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もしも心を擦りむいても……

電光超人グリッドマン』感想・第38話

◆第38話「危うし地球!」◆ (監督:村石宏實 脚本:平野美枝)
 逆恨み同盟は、グリッドマンに気付かれないよう隠密機能を持たせた悪臭怪獣を作り出すと、システム上のバグに偽装して焼却炉を使用不能に陥らせ、ゴミを収集不能に。街の至る所にゴミの山がうず高く積まれて異臭を放ち、じわじわと社会機構を蝕む事に成功する中、武史がゆかに防臭マスクをプレゼントすると、意外な好感触(笑)
 だがそれはすぐに、横の直人といちゃいちゃする材料になってしまい、歯がみする武史に、同情の眼差しを向ける一平。
 「マスクあげた僕の立場はどうなんの。わかってるって。俺もいつもひとりぼっちよ」
 逆恨み同盟に、新戦力の予感!
 「わかるもんか! 君なんかに、僕の気持ちが!」
 だが固く手を握り合う代わりに脇目も振らずに逃走した武史は、怪獣のステルスを解いて思い切り暴れさせ、それによりグリッドマンに察知されてしまう事に。……まあ「怪獣」が武史の抱える憎悪の具象化である以上、暴れずにはいられない、というのは今作の怪獣観の根本ではあります。
 本日は絶好調のハイパーエージェントは、急降下爆弾パンチで先制すると、膝蹴りを顔面に叩き込み、振り回してから中段蹴り、飛び回し蹴りからハイキックへのコンボ、とキレキレの蹴り技で猛襲。先日の「グリッドーーー腹・筋」失敗を気に病んで密かに筋トレをしていたのか、怪獣の前蹴りにも腹筋をプルプルさせながら耐え抜くと、反撃の足払い。
 うろたえる武史の横から、カーンデジファー様もモニターに顔を出し、この光景に大激怒。
 「計画が台無しではないか! どうせまた、一時の怒りに我を忘れたな、うつけ者が!!」
 ゆかの態度に責任転嫁する武史だがカーンデジファー様が納得してくれるわけもなく、Cワールドではスタミナの切れてきたグリッドマンが竜帝合体。まさかのキンググリッドマンでの後ろ回し蹴りからキンググリッドビームへと繋いで悪臭怪獣は消滅し、逆恨み同盟の作戦は無惨な失敗に終わってしまう。
 「ぬ~~~、今度という今度は愛想が尽きたぞ! この能無し!!」
 そして同盟に、激震走る!
 「貴様の顔など二度と見たくない。出て行け!」
 え。
 出て行くのはカーンデジファー様の方では、と思ったのですが、先日の女子大生の一件がトラウマだったのか、カーンデジファー様はパソコンから衝撃波を放ち、家出の代わりに武史の部屋を乗っ取ってしまう。
 「おまえなどもういらん!」
 「ど、どうかお側に置いて下さい! 僕を見捨てないで!」
 哀願虚しく武史は自宅を追い出され、マルチモニターに分身するカーンデジファー様。
 「もはやあんな能無しの手を借りずとも、コンピュータ操作など、儂一人で出来るのだ」
 平穏の戻った街をブラブラしていた直人達は、カーンデジファーに見切りをつけられた武史が公園で黄昏れているのを発見し、マスクのお礼を言おうと近づくゆかだが、武史は涙を流して頭をかきむしりながら逃げ出してしまう。
 武史と直人達の距離感については、ゆかの「優しさ」で強行突破を計るのですが、これまでのゆか、武史に対する一平達の悪口をたしなめるような事も特になかったので、強引になったのが否めないのは残念です。冒頭のガスマスクもてっきり「やだ、気持ち悪い」とポイ捨てするとばかり思ったのですが…………つまり、ガスマスクで物凄く好感度が上がったという事に。
 思えばグリッドマンの最強合体も実質ガスマスクですし、そう、『グリッドマン』世界では、ガスマスクはレアアイテム。
 Q:得意先の役員を怒らせてしまいました。どうすればいいでしょうか?
 A:誠意を持って先方へ謝罪に窺いましょう。その時は、お詫びの気持ちを込めたガスマスクを持っていく事を忘れずに!
 そういえば顔のデザインモチーフにガスマスクが組み込まれている気がするカーンデジファー様は、自らの魔力でキーボードをかちゃかちゃ。
 「人間どもの世界など、既に熟知しておる」
 武史とカーンデジファー様の決裂は、例えば感情的軋轢の蓄積のようなこれといった布石はなく、突然といえば非常に突然なのですが、かつては「電子レンジ」が何かを知らなかったカーンデジファー様が、3クールかけて人間世界の事をお勉強し、コンピューターの操作もマスターして独り立ちしたのだ、というのが一応の説得力がないこともない力技(笑)
 逃げた武史を追いかけた3人は、錯乱寸前の武史の「次こそ最強の怪獣を、カーンデジファー様ぁ!」という叫びを聞いた事でカーンデジファーとの関係を問い質すが、Cワールドで巨大化したカーンデジファー様は、空を覆い尽くす黒雲と共に、人類へと改めてその存在を誇示。
 これまでの学習を元にCワールド全域に魔手を伸ばすと、水道局や鉄道などのシステムを次々と乗っ取り、人類社会のインフラを総ざらえで一挙大混乱に陥れる!
 「僕こそ天才、藤堂武史が、魔王カーンデジファー様の頭脳だったんだ!」
 その姿に立ち直った武史は得意満面で直人達にカーンデジファーとの繋がりを自白し、武史にとって精神安定剤の役割を持っていたカーンデジファー様と切り離された事により、ひたすら情緒不安定。
 Gコールが鳴り響いて直人とゆかはジャンクに急ぎ、一平は武史の身柄を抑えると、事態の中心にある武史のPCの電源を切ってやる、と藤堂家へ向かう。
 「遂にカーンデジファーのアジトを突き止めたよ、グリッドマン!」
 「やったな直人、行くぞ!」
 「よし。――アクセーーース・フラッシュ!」
 溜めを効かせた変身で、カーンデジファーの元へと跳ぶ、グリッドマン
 「対決の時が来たなグリッドマン!」
 「カーンデジファー、逮捕する!」
 「逮捕? 出来ると思うのか、ハイパーエージェント!」
 「それが、私の使命だ!」
 グリッドマンに変身すると直人人格が9割9分消えてしまう問題と同様、戦闘中は基本的に喋らない・そもそもグリッドマン自身がCGモデルを借りた仮の姿・《ウルトラ》オマージュ的な作劇上の要請、などからグリッドマン個人の掘り下げ、というのはほとんど行われていなかったのですが(物語の取捨としては、一つの選択としてブレなかったのが良かったと思います)、いよいよ直接対決に臨む所で、最後の最後にグリッドマン個人が強く顔を見せる、このやり取りが大変格好良かったです。
 てっきり光線技や逆恨み念動力など主体だと思っていたカーンデジファー様は、意外や格闘戦でグリッドマンと互角に渡り合い、Cワールドで死闘が繰り広げられる中、武史の部屋に乗り込む一平。だが、武史のパソコンは膨張・変形して触手を生やし、もはや異界の法則に支配された、名状しがたきパソコンならぬものと化していた。
 「ふふふふ、グリッドマン、貴様をこの世から、抹殺してやる!」
 カーンデジファー様の放った渾身の大技・魔王タイフーンの直撃によりグリッドマンは藻掻き苦しみ、見たかハイパーエージェント! これが、武史の帰りを待ちながら日々の筋トレを欠かさなかった、真の魔王の力だ!
 そして藤堂家から撤収した一平によりジャンクルームまで引きずられてきた武史は、逆恨み同盟の対として、グリッドマンをサポートしていたのが直人たちだと知る。
 「こ、これが……これが、僕の敵だったというのか? こんな、こんなボロいコンピューターが……」
 「ジャンクに触るな! 俺達の命だぜ!」
 互いのここまでの立場を知る決定的瞬間において、ジャンクに触れる武史の驚愕と失意が入り交じった表情、ジャンクへの強い思い入れ(と、今戦っている直人への友情)を感じさせる一平の姿と言葉、のどちらも秀逸。
 「……ふん、グリッドマンはカーンデジファー様に負けるさ」
 躁と鬱を凄い勢いで行き来する武史は直人達の奮闘を鼻で笑ってみせるが、そんな武史に炸裂する、必殺の雷光平手打ち。
 「目を覚ますのよ武史くん!」
 このラスト2話、予想外のものも含めて今作ここまでの要素を色々と拾い、まさに集大成、という作りになっているのですが、時計回のやや過剰な平手打ちは、この為の布石だったの……?! と思わず納得してしまいそうになる鮮やかな一撃(笑)
 「やっぱり、君は僕の事を」
 「私が……なんなのよ?!」
 「君のビンタに、愛を感じた」
 そして武史は、新しい世界に目覚めた!
 この期に及んで凄く駄目そうな反応を見せる武史だが、そう、ここは桜が丘……人間のクズ達が集う場所……地獄の底でも反省しない最低墓場の亡者の群れは……不思議コメディよりはマシさとせせら笑う……そう、ここは桜が丘……魔王の愛した吹きだまり――
 親の愛が欠落している武史にとって「親父にもぶたれた事ないのに?!」という意味はわかるのですが、なにぶん武史の変態属性の積み重ねが強烈だったので、病状が悪化したようにしか見えなくて困ります。
 ゆかと一平は魔王様の筋肉に苦戦する一方のグリッドマンを強制退避させ、消耗しきった直人が帰還。一平は、そんな状況でゆかへの変質的執着を見せ続ける武史を殴り飛ばし、部屋の隅で卑屈モードに入って泣きじゃくる武史。宿敵に正面から殴り勝ったカーンデジファー様は高笑いし、地球に迫る最大の危機! で、つづく。
 逆恨み同盟の決裂から両陣営の関係判明と急展開の中で、前半のグリッドマンVS怪獣、後半のグリッドマンVS魔王、とアクション的に見応えたっぷりだったのは大変良く、次回――「直人、ゆか、一平! ……そして武史。地球の運命は、君たちにかかっている!」
 武史の名前を加える、というのがお約束ですが、熱い。
 ……武史のお小遣いでジャンクのメモリを増設しまくって勝つ!とかではないといいなぁ(笑)(リアルではある)