東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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信頼と伝統のスペース○○

電撃戦隊チェンジマン』感想・第31話

◆第31話「暴け!バズーの謎」◆ (監督:山田稔 脚本:藤井邦夫)
 てっきり曽田さんかと思ったら藤井先生が3連投で、見所は、念力獣士に操られ、凄いスピードで地面を走る土偶人形。
 「おお、まさしくスペースドール」
 かつてバズーの誕生を知った予言者が、その正体を記録して宇宙に放ったスペースドール(見た目は遮光器土偶)――それが地球にある事を知ったバズーは、自らの正体発覚を防ぐ為に、宇宙獣士にドールの確保を命じる。一方、偶然にも、昔から家にあった人形としてそのドールを所持する少女と知り合ったさやかは、獣士が奪った人形を追いかけ、ダッシュ
 獣士の念力で吊られるとかなり高い位置から凄い勢いで地面に叩きつけられ、更に電信柱に押し潰されるという、歴代でもなかなか見ないレベルの生身ダメージ。
 「スペースドール……スペースドール……」
 「ただの人形。バズー様は何を怯えているのです?」
 「スペースドールは、バズー様の正体を知っておる。その正体の中に、バズー様の弱点があったとしたら?」
 悪い顔になってチラリと牙を覗かせるギルークに、しっかりブリッジを盗聴しているバズー様のお仕置きビームが炸裂。
 「ギルーク……貴様も儂の正体を知りたいのか!」
 「ひぃ! 滅相もございません! わたくしは、そのような、大それた事は、考えておりません! ハイ!」
 貫禄たっぷりのバズー様と、ひたすら低姿勢で情けなく許し請うギルーク。
 「……バズー様の正体と、弱点」
 そして星の荒野にミステリアスに佇むアハメスと、三者の描き方は絶妙。ギルーク司令も、このまま小物路線とは思いたくないのですが……頑張れ。
 地球では、獣士の攻撃の余波を受けた少女が高熱を出して病院に運び込まれ、バズーの秘密を隠したスペースドールは、少女にとっては“家族のように大事な人形”である事が強調されるのですが、いくら大事といっても、宇宙獣士(ゴズマ)に狙われているとわかりきっている人形を、預けっぱなしでいいのか。
 それとも、また囮に使うつもりなのか。
 「スペースドールは地球にあったのか」
 そして、重々しく呟く伊吹長官は勿論、スペースドールの存在と秘密を知っていた(笑)
 ……改めて、後の『超力戦隊オーレンジャー』の三浦参謀長は、伊吹長官の正統後継者であった事に思い至ります。
 バズーの正体がわかれば倒す方法も判明するかも、と盛り上がる電撃戦隊だが、さやかは少女への情を見せ、呼吸器つけて意識不明レベルの少女が元気になるまでは、大事な人形としてそっとしてあげてほしいと具申。
 生死の淵にある(描写としては曖昧ですが……)少女を勇気づける為に人形が必要、という理由付けはわかる事はわかるのですが、同時に、持っているだけでゴズマに命を狙われるので、命の危険レベルがほぼ一緒の為、どうも無理のある展開に。
 だがあくまでも、ドールを遠隔念力で入手しようとする獣士、子供には優しい人なのかもしれない。
 (守らなきゃ、ゆかりちゃんのお人形を。バズーを倒す為にも)
 一旦はヒドラ兵に奪われかけるドールだが、それを奪い返した飛竜が戦隊恒例の雑なパスを送り、ドールを抱えてさやかは逃走。
 “少女を元気づける為のお守り”を“獣士から守る為に結局は病院の外へ持ち出す(少女の身辺から遠ざける)”事になっており、その場しのぎのチェンジマンの対応が、話の混迷に拍車をかけていきます。
 「はははは! スペースドール、地球の女には似合わないわ」
 そこに現れたアハメスがマジカルビームでさやかを攻撃し、ゴズマ側の思惑が入り乱れているのは、面白いのですが。
 ドールへと手を伸ばすアハメスだが、左手に新装備の杖を握り、本当に魔法中年にクラスチェンジしたギルークがシーマを従えて登場。アハメスに対抗して高い所から姿を見せ、久々に貫禄ある物言いの一方、右手で柱にしっかり掴まっている姿が若干間抜けなのですが、これ、きちっと捕まっていないと本当に怖いところなんだな……というのが伝わってきます(マントとか、風をはらむ衣装でもありますし)。
 バズー様の正体を知ってどうするつもりだ、という自分の事を棚に上げたギルークの恫喝にアハメスは引き下がり、首尾良くドールを入手しかけるギルーク陣営だが、目を覚ましたさやかがブレスレーザーで奇襲をしかけ、レッツチェンジ。念力獣士と4人も追いついて乱戦に突入する中、パワーシンボルの光に反応したのか、ドールの中に隠されていた予言者のビデオメッセージがホログラフィで浮かび上がる。
 「バズーと戦う勇者よ。その正体は――」
 隠蔽するどころか全国に公開されかけたバズーの正体だが、勿論いいところで予言者が自爆、じゃなかった、念力獣士のビームにより、ドールは木っ葉微塵に砕け散ってしまう。
 怒りのチェンジマンはゴズマに報復の刃を向け、“一人の少女の人形への思い”も、“大宇宙にはびこる悪の打倒”も、どちらも大事にしてこそヒーロー、という姿を描く狙いだったのかとは思われるのですが、ドールの秘密より少女の気持ちを優先したい、と言っておきながら、いざビデオメッセージが流れ出すと固唾を呑んで見守ってしまい、それが原因で人形を破壊されるので、優先順位を貫けない上に、ヒーローとして敗北してしまうという、どうにも締まりの悪い展開。
 マーメイドが少女の為に、ドラゴンがバズー打倒の願いを託した予言者の為に、それぞれ怒りを見せるというのも、ミクロとマクロを共に守ろうとするヒーローというよりも、少女のドールを守る事を最優先にしていなかったように見えてしまい、スペースドールを守る事の意味と、それにまつわるヒーローの志を巧く重ねる事が出来ないままで、そこから繋がるバトルの盛り上がりを欠いてしまいました。
 念力と透明化、瞬間移動に加えて分身までする獣士に苦戦するチェンジマンだが、全員の電撃フラッシュ(パワーシンボルが浮かび上がって、閃光を放つ)により分身を破ると、マーメイドビートウェイブからパワーバズーカでフィニッシュ。巨大戦でも獣士の多彩な攻撃に苦しむが、サンダーボルトで撃破するのであった。
 人形の欠片を拾い集めたさやかは服を着せてなんとか修復すると、車椅子で出歩けるようにまでなった少女にそれを返し……重症の少女を勇気づける為のアイテムだった筈のドールが壊れても少女が快復している為(その後の経過にはプラスに働くだろうとはいえ)、物語中で二つの意味を持ったドールの役割さえ見失われ、終始、ドールに与えた二つの意味が物語の展開と噛み合わないまま終わってしまうという、残念な回でした。
 次回――まさかの天才少女再び。