミット迫る中、一人の命を尊重すべきか、多数の命を守る為に非情な決断を下すべきかを迫られるXIG。
 なんとか律子を救出しようと検討する我夢&シーガルは、現場近くでたまたま、律子が亡き夫に供えていたドライフラワーを発見。それが、敦子が我夢を介して梶尾にプレゼントしようとした花束――姉が作ったと自白――と同じ作者のものだと気付いた我夢は、律子救出の決意を強めるが、ドライフラワーを見て同じ作者のものだと気付く我夢にそうとう無理がある上、救出の決意に関しては屋上屋を重ねた感があり、このドライフラワーが怪獣を遠ざけて律子を救出する第二次突入作戦の鍵にでもなるのかと思ったら全くそんな事もないので、布石も含めて敦子話と律子話を両立させようとした結果、挿話の構成をややこしくしすぎてしまった気がします。
 遂にコマンダーは、ファイターにファイヤーボムを搭載・出撃を命じるが、要救助者の生存を信じ、行動しようとするシーガル。
 「突入しましょう。俺達はレスキュー隊です。見殺しには出来ません!」
 「レッツゴー!」
 「僕も行きます!」
 「やめろ! ……命令に従うんだ」
 だが二次遭難の可能性を増やすわけにはいかない、と神山は苦渋の決断で部下を止め、出撃するチーム・ライトニング。
 「北田、大河原は後方で待機! ファイヤーボムは――俺が撃つ!」
 重荷を背負う覚悟を決めた梶尾は、ビルに向けて照準をセット。
 「……こんな事させちゃいけないんだ。……ガイアーーー!」
 超越ではあるが万能ではない、というのは今作におけるウルトラマン(ガイア)の力の位置づけですが、我夢&シーガルがこれといって策の無いまま手をこまねいているばかりだったので、ここで我夢が変身してしまうのも、どうも劇的にならず。
 〔ドライフラワーから何か作戦を閃く → 実行するが何かトラブルで惜しくも失敗 → ガイア変身〕ならスッキリしたと思うのですが、“人事を尽くす”シーンを上手く描けないまま、“天命が訪れて”しまい、《ウルトラ》シリーズにおいて、うまく誤魔化さなくてはいけない部分を、誤魔化しきれずに剥き出しにしてしまった感(結果的にどうか、よりも、その過程でどうするか、が《ウルトラ》シリーズの話作りのポイントだと思うので)。
 ライトニング01の前に立ちはだかるかのように出現するガイアだが、いきなり怪獣の粘糸を浴びて繭に閉じ込められてしまい、卵の孵化まで残り時間は3分。
 「梶尾……」
 「俺がやらなければ」
 120%不審者だった、律子との出会いとその後の会話を思い出しながらもボムを撃ち込む梶尾だったが、発射されたミサイルは、まさかの、怪獣が撃墜。
 斜め上すぎる惨劇の回避に目が点になりましたが、この流れ弾による延焼をシーガルマシンが消火活動にあたり、スペクタクルの焦点やチーム・シーガルの心情が、真横に3kmほどスライド。
 消火特撮がノルマだったのか単に入れたかったのかはわかりませんが、敦子なのか律子なのかといい、梶尾なのかシーガルなのかといい、盛り込んだ要素がエピソードのクライマックスで集約されるどころか、むしろドンドンとっ散らかってしまう事に。
 ビルの横に回り込んだ梶尾は律子の姿を視認し、ガイアはアグトルニックして内部から繭を粉砕。挿入歌が流れ出してガイアは怪獣を迎え撃ち、その促しを受けた梶尾がビルの中へとダイビング突入する姿は格好良かったのですが、本来のレスキュー要員が組織人としての判断を下さざるを得なかった後で梶尾がおいしい所をさらっていく、というのは『ガイア』的にはどうも釈然としません。
 繭を引き裂き、律子を抱き留める梶尾、というのは、個人的には大変ニヤニヤできる展開ではありましたが!
 畜生! だから! 僕の! マネージャーは! いつ量子的に! 観測されるんだ!!と怪獣に連続キックを浴びせるガイアは、コンボを締める脳天へのチョップを口のハサミで受け止められてしまうが、筋力で強引に振り切ると、頭部への打撃から拳のラッシュを叩き込み、最後は地球の隙間ビームで爆殺。
 律子を助け出した梶尾機の離脱後、待機していた北田機と大河原機がファイアーボムにより巣の焼却に成功し、地球ゴキグモパニックは、なんとか回避されるのであった。
 ――一夜明け、病室。
 「なぜナビで助けを呼ばなかったんですか?」
 律子は人事不省に陥っていたのではなく、敢えてナビを使わなかったのだと梶尾が見抜いていた、というのは成る程という展開。
 「…………私ひとりのために、大勢の人が犠牲になる。そう思ったら……。それに……あそこは主人が死んだ場所ですから。なんだか……あの人に怒られるような気がして。……あの人、防衛隊のパイロットでした。あそこで怪獣と戦って、亡くなったんです」
 死にたがり、とまでは言いませんが、どこか、死者に引かれている雰囲気を律子が窺わせ、リリア回で口にされた背景と上手く接続。
 「…………自分は、あなたの居るビルを焼き払おうとしました。言い訳はしません。それが任務ですから」
 「あの人がもし生きていたら……きっと、同じ事していたと思います」
 自らを罰し、律しようとする梶尾の背に対し、半身を起こした律子は救いをもたらす言葉をかけ、だが無言でそのまま病室を出て行く梶尾。視線を落とす律子のアップがしばらく映された後、廊下で待っていた我夢と敦子に声をかける事なく歩み去る梶尾は、どこでいつの間にやら手に入れたのか(我夢に押しつけられたやつ?)一輪のドライフラワーを見つめ……なんですかこれは?! ここ引っ張るの?! リリア回と脚本が違うので原田監督が責任持って続けてくれるんですか?!
 と、私大興奮、でつづく。
 ……えー、まさかの本当に、梶尾と敦子姉のフラグが立ってしまいましたが、このまま何事も無かったかのように流されてしまわない事を祈りたいと思います。出撃前の梶尾に声をかけるが集中していたにしろ今回も無視される敦子と、救出~病室でのくだり(そもそも梶尾さんがこんなに普通に会話を交わしている相手の存在が、我夢以外では初疑惑)、出撃時に律子との出会いは思い出すが同僚でその肉親の気持ちについては全く思い浮かべない梶尾、という対比が鮮明すぎてエグい事になっていますが、敦子さんのヒロイン力の低さに全パラレルワールドが泣いた。
 敦子の梶尾への憧憬が引き続き取り上げられた事自体は嬉しい一方、全体としては完全に律子話なので、敦子の梶尾への感情が物語内でプラスに働く事はこれといってなく、敦子と律子が直接絡む事も無い為に両者の感情も宙ぶらりんで、欲張って盛り込んだ要素が使い切れずにちぐはぐになっているのですが、上述したように、もう一つちぐはぐになっているのが、シーガルと梶尾の扱い。
 上層部の命令に従い、律子救出を断念した神山リーダーは、「梶尾に同僚まで焼かせない」事を選ぶ代わりに、「要救助者を救えなかった」泥を被る事を選び、結果的に律子が救われた事で「梶尾が泥をかぶらなくて良かった」事を喜ぶのですが、その前段階としてもう少し「梶尾が泥を被らないように」ギリギリまで粘る姿を劇的に見せて欲しかったです。つくづく、我夢とシーガルが途中から現場付近で待機状態になってしまったのは残念な描写で、ドライフラワーの挿話が欲張りすぎたと思いますし、加えてこれだと、救助を断念した神山リーダーの心がほんの部分的にしか救われません。
 もっとも、神山リーダーは恐らく、そういった経験を何度も何度もしてきた人であり、その重荷を背負っていける人、という事なのでしょうが、例えば、神山が救出作戦を閃くがそれは梶尾の操縦技術でなければ実行できない、とか、神山が備えとして現場に残したあるアイテムが梶尾による救出の決め手になる、とかであれば、「梶尾が律子を救出しつつ、神山もそこに関与できた」と思うのですが、そういう工夫で、もう少し、神山リーダーの気持ちも、救ってほしかったなと。
 その辺り、ガイアになる以外に何も有効な手段を思いつけなかった我夢も、救助断念を割り切って飲み込んだ神山も、一度はファイヤーボムを撃った梶尾も、撃たれる事を受け入れてしまえる律子も、姉の救助に何も手を尽くせず梶尾に二度も無視された敦子も、全員が全員、救われない部分を残したエピソードだと見ると、トータルで意図的であったのかもしれず、増田さんが参加していた東映レスキューポリス>シリーズ的なやるせなさ、として納得できる面も部分的にはありますが。
 とはいえ1エピソードとしてはもう少し要素の連動が欲しく、出来としては残念な部類でしたが、期待を遙かに超えた梶尾×律子が個人的に大変ストライク(今回の梶尾さんは、いつもより二割増しぐらいイケメンに見えた)なので、とにかく各方面に責任を取っていただきたい所存です。
 次回――まさかのガンQ、というかなんか、浮いている?!
 ……藤宮との決着が付いて更にシリアスになっていくのかとばかり思っていたのですが、どちらかといえば閑話休題、前半戦から拾いたいネタなどを制作陣が拾っていく期間になっているのでしょうか、今。そこで物語のバリエーションを出せるのが、強み、でありますが。
 ところで3回目ぐらい?の登場になるサブオペレーターの女性は、声質と演技による緊張感の破壊ぶりがなかなかのものなのですが、思えばリリア回以来の登場な気がするので、原田監督枠……? そして何故また、ショートボブなのか。