東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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アタック・オブ・ザ・キラー掃除機

電光超人グリッドマン』感想・第32-33話

◆第32話「人間掃除機の襲撃!」◆ (監督:北村義樹 脚本:静谷伊佐夫
 道にガムを吐き捨てた男に注意したところ、逆に痛めつけられた武史は、復讐を決意。
 「公衆道徳を守らないような人間のクズを、始末してやるんです」
 「馬鹿な。そのようなクズ人間が多い方が、支配しやすいではないか」
 今さらりと、逃亡者であるカーンデジファー様が桜ヶ丘に引きつけられた理由が明かされた!
 「クズは所詮クズだ。そんな奴らをのさばらせておいても、役には立たない」
 「なるほど。おまえの言う通りかもしれない。おまえの作戦に手を貸してやろう」
 武史は巨大な口で何でも吸い込む吸引怪獣を作り出すと、最新型リモコン掃除機のCワールドへと送り込み、改造された掃除機は、衆道徳を守らない人間を小型化して吸い込む、悪魔の掃除機へと変貌する!
 「行けギュルンバ! 公衆道徳を守らないやつは吸い込んじまえ!」
 名前は恐らく擬音(「ぎゅるん」)からなので全くの偶然でしょうが、ロボット掃除機の代表格・ルンバの発売が2002年であり、くしくも約10年の時代を先取りにする事に。
 「ふふふふふふ、ざまぁみろ。おまえのようなクズ人間は、掃除機に吸い込まれるのがお似合いだ」
 悪魔の掃除機は早速ガム吐き男を小型化吸引し、道ばたに隠れ潜む掃除機が次々と人間に襲いかかるテクノロジーホラー……というよりは、だいぶん<不思議コメディ>寄りのシュールギャグな世界に。
 裏を返すと浦沢義雄脚本の持つ文明への批評性や風刺性が見えたり見えなかったりするわけですが、それはともかく掃除機は獲物を求めて街中を這い回り……
 車の灰皿の中身を道路に捨てた馬場父、犠牲に。
 空き缶を道ばたに置き捨てた尼崎、犠牲に。
 ゴミを収集日の前日に出した井上母、犠牲に。
 店の前のゴミを集めるも道路にばらまいた馬場母、犠牲に。
 「地球にとって人類とはガン細胞だよ! 増殖し続け、地球を汚し続けるだけの存在」
 考えてみると武史(設定年齢15歳)、放映年と劇中年が同一であると仮定した場合、どんぴしゃでアルケミースターズと同年代という気付かなくても良い事に気付いてしまうわけですが、藤堂武史と藤宮博也(『ウルトラマンガイア』)にはところどころ親和性があって、並行して見ているとついつい重ねて見てしまいます(笑) まあ藤宮はテロリストに転向する前はハムスターを愛する爽やかな男という過去が明かされたので、もはや
 「許さない……僕と同じ根暗野郎だと思っていたのに、女子アナや、同僚とイチャイチャするなんて許してなるものか」
 と逆恨み対象確定ですが、つまり、武史に必要なのは筋肉。
 そう、筋肉さえあれば、PCだって素手で破壊できる!
 話は戻って、姿を消した一平両親を探していた直人達は、鼻紙をポイ捨てした実演販売員が掃除機に吸い込まれる現場を目撃。カーンデジファー案件である事を把握し、走り回る掃除機にアクセスする為に一平が囮となってゴミをちらかし、電源コードでトラップを仕掛けると充電の隙を突いてアクセスフラッシュ。
 グリッドマンがCワールドで怪獣に立ち向かう一方、吸引された犠牲者達には真空パック処理の危機が迫り、街中を走り回る掃除機の合成にはやや無理があったのですが(演出的にもそのまま見せようとしすぎた感)、この、ゴミパックの中の人達の映像は、新鮮で面白みがあって良かったです。
 掃除機のカタログから真空処理の事を知り、内と外で危機感が共有されるのも『グリッドマン』ここまでの問題点をきっちり潰し、苦戦するグリッドマンの応援に送り込まれるサンダージェット。放たれたミサイルが怪獣の口を破壊し、内部構造のバネのようなものが幾つも剥き出しになる、というのは面白い造形。
 吸引攻撃という最大の武器を失った怪獣に対してグリッドマンは超人合体し、久方ぶりのサンダーグリッドビームでフィニッシュ。被害者達は真空パックの危機を逃れて元の大きさに戻り、それぞれちょっぴり反省。唯一人、ガム吐き男だけは相変わらずのふてぶてしい態度で去って行き、再びガムを吐き捨てるが、その前に現れる武史。
 「また掃除機に吸い込ませるぞ」
 凄まれてもニヤニヤと笑い続ける武史の言葉に男は怯えて逃げ出し、武史は高笑い。悠々と歩み去る武史の姿にナレーションが被さってオチとなり…………ええと、武史の行動理由に時折、頷ける部分があるのは確かではあるのですが、時に義憤とはいえ過剰な報復テロに走る武史の行為を肯定してはいけないのは今作の基本事項だと思っていたので、大ファール。
 トンデモアイデア回としてはなかなかの面白さだっただけに、チキンレースでブレーキを踏み損ねて海へ転落、みたいなオチは、残念でした。

◆第33話「もうひとりの武史」◆ (監督:高野敏幸 脚本:右田昌万
 武史はある日、自分が見て見ぬ振りをした子供の危機を、自分そっくりの少年が救うのを目撃する……その名は、タケオ。タケオは引ったくりにあったゆかの鞄を取り戻した事で、直人達とも意気投合。3人はタケオが誰かに似ていると思いを巡らし……
 「わかった! ほら、いつも紺ブレ着てる……前髪の、これだろ?」
 「あー、あの、じめじめしたナメクジ野郎か」
 「でも、全然イメージ違うって」
 客観的な武史に対する周囲の感想としては頷けるのですが、悪意がストレートすぎて君らホント酷いな! 今作中盤以降、正統派ヒーローとしての直人像を描き直している一方で、ジャンクトリオの家族達を含め、3人の行動理念の背景における素朴な正義の部分の積み重ねがややおざなりになっているのは、物語としてのウェイトの変更ではあるのでしょうが、少々気になるところ。
 見た目そっくりの少年を武史とは「全然イメージ違う」健康的な存在と描く事で、問題の本質は歪められた魂にある、という事を強調してはいるのですが。
 「許せない……絶対許せない」
 武史……ハイパー武史……じゃなかった、自分そっくりの少年が、ゆかとバスケをしたり、ゆかとちょっとお肌が触れ合ったり、あまつさえゆかを助け起こしたりゆかとゆかとゆかと◆&¥☆☆;*?! と脳の許容量をオーバーした武史は、勢いでゆかと二言以上の会話を交わした事にも気付かず、逃走。
 「僕にも、愛してくれた人はいたんだ……ばあや……ばあや……」
 幼年期、自分の面倒を見てくれたばあやとの記憶に逃げる武史だが、両親によって武史はばあやから引き離されてしまい、回想シーンながら、武史両親が画面に初登場。
 「15年間の僕の不幸は、全部そいつが原因だったんだ」
 歪んだ魂のままタケオを尾行するも自宅の前で見失ってしまった武史は、市役所のコンピューターをハッキング。住民票を調べて回るがタケオを発見できず、カーンデジファー様のアドバイスにより、シーボーズ的な怨念鬼獣を作り出すと、最新型腕時計を制御する電波塔へと送り込む。
 これにより、タケオもはめていた最新型腕時計のマイクロチップに同時アクセスした武史は、腕時計を巻いた人間の腕を操って街を大混乱に陥れ、ゆかの尻を撫でる直人。
 「わざとじゃないんだ! 右手が勝手に!」
 「エッチ! どうも最近目つきがいやらしいと思ったら!」
 ばちぃん!
 「ほ、ほんとにわざとじゃないんだ……右手がこう、時計に引っ張られるように」
 「ばか!」
 ばちぃん!
 「下手な言い訳けはやめて! 私のあげた時計が気に入らないなら、そう言えばいいでしょ!」
 ばちぃん!
 この女、3発入れたぞ(笑)
 3発目は明らかに余分な気がしてならないのですが、直人も直人で、お尻に向かう手を止めようとした形跡がなく、おもむろに立ち上がって「右手が……!」とか言い出す最っ低ぶりなので、因果応報という気はしてなりません。
 怒りのゆかが振り返ると、背後では一平が自分の顔を無茶苦茶に掴んでおり、変な顔で迫られたゆか、必殺の往復ビンタ。
 「二人してあたしの事ばかにして!」
 そこにタケオがやってきて、なんとか二人の時計を外した所で、Gコール。電波塔のCワールドで暴れる怪獣に立ち向かうグリッドマンは火球攻撃に接近を阻まれ、Hワールドでは、尼崎が発砲していた。
 ……これは……さすがに……「全部カーンデジファーのせい」で通せるのか。次回から、小金村が帰ってくる布石なのか。
 一方のグリッドマンは怪獣の猛攻にバリアシールドを弾き飛ばされ、自棄になって腹筋で火球を跳ね返そうとするが……勿論無理だった。
 正直、グリッドマンが自身の腹筋で何をできるつもりだったのか、正気を疑うシーン(笑)
 見かねたサポート組はステロイドもといゴッドタンクを送り込み、グリッドマンは超人合体でパンプアップ。怪獣を正面から殴り倒すと撃ち込まれた骨ミサイルも分厚い胸板で全て防ぎ、見たか! これが、筋肉?の力だ! 勢いに乗るグリッドマンは、溜め時間の長い新技「サンダーグリッドファイヤー!」で怪獣を撃破してCワールドを修復。完全にマッドコップと化して市民相手に拳銃を振り回すも、タケオに必死に阻止されていた尼崎は時計の呪縛を逃れ、辛くも殺人警官への転落を踏みとどまるのであった。
 事件は解決し、後日――遊びの待ち合わせにやってこないタケオに電話をかけるゆかだがそれは繋がらず、電話のベルが鳴り響く無人の部屋は、どこかで見た調度……そして。
 「僕の手で、あいつを殺してやるんだ」
 タケオに対し、制御しきれない憎悪を募らせる武史は遂にナイフを握って物陰に潜み、あわや刺殺直前、刺されかけたタケオは何故か武史に微笑みかけ、その姿が、幼年期の武史の姿に変わる。ばあやとの思い出の紙飛行機を武史に差し出して少年の姿はかき消え、自らを省みず他者を救い、友人達と笑顔で遊ぶタケオが「幼い武史の思い描いた理想の自分であったのかもしれない」のならば、その姿が、真っ直ぐに空を飛べずに両親に踏みにじられた紙飛行機に象徴されるというのが、大変えぐい。
 あと紙飛行機ネタは、某戦隊を思い出すので辛さ3割増しです!
 タケオは消滅し、武史はがっくりと座り込み、何も知らない直人達はタケオを待ちながらバスケットボールに興じるのであった……と一抹の寂寥感を漂わせ、世界に対して物理的に干渉しているタケオ(つまり武史の幻覚ではない)とは何者だったのか、という解釈は視聴者に委ねられるファンタジックな形で、つづく。
 仮にカーンデジファー様抜きでも、立派に逮捕レベルと思われる犯罪行為に手を染めている武史なのですが(証拠は残していないかもですが……)、未成年という事もありあくまで問題の本質は「環境」にある(これもまた直人達との対比)という今作初期から貫かれている部分が再確認され、今作の目指すところはカーンデジファーの打破と同時に「藤堂武史の救済」にある、という事を念押し。
 その上で、例え悪の保護者でも、現在の武史に“生きる意味と力”を与えているのがカーンデジファー様である(利用し、されるだけの関係ではない)、というのが今作の構造上の妙味なのですが、果たしてどんな着地点を見出すのか、楽しみです。
 正直、対岸に立つのが直人達というのが凄く不安なのですが、歩み寄りの日は来るのか。やはりここは、直人と武史を命の危機に追い込んで、今までの事を水に流して自発的にバ○ムクロスさせるのが正解なのかっ?!
 「段々思い出したぞ……グリッドマンは正義!」
 「カーンデジファーは悪。そして俺達に戦えって」
 次回――時空を超えてやってきた武蔵坊弁慶