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バラが咲いた日

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第50話

◆#50「永遠にアデュー」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 滑らせた机の下をくぐり抜けたり椅子を使って凍結弾を防ぐルパンレッドvsザミーゴ、ビルを遮蔽物にカバーアクションを交えながらの巨大戦、と最終盤まで凝った殺陣。
 ノエルはパトレンXとして物凄く普通に帰還し、パトレン3号が気に掛けるのは……どこか思いここにあらずの様子で駆けつけたパトレン1号の方で、まあそれはそれで深く納得ではあるのですが、なにぶん同じ方向から走ってきたので、一瞬、おお、と思ったのですが。
 パトカイザー&Xエンペラーが巨大構成員軍団を一蹴した頃、目を覚ました初美花と透真は、国際警察病院を脱出。VSチェンジャーを取り戻すべく日本支部に潜入するが、戻ってきたつかさと初美花に見つかってしまう……。
 「俺達よりもっと無茶をする奴が……一人で戦ってる」
 「また大事な人を失うのはヤなの。……その為なら、なんだってするの!」
 魁利を助けに行こうとする二人に、つかさと咲也はVSチェンジャーを渡し、この辺りの関係性はとにかくもう、前回の魁利×圭一郎に集約した、という扱い。
 「2年前に、出会いたかった。そしたら、初美花ちゃんが、快盗になる前に、力になって、あげれたのに」
 「…………今だからあたし、咲也さんのいいとこ知れたんですよ」
 17歳女子高生に付きまとう警察官は、通報待ったなしだから!
 「3人で……生きて帰れよ!」
 「……貴方たちも」
 基本的に警察の、「イリーガルな快盗は社会的に許せる存在ではないが、別に死んでほしいわけではない」というスタンスは中盤以降は一貫しているので、どちらかというと透真が明確に変化しているのは、良いポイント。
 で、警察として何を最大の問題としてきたかといえば、パトレン1号の決め台詞に象徴され、圭一郎の信念に繋がる「権限には責任がともなう」事であり、「快盗の力は無責任なものではないか?」という事なのですが、この1年間の衝突と交錯、そして3人の正体と理由を知る事により、「快盗は無責任に力を振るう存在ではない」と信じられるようになったから、手段は違えど「大事なものを助ける為の力」という点において快盗と警察は一致できるというのが、両者の関係の到達点、でありましょうか。
 そして快盗は快盗で、警察戦隊の使命感は絵空事や綺麗事ではなく、根っこのところでは自分たちの感情と同じものだと相互の理解を果たす、というのを1年かけてやりきったのは、VS戦隊として貫徹。コミュニケーションの問題を重視する香村さんらしい所でもあります。
 一方で、とはいえ公の視点で見た時に残る快盗という存在の問題そのものは放置されるわけですが(相互理解はあくまで、快盗戦隊と警察戦隊の個人的関係でしかない)、“その先”に関しては、物語の未来に預ける事になりそうでしょうか。
 もう一歩、ミクロ(魁利×圭一郎) → ミクロ(快盗戦隊×警察戦隊) → マクロ(快盗戦隊×世界)というところまで綺麗に繋がってくれると個人的には大変好みなので期待したいですが、そうなると鍵になるのは“取り戻した人達”という事になるのか……そこまで詰めてくれると凄く良いのですが。
 後、救いきれないものがある事を認めた上で、手の届かないものへ手を伸ばす道を他者に託す、というのは警察戦隊にとっては忸怩たる敗北という一面はあるのですが(それを前向きに託せるというのが「快盗戦隊への信頼」になるわけですが)、この辺りのジレンマに対して誠実すぎて、普遍的に乗り越えがたいアンビバレントになっているのが、お仕事としての警察戦隊の辛いところではあります。
 そんな警察戦隊からの想いも胸にVSチェンジャーを手に飛び出していった青黄は、ザミーゴに追い詰められていた魁利を空襲で救出すると、一時撤収。
 「誰が倒れても、残った一人が願いを叶えればいいなんて、あんな約束、くしゃくしゃのぽいだよ」
 「ここまで3人でやってきたんだ。今更置いていくな」
 「透真……初美花……」
 快盗戦隊内部の関係性もここにクライマックスを迎え、前回の圭一郎同様に、綺麗なちゃぶ台返し。鼻つまみを逆襲した初美花が、多用していた「くしゃくしゃのぽい」というフレーズを用いるのも良かったです。
 ……しかしやはり、ノエルはちょっと可哀想というか割を食っているというか、ここで“3人”に加われないもの悲しさがあるのですが、それが警察でも快盗でもない「Xの覚悟」とはいえ、多分そこに一番近付けた圭一郎は魁利の事でいっぱいいっぱいで、センサー発動できそうなつかささんも手が回りきらない、というのが惜しい。
 前回でさえ、魁利達は口では「勝利達が<化けの皮>にされていたら困るのでコレクションも確保しておかないと」という動機でドグラニオに挑んでおり、そこにノエルの「願い」を気に掛ける描写が存在しないのですが(追い詰められた精神状態が第一にあって、根っこのところではノエルにも協力してやりたい、というのは勿論あるでしょうが)、これには一つ、コグレからの口伝えでしかないノエルの事情、アルセーヌの存在というのが、どうしても実感に欠けるところは影響しているのかもしれないなと。
 特に後者、アルセーヌという存在のリアリティに関しては劇中の魁利達のみならず視聴者にとっても薄く、ルパン家の人達だけがこだわる存在になってしまっているのも一つの要因となって、それに基づく高尾ノエルというキャラクターの行動を読み解く為に求められる、“解釈の川”が広く深くなりすぎた部分があったかなと。
 云ってみればノエルは、警察という岸辺と、快盗という岸辺、向かい合う両岸の間を流れる川であったわけですが、もう少し早めにノエルの正体と真の信念を(視聴者に向けてだけでも)明かしておければ、ノエルという川を埋めていく――それが成された時に快盗と警察という両岸も繋がる――事が物語と視聴者の共同作業として時間が取れたのではないか、と思える部分。
 実際の物語においては、快盗も警察もそんなノエルを命がけで助けに向かっているわけで、どちらもノエルの行動の意味をうっすら掴んでは居るわけなのですが、ノエルはノエルでその、理想を掲げて報われにくい道を「覚悟」として選び、理解されなくても構わない「善意」をシールドとして振り回す姿勢に問題を感じるというか、ノエル自身が嫌いというわけではないのに、ノエルにまつわる描き方の何に一番引っかかっているのかはどうにも言語化が難しいのですが、理想の為に自覚的「不実」を働くが、それを「献身」をもって精算するからいいよね、という劇構造になってしまっている事なのかなーと。
 それは、どんなに進んでも「友人」の関係性にはならないと思うのです。
 無論、状況はそう簡単なものではないわけですし、ノエルの本質をどこに見るかというのも色々と解釈の幅が広いわけなのですが、そこを方便にしてしまうならば、ノエルが一番、ノエルの理想を叶える為にノエルの理想から遠い行為に身を投じており、ノエルがノエル自身に嘘をついている可能性というのが根幹にあるからノエルは誰とも「友人」になれない、というのが今作スタッフの誠実さゆえに炙り出されてしまっている気がして、ノエルを「人間」として描くならば、その図式からノエルを引きずり出す必要があるのではないかなと(W戦隊が仲良くなれば良くて、そこに僕の席は無くてもいい、というスタンスは、この際、不許可)。
 そういう点で、様々な事情の積み重ねの末とはいえ、快盗がマスクを取ったあの瞬間は、ノエルの図式を崩壊させる糸口という意味でも劇的な瞬間だったのではと思われるのですが、結局その直後に「貸し」「借り」で定量化してしまおうとするのがノエルの根深い病気で(魁利の口にした「貸し」という言葉と、ノエルの口にした「借り」という言葉の中身には、大きな隔たりがあったのではないか)、どうにかこうにか最終回、ノエルという川に誰か飛び込んでほしいところです。
 自覚的なアウトサイダーであるノエルに席が用意される事こそが、未来への希望の一つの象徴であると思うので。
 「今日こそ、絶っ対ザミーゴ倒して!」
 「大事な人を助け出す!」
 「そんで、最後にみんなで笑う!」
 魁利・透真・初美花は、新しい“約束”と共にVSチェンジャーを重ね合わせ、
 「――約束だろ?」
 そこに現れたノエルがXチェンジャーを合わせると、ザミーゴを倒す為の秘策として取り出したのは、クレーンビークルとバイクビークル
 一方、街にはドグラニオが出現し、さらっと「半径2kmが壊滅状態」と報告されている凶悪なラスボスぶりを発揮。
 「圭一郎、咲也、つかさ。君たちに、全てを託す。必ず、ドグラニオを倒してくれ」
 警察戦隊は世界を守る為に出動し、ルパンレッドを追うザミーゴの前には、4人の快盗が並ぶ。
 「おいおい、4匹に増えてるじゃねぇか」
 「生憎、正々堂々ってやつには興味なくてなぁ」
 「僕たちは――快盗だからね」
 「今日こそ……今日こそ絶対、全部返してもらうんだから!」
 「いいぜぇ。まとめてかかってきな!」


「「「「――快盗チェンジ!!」」」」
「ルパンレッド!」
「ルパンブルー!」
「ルパンイエロー!」
「ルパンX!」
「快盗戦隊!」
「「「「ルパンレンジャー!!」」」」

 赤「予告する!」
 黄「背中のお宝いただいて!」
 青「おまえを倒し!」
 赤「大事な人を取り戻す!」
 ここでXの割り当てが無いというのも結構辛いというかシビアなのですが、これはさすがに、次回への仕込みだと思いたい。
 「派手に遊ぼうか」
 快盗とザミーゴの激突が始まった頃、世界を蹂躙するドグラニオに向けて銃を構える国際警察。
 「フン、懲りずにまた来たか」
 「当然だろう!」
 「ギャングラーの殲滅が、我々の使命だ!」
 「相手が誰だろうと、怯むなどありえん!」
 「愉しませてもらおう」

「「「警察チェンジ!!」」」
「国際警察の権限において、実力を行使する!」

 一方、ザミーゴと戦うルパンレンジャーは、レッドがザミーゴの銃を奪い取るが、回避された弾丸は背後に迫っていたルパンXを凍結してしまう。だがそれは作戦通りで、ザミーゴの意識が外れたところで凍結を解除する事により、解凍されたルパンXが背後からザミーゴのコレクションを回収。液状化能力を取り除く事に成功するが、そこに吹き飛んでくるパトレン融号。
 変身の解けた警察戦隊に迫るビームから身を挺して3人をかばったルパンXも壁に叩きつけられて変身が解け……見殺しにするという選択肢は単純に無いとはいえ、作劇的にはここでもまた、ノエルが体を張って3人をかばうことで不実の精算をしていく、という構造になってしまっているのが、ノエル周りのどうにも引っかかる見せ方。
 上述したように、最終回で何とか突破してほしい図式です。
 「おや、ザミーゴに、快盗どもじゃないか」
 泰然とボスが姿を見せ、その介入を嫌がったザミーゴはなんと、ドグラニオの金庫の中に自分を収めるように求め、ドグラニオ自身にも決して邪魔されない世界での、ルパンレンジャーとの決着を望む。
 「俺はただ、心ゆくまであいつらと戦いたいんだ」
 「ふん、己の自由までも賭けてみせるか。いいだろう」
 ザミーゴはドグラニオの金庫の中に吸い込まれ、それを受けて立つルパンレンジャー。
 「あんたは、世界の平和も守るんだろ? ザミーゴは任せな」
 赤は倒れたノエルから秘策の為のビークルを預かると、圭一郎にはビクトリーストライカーを託し、黄はマジックを咲也へ、青はシールドをつかさへと手渡し、ここでそれぞれの装備を交換する、というのは実に熱い展開。
 「世界の平和は頼んだぜ。……おまわりさん」
 ルパンレンジャーはドグラニオの金庫の中へと飛び込んでいき、大量のコレクションが虚空に浮かぶ金庫世界の中で決戦開始。ザミーゴの金庫に迫った青と黄は凍結弾の餌食になってしまうが……これもまた作戦通り。
 いつもの調子で銃を投げ捨てたザミーゴは、新たな銃を取り出そうとした所で、金庫が開かない事に驚く。
 「――俺達の勝ちだ」
 ノエルの秘策、それは、「金庫を閉じる」能力を持ったトリガーマシンにより、ザミーゴの金庫を封じ、ザミーゴの武器を奪う事であった。
 第1ラウンドではトリッキーな作戦でザミーゴのコレクションを奪い、1年通して「金庫を開ける」事にこだわってきた今作が、決戦において「金庫を閉じる」事で宿敵への勝機を見出す、というのは冴えた逆転劇で、トリガーマシンの能力に関しては唐突だったものの、年間のギミックにこだわり抜いた決着のらしさは良かったです。
 「永遠に、アデュー」
 渾身のルパンマグナムの一撃がザミーゴを貫き、青白い氷に覆われていくザミーゴの体。
 「楽しかったぜぇ……! アディオス……」
 ザミーゴは爆死、金庫世界に咲く青いバラの花びらが舞い……外の世界では、勝利・彩・詩穗を始め、失踪者達が次々と帰還。青と黄も無事に戻り、感極まった赤はダイビング抱きつき。青い花びらの舞い散る中で喜びにむせびながら抱き合う3人、というのは金庫世界の中という舞台設定も活きて、美しい映像でした。
 そう、それはもはや、「不可能」の象徴ではない――夢 かなう。
 外ではパトレンジャーがジムから失踪者帰還の報告を受けていたがドグラニオには手も足も出ず、快盗はドグラニオの金庫の中――果たしてその金庫は、開くのか、開かないのか……最後の最後まで金庫への焦点を残し、次回、最終決戦!!
 前回、魁利を中心としたテーゼには一定の決着をつけ、今回は諸々の後始末に雪崩れ込んだといった内容でしたが、VS戦隊として魁利のライバルはあくまで圭一郎であるという構造上、真のライバルとはなり得なかったザミーゴは、金庫にまつわるギミックを使い尽くす形でリタイア。快盗の発端であり、ギャングラーという敵の象徴としては、ふさわしい最期でありました。
 で、「ここまで3人でやってきた」に入れないし、「あんたは、世界の平和も守るんだろ?」と言われてしまうノエルでありますが、第38話において覗かせた警察戦隊への憧憬に似た羨望、ルパンマグナムの試練を乗り越えられなかった事を合わせて考えると、行動の基軸は快盗の心性だが究極の願望は警察の立場にあって、マグナムの一件を知る魁利はノエルのそんな心情を見切っていたのかもしれず、であれば魁利は、前回の圭一郎に続き、ノエルの背中もそちら側に押したようにも思えます――それが、自分に出来る事である故に。
 後は警察戦隊が、そのパスを受け取る形になってくれると嬉しいですが。
 そして正面からの勝負ではとても勝ち目の無さそうなドグラニオですが……いよいよここで、第16話の伏線が火を噴くのか?!

 「外部からの破壊は極めて困難ですが、内部からの衝撃には非常に脆いと」
 「では、奴らを倒した時、木っ葉微塵になるのは、金庫の内側が爆発しているのか?」
 「推測ですが……その後、金庫を元に身体が再生される事から、この金庫が、奴らの、本質というか……核なのでは」
 ドグラニオの腹を割いて快盗が現世に帰還すると、再生する神話的英雄の色味もまとって、なかなか面白そう。
 また、金庫世界の宙を舞うルパンコレクションが映像化されているのも気になるところで、魁利がコグレさんに預かった本を所持していれば、金庫の中でコレクションを回収してルパン家の倉庫に送ってしまうという裏技もありえそうですが、そうなると本が渡された意味も出てきて、個人的には好み。
 その裏技も含めて、コレクションを全回収した事にして奇跡で金庫解放、というのもありそうですが、今ひとつ“コレクションの範疇”に不明瞭なところがあるので、内側から破る可能性の方が伏線も活かせて高そうでしょうか……問題はその情報を持っているのが警察側だけという事ですが、金庫の中と外の連絡手段はあるのか無いのか。グッティならコレクション扱いでルパン家の倉庫から魔法の本の側に出る事が出来そうな気もしますが、ルパン家の倉庫はどこにあるのか?! パリだったら、『エッエッエッークス!』で3分ぐらいで行けるのか?! チキンか、シャケか、それが問題だ。
 という事で、ノエルをもう少し何とかする、と、つかさ先輩にスポットが当たる、への期待は20%ぐらいにしておきつつ、如何にしてドグラニオを倒すのか、そして彼らはどんな未来を掴むのか、最終話を楽しみに待ちたいと思います。
 予告はほぼ警察戦隊中心になっていましたが、今作けっこう予告でフェイント入れてきますし、宇都宮Pは“戦隊が戦隊である魅力”にこだわりがある方だと思っているので、今作なら恐らく、真の共闘をやってくれる筈! というのも期待を込めて。