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快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第48話

◆#48「仮面の下の素顔」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
 「元はこの世界に住んでいた、一族の、子孫らしいな。もはや人間と変わらんように見えるが」
 ゴーシュはノエルをドグラニオの前に引きずっていき、 椅子を降りたドグラニオはノエルの頬を引っ掻くと、赤い鮮血を確認する。
 「一つ答えろ。ドグラニオ・ヤーブン」
 そのドグラニオに対し、魂までは屈せずに強い眼差しを向けるノエル。
 「あの世への手土産だ。なんでも答えてやる」
 「おまえは人間界でアルセーヌを殺し、ルパンコレクションを奪った。いったい何が目的なんだ」
 「面白そうな物があった。だから手に入れた。他に理由がいるか?」
 「……そんな……そんな事でアルセーヌは!」
 激昂して立ち上がろうとしたノエルはゴーシュによって気絶させられ、それを見つめるドグラニオは、何かを思いつく……。
 「……なあゴーシュ。どうせなら、もっと派手にやろうじゃねぇか」
 一方、ジュレでは魁利と透真が打倒ザミーゴの手段に悩む中、初美花が警察の訪問を警戒していた。
 「いっそバレる前に……ここを引き払うか」
 「え、そんな!」
 「初美花。警察と仲良くするのと、正体を隠す事、これ以上両立するのは……」
 「わかってるよ! ……わかってるけど…………好きになっちゃったんだもん。ここでの暮らしが」
 初美花の言葉に合わせて、店内を次々と映す映像が、実に劇的。
 「詩穗ちん達取り戻して、このお店、透真と魁利と私、3人で続けて……警察の人達も今まで通り常連で……そんな風になればいいなって……思っちゃったんだもん」
 大事な人を取り戻す為、仮面を被り、仮初めの舞台を演じ、しかし、やがてその“今”も、取り返したい“過去”とは別の価値を持ってしまう……この1年、念入りに仕掛けてきた爆弾をきっちり破裂させてきて、辛い……。
 『動物戦隊ジュウオウジャー』においても、大和くんに対して仕込んでいた爆弾を最終盤にしっかり弾けさせたのが素晴らしかったのですが、設置した爆弾から逃げないというのは、香村さんの大変信頼できるところ。
 用意した時限爆弾が、不発弾にならずにしかるべき爆発をする作劇が好きなので、このアバンタイトルは今作一つの到達点として、凄く良かったです。
 警察側では咲也が、快盗側では初美花が、抑えきれない感情を発露する存在として、一歩間違えるとジャスティスモンスターとダークヒーローという極端化をしかねないW戦隊双方の、物語上の人間性を担保する機能を有している、というキャラの配置も鮮やかに決まりました。
 透真ばかりか魁利さえ言葉を持たないその時、店内に飛び込んでくる「国際警察火付盗賊改方である! 神妙にお縄を頂戴しろい!」じゃなかった、グッドストライカー。
 「ノエルが! ノエルがゴーシュに刻まれるぅ!」
 「「「え?!」」」
 その頃、パトレンジャーはノエル救出の為の作戦を検討中。
 「ノエルは人々を守る為、信念をもって集めたコレクションを我々に渡し、命を賭けた。必ず救出する」
 そこを納得できるなら、正面から話し合ったらルパンレンジャーの事情にも理解を示して手を取り合えそうな感はあり、圭一郎はなんだかんだノエルに甘い、とは思うところ。勿論、一応ノエルは素顔をさらして自分の信念を語っているというのはありますし、ノエルのお陰で助かった状況は多々あるわけですが、やはり、パトレンXとして人々を守る姿を中心としたエピソードが、1本欲しかったなというのが惜しまれます(恐らくはテコ入れの影響で修正された部分なのでしょうが……)。
 つかさは託されたビークルを見つめながら(自分が人間用に改造したコレクションは、使わないんじゃなくて、使えなかったのか)と以前の疑問を思い返し……案外良いところ突いていたなぁ、当時の私の与太話(笑)
 ゴーシュのこれまでの出現位置を分析し、逆に異世界へと乗り込む事を考える警察戦隊だが、そのゴーシュが、電波ジャックによりノエルの公開処刑を宣言。
 「頼むみんな! ノエルを助けてくれ!」
 「いけません」
 「「「「え?」」」」
 「残念ですが、ノエルくんは見捨てましょう」
 ジュレタブレットを持ってきたコグレさん、この流れで、表情を変えずに言えるのが凄い。
 「コグレー! おまえのそういうとこが嫌いなんだよー!」
 「アルセーヌ様を取り戻す為です! ノエルくんも、覚悟の上かと」
 ここしばらく軟化傾向だったコグレですが、グッティと仲が悪い理由を拾いつつ、何が一番大事か、という目的意識の部分はブレる事がない姿が貫かれたのは、安易にキャラクターの集団を同化させず実に良い感じ(100%ノエルをどうでもいいと思っているわけではない、というのは既に示されていますし)。
 国際警察では、罠を承知で迷わず乗り込む事を決めたパトレンジャーが出撃し……ジュレでは魁利達も意志を一つにする。
 「……コグレさん。…………あんた、大事なこと忘れてるぜ」
 「……え?」
 「ゴーシュもコレクションを持っているでしょう」
 「だったら、取り返すのがうちらの仕事じゃない?」
 「あなた達」
 「行くしかないんだよ。コレクションの為に」
 3人はVSチェンジャーを抜き、片やコレクションの為、片や人々を守る為、それぞれの信念に基づいて虎穴に飛び込んでいく快盗と警察の姿が巧く決まりましたが、一方で快盗はもはや「約束したんだよ俺たちは。たとえ誰が倒れても! 残った奴が願いを絶対叶えるって!」と啖呵を切った頃とは同じではない、という明確な変化も描かれており、これが最終局面へのステップになるのかな、と思うところ。
 W戦隊の出撃シーンはきっちり盛り上げてきたのですが、肝心の処刑場が、十字架(ノエル付き)・椅子(ドグラニオ様付き)・ゴーシュ・構成員、と詰め込むとだいぶ狭っ苦しい感じだったのは、個人的に残念。ロケやアクション撮影の都合などもあったのでしょうし、閉ざされた空間での高低差を活かした映像が面白くなる場合もありますが、ドグラニオ様肝煎りの公開処刑としてはハッタリ不足に感じてしまい、もっと大げさな舞台が欲しかったな、と。この辺りは『ルパパト』が全体的に、工夫で誤魔化す事を要求されているように感じる部分ではありますが。
 「ノエル! おまえは必ず助ける!」
 いち早く突入したパトレンジャーは待ち受けていたギャングラー構成員と銃火を交え、ノエルの正体を知った圭一郎が印象的に「助ける」を繰り返しているのは、この後の展開を考えると、次回(以降)への布石のようにも思えます。
 ギャングラーと違って、快盗は「よし、正体も動機も確認したので、銃殺だ」とはいかないわけで(序盤は若干、その節もありましたが……)、やむにやまれずダークサイドに身を堕とした人間に、“人として警察として”どんな手を伸ばせるのか?(日陰の世界から抜け出す手助けを出来るのか)が最終的な圭一郎の課題(警察官としての命題)になりそうですが……もしかすると初期は「パトレンジャー・フォー・ジャスティス!」で快盗滅殺すべしだった圭一郎が、ただ闇雲に滅殺すればいいというわけではない、と犯罪者に対する考えを改めていく、という物語の支流が構想されていたのかも(という辺りが圭一郎×ノエルの、劇的な衝突と互いの変化として準備されていたけど変更になった、と考えると割としっくりと来たり)。
 構成員を片付けるパトレンジャーだが、ハザードゴーシュ、強し。レーザーメスの一閃を喰らったパトレンジャーは、3人まとめて壁に叩きつけられ、変身解除で戦闘不能になってしまう。
 「悪いわね~。私も早く切り刻みたくて、うずうずしてるの! うっふふふふふふ」
 身動き出来ない3人を捨て置き、ノエルに近づくゴーシュはメスを振り上げるが、その背に突き刺さる銃弾。
 「つまんないショーはそこまでだ」
 「ギャングラーのボスまでお出ましとはな」
 「エックスは返してもらうんだから!」
 「ルパンレンジャー……」
 降り立った快盗トリオをじっと見つめる警察戦隊……快盗は認識阻害マスクをかけているわけですが、なんだか、一生懸命見ていたら面影を判別できるのではないだろうか、という視線に見えて仕方ありません(笑) むしろ認識阻害マスクの為に、その気になって見ていると、段々とそう見えてきてしまうのでないか。
 「待っていたぞ、快盗ども。まずは、腹を割って話そうじゃないか」
 椅子から立ち上がったドグラニオは快盗の前に立つと、マスクを外して素顔を見せるように要求。
 「人間共も見たいと思うぞ? 快盗の――正体」
 中継映像を見つめる群衆がざわめき(ベンチに座る少年少女は、魔法の靴回のゲスト?)、その中には本日もロックアイスを囓るザミーゴの姿が。
 「へぇ~、ボスらしくない、嫌がらせ。いや……昔に戻ったのかぁ?」
 そして快盗は、崖っぷちの決断を迫られる。
 「素顔を曝したおまえ達が、ゴーシュと戦って勝てば、エックスを解放してやってもかまわん」
 「駄目だみんな! 僕の事はいい! 約束しただろ! 最後にコレクションが集まれば構わない!」
 実際のところ痛いでしょうし、どこまでコレクションの“奇跡”を信じているのか図りきれない所はあるのですが(ノエルの場合、アルセーヌさえ甦れば自分は犠牲になってもOKそうな節もあり)、この、最後に奇跡があるから大丈夫、という思考法はどうも“不健康”に思えて、ここはノエルの張り飛ばされて欲しい部分の一つ。
 懸命に訴えかけるノエル、煩悶する快盗、状況を愉しむドグラニオ……。飲み込まざるを得ない部分ではあるのでしょうが、間に転がっている警察3人が…………ちょっと間抜け。
 魁利と透真の視線は自然と初美花へ向かい、俯く初美花の瞳は咲也に向けられるが、その瞳に焼き付いて今も今も今も離れないのは、目の前で氷に閉ざされて消えた、親友の姿。
 決定的な選択の瞬間、挿入された回想シーンが改めて実に鮮烈で、砕け散る氷の音が痛切。
 「いいのか」
 「引き返せないぞ」
 「……私だって快盗だよ。覚悟は出来てる」

 ――詩穗ちん達取り戻して、このお店、透真と魁利と私、3人で続けて……警察の人達も今まで通り常連で……そんな風になればいいなって……思っちゃったんだもん。

 二人に頷くも、一瞬、唇を噛んだ初美花の、好きになってしまった“今”が指の隙間から零れ落ちていくのを噛みしめるような間合いがとても良く、選んだ道の結果を精算させ、それをキャラクターの抱く痛みや苦しさとしてしっかりと表現してみせたのが、お見事。
 また、立ち上がりは圧倒的な表情の華やかさで演者陣を引っ張っるも、中盤やや抑え気味の扱いになっていた初美花(ばかり目立ってしまうのを避ける思惑はあったのでしょうが)が、この終章ぐっと来る芝居でスポットライトに応え、全体のバランスとしても巧く収まりました。
 「――そんなに見たきゃ見せてやるよ!」
 快盗達はドグラニオに向けて一歩踏み出すと、間近に転がる警察戦隊が、全世界生中継による人々の目が、注視する中で遂にその帽子と仮面を外し、素顔を曝す。
 「俺達が、世間を騒がす快盗さ」
 3人揃って、口角を吊り上げた笑みを浮かべ、溜めに溜めて辿り着いた正体公開というクライマックスにおける演技プランが、“ヒロイックな鋼の意志”でも“悲壮な覚悟”でもなく、
 脳内麻薬が出まくってハイテンションでひくひく笑ってる
 という、突き詰め方が鬼だ。
 前回今回と、1年間の物語の集大成として本当に濃密な内容の中、スタッフワークと役者による鈍器の打ち合いというかキャラクターの研ぎ澄まし具合に震えが来るのですが、複合的に色々限界の近づいている快盗達の精神状態として、これを通してきたのが、いや実に凄まじい。
 「初美花ちゃん……そんな……! そんな……」
 「魁利くん、透真くん、初美花ちゃん……僕は……」
 衝撃と絶望が交錯し、外では人々もざわめく中、口を開けて乾いた拍手をしているザミーゴがまた凶悪。
 「それじゃあドグラニオさんよ、話す時間は勿体ないから」
 引きつった笑みと共に、快盗カードを投げつける魁利。
 「予告する! あんたらのお宝、全部いただくぜ!」
 「「「快盗チェンジ!」」」
 スーツ+演者顔出しをここで用いて“仮面の下の素顔”をもう一押し強調してくるのですが、マスクオン時に口元に笑みを浮かべているのが、快盗の洒落た余裕ではなく、完全にイッてしまっているよう見えて、鬼だ。
 もう、笑っていないとやっていられない!
 「まあいいわ。坊やの素敵な体も刻みたかったから。楽しみが増えたわ!」
 ゴーシュはルパンレンジャーへと切りかかり、死闘の第2ラウンドがスタート。その最中、なんとか立ち上がるだけの体力を回復したパトレンジャーの元にグッティが密かに飛来し、ボスの気が快盗vsゴーシュに逸れている内に、ジャンプ一番、奇襲を仕掛けるパトレン融号……は、3人分の気力なら大丈夫という理論なのでしょうか。
 空中で分離する事でドグラニオ様のノコギリを全員がかわす意図だったのか、最初から1号だけ食らう気満々だったのか若干わかりにくかったのですが(そもそもはボスを攻撃すると見せてノエルを救出する、という作戦だったのかもですが、角度的に最初からノエルを救出する気満々に見えたので)、とにかく1号がノコギリ食らって壁に叩きつけられている間に、緑と桃がノエルを救出して屋外へ逃走。
 「ふふふ、警察もやるじゃないか」
 それを愉しそうに見送るドグラニオ様ですが、位置関係的に、2号、物凄い至近距離でドグラニオ様に背を向ける事になっており、やはりちょっと、場所が狭かったのでは感……。
 そこは気になってしまいましたが、警察戦隊が転がっているだけにならなかった事、また、正確には把握していませんが、これまで、グッと来たグッティが警察に協力する事はあっても、グッティが警察に協力(助け)を求めたのは初めてのような気がして、ノエルとの間に真の友情を感じられたのは良かったです。
 「折角捕まえたエックス、このまま逃がしてたまるもんですか!」
 希少動物の逃走に焦ったゴーシュは改造怪人・ラビットキンコを召喚(改造生物がウサギモチーフぽかったのは、同期ネタだったの……? と今頃勘ぐってみる)。
 「どうしたゴーシュ、一人じゃ心細いのか?」
 「ボス!」
 ところがそれを見たドグラニオはやにわに立ち上がると、
 「折角の遊び場だ。自分の力だけで、愉しくやれよ」
 コレクションの力を発動する……!
 その瞬間、ゴーシュと改造怪人の全ての金庫が自動的に開き、内蔵されていたコレクションは全てドグラニオの手の中に吸い寄せられる。
 「ふははははは!」
 「どうしてですか?!」
 「今まで好き勝手にやってたんだ。俺にも好きにさせろ。俺は、面白いものが見たいんだ。はははは!」
 ドスの利いた声で態度を一変させたドグラニオは、悲鳴をあげるゴーシュを残して、コレクションを手に異世界へと帰還。もともと第1話で、「俺がギャングラーをまとめて500年。脅して、奪って、殺しまくって、楽しい人生だったが、少々飽きた」と、どこか虚無的で、破滅願望めいたものを垣間見せていたドグラニオの本性が、遂に表面化。
 ショーを要求したのも、人質を逃がしたのも、全てボスだったと思うのですが、それも含めて、面白いものが見たいので仕方がありません。
 つまるところ、公開処刑ショーはギャングラーの鬼門。
 「……やるじゃん、myボス」
 街頭でその映像を見つめるザミーゴは称賛を送り、
 「……あ……そんな」
 動揺するゴーシュに一斉射撃を浴びせた快盗は建物を脱出して警察&ノエルと合流するが、待ち受けていたのは前回のノエル出勤時が春のそよ風のように思える気まず過ぎて呼吸困難な空気。
 「……とにかく今は、目の前のギャングラーだ!」
 「ルパンレンジャー!! お前達にも、協力を要請する!」
 「……いいの? 俺達と手ぇ組んじゃって?」
 「緊急事態だ」
 「OK。ぶっ倒せばいんだろ? 楽勝じゃん」
 ゴーシュ&ラビットキンコに対し、全く心が一つになっていないのに敢えてここで流れ出す主題歌も含めて、漂う総員のやけっぱち感(笑)
 咲也さんと呼びかけまくるイエローも空気読めない子みたいになっていますが、薄々こういう事態を覚悟していた部分はあったにしても、いざそうなってみると誰一人として適切な対応がよくわからなくなっている、というテンションで強行突破する大変な力技でしたが、だからこそこの後、VSXにはならないというのが、シビア。
 映像上は、ビクトリールパンレッドとサイレンルパンXのVとSの文字が派手に重なり、約1名が「警察と快盗、二つの力で、おまえを倒す!」と叫んでいるのですが、VもSも快盗だし、本当に力だけだぞノエルよ……という事で、これはサイレンパトレン1号との正真正銘クライマックスなVSストライクへの布石だと思いたい。
 快盗4+警察3vsゴーシュ&ラビキンは互いのフルパワーでビームを撃ち合い、響き渡るゴーシュの絶叫。
 「……なかなかやるじゃない……いいこと思いついちゃった。ふふ、黄金の金庫を移植したら、どういう結果になるかしら? ……ひひっ、これが……私の最後のじっけぇぇん!!」
 瀕死のゴーシュは自らの金庫をラビットキンコに移植して爆死し、最後の最後、“ボスに切り捨てられた哀れな女”ではなく、“ギャングラー1のマッドドクター”として退場したのが、ゴーシュなりの矜持でありましょうか。
 金庫の移植時にルパンXが顔を背けるのが、何よりもノエル自身が己の出自を気にしている表現として細かいのですが、人生のスタート地点の問題なので一朝一夕に解決できるものではないとはいえ、それを克服しないとノエルは他者と“まっすぐ”に向き合えないままだと思うので、何とか残り話数で、ノエルの問題にも光明が見たいところです。
 予告を見る限りでは咲也が一発ガツンとやってくれそうなので、どういうパンチを入れてくれるか楽しみ(そこで咲也が、何に一番怒っていて、何が一番悲しいのかも、示してくれると嬉しいのですが……なんかホント最近の咲也の感じだと「騙されていた」事そのものは一番の問題ではないレベルの、いい人に見えるので)。
 後はつかささんが5-6話の圭一郎に対してのように一歩踏み込んでくれると更に良いのですが、遡って鳩時計回の引っかかりもまとめて飲み込むようなイベントがあれば、大変嬉しい。圭一郎×魁利、咲也×初美花、の間は確固たる積み重ねがありますが、つかさ×透真は弱い事を考えると、つかさ先輩が存在感を出すとしたら対ノエルになるでしょうし、冒頭に回収したビークル問題の気付きが、ただの伏線の確認と回収のみならず、ノエルへの何かに繋がって欲しいな、と願望も込めて。
 ドグラニオの攻撃を受けたパトレン1号のダメージが大きく、巨大ラビキン相手に、マグナムロボ、Xエンペラー、ルパンカイザーが出撃。
 実写のビル街の映像にロボットバトルを合わせた?戦闘シーンで、珍しい角度がついた巨大戦が展開。逃げようとしたラビキンを地上からパトレンが射撃する変化球も交え、最後は超快盗スピンで大勝利。
 ……そしてようやく、現状が胸に沁みいってくる快盗たち。
 「おまえら、これからどうするんだー?」
 「……さーて、全然ノープラン」
 「ジュレに帰るのは、無理だよね……」
 「すぐに警察が来る。このまま逃げる方が合理的だ」
 「しゃーない。コグレさんに新しい隠れ家、用意してもらうか」
 コグレさん、たぶん怒っているので、次の隠れ家は三畳一間のアパートかもしれない。
 「……アデュー。……咲也さん」
 快盗トリオはビークルに分離して逃走し、吊り下げられる消防車、そして、しれっと空を飛んでいくXトレイン。
 「初美花ちゃん…………」
 咲也はがっくりうなだれて座り込み……東雲悟編で圭一郎とつかさが落ち込むも咲也は見守るしか出来ない、という状況がありましたが、今度は咲也が死ぬほど落ち込む、という形で精神ダメージの帳尻を合わせてきて、鬼だ、鬼だな!
 果たして、快盗戦隊と警察戦隊の関係はどうなるのか、だが次回、それどころではない大進撃! 一個の狼と化したドグラニオ・ヤーブンが、人間界に暴虐の牙を剥く!!
 ドグラニオ様が一人のギャングに戻る事を選び、予想を超えて思い切りよく見限られたゴーシュですが、こうなってみると成る程、長らくドグラニオの側に控えていたデストラとゴーシュというのはそれぞれ、
 デストラ(ギャングラーという組織の保持)
 ゴーシュ(自己の欲望に忠実な行動)
 を象徴し、ドグラニオの持つ二つの顔をそれぞれ司っていたのかな、と。
 そしてデストラ(組織への執心)が消滅し、(ザミーゴに焚き付けられた事もあってか)「俺も好きにする」事を選んだ時点で、椅子に座るドグラニオの代理として「今まで好き勝手にやってた」ゴーシュの存在理由が無くなってしまった、と。
 vsデストラ戦において、追い詰められたデストラが「ドグラニオ様を絶望させるわけにはいかん」(「失望」ではない)と言っていたのがちょっと気になっていたのですが、デストラは正しく、ドグラニオの抱える、自らの組織を、場合によっては世界そのものを崩壊に導く破滅衝動を理解していたのかな、と思われます。
 そういう点でも、デストラはドグラニオが側に置いておく事を必要とした、組織の柱石にしてドグラニオ自身のストッパーであり、替えの効かない右腕であったのだな、と。
 ところで今作の構造的に気になる点として、人間界に潜伏しているギャングラーが現時点で都合良く0(除くザミーゴ)とは思いにくい、というものがあるのですが、ルパンコレクションを“全部”集めないといけないという要素の克服も含め、次回、ドグラニオがギャングラーメンバーの粛正によるコレクション全回収とかしてくれると好みなんですが。
 そして、快盗の正体が公開された事により、ルパンレッドにこだわるザミーゴが、快盗の身内を餌に使うという手段に出る道が開けたようで、どうやら大切な3人はまだ保管中の可能性が濃厚になってきましたが……今回きっちり仕込んだ爆弾を破裂させた今作が、どんな着地点を見出すのか、大変楽しみです。
 結局のところ、法律的問題に関してはフィクションとして幾らでも抜け道が用意できるわけですが(既にノエル自身が、半ば超法規的な存在ですし)、仮に快盗の大切な3人が取り戻せたとしても、素顔を全世界に公開した(と同時に、咲也らとの関係性を通して自分たちの嘘の重さを自覚した)今、魁利のみならず、快盗は胸を張ってその人達と向き合えるのかという問題が避けては通れなくなっており、それをどう乗り越えるのか、注目。
 物語としては今回、一つの選択と一つの崩壊を通して、“快盗である事の痛み”が物語の中に収まり、後は落としどころを見つけてそれを劇の内外に納得させれば勝ち、という段階まで持ち込めたとは思うので、どこまで余さず突き詰められるのか、ラストまで走り抜けてくれる事に期待です。
 快盗として、警察として――
 手に入れるのは、過去か未来か。
 もたらされるのは、救いか赦しか或いは罰か。
 予告の、呼びかける圭一郎と背を向ける魁利、のカットが実に象徴的で、大変楽しみ。