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追加戦士は地獄の番犬

4週連続スペシャル『スーパー戦隊最強バトル!!』感想・第3話

◆BATTLE3「暴かれた大秘密」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久
 注目は、超台詞の多いドギー。
 ボスが愛されているというか、稲田さんの戦隊愛が強いというか、戦隊スタッフが稲田さんを好きすぎじゃないかというか。
 そして、本編でもそうでしたし、一番はデザインの妙でありますが、あまりにもヒーロー度が高い為に、若い女の子と至近距離で見つめ合っても浮気の匂いが一切しないのが、凄いよボス。
 これがチーフだったら、セクハラポイント300点加算で、西掘財閥謹製特別拘禁室送りですよ(風評被害)。
 ところで、前回感想において、「急造チームが“戦隊になる”」という今作なりのチームアップを描く構造をやってくれそう、という期待に触れましたが、そういう視点で見ると今作のキャラ配置は、
 風切大和=レッド
 キャプテン・マーベラス=ブラック
 伊賀崎天晴=イエロー
 スティンガー=ブルー
 カグラ=ピンク
 であり、最初の情報の時点では「大和くんが死にそう……」と思いましたが、今となっては深く納得。この発想――既存メンバーの組み合わせで主役となるスペシャル戦隊を組む――というのが、今作の一つ勝因であったなと。
 前回ラスト、連続ゴーカイチェンジでウルッポイゾに一矢報いるゴーカイレッドだったが、兜の下に隠されていたのが天晴である事に驚愕している内に反撃を受け、またも完敗。
 一方、空き巣していたスティンガーは不審な気配に戦闘態勢を取るが、そこに居たのはドギー・クルーガー
 「君の仲間とは面識がある」
 「ショウ総司令から話は聞いています」
 今作、恐らく劇場版VS世界は取り込まれていないが、本編劇中でのコラボは正史扱いという線引きのようで、『キュウレンジャー』本編でのコラボ回(脚本は荒川さん)の繋がりを活用。
 ドギーとスティンガーはともに、惑星ネメシスで起きた異常な磁場の乱れを調査する為に大会に潜り込んだ潜入捜査官であり、情報を交換した二人は、魔法陣で守られた妨害装置を発見。
 「巨大ロボや巨大メカの召喚が封じられているという事か」
 今作、戦隊における大きな特徴の1つであるロボ要素はさすがにオミットされているのですが、物語の舞台に結界が設置してあり結果として巨大ロボが登場不能である、という理由付けに、一応言及しておくのが、戦隊らしさへの目配りを感じます。
 そしてスティンガーが発見した古文書をデカ翻訳装置にかけるボスだが、その解析を待っている内に戦闘員詰め合わせ軍団に襲われて生アクションに突入し、スティンガーの回し蹴りが大変格好いい。
 「先に行ってジュウオウジャーの大和たちに、この事を伝えてくれ!」
 「わかった! 必ずまた会おう!」
 本編ではどうも、本音はともかく、独りよがりプレイの印象が強いスティンガーですが(未見分のラスト1クールでもう少し変化していたのかもですが……いい加減、見ないと)、ここで任務の達成の為に他者を信頼しパスを繋ぐという姿に成長が濃縮され、それを活劇の中に織り込んでみせるところが実に鮮やか。
 この後、ガイソーグと交戦して尻尾アクションを見せる手際も、抜かりありません。
 一方、無事に追っ手を振り切ったボスは、傷だらけで通路に転がっていたマーベラスを発見し、助け起こす。
 「……お人好しの宇宙警察じゃねぇか」
 「まさかこんな形で再会するとはな」
 と、本編中の出会いから本編中の出会いへ、スムーズなパスワークでドギーの存在感を飲み込ませる手腕が見事。
 準決勝Bブロックにおいて、意外と勝ち残っていた怪力チームに格闘技チームが勝利を収めるも、何故か両者まとめて転移させられてしまった頃、変わり者チーム控え室では鎧の中身が天晴だったという情報を共有。
 「もしかすると……誰かが色んな人に鎧を着せて、操ってるのかもしれませんね」
 スティンガーの任務もボスの口から明かされ、ジェムの力を悪用しようとする何者かの陰謀をくじく為、まずはガイソーグを倒し、天晴も助けよう、と大和・カグラ・ボスは熱いスクラムで手を重ね合わせ、そのキラキラした眼差しを向けられて今回も意思判定に失敗したマーベラス、しぶしぶ手を重ねる。
 「あいつには借りがあるしな」
 でも一言、付け加えずにはいられないスタイル。
 チームの垣根を超え、悪に対する闘志を一つにしていくヒーロー達だが、発表されたAブロック準決勝の対戦カードはなんと、カグラvsドギー。二人はある作戦を胸に、剣を手に向かい合う。
 「……マーベラスさん」
 「なんだ?」
 「このバトルに願いをかけた人達みんなの想いが、踏みにじられるような事はないですよね?」
 「……さぁな」
 「ガイソーグの事もあるけど、カグラちゃんは今、願いを叶える為に真剣に戦っています。それは僕も同じです。だから」
 「俺は甘っちょろい事は言わねぇ。だが――怒りをぶつける時は……一緒にぶつけてやるよ」
 第1話アバンタイトルから連戦連敗街道を突き進むキャプテンですが、ここで遂にマーベラスのターン、という具合に流れが切り替わり、ここからマベちゃん一気に格好良くなっていくのが、たわめた分をしっかりジャンプさせて、また巧い。
 「ドギーさんがわざと負ける?」
 激突するトッキュウ5号vsデカマスター……その狙いは、白熱した戦いを見せつける事でガイソーグを誘き出す事。
 「でも……だったら私が負けた方が」
 「それは駄目だ。俺は潜入捜査の為だけにここに来た」
 カグラの肩に手を置き、真っ直ぐに語りかけるボスーーーーー!
 「だが君には、大事な願いがあるだろ? それを犠牲にするわけにはいかない」
 きゃー、さすが宇宙一格好いい犬ーーーーー!
 全戦隊ダメンズに爪の垢を煎じて飲ませたい事で著名な、スーパー戦隊屈指のイケメンであるボスが、見ていて口から泡を吹きそうな格好良さ。
 ……まあ、剣豪チームの他の4人の願いは? というツッコミどころはあるのですが、時系列が不明瞭ではあるものの相手がカグラという事は、メタ的に“ヒーローと子供”の関係の投影となっているので、これはもう仕方ない、というのが巧妙。
 この辺り、『トッキュウ』未見だとキャラ付けのわかりにくいところはありそうですが、それは言い出すとキリのない部分はあり、少なくとも女性戦士のところに、子供っぽいキャラであるカグラを配置したというのは、この流れの為の意図を感じます(合間のバトルで少し目立っていた事を考えると、13年前の作品でなければ、荒川さんの中でボウケンイエローも想定されていたのかも)。
 ――「君の強さを俺に全力でぶつけてこい。少しでも隙を見せたら俺も反撃する。だから手加減だけは絶対にするな」
 「私の本気を、ぶつけます!」
 鍔迫り合いの中でドギーの言葉を思い起こしたトッキュウ5号は、その想いに応えるべく(この状況設定は今作を貫く要素としてこだわって繰り返されている)、流れ出した『トッキュウジャー』主題歌インストに乗せて、胸部への頭突き。6号除いてあまり肉弾系で無いかつその中でも最も戦闘系ではない5号という事で、アクションの特徴をどう付けるのかは少し悩んだ所もあったのか、我武者羅な体当たり気味の突撃は、体の脇で腕を回している所からも、電車アタックという事でしょうか(笑)
 ほぼ駄々っ子アタックからどうするのかと思ったら、そこから関節を極めにいき、お姫様だっこ気味の姿勢から反転回避、一旦距離を取ってから再び飛びつくと首に足をかけての投げ技、と見せるアクションを連発。
 「正直驚いている。君の力がこれほどとは。いったいどんな願いの為に、こここまでの力が出せるんだ」
 「家族!」
 カグラは、世界中の家族を笑顔に出来るようなメニューを作りたい……メニューそのものではなく、その為の時間と元気が欲しいと語り、“何でも叶えられる願い”で一足飛びの「成果」を求めるのではなく、それは自分で掴もうとする姿勢、を描く事で奇跡に対する一線を強調。
 「それだけでいい! それさえくれたら、私が自分で考える! 離ればなれの家族でも、世界中のどこででも同じ味を楽しめるよう、そんなメニューを! 絶対に!」
 つまり、打倒マク○ナルドはさておき、『トッキュウ』本編を踏まえたと思われるカグラの台詞から主題歌にボーカルが入り、互いに再び剣を取ると、トッキュウ5号は伝家の宝刀なりきりガールを発動。アクションのスピード感と劇伴の合わせ方の絶妙さにより、「剣を拾って構える」というだけの動きを劇的にしてみせるのは、坂本監督が実に鮮やか。
 「Dソードベガ! ベガ・スラーーッシュ!」
 「――電光剣・唐竹割り!」
 必殺剣で一気に間合いを詰めたデカマスターに対し、5号は禁断の奥義・鉄山将軍憑依により、後の先を取ってこれを撃破(『バトルフィーバーJ』の長官ポジションである倉間鉄山将軍の必殺「鉄山流・電光剣」は、バトルフィーバー隊の合体必殺技・ペンタフォースより破壊力が高い)。
 さすがのデカマスターも、シリーズ歴代において生身最強クラスの達人の剣の前に後れを取り、デカ翻訳装置をカグラに託すと「これにて一件、コンプリート」で帰還。その姿に「決勝、頑張ります」と誓うカグラは、直後に現れたウルッポイゾの攻撃を受けて変身解除してしまうが、そこに駆けつけるジュウオウイーグル、そしてゴーカイレッド。
 「本気で行くぜ! 悪く思うな、天晴」
 2話後半まで険悪かつ“願い”に関して温度差のあった二人が遂に並び、揃ってビシッと剣を構えたところで『ゴーカイ』主題歌、というこれがまた、滅茶苦茶格好良くて、そろそろ語彙力が麻痺してきました。
 目指せ地図にない場所を 幻なんかじゃないんだ たった一つ 自分だけの宝物 だれも探してる
 「おい! 俺に合わせられるか?」
 「え?」
 「倒すんだ! 俺達の敵をな! おまえらの願いを守ってやるぜ!」
 「はい!」
 海賊赤はゴーカイチェンジし、光速ダッシュでガイソーグの攻撃を連続回避しながら後ろに回り込んでのデンジパンチが惚れ惚れする格好良さ。絶妙な呼吸でジュウオウホエールが零距離番長キャノンを叩き込んだところに、海賊はマジパンチの連打を浴びせ(そういえば、ボクサーチームは組めそうだな、と考えた)、続けてまさかの一人スーパーダイナマイトが爆発!
 よろめく鎧をホエールがトドメの番長ソードでなます斬りにしてからビームを打ち込み、ど派手な爆炎に飲み込まれるウルッポイゾ。
 「我に、勝てーーーーー!!」
 怨嗟のような絶叫と共に兜が弾け飛び…………あ、これ、タカ兄、死んだ……?
 急遽、誰かの願いを「タカ兄の蘇生」に変える緊急会議が必要になるかと思われたが、なんとか無事だった鎧が膝から崩れ落ち、兜の下のその顔は……姿を消したままだったスティンガー。
 鎧から解放され、正気を取り戻したスティンガーにより、ガイソーグの正体は最強を求めて強い者から強い者へと乗り替わっていく、意思を持った鎧である事が判明。……つまり、歴代シリーズの残念な美学系悪役の呪いの結晶みたいなものなのか(笑)
 スティンガーが見た鎧の記憶の断片から、ゴーカイイエロー/ルカが鎧に取り込まれていた事も確認され、ガイソーグの秘密はすんなりと腑に落ちる形で決着。そしてドギーに託された装置が、古文書の解読を終了する。
 「究極大サタン召喚の呪文?」
 大雑把な感じのが来た(笑)
 「究極大サタン?」
 「聞いた事がある。この宇宙を一瞬で滅ぼす大悪魔だ」
 マベちゃん、知っていた(笑) まあ、ここで新しい固有名詞を出てもしっくり来ない場合があるので、大変わかりやすい感じで良いとは思いますが。
 「リタはそいつを復活させようとしている」
 大会の裏に隠された陰謀を突き止めた戦士達は、究極大サタン復活を食い止めるべく動き出そうとするが、大和はマーベラスを制止する。
 「待って! あなたはその前にお宝を」
 「え?」
 「仲間が……あなたのお宝なんでしょ?」
 大和くん、マジ、そういう事直球で言うよね……(笑)
 マーベラスさんもほら、世間体とか、ポーズとか、色々あるから……。
 話の流れとしては、今回ここまで主導権を握っていたマーベラスから、大和くんが再び主導権を取り返すというターンチェンジになっており、それぞれのキャラを埋没させないバランス感覚がお見事。
 「そうだったんだ。でもどうやって? 場所もわからないのに」
 「いや……わかる」
 俺の荒くれ海賊イメージを守る為には、インパクトのある一発芸で今のやり取りを打ち消すしかない! おしり! もとい、大切な仲間を取り戻す為、それを促してくれた大和の想いに応える為、マーベラスは転がっていたガイソーグの兜を拾う。
 「俺もすぐに追いつく。おまえらそれまでにやられたら承知しねぇからな!」
 自ら兜をはめたマーベラスは頭を抱えて絶叫し……
 「おまえは既に負けている。相手にはならん」
 とか拒否されたらどうしよう?!
 一方、今回もラストのみの登場で遺跡を探索していた黒と緑のリュウソウジャーは、黄金のチケットによって強制召喚。そして、二人が消えた後の遺跡を、同じ剣を持った謎の男が訪れるのであった……で、つづく。
 後の心配は、宣伝要素が物語の完成度を大きく落とす事なのですが、勿論、新戦隊あってこそですし、そちらに興味を引かせる見せ方にするのが大きな目的でしょうが、ここまで面白いお祭りスペシャルになると、リュウソウジャーの見せ場は程々で、宣伝置き去りにして突っ走ってほしい感がどうしても(笑)
 演出的には毎回、本編の「つづく」のシーンの後に、リュウソウジャー先行登場シーンを入れて次回へ、という構成がここまでは非常に巧くいっていたので、最終話でも綺麗にはまって、新戦隊に繋がってくれる事に期待。
 前回、『ニンニン』のターンの入れ方が割と良かったので、今回『トッキュウ』のターン、に期待していたら、ドギー・クルーガーのターン! にだいぶ食われてしまいましたが、ボスはボスで大好きなので良かったです。本当はどうせなら「スワンと温泉旅行に行く為の休暇」が欲しかったけど、ヒーローは、子供の夢を守るものなのだわおーん!
 1-2話におけるポジショニングの上手さで株価の上がっていた天晴が今回、鎧の中で無表情だけだったのは少々可哀想でしたが、次回――待ってました! という展開に持ち込んでくれそうなので、5人の揃い踏みが大変楽しみです。