東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

見て見ぬふりなんて出来ないのさ

電撃戦隊チェンジマン』感想・第34話

◆第34話「恐ろしきアハメス」◆ (監督:掘長文 脚本:曽田博久)
 「ギルークのものを横取りしたくせに」
 リゲルオーラによるスーパーパワーを手に入れた事を報告してくるアハメスをほいほいと認めるのではなく、おまえそういう事する奴が簡単に信用されると思うなよ? と牽制球を投げるのが実に星王バズー様らしい呼吸で、引き続き隙の無いラスボスぶりを見せてきます。
 「ギルークより、我が身に付けた方がお役に立つと思ったからでございます」
 「自惚れ屋め。よかろう。新司令官にしてやろう」
 実力と美貌を兼ね備えた女王の足下に存在する陥穽もまたバズー様から指摘されるも、アハメスが母星復興の為に首尾良く遠征軍司令官の座に収まった頃、電撃基地では飛竜がミニドラゴンを抱きながらうつらうつらしており、忘れられていなくて良かった。
 「徹夜で看病してたの?」
 「ああ。もう、こうして励ましてやるしかないと思ってね」
 尽くせる手は尽くせたが容態の思わしくないミニドラゴンを心配する電撃戦隊だが、そこに、街で奇妙な交通事故が続発しているとの急報が入る。それは、スーパーパワーによりアハメスが作り出した見えないエネルギーの壁――ハードウォール――によるものであり、いきなり、幼稚園バスが壁と衝突事故を起こし、車内で大量の園児が倒れているという大惨事。
 「新司令官アハメスの、総攻撃を受けてみろ!」
 急行したチェンジマンはスーパーアハメスと三銃士、更にはブーバとシーマに取り囲まれる。
 「ブーバ! シーマ! お前達もアハメスの配下に成り下がったか!」
 「顔面金色の中年男と大浴場で語り合うより、女王様の鞭にしばかれる方がいいに決まっているだろうが!」
 「今は力こそが全てなのだ!」
 処遇を心配……する事もなさそうと思っていた副官2人は、以前から気軽にレンタルされていた事もあり、案の定すんなりとアハメス配下として登場。
 ドラゴンの言葉は、元上官への義理立てとか無いのか見下げ果てた連中め、というニュアンスなのでしょうが、“成り下がった”もなにも、やっている事は1ミリも変わらないと思います!
 副官コンビ&三銃士に手も足も出ず追い詰められたチェンジマンは、更に見えない壁の迷宮で行動を制限され、上空から怪鳥の炎に炙られる事に。
 こんな時はパワーバズーカだ! と壁に対しても火力勝負の力押しを敢行するチェンジマンだが、衝撃! パワーバズーカ通用せず!
 「なんという事だ! パワーバズーカはチェンジマンの必殺武器! それが効かないなんて!」
 「はははは、わかったか、スーパーパワーの恐ろしさ」
 伊吹司令は狼狽し、アハメスは艶然と笑い声を響かせ、幹部交代をともない2話かけて入手したスーパーパワーが、「壁を作る」はどうなのかと思ったところで、これまで数々の危難を一発逆転してきたパワーバズーカが通用しない事で、これ以上なく見せつけられるスーパーパワーの恐ろしさ!
 「新司令官の門出に、まずお前達から血祭りにあげてやる!」
 チェンジマンは不可視の壁でいたぶられながら火炎を吹きかけられるという、なかなか見ないレベルのエグい手段で徹底的に追い詰められ、辛くも分散して撤収。だが基地への退却途中、壁に突っ込みかけた医療用の車を止めようとして、なんか被害を広げてしまう飛竜。
 ……ニュアンスとしては、止めようとしたが間に合わなかった、であったのでしょうが、映像的には、急に飛び出してきた飛竜に驚いてハンドル操作を誤った末に壁にぶつかったようになってしまい、飛竜が出てこなかったら出てこなかったでどちらにせよ壁にぶつかったとはいえ、やや演出が派手にやり過ぎた感。
 冒頭で発生した、幼稚園バスの事故にともなう臨時救護所へ、輸血用血液を運ぶ途中だった救急隊員から血液を託された飛竜は救護所へ急ぎ向かうが、三銃士黒と出会ってしまい、必死の逃走。血液を守りながら黒獣士に嬲り者にされる飛竜だが、そこへ飛竜の退却失敗を知り現場へ駆け戻っていた疾風が辿り着き、会心のフライングクロスチョップ
 「おい、パワーバズーカが効かないって事はな、地球の危機なんだぞ!」
 「わかってる! だが幼い命を見殺しには出来ない!」
 基地に戻ってハードウォール対策を練るはずが、大事の前の小事に命がけで関わる飛竜を咎める疾風だが、もちろん事情を聞けば小事を捨てるという選択肢は採れる筈もなく、2人で協力して血液を守る事に、というのが前回ラストからの流れも汲んだ熱い展開。
 「しかし、ハードウォールを突破しない限り、その血液を届けるのは無理なんだぞ!」
 「ああ。今度ばかりは俺達は無力だ。それでもやってみせるのがチェンジマンじゃないのか!」
 「……よし! やろう!」
 スペースドール回で上手く行かなかった、マクロとミクロの重ね合わせ、地球も守る、子供の想いも守る、両方やってこそチェンジマン(ヒーロー)ではないか、というテーゼの再挑戦ともいえますが、目の前の幼い命を見殺しにしたらもはやヒーローではない以上、飛竜の選択肢が正しい一方で、チェンジマンは本気で宇宙規模の戦争における地球守備の最前線に居る為、小事を優先する事で広がる大事の被害規模が大きすぎて、ややこのテーゼとは相性が悪いな、というのが正直。
 大なり小なり、このテーゼはそのジレンマ、葛藤こそが焦点ではあるわけですが、作劇的にはせめて、○○を守る方、○○を急ぐ方、とメンバー分割をしたい世界観ではあり、当時の尺ではそこまで収めるのは苦しい、というのはその後の課題になっていく部分、といえるでしょうか。
 必死の逃走を続ける飛竜と疾風は、地下までは壁が届かない事に気付くと、下水道をくぐり抜けて救護所の間近まで辿り着くが、後一歩という所でアハメスに見つかり道を閉ざされてしまう。
 「この向こうには、血液を待ってる子供が居るんだ」
 体当たりを繰り返すも無情に弾き返され、集結した三銃士と副官コンビに退路も断たれて絶望的なその時、青白桃がなんとか合流し、赤黒もレッツチェンジ。だがアハメスの作り出した壁に完全に閉じ込められたチェンジマンは、ハードウォール無差別電撃デスマッチにより散々に痛めつけられ、バックで主題歌が流れているのに、ひたすらチェンジマンの苦闘が続くという、執拗なピンチの描写によりスーパーアハメスの恐ろしさが刻み込まれます。
 もはや、チェンジマンも、地球も、大星団ゴズマの前に屈してしまうのか……だがその時、黒獣士に投げ飛ばされた際のショックで、脳の回路に電撃が走る墜落の匠。
 「……そうだ! このハードウォールを逆に利用するんだ!」
 ドラゴンはかさに掛かる黒獣士の突撃を回転ジャンプでかわすと、その勢いを利用して壁に叩きつける事に成功。間髪入れずにパワーシュートをたたき込み、サンドイッチ状態で零距離からウォールの追加ダメージを与える、という凶悪な反撃を決め、叩き落とされれば叩き落とされるほど、それだけ匠はでっかく強くなる!
 弱った黒獣士をパワーバズーカで爆殺し、遂に三銃士の一員を撃破するチェンジマン。いつものようにギョダーイがやってくるが、壁に阻まれて巨大化光線を撃てず、慌てたアハメスが壁を解除した隙に、ドラゴンは血液を届ける事に成功。後は必殺サンダーボルト……かと思われたが、なんとスーパーアハメスのアシストにより、チェンジロボは球体状のハードウォールの中に閉じ込められてしまう!
 ハードウォールは電撃剣さえ歯が立たず、チェンジマンは苦戦してもチェンジロボは無敵だろう……と思っていたら、チェンジロボまで苦戦する、という衝撃の展開。1話にして、チェンジマンの切り札が二つも通用しない、という思い切った展開は非常に驚きました。
 巨大黒獣士によってボールのように転がされるチェンジロボは、文字通りに手も足も出ないままエネルギーを消耗していき、活動限界まで後わずか。今度こそチェンジマン最期の日かと思われたその時――基地で治療を受けていた瀕死のミニドラゴンが目を開くと、ナナのイヤリングをくわえて飛び立ち、アハメスに体当たりを仕掛けると巨大な炎のドラゴンとなり、チェンジロボに迫る黒獣士めがけて、特・攻。
 先日ペガサス特攻があったばかりですが、まさかのドラゴン特攻により大爆発が起こると、それが巨大な地割れを生み、マグマを噴出させ、更に地球の内部から放射されたエネルギーがアハメスを怪鳥から転落させる。
 「なんだ今のエネルギーは?!」
 かなり高所から落下したにも関わらず、何事も無かったかのように立ち上がるアハメス様、チェンジドラゴン、真のライバル誕生の瞬間であった。
 一方、エネルギーの余波で高々と吹き飛んだ黒獣士とチェンジロボは次々と地表に叩きつけられ、その衝撃で砕け散るハードウォール。
 「みんな、起きろ! 頑張れ!」
 いち早く意識を取り戻した高所墜落のプロフェッショナルの檄に応え、満身創痍で立ち上がったチェンジロボは、いつもより溜めを効かせたスーパーサンダーボルトでカウンター気味に黒獣士を切り裂き、辛うじてこれに勝利する。
 だが、チェンジマンも、チェンジロボも限界寸前……電撃剣を支えに立つのが精一杯で、前進もままならずによろめくチェンジロボ、の姿を大写しにしながら、つづく。
 ラスト、チェンジロボが極めて人間くさい芝居を行うというのは、自律型ではないロボの描写としては割と思い切った演出に思えますが、一種の掟破りを行う事により、かつてないチェンジロボの苦境が劇的に描き出され、非常に印象的なシーンとなりました。
 本編の8割ほどチェンジマンが苦戦し通し、ラストでは宇宙動物が犠牲となり、黒獣士を撃破して一矢報いたものの総合的には判定負け、といった感がありますが、そう考えて振り返ると、マクロ(星間侵略戦争)でほぼ敗北しつつ、ミクロ(人命救助)においてヒーローが踏み留まる、という構成になっていたのだな、と。
 ミニドラゴンは、拾うにしてもまさかの特攻という犠牲となりましたが、思えば壊滅したテクノ惑星の生き残りであったので、ミニドラゴンなりの、ゴズマへの報復でもあったのか、否か――果たして、チェンジマンの窮地を救う事となった謎のエネルギーは、地球の起こした奇跡なのかそれとも……次回も絶体絶命の危機が続くチェンジマンにアースフォースは救いの光を見せるのか?!
 そうだ、今こそ、アグトルニーーーック!!
 げふんごふん、なんか混信しました。
 当方『ウルトラマンガイア』感想をお読みで無い方は、気にせずスルーして下さい。
 今回からEDにギルークの代わりにアハメスの姿が入り、名実ともにスーパーアハメス編に。果たしてチェンジマンがこのピンチをどう乗り越えるのか、楽しみです。