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ウルトラマンがほしい!

ウルトラマンガイア』簡易構成分析<前半戦>

 ちょうど第26話で一つの区切りとなったので、『ガイア』前半戦の構造と内容を、簡単に振り返りたいと思います。表記は左から、〔サブタイトル/監督/脚本/特技監督/短評/備考〕

  1. 「光をつかめ!」/村石宏實/小中千昭/佐川和夫/-/我夢、ウルトラマンになる
  2. 「勇者立つ」/村石宏實/小中千昭/佐川和夫/-
  3. 「その名はガイア」/高野敏幸/小中千昭/神澤信一/-/ガイア命名・藤宮&アグル初登場
  4. 「天空の我夢」/高野敏幸/長谷川圭一/神澤信一/○
  5. 「もう一人の巨人」/原田昌樹/小中千昭/北浦嗣巳/○/藤宮、環境テロリスト宣言
  6. 「あざ笑う眼」/原田昌樹/川上英幸/北浦嗣巳/△
  7. 「地球の選択」/児玉高志/吉田伸/佐川和夫/◎
  8. 「46億年の亡霊」/児玉高志/武上純希/佐川和夫/◎
  9. 「シーガル飛びたつ」/村石宏實/太田愛/村石宏實/○/シーガル初登場
  10. 「ロック・ファイト」/村石宏實/小中千昭/村石宏實/×/クロウ初登場
  11. 「龍の都」/原田昌樹/古怒田健志/満留浩昌/○/ハーキュリーズ本格登場・公式から盛られていく筋肉
  12. 「野獣包囲網」/原田昌樹/川上英幸/満留浩昌/-/リザード初登場・藤宮再登場
  13. 「マリオネットの夜」/根本実樹/長谷川圭一/佐川和夫/◎/藤宮と玲子が本格的な接触
  14. 「反宇宙からの挑戦」/根本実樹/武上純希/佐川和夫/×
  15. 「雨がやんだら」/北浦嗣巳/右田昌万/北浦嗣巳/-/筋トレハッキング
  16. 「アグル誕生」/北浦嗣巳/吉田伸/北浦嗣巳/△/アグル誕生編
  17. 「天の影、地の光」/村石宏實/古怒田健志/村石宏實/○
  18. 「アグル対ガイア」/村石宏實/小中千昭/村石宏實/◎
  19. 「迷宮のリリア」/原田昌樹/長谷川圭一/原田昌樹/◎
  20. 「滅亡の化石」原田昌樹/川上英幸/原田昌樹/◎
  21. 「妖光の海」/根本実樹/大西信介/佐川和夫/-/マーリン初登場
  22. 「石の翼」/根本実樹/太田愛/佐川和夫/○
  23. 「我夢追放!」/北浦嗣巳/吉田伸/北浦嗣巳/-/vsアグル決着編1
  24. 「アグルの決意」/北浦嗣巳/長谷川圭一/北浦嗣巳/-/vsアグル決着編2
  25. 「明日なき対決」/村石宏實/右田昌万/村石宏實/○/vsアグル決着編3
  26. 「決着の日」/村石宏實/小中千昭/村石宏實/○/vsアグル決着編4

 前半戦の各担当回数は、
 演出〔村石宏實:8本 原田昌樹:6本 北浦嗣巳:4本 根本実樹:4本 高野敏幸:2本 児玉高志:2本〕
 脚本〔小中千昭:7本 長谷川圭一:4本 川上英幸:3本 吉田伸:3本 武上純希太田愛古怒田健志右田昌万:2本 大西信介:1本〕
 特技〔佐川和夫:8本 村石宏實:6本 北浦嗣巳:6本 神澤信一・満留浩昌・原田昌樹:2本〕
 円谷スタイルというか、監督はある程度ローテを組みつつ、脚本は前半戦だけで9人が参加。シリーズ構成の小中千昭は、立ち上がりに3話連続で書いた後は、(恐らく大きな筋に関わるオーダーをある程度出しつつ)ピンポイントで山場に入る、という形に。……それだけに第10話の出来の悪さが目立つのですが、第10話は本当に何だったのか。
 我夢v藤宮、という2人のウルトラマンの思想的対立を一つの軸に置いて「ウルトラマンとは何か?」を問いながら、一話完結色の強いスタイルでバリエーション豊富な破滅招来体(内部に複数のカテゴリが存在)が登場する、という基本構造と、多数の脚本家の参加はシステム的に巧く噛み合っているのですが、一つ短所を挙げると、参加が散発的になる分、担当回に“語り”を詰め込もうとする傾向がやや見受けられる事。
 ただ一方で、その“語り”の重さに簡単にひっくり返る事がない、物語のベースとなる世界の積み重ね・映像的なスペクタクル・力の入ったアクション、という足腰の強さが、今作の大きな武器といえます。
 短評を参考にしながら本編の構造と印象を振り返ってみますと、当初はとにかく「お金かかっているなぁ……」というのが一番だったのですが、大学の友人達との関係を拾い、我夢の抱える独善性の危うさを描きつつ、我夢と梶尾さんの間に空で戦う者の絆が生まれる第4話で、作品そのものの印象がかなりプラスに。


 「素人がいったい何考えてる! すぐ引き返せ! 実戦は遊びじゃない!」
 「僕はこの翼を、平和を壊す奴らと戦う為に作ったんです」
 「そんな事はわかってる!」
 というのは、我夢と梶尾さんの関係をびしっと決める、よいやり取りでした。
 そして、天界が好き。続く化石怪獣回と、一桁話数の内に、物語的にもアクション的にもツボに入るエピソードが来てくれたのは、個人的に大変モチベーションが上がりました。
 今作1クール目における〔情報を非常に小出しにする立ち上がり → その中でとにかくアグル/藤宮という“第二のウルトラマンを出す” → しばらくアグルが登場しない〕という構成はかなり大胆だと思うのですが、藤宮が再登場する第12話までの間の、世界観を固め、広げ、提示していくエピソード群のアベレージが高かったのは、大きかったポイント。
 改めて構造を振り返ると藤宮-玲子編ともいえる2クール目は、藤宮に対応する(引きずられる)形になった玲子さんの語りがやや、キャラクター性の積み重ねというよりも話の都合優先になってしまうという不満点はありましたが、第25話における、玲子にかつての夢を語る藤宮と、アグルの手に乗って空を飛ぶ事で視点を共有する玲子、のシーンは大変好き。
 合間にきちっとXIG側の人間関係も掘り下げていき(その部分が色濃く出たという点で、第19話や第22話は高評価)、ウルトラマン以外の要素も置き去りにしない構成の目配りというのも、今作の大きな長所といえます。
 エピソードとして今のところワーストは、クロウの扱いが意味不明になり、XIG男性陣の株が連鎖的に大暴落するチーフ・ショックを引き起こした第10話。
 こうして前半戦を振り返ると、なんだかんだ長谷川さんの脚本は好きだな……と。他には、もともと好きな古怒田さんを別にすると、シーガルと参謀、XIGメンバーにいつもの防衛活動と違う角度からスポットを当てて描いた太田脚本回がエッセンスとして面白く、出来も秀逸でした。吉田さんには、天界回の出来を再び期待したいのですが、次回は吉田さんなのかどうなのか。あと武上さんの第14話は、なんだか全体構成の都合に翻弄された感が強いので、後半戦での再登板に期待しております。
 演出陣では、5-6話時点では、やや変化をつけた見せ方が作品の現在地とズレているように感じていた原田監督が、11-12話、19-20話と、物語の醸成とも噛み合って良いアクセントとして機能をし始め、評価が逆転。フィーリング的にもかなり合うので、次の登場が楽しみです。メイン監督といえる村石監督は、私の中でプラスとマイナスの振り幅が大変広いので、終わった頃にはプラス評価が上回っているといいなぁ……(笑)
 後半戦スタートの第27話が、第26話までの諸要素を改めてまとめ、更に一歩前に進めた上でアグトルニックに象徴させてみせる、という大変見事な出来だったので、後半戦も非常に楽しみです。