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Weight up! The Hero! 目を覚ませ

ウルトラマンガイア』感想・第21話

◆第21話「妖光の海」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 藤宮との衝突の激化、前回のゴムボール怪獣への苦戦……迫り来る破滅から地球と人類を救うには、筋肉だ!
 更なる筋トレに耐えうる体を作る為にまずはウェイトをつける所から、と食堂で大食い(3皿ほど平らげている)をしていた我夢は緊急呼び出しを受け、突然出現した酸素欠乏地帯の調査へと向かう事に。
 堤と共にベースキャリーで向かった山中では、半径1kmに渡って空気中の酸素が著しく減少しており、ジェットが作動しない為にリパルサーリフトで移動していく、というのが細かい演出。
 エリアの中心には謎の巨大光球が存在しており、今もゆっくりと広がる無酸素地帯への脅威から、ベースキャリーは光球を攻撃し、これを破壊。ベースキャリーの直接攻撃は、これが初でしょうか……?(序盤にやっていたかもですが)
 だがその直後、世界中のガードから次々と、球体と無酸素エリア発見の報告が飛び込み、なんとかその全ての破壊には成功するが、大きな謎が残るのであった。
 我夢は海洋の専門家であるチーム・マーリンの今井と球体の破片について分析し、エリアルベースでは形見の狭そうな数少ないインテリ枠の人と話している時の我夢は、本当に楽しそう(笑) 演技指導がハッキリ出ているのかなと思いますが、XIGの一員として前線に出ているし、梶尾さんも尊敬しているけど、我夢の本分は研究者にある、というのが折々に描かれているのがキャラの軸を作っています。
 球体の発光が、夜光虫やウミホタルの放つ光と同質のものである事を突き止めた我夢と今井は、光球の正体は、海中の無酸素生命体による環境攻撃ではないかと推定する。何らかの理由で力を得た無酸素生命体が、再び自分たちの君臨していた世界を取り戻そうとしているのだ!
 我夢は、光球が海から飛び出す所を目撃してニュース種になっていた友人の証言を基に、弾道計算により球体の発射源を突き止め、横谷リーダー・今井・巌からなるチーム・マーリンがそのポイントへと出撃する。
 そこは8年前、産業廃棄物の大々的な不法投棄が明るみになった際、海流の影響でいずれそれらの多くが集まる事になるだろう……と推定されたポイントであり、それが無酸素生命体を活性化させたのではないか、と今回はかなりストーレトな環境問題テーマ。
 「勝手な事ばかりやってきたもんなぁ、俺等、ちゅうか人間はさ」
 「何かに滅ぼされたって、自業自得ってとこか。そうなっちゃった方が案外、地球の為かもな」
 「本気で言ってるのか?!」
 我夢は友人達との帰路、根源破滅を望む宗教団体を目撃し、根源的破滅招来体の出現による世界の変化が足下から織り込まれつつ、軽い調子でそんな厭世的な態度を気取ってみたくなる時もある、というのを我夢の友人ズという一般市民視点から交えてくるのは今作らしい多層構成で良かったです。
 ポイントに突入したマーリンの潜水艇セイレーンは、巨大な無酸素バクテリアの集合体と思われる怪獣と遭遇し、科学的な解説と、テーマをストレートに盛り込んだ台詞のやり取りが若干くどめの内容を、今作これまでなかった海中戦という新機軸の映像により楽しませながら見せようとする、というのもらしい作劇。
 ともすると話が頭でっかちになりそうな所を映像のパワーでバランスを取るという力技で、これはこれで、ふんだんな予算により、盛り込んだ理屈と天秤の釣り合いを取れるだけの映像を作り出せた、今作ならではの幸福で奇跡的な時間であったのかな、とも思われますが。
 「人間がみずから招いた災厄……という事か」
 発音的には「水」だと思うのですが、コマンダー、この局面で、「自ら」と掛けた?!
 奮戦するセイレーンだが怪獣の攻撃を受けて航行不能に陥り、外に飛び出した我夢の前には藤宮が姿を見せる。
 「行って勝て我夢。人の愚かさを隠す戦いに。後で面白いものを見せてやる」
 海底に向かったガイアはセイレーンを救助すると怪獣に向き直り、神秘的な超越者から荒ぶる闘神への切り替えがかなりダイナミックに描かれるのですが、改めて今作は、それを彩る音楽が劇的で格好いい。
 ガイアは先制の不確定性原理踵落とし。そして行列力学チョップ。
 さっそく筋トレの成果が出てきたのか、或いは実は海属性だったのか、快調に戦いを進めるガイアは回り込んでのローキックから上手出し投げ、そして調子に乗って体重を乗せた浴びせ蹴りを食らわせると連続キックの猛攻をしかけるが、筋トレは一日にしてならず。
 ガスによる反撃で後退した所に火球をぶつけられて落とし穴にはまり、ある意味、安心の展開。
 守ろうとする人間の作り出した産業廃棄物の蓄積にガイアが足を取られる、という皮肉のニュアンスがあるのでしょうが、ガイア(我夢)なのでむしろ平常運行、に見えて困ります。
 最近、アグル(藤宮)に残念ポジションを奪われていたけど、僕だって後輩達には負けない!
 怪獣にのしかかられ、海底の堆積物の中に埋められてしまうガイアだが、なんとか脱出。藤宮の言葉を思い出して必殺光線を躊躇した隙に反撃を受けるも、最後はうにょんバスターで大変派手に木っ葉微塵。
 無酸素海獣を応援していた発光生物たちの光も収まり、静けさを取り戻した海で夜景を見つめる我夢の前には、約束通りに藤宮が姿を見せる。
 「残ったのは悪魔の光だ」
 冒頭、夜景の煌めきに対して「愚かな光だ」と呟いてたのが、ただの藤宮流闇のポエムではなくしっかり伏線として機能。全編を通して「光」をキーワードにしていたのが綺麗に繋がり、海洋生物の発光と人類文明の光を対比する言葉が、鮮やかに決まりました。またそれが、「ガイアの光/アグルの光」を思い起こさせる、というのも秀逸。
 「地球の資源を奪い、傷付けながら作られた愚かな光。おまえが守りたいのは本当にこんなものなのか!」
 「……それでも、それでも僕は、この光を守り続ける」
 藤宮は歩み去り、我夢は自らに言い聞かせる様に呟き、「環境問題」や「愚かな人類」というテーゼをど真ん中の直球で投げ込み、上で触れたように、やや語り優先で重心が頭に寄りすぎた感はあったのですが、それでも簡単にひっくり返らない足腰の強さが『ガイア』の武器だな、と改めて。
 個人的にはもう少し、語り控え目の作劇の方が好きですが、オチが鮮やかだったので得失点差プラス。
 あと学生時代、地学の授業か何かで、海底火山の噴火口などの中には今も、酸素が毒になるバクテリアが生存している、というのを知って感動を覚えた記憶があったので、そこから生まれた怪獣というアイデアは面白かったです。
 残念だったのは、折角新登場したチーム・マーリンがさして活躍しなかった事ですが、次の出番(はあるのか?!)に、期待。
 次回――「その時千葉参謀は?!」の唐突さに笑ってしまったのですが、千葉さんの肩書きをずっと覚えられなかったので(その為、直近『ルーブ』の印象から仮に「監督」と呼んでいました)、これでようやく覚える事が出来そうです。千葉さんは参謀。多分、野球の好きな参謀。